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”ダイヤモンド”伊藤洋輝

今シーズン、ジュビロ磐田からレンタル移籍で加入しグランパスでプレーしている伊藤洋輝。その体のサイズや、強烈なシュートなど、まだまだ荒削りながら期待感を抱かせるプレー内容で『大器』と呼ばれています。実際にアンダー世代の日本代表常連でもあります。そんな伊藤のルヴァンカップでのプレーに魅せられてしまったゆってぃさんに、たっぷりと伊藤洋輝について語ってもらいました!

                                          

はじめまして。実家が瑞穂から近いということもあり、小さいころからグランパスの試合を見に行くことが日課だった、ゆってぃです。18歳でプロサッカー選手となる夢が破れた私にとって、グランパスの若手選手が輝こうと努力している姿は、夢に向かって頑張っていた自分を思い出させてくれて、日々の活力に繋がっています。そんな中、ふと目に留まったのが伊藤洋輝で、その出会いは私にとって衝撃でした。この衝撃をグランパスファミリーに伝えたいと思い、書かせていただきました。

はじめに

砂漠の大海の中、砂に埋もれている小さい石のようで、それなのに何故か強く輝く宝石のように私には見えた。その宝石はまだまだ原石で、一粒の小さな石で、それでも大きく、強く輝こうとする姿に一瞬で魅了されてしまった。

宝石にして原石の名は伊藤洋輝。ジュビロ磐田ユースの傑作と言われ、2019年現在はレンタル移籍によりグランパスでプレーする、東京オリンピック世代の期待の星だ。

伊藤との出会い

私と伊藤の出会いは新体制発表会に遡る。その時点で、伊藤については、188cmと長身、まだ19歳のMF、世代別代表に入っていて、フットサル出身、大きいんだなあ………ぐらいの知識しかなかった。

そんな私が伊藤君に惚れてしまうのだから、世の中はわからない。

新体制発表会で初めて見た時から、なにか惹かれるものを感じていた。伊藤のプレーを実際に見てみたい、そう思った。ところが、伊藤と同ポジション(セントラルミッドフィルダー)には強力なライバルがいる。グランパスが2019年に獲得した米本拓司とジョアン・シミッチだ。米本はFC東京で充分な実績があり、日本代表歴もある選手。シミッチに至ってはイタリア・セリエAのチーム『アタランタBC』が目をつけていた逸材だ。やはりリーグ開幕のスタメンは米本とシミッチだった。そしてベンチには小林裕紀、中盤もこなす和泉竜司、ケガで離脱しているがエドゥアルド・ネットも控える。正直なところリーグでの伊藤の出場機会は少ないと予想された。

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伊藤を見にルヴァンカップへ

リーグでベンチまたはベンチ外の選手を見たいなら、ルヴァンカップがある。通称『ベストメンバー規定』関係の様々な問題を経て、現在のルヴァンカップの、特にグループステージでは、ほとんどのクラブがリーグでのスタメンを休ませ、ベンチや若手を積極的に起用するからだ。伊藤を見るならルヴァンカップしかない。そういうわけで、ルヴァン初戦のヴィッセル神戸戦を私は楽しみにしていた。

和製チアゴ・モッタ

試合前、磐田サポーターの知人から伊藤が『和製チアゴ・モッタ』と呼ばれていた事を聞き(編者注・チアゴ・モッタは元イタリア代表のCMFで、左利きであること、187cmの体格等、確かに伊藤にはチアゴ・モッタっぽい要素がありますね)、彼の新体制発表会でのただならぬ雰囲気(なんかあのゆるそうなふわふわした感じ)がピッチ上でどんな役割とプレーとして表現されるのかにフォーカスして見てみようと思った。

試合当日・キックオフ前

当日はあいにくの雨、それも鬼のような寒さ。春の瑞穂は雨のイメージが強い。去年もずぶ濡れになりながら観ていたのを思い出す。それでも伊藤や他の若手を観るチャンス! 挫折するわけにはいかない! と自分に喝を入れピッチに目をやる。

ルヴァンのスタメンは事前の予想どおり、リーグ戦ではあまり出場機会の無い選手と若手で構成されていた。風間監督が開幕から鳥栖、セレッソとリーグ戦のスタメンを入れ替えている事もあり、ルヴァンに出る選手の目の色も見るからに違うように見えた。

アップを始めた伊藤について、最初に目についたのはやはり大きさ。日本人離れした体格。見るからに、「デュエルには負けねーぞ」と言わんばかりの雰囲気があった。

さて、442のグランパスのCMFを担う(パスを出し、パスを受け、チーム全体のリズムを作る役割がある)伊藤は、相手選手からは激しくチェックされることが予想された。J1のチームに所属するプロ選手と言っても、まだまだ若い19歳。アップの段階では、そのチェックをかいくぐり、チャンスメイクをできるか? チームのリズムを作れるのか? は判断できなかった。相棒として出場する小林裕紀の助けが無いと試合を作るのも難しいのかとも思えたが、そんな心配はすぐに消えることとなる。

キックオフ・惚れた

いざ試合が始まるとリーグ戦と同じボールを保持する展開。伊藤のプレーへの期待が膨らむ中、伊藤の最初のタッチを見たとき軽い衝撃が走った (今日はこれ以降衝撃が走り続けることになるとはまだ思ってもいない)。楽しくなっちゃって観てる席で大笑いして、周りのグランパスサポーターから不審な目で見られたのを覚えている。思っていた数倍上手く、綺麗だった。個人的には初めてチェルシーでのセスクのプレーを見たときと同じくらいの衝撃だった。選手のプレーを見て純粋に美しいと感じた。ボールをなでるように触る繊細なタッチ、大柄の選手とは思えない足回りの柔らかさ、神戸の選手のチェックを引き付けてから軽くいなす姿。プレーの選択からも自らの体格に頼らず足元で勝負しようとする心意気を感じて、その努力に心を打たれた。パスにもまた、自分が描くゴールまでの道筋を周りの選手に共有するための意思が乗っているようで、彼のパスの一つ一つにまるで手紙が着いてるかのようにすら、私には見えた。

時間を溜める

試合が進むにつれ、伊藤のとあるプレーが目に付くようになった。観客席からでは空いているように見えるパスコースにパスを出さず、自分でボールを持ち続ける。『球離れが悪い』とも言えるようなプレーだ。きっと同じように見えたのだろう、私の後の席で観戦していたベテランサポっぽいおじさんが

「伊藤はまだ若いな、あのパスコース見えてないのかな? パスは危なっかしいし、アーリアに預けたらいいのになあ…」

なんてぼやいていた。その後に伊藤のプレーを見た瞬間、違う、と思った。『出せない、見えてない』のではなく『出せる、見えてる』から出さないのではないだろうか。どういうことか順番に説明しよう。

ルヴァン初戦、風間監督は長谷川アーリアジャスールをFWとして起用した。FWと言っても最前線に張るのではなく、様々な選手からパスが受けられるようにアーリアは動き回る。一方、攻撃開始のスイッチとなるパスを小林裕紀が出すため、アーリアや周りの選手は小林の近くに寄る。そういった状況では、伊藤は小林の後方に位置取る。そんな伊藤にボールが来るのは、小林より前の選手達が『攻撃が手詰まりした・仕切り直そう』と判断した時になる。そこで伊藤がボールを持つと、アーリアがパスを受けに動いてくれるので、分かりやすく前に預ける選択肢が生まれる(パスコースが空いているように見える)。ところが、『攻撃が手詰まりした=相手の守備体勢が整っている』状態なので、伊藤は『そのままアーリアに預けてもその後の攻撃が上手くいかない』と判断しているのではないだろうか。そこで伊藤は、自分が相手を引き付けて守備体勢を崩すためにパスのタイミングを遅らせたり、相手が寄せてこなかったらそのままミドルを打とうとしていたりしたのだ。 (ベテランサポっぽいおじさん、気付きのキッカケを与えてくれてありがとう!)

原石に磨きをかけよう

もちろんまだまだ失敗はある。だが、その『原石の輝き』に疑いの余地は無い。二手三手先を読む状況判断にパスタイミング、ポジショニングや相手への意識付け、人を使ううまさ。若干19歳で試合の状況を判断してこれだけのことを行い、中盤の相棒とバランスを取り合い、味方のために利他的な動きをこなそうと奮闘している姿は、一度ピッチ上で見れば誰もが惚れてしまうと思う。『和製チアゴ・モッタ』というよりも『伊藤洋輝』という世界に一つだけの存在で、ずっと見ていたいと強く思った。 失敗は原石を磨く。磨き上がった伊藤を、見たい。

最後に

名古屋グランパスには期待の若手選手が多くいる。下部組織出身の愛されキャラ杉森、連勝神話まで作られてしまうルーキー相馬、大怪我からの復活を切望される青木。様々な選手がいて、私は皆を応援している…応援しているのだが、それ以上に誰よりも伊藤を応援したい。私は、伊藤が日本で、いずれは世界で輝く姿を見たいのだ。

ルヴァンカップのチケットはリーグと比べ余ってる。「ルヴァンだし行かないわー」と言うファンもいるが、逆に言えばチケットが取りやすいということだ。これだけ見ていてワクワクする若手選手がいると知って欲しい。知ってもらえれば、平日ルヴァンの瑞穂でも満員になるのも時間の問題になるのでは? と願望を込めて思っていたりもする。

5月半ばからポーランドで行われるU-20ワールドカップの日本代表にも選ばれている伊藤洋輝。これからの名古屋でプレーをきっかけブレイクして、2020年東京オリンピック代表へ、そしてA代表まで駆け上がる姿に期待しています。

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