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チームとしての「本当の強さ」が試される 2021年J1リーグ第20節 サガン鳥栖戦レビュー #grampus #サガン鳥栖

超ハードな日程が終わりました。最後の結果は難しいものになってしまいましたが、まずは選手達に最大限の拍手と労いを。

そんな中で、「疲労」という言葉で箪笥の奥底に片づけると、もしかすると後々痛い目をみそうな部分だけをピックアップして振り返っていこうかと思います。

敗戦の振り返りは辛いですが、見る人たちも前を向く為に是非お付き合いください。

サガン鳥栖戦スターティングメンバー
サガン鳥栖戦スターティングメンバー

鳥栖の作るリズム

試合開始から鳥栖は2トップが名古屋のCBとSBの間のスペースに何度も抜け出す素振をみせながら名古屋の最終ラインを引っ張っていき、後ろでは名古屋の選手プレスを誘う。

守備の人数不利にしびれを切らした米本と稲垣がプレッシャーをかけに詰めてくることによって空くスペースに入れるボールを攻撃のスイッチとして、攻めてきた。

サガン鳥栖の仕掛けた罠
サガン鳥栖の仕掛けた罠

鳥栖はこのスペースが空いて、ボールが配球できたら「攻撃のスタート」というのがハッキリしていた為、鳥栖の全選手がスイッチであるスペースを確認しながらプレーした。そうすることによって選手の認識が統一され、攻撃の際に「沢山の選手が崩しや攻撃に関わる事」が出来た。

攻撃のスイッチの可視化

前述の通り、鳥栖は「攻撃のスイッチの可視化」が非常に上手かった。

攻撃のスイッチを「ボール基準に寄せすぎる」と、良いところにボールが来るのを確認してから動く必要があるので人の動きが遅れていったり、成功可能性の低い受け方やパスでも成功した時には次のプレーの為に選手が動いない。次の選手が動いていても、スイッチになる選手がボール受ける段階でミスをすると「無駄走り」に見えてしまう。というようなことが起こる。

特に今の名古屋はマテウス、前田、柿谷のような、それぞれ理由は違えど「ボールが手放されるタイミングが分かりづらい選手」が多い為、攻撃のスイッチの基準をボールにするとどうしても攻撃に波があるように見えてしまう事がある。

鳥栖の基準であるスイッチをスペースにする事は、選手のプレー成功率が狭い所より単純に上がる為「無駄走り」を感じない。次の選手が使うスペースの選択肢が増えるなど非常に理にかなったスイッチの“見える化”だった

但し、攻撃のスイッチが可視化しやすいという事は、ピッチにいる相手を含めた全選手がそのスイッチを常に気にすることになる。

なので、7分の山﨑の守備からのビックチャンスの時のように名古屋は攻撃のスイッチを作るまでの過程を狙う。鳥栖はスイッチが気になりすぎるとそれを作る段階でのリスク管理が疎かになる。といった攻略法やリスクは必ず存在する。

待って見たものの…

米本と稲垣が待って構えれば相手に付き合わなくて済んだんじゃないの?という疑問は当然生まれてくると思う。今回はそう簡単にはいかなかった。

待って構えると鳥栖は松岡を最終ラインに吸収させながら大畑を前田に当てて中野を内側へ。中央で常に数的優位を作る状態を形成した。

鳥栖の作る数的優位
鳥栖の作る数的優位

失点シーン

1失点目はSHとCMでも特にボールウォッチャーになりやすい前田、稲垣のスペースをやられた。鳥栖は分析済みだったかもしれない。

ボール基準にしてぬるっと稲垣が仙頭と中野の前に立ちに行く(自分の後ろのスペースの事前サーチは見られなかった。)

前田は攻め戻りしてる中で小屋松に届いたボールを見ながら中野に常に背を向け、中野より後ろをジョグで戻っていた。(inside grampusの試合後インタビューでもこの部分に関しては本人も認識していた)

米本が管理しなければいけないスペースが莫大な広さになり、樋口に対して木本がリスクを取ってフォローに詰めに入る。しかしボールの逃げ道は中野へ。その時、米本は木本が詰めてくれた分、木本と入れ替わった。中野の選択肢は縦と横の広い二択。

そこからシュートしたボールが不運にも木本に当たり失点となった。

ここでは選手一人ひとりの細かい判断のズレもそうだが、何より細かいズレを何とかしてきた気合で守る体力が47分の時点で無くなってしまっていたのが何よりも苦しかったかもしれない。

1失点目の仕組み
1失点目の仕組み

2失点目は442のセットを前田が大外のチェックでセットから剥がされて宮原がつっこまないといけなくなった事。

守り方の約束が曖昧になった事が失点になったかもしれない

2失点目の仕組み
2失点目の仕組み

木本が背走しながら腿裏でも犠牲にして詰めないと止まらなかったので仕方ない。それよりも注目すべきは木本の目の前にいた稲垣のランニングの速度変化とコース取り。大外の貼り付けにされていた前田。

中野にボールが入り宮原と詰めるのが被った瞬間、稲垣は宮原の開けたスペースへ向かうコース取りで加速中だったが、振りむいた時にボールが自陣へ向かわない(横に流れた)状態になった為スペースを消しに行くランをやめた。

加速中は明らかにストレート(スペースカバー)だったので走る速度を落として内側に切り替えた瞬間に木本だけではノーチャンスに近かった。

そもそもサイドバックが前の選手に詰めて大外に張り付いていた選手が内側へ寄らないというリスク管理で、中の選手だけでスペースをカバーしろ。というのが酷な話ではあるが、その辺りも「守り方の手札を体力で強くしていた部分」の強化部分の効果が疲労等でなくなった事で「どこを守りの脅威として、どの場所や相手の行動を最優先事項とするのか?」の曖昧さが出てきてしまったのかもしれない。

疲労による体力問題以上に浮き出てくる苦しさ

取り上げた選手だけでなく今までの名古屋の枠組みは「判断の迷い、遅れ(頭の部分)」を「体力と人を配置する事(身体の能力)」でカバーしてきたが、「置いている人をチームロジカルで剥がされる」、「限界が来ている身体」ではこの試合に関しては後半以降は本当に勝負にならなかった。

これを「絶対的な過密日程が最大の要因」とするのか、「チーム単位で頭の部分の積み上げで痛み軽減の方法を少しずつでも作って行くべきだった」とするのかは見ている人によって評価が分かれるかもしれない。

実際、後者を突き詰めなくてもなんとなく良い順位に居られたのでつまずきかけている今、チームとしての「本当の強さ」がここからは試される。

苦しかったけれど…

今回の試合はかなり苦しかったけれど、ポジティブな部分を上げるとすれば今ベンチを温めている選手や出番が少ない選手は「攻撃のスイッチが見づらくなった時」「もっとスイッチを見える化」したい時には必ず必要になってくる選手だという事。

今回試合途中から入った選手達は、時間を作れる選手、細い成功率を個人の技術で太くできる選手。判断に迷いがなく手札を切るのが速い選手などチームに「変化」がつけれる選手達。この「変化」と「リスク管理」のバランスが取れた時の名古屋が楽しみだ。

まとめ

圧倒的な日程の不利はあったものの、フィッカデンティ監督も試合後会見で発言していたが。本当に鳥栖が「良いサッカー」をして勝った。そんな印象だった。ロジカルに冷静に名古屋の首を絞めて行く。ACLという猟師に重傷を負わされていた鯱はそこに為す術はなかった。

何回かあった噛みつきで相手の息の根を留めれていたらと悔やむしかない。それもまたサッカーの醍醐味だと思う。勝ちがあれば負けもある。

良かった所

  • とりあえず地獄の日程とはおさらば
  • ゆっくり休みが取れる事
  • 森下君はSHで考えてるのですね監督よ
  • 右サイドバック競争が良い感じ

心配な所

  • 木本、山﨑の負傷が軽症であって欲しい
  • 【編注】山﨑凌吾に関しては不安が的中してしまいました

最後に

ここからは移籍期間とオリンピックの話題になりますね。選手も私たちも少しだけ休息。

再開まで楽しみをためておきましょう。

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