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なぜジョーの契約解除はFIFA紛争解決室扱いになったのか

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ジョー選手が契約解除になっていることが6月21日発表されました。

表記の件、株式会社名古屋グランパスエイトは、正当な理由によりジョー選手(Joao Alves de Assis Silva)との契約を解除したことをお知らせします。
なお、この件につきましては現在FIFA Dispute Resolution Chamber(FIFA紛争解決室)に委ねています。

https://nagoya-grampus.jp/news/pressrelease/2020/0621post-1500.php

過去、契約の途中解除といえばルイゾン選手をはじめとして数名いますが、その中でも異例の展開です。

今回の顛末の謎

  • 17日
    • 17日グローボ(ブラジルでもっとも信頼のおけるニュース)がジョーの移籍を報じる
    • 17日フットボールチャンネル

https://news.yahoo.co.jp/articles/25d6dfe951a0f99644d80cd8e77138a32c3af651

先月頃からコリンチャンス復帰に向けた動きが盛んに報じられてきたジョー。名古屋からの発表は行われていないものの、ブラジルメディアでは名古屋との契約をすでに解除してフリーになったと以前から伝えられている。

・17日ジョーが「ホームに帰ってきたよ」とツイート

  • 18日
    • 18日コリンチャンスがジョーの獲得をTwitterで報告

    契約解除発表

    • 22日
    • ・スポニチ

    https://www.sponichi.co.jp/soccer/news/2020/06/22/kiji/20200622s00002179015000c.html

    クラブは21日、ジョーと正当な理由により契約を解除したと発表した。国際サッカー連盟(FIFA)の「紛争解決室に委ねている」という。移籍先は母国ブラジルのコリンチャンスが有力視されているが、現時点では明かされていない。

    おかしくないでしょうか

    • 名古屋の契約解除の発表前にコリンチャンスが発表している
    • 契約解除済みと報道
    • 紛争解決室マターと発表
    • 22日には移籍先は明らかにされていない

    これだけできな臭いものを感じた方が多いのではないでしょうか

    契約解除はどういうときにできるか

    ラグさんが https://note.com/lag_ty/n/n0f369b62bdd3 でも簡単にまとめてくれていますが、こちらでもガッツリまとめてみます。

    https://www.jleague.jp/docs/aboutj/regulation/2020/pdf_2020.pdf

    こちらに掲載されている「日本サッカー協会選手契約書[プロA契約書]には以下のように記載されています。関係しそうなところに下線を引いてみます

    第2条【履行義務】

    選手は、次の各事項を履行する義務を負う。
    (1)クラブの指定するすべての試合への出場
    (2)クラブの指定するトレーニング、合宿および研修への参加
    (3)クラブの指定するミーティング、試合の準備に必要な行事への参加
    (4)クラブにより支給されたユニフォームー式およびトレーニングウエアの使用
    (5)クラブの指定する医学的検診、注射、予防処置および治療処置への参加
    (6)クラブの指定する広報活動、ファンサービス活動および社会貢献活動への参加
    (7)協会から、各カテゴリーの日本代表選手に選出された場合のトレーニング、合宿および試合への参加
    (8)協会、リーグ等の指定するドーピングテストの受検
    (9)合宿、遠征等に際してのクラブの指定する交通機関、宿泊施設の利用
    (10)居住場所に関する事前のクラブの同意の取得
    (11)副業に関する事前のクラブの同意の取得
    (12)その他クラブが必要と認めた事項

    第3条【禁止事項】

    選手は、次の各事項を行ってはならない。
    (1)クラブ、協会およびリーグ等の内部事情の部外者への開示
    (2)試合、トレーニングに関する事項(試合の戦略,戦術,選手の起用,トレーニングの内容等)の部外者への開示
    (3)協会のドーピング防止規程に抵触する行為
    (4)クラブ、協会およびリーグ等の承認が得られない広告宣伝^広報活動への参加または関与
    (5)本契約履行の妨げとなる第三者との契約の締結
    (6)クラブの事前の同意を得ない、第三者の主催するサッカーまたはその他のスポーツの試合等への参加
    (7)試合の結果に影響を与える不正行為への関与
    (8)その他クラブにとって不利益となる行為

    第7条【疾病および障害】

    ①選手は疾病または傷害に際しては速やかにクラブに通知し、クラブの指示に従わなければならない。
    ②本契約の履行に直接起因する選手の疾病または傷害につき、クラブの指定する医師が治療ないし療養を必要と認めた場合、その治療に要する费用は、社会保険の自己負担分に限りクラブが負担する。
    ③前項の疾病または傷害により、選手が一時的に競技不能となった場合、クラブは、その競技不能の期間中、基本報酬を支払わなければならない。ただし、競技不能の期間中に本契約が期間満了その他の理由により終了したときは、その時点でクラブの支払義務は消滅する

    第9条【クラブによる契約解除】

    ①次の各号のいずれかに該当する事由が選手において発生した場合、クラブは、選手に対し書面で通知することにより、本契約を直ちに解除することができる。
    (1)本契約の定めに違反した場合において、クラブが改善の勧告をしたにもかかわらず、これを拒絶または無視したとき
    (2)疾病または傷害によりサッカー選手としての運動能力を永久的に喪失したとき
    (3)刑罰法規に抵触する行為を行ったとき
    (4)自らの責に帰すべき事由により、本契約の目的に支障をきたす6ヶ月以上の試合出場停止処分を受けたとき
    (5)クラブの秩序風紀を著しく乱したとき
    ②前項に基づき本契約を解除したクラブは、選手に対し、解除通知の発信した日の属する月までの基本報酬を支払うものとする。

    第10条【選手による契約解除】

    ①次の各号のいずれかに該当する事由がクラブにおいて発生した場合、選手は、クラブに対し書面で通知することにより、本契約を直ちに解除することができる。
    (1)本契約に基づく報酬等の支払いを約定日から14日を超えて履行しないとき
    (2)リーグ等が出場を義務づける試合に正当な理由なく連続して3試合以上出場しなかったとき
    (3)リーグ等から除名されたとき
    ②前項に基づき本契約を解除した選手は、本契約の残存期間分の基本報酬を受け取ることができる。

    まとめると以下のようになります。

    • 選手にはクラブの指定した試合やトレーニングに参加する義務がある
    • 選手には医学的検診、注射、予防処置および治療処置への参加をする義務がある
    • 選手にはケガや病気をクラブに通知し、。クラブの指示に従う義務がある
    • 契約中に他のチームと契約を結んではならない
    • 契約違反への改善勧告を無視・拒絶したらクラブからの契約解除の理由になる
    • クラブの秩序風紀を著しく乱したらクラブからの契約解除の理由になる
    • 給料日から14日以上支払いが遅れた場合は選手からの契約解除の理由になる

    思い当たる範囲では、ジョーは4月8日の活動休止の前後に無断帰国した後、名古屋の練習再開後も戻りませんでした。トレーニングの参加義務、および治療処置への参加が適切に行っていなかったというところが問題だと思われます。おそらく上記について、改善が認められなかったため、契約解除に至った、ということなのでしょう。

    FIFA紛争解決室(DPR)とは?

    では今回、問題解決にあたるFIFA紛争解決室(DPR)とはどんな組織なのでしょうか。以下に記事を紹介します。

    https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40316580S9A120C1000000/

    FIFAは2001年から既にDRC(ディスピュート・リゾリューション・チェンバー)、日本語に訳せば「紛争解決室」なるものを組織内に設けている。どんなトラブルの相談所かというと、給料の未払い。ほかにもクラブチーム間の係争など、取り扱う案件はあるが、大半が外国人選手とクラブ間の金銭をめぐるもめ事である。

    簡単に言うと、前述の契約解除に伴う給与の支払いなどのもめ事を仲裁してくれる組織です。多くの場合は未払いに困った選手が訴えるようです。

    https://www.esporteinterativo.com.br/futebolbrasileiro/Nagoya-Grampus-confirma-resciso-de-J-mas-leva-caso–FIFA-20200621-0006.html

    ところが、こちらの報道では「名古屋がジョーorコリンチャンスを提訴」と報じられています。ブラジルスポーツ省のパウロ ・ セルジオ ・ フェウズさんが「名古屋グランパスがジョーやコリンチャンスを訴えるのは正当ではない」と言っています。

    争点はなんなのか

    なぜ名古屋グランパスがジョーorコリンチャンスを提訴するのでしょうか。

    提訴するメリットは以下のように考えられます

    • チームとして、今回のジョーの無断帰国などの契約違反に対して断固たる態度を示すことができる
    • 名古屋グランパスは強行に出れば、無理が通るチームである、という評判を立てさせないようにする(合意前の移籍発表などの
    • これ以上の支払いを止めることができる

    そこで思い出して欲しいのが名古屋のリリースの文言です。

    「株式会社名古屋グランパスエイトは、正当な理由によりジョー選手(Joao Alves de Assis Silva)との契約を解除したことをお知らせします。」

    名古屋グランパスとしては、以下の争点に基づき交渉していくことになるのではないかと考えられます。

    1. 「契約解除の理由の正当性」
    2. 契約にある9条5-2 「前項に基づき本契約を解除したクラブは、選手に対し、解除通知の発信した日の属する月までの基本報酬を支払うものとする。」のなかの解除通知の発信した日の属する月までの基本報酬、の取扱(いつまでの給与を支払うべきなのか)

    結果はどうあれ、契約に対して断固たる態度を示すことはチームとして重要です。

    先方の要求も含めて、後に禍根を残さないように進めていって欲しいです。

About The Author

グラぽ編集長
大手コンピューターメーカーの人事部で人財育成に携わり、スピンアウト後は動態解析などの測定技術系やWebサイト構築などを主として担当する。またかつての縁で通信会社やWebメディアなどで講師として登壇することもあり。
名古屋グランパスとはJリーグ開幕前のナビスコカップからの縁。サッカーは地元市民リーグ、フットサルは地元チームで25年ほどプレーをしている。

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