我らが小中先生が、ついにグラぽに登場です。小中先生はスポーツの統計をTwitterで展開されており、いつも楽しませていただいておりました。いつもと違った、データの視点から振り返るジュビロ磐田戦マッチレビューをお送りします。是非お読み下さい。後編ではサンフレッチェ広島戦のプレビューも鋭意準備中です。
はじめましての方が多数かと思います.名城大学で働いているコナカ(小中)です.Twitter(@konakalab)でサッカーやバスケットボールのデータ分析(主に過去の得点に基づく予測)についてつぶやいていたところグラぽ先生他グラサポの皆様に発見していただき今に至ります.私自身はJリーグ開幕戦でジーコにハットトリックを献上したのをテレビ中継で見ていた年齢のゆるいグラサポです.
今日はシュート位置によるチームの評価と,それに基づくマッチレビュー&プレビューをお届けしたいと思います.
(データに関する注意:シュート位置のデータはFootball Lab(http://www.football-lab.jp/)の各試合結果から取得しました.オウンゴールはシュートには含まれていません.また,データの解釈はソースコードを読んだ私の解釈に基づくものなので,誤りがある可能性があります.)
(簡易版)ゴール期待値とは?
シュートは打たれたときの位置や選手の配置によって得点につながりやすいかどうかが異なります.ゴール正面の近くから打たれたシュートは得点になりやすく,ロングシュートはめったにゴールに入りません.シュートの成功率に関わりそうな条件のうち,シュートを打った位置について,過去その付近のシュートがどの程度の割合でゴールになったのか,を集計したものを簡易版ゴール期待値(simplified eXpected Goals)と定義します.
(「簡易版」と呼ぶのは,もう少し条件を加えたゴール期待値が既に提案されており,一部の試合については公開している研究者がいるからです.)
2017年,2018年2シーズンのJリーグ全試合のシュート約5万本から作成した簡易版ゴール期待値を図示します.
元データの都合でPKも分離できておらず,ペナルティスポット付近が高確率です.そして,ゴールポストからペナルティエリアの角に引いた直線の内側がゴール期待値が高い場所であることがわかります.
マッチレビュー:ジュビロ磐田戦
この簡易版ゴール期待値(以下ゴール期待値)を利用したマッチレビュー,ジュビロ磐田戦です.それぞれのチームのシュート分布とゴール期待値を示します.
s-xGという値が今回のゴール期待値です。そして青い丸がシュート位置です。丸が大きいほど良い位置でのシュートである(ゴール期待値が大きい)ことを示しています.名古屋はシュート数も少ないですし、良い位置でシュートを撃てていません。
それに対して磐田は危険な位置でのシュートを何本も撃っています.期待値の合計も名古屋約0.5に対し,磐田約1.2と,名古屋は劣勢の試合展開であったことがわかります.
磐田の今シーズン通算の被シュート分布(上図)を見ると,磐田は危険な位置(特にゴールエリア内)でシュートを撃たせない守備を実現してきており,試合全体を通しては磐田が守備で特徴を活かして優勢であったと言えそうです.
期待値と実際の差は,考慮に入れていない要因,たとえば以下の影響が考えられます。
- 運のよさ
- ストライカー(守備側ではゴールキーパー)の技量
- ディフェンスを崩していたか/が崩されていたか
この試合で言えば,若干偶発的な要因で発生したチャンスを決めきったジョー選手のストライカーとしての実力の高さや,ピンチで的確な判断・処理を遂行した武田選手をはじめとする守備陣を称えるべきでしょう.
(続く)