チームの為に全開でプレーして足を攣った選手が「チームのみんなに申し訳ない」と言葉を残し、ほぼ一年ぶりにピッチに帰ってきて、サッカーをする喜びを噛みしめてもいいはずの選手の第一声が「悔しい」だった。(JリーグYBCルヴァンカップ グループステージ第4節 広島戦後 選手コメント | インサイド・グランパス)
全力でもがいてる最中。
試合情報
名古屋は352でスタート。守備の噛み合わせよりもハイプレスの脱出の為の安定度を取ったようにも見えた。マテウスに自由度を与えるFW起用も注目ポイントだった。
前から消す
広島のシャドーに名古屋の両端のセンターバック(HV)とセンター1枚でプレッシャーをかけて外に誘導。展開に対してはコースを限定しに行かないセンター二枚でブロック形成。柿谷とマテウスは内側を切って広島のHV(佐々木、野上)を孤立させる。そこから出るロングボールを回収して自分たちのボールにするという部分が名古屋の守備の形だった。頭から守備のポイントは相手のHVという絵が見えていた。
宮原と丸山がいかに中途半端にプレスに行かずにチャレンジ出来るか?という部分が心配されたが森下、相馬のウイングバックの対人を信じてチャレンジ出来たこと。長澤、阿部がしっかり戻ってスペースを埋めれた事でチャレンジを抜け出されたらウイングバックか中央のセンターバック(ストーン)の守備力勝負の1対1に持ち込むことが出来ていた。ただ、そのウイングバック、中央のセンターバックの対人守備の部分でサントスに持ち込まれたり大外を力でこじ開けられたりすることはあったが。
動く意味を付ける
広島はプレスに行きたいが、そのプレスを無効化したのは長澤の動き。広島のシャドーとセンターの間に立つことで、広島が名古屋の最終ラインにチーム全体でプレスに行くと森島→丸山、長澤→松本と連動する。そうなると広島は稲垣を捕まえる選手がいなくなる。稲垣を後ろ向きでプレーさせる事が名古屋の攻撃を無効化定石となっている中で、稲垣を前向きで置いておくことが出来る形が出来た。ボール展開も守備での出足もいつもより格段にやりやすそうな稲垣が印象的だ。
阿部が青山をピン留めしていたのも稲垣を助けるポイントだった。
ピン留め:ボール保持側の選手が、ボール非保持側の選手の前に立ったり、選手と選手の間に立つすることで、ボール非保持側の選手の動きを制限させるポジショニングを取ること
そして長澤が効いていたのは広島のセンターの脇へ逃げる動きと彼自身の前へ運ぶ力にもあっただろう。相馬が大外で相手を押し込んでると見るや長澤はセンターの脇へ逃げる。ここで長澤の「前へ運べる力」があると長澤を止めに行く必要が出てくる。(放置すると前進されて相馬と長澤、柿谷で崩される可能性がある為)
広島のセンターがスライドして対応するとセンターバックから楔を刺し込むレーンが出来上がる。
26分のシーンは明らかに広島が長澤を嫌がって青山が早く長澤についていったことで相馬から柿谷へのパスコースが空き稲垣から展開。阿部が外→内で走ることで東を止める。森下が大外を走る展開からチャンス!というシーンが見られた。
30分を越えると広島は長澤にシャドーをつけて丸山はある程度捨てる!という形にしていた。相手のシャドーを自分まで引っ張ってきた時点で長澤の細かく継続的に動くポジショニングで相手の大枠を壊していた。
1人へったものの‥‥
1人減った中でも後半の27分付近のプレスの仕方に注目してほしい。押し引きのタイミング、人数、強度。10人でやってるとは思えないような綺麗なチームプレスだった。確実に新しい守備は積みあがっている。
試合後感想
守備の意識のベクトルに目がいきがちな試合だったが、ボールが脱出できない部分も改善していく意欲は見られた。地味に大きい変化はピッチ上で意見を擦り合わせる時に半固定化されていた意見を交わす選手の組合せが増えていた事と、「自分のやりたいこと」と「やって欲しい事」の発信量が増えていた事じゃないだろうか?
点が必要だ!という声があったが、現状ゴール前までのボールの脱出の設計も選手の苦手な部分が邪魔をして曖昧だったのでまず明確なボールの脱出計画が苦手な事を消しながらチームで描けた事がポジティブポイント。
フリックや落としのミスは、今までのレビューでも書いた攻撃でいない所に入る形。の擦り合わせ待ち。そこの場所まで来た事が進歩。
さいごに
「どうしたいの?」という迷走期は脱出しそうな流れ。
「千里の道も一歩から」