グラぽ

名古屋グランパスについて語り合うページ

メニュー

百聞は一見に如かず サッカー選手と動画にまつわる一仮説 #grampus

百聞は一見に如かず サッカー選手と動画にまつわる一仮説 #grampus

2023年に訪れた変化

記事執筆の2023年4月14日現在、名古屋グランパスはリーグで2位につけている。

キャスパー・ユンカーの加入と和泉竜司・米本拓司の復帰があったものの、それ以外はおおむね昨年と同じメンバーである。なのに何故勝てるようになったのだろうか?

既にアルビレックス新潟戦にその兆しのあった「名古屋グランパス封じ」の対策が始まっているため、この先もずっと勝てるとは限らないし、実際勝てなくなるのが今のJリーグだ。

とはいえ、対策、対策の対策、対策の対策の対策、と講じていくことでどんどんとレベルアップしていくのが強いチーム。まず名古屋グランパスは対策が必要なくらいに進歩したことは間違いない。

では何故?変わったのだろうか?

外部から見ている我々からの一仮説をお送りする。

百聞は一見にしかず、とは

百聞は一見に如かず(ひゃくぶんはいっけんにしかず)

ものごとの実際は、耳で聞くよりも、目で見る方がはるかによくわかる、ということ。

[由来] 「漢書―趙充国伝(ちょうじゅうこくでん)」に見えるエピソードから。紀元前一世紀、前漢王朝の時代の中国でのこと。異民族の攻撃に際して対応策を問われた老齢の将軍、趙充国は、「百聞は一見に如かず(何度、報告を聞いたって、実際にその場に行って見るには及びません)」と述べて、自分が現場に駆けつけて指揮を取りたいと願い出た、ということです。

出典 コトバンク

どれだけ言葉を尽くしても、見たほうが伝わる、ということはある。

スポーツ界における大きな変化

スポーツの世界でも言葉で説明するよりも、動画を見て貰ったほうが速い、というのは育成年代から定着しつつある。「百聞は一見にしかず」を実践する企業が勢力を伸ばしているのだ。特に日本では清水エスパルスが導入しているHudl社と高校サッカー年代を中心に広がりを見せているSPLYZA TEAMSの2社がある

Hudlはその主力製品であるスポーツコードを中心とした総合的な分析と意思決定支援を行えるソフトウェアサービス群であり、様々なデータの可視化を行うことができる。

昨年まで在籍していた和田コーチは、試合ビデオから分析を行うプロフェッショナルだったが、ビデオの編集はリアルタイムというわけにもいかず、どうしても出来上がるのは数日後だ。分析できる量にも限界があった。分析の質を向上することが今のJリーグでは急務だった。

Hudlの分析画面をiPadで確認するイメージ
Hudlの分析画面をiPadで確認するイメージ 引用元:Hudl公式サイト

Hudlを使った分析官が行った分析は、コーチらが見ているiPadで試合中にもすぐに確認を行うことができる。ベンチを注目して見ていると、様々なチームで同様に動画の情報をiPadで見ながら分析を監督やコーチが共有しているところことがわかるはずだ。

Hudlの画面例
Hudlの画面例 引用元 Hudl公式サイト

ただ、Hudlのプロフェッショナル向けの製品群をすべて揃えようとするには、ソフトウェアの導入費用はそれほど高くなくても、サービスを運用できる、Hudlに慣れた人材を複数名入れていく必要がある。おそらく人件費のほうが高くなる。現在赤字の続く名古屋グランパスでは、少々ハードルが高い部分でもある。

SPLYZA TEAMSは高校生の部活でも手が届くレベルのデータ分析ソリューションだ

映像分析と、そこにコメントとタグを入れていくことに特化したツールだ。

「このプレーが良かった」「このプレーはこんな結果に繋がった」ということを動画にタグをつけて、集めていく。成功体験を蓄積するのに適している。

それだけでなく「ここではこうすれば良かったのでは?」とプレー判断の向上にも繋がる。

本人に向上心があれば、自分のプレーを見返して、内省とカイゼンに繋げることができるようになった。素晴らしい時代になった。

筑波大学のデータ分析チーム

今年名古屋グランパスには、分析担当コーチとして尚志高校出身、筑波大学でコーチを務めていた佐藤凌輔さんが加わった。

筑波大学ではどんな分析を行っているのか?それがよくわかる記事がこちら。

分析シートの例
分析シートの例

たとえばこんな指標を分析している。

  • 攻撃:Packing Rate、xG(ゴール期待値)、ZONE、PAI(ペナルティエリア侵入)
  • 守備:PPDA、IRO(Intercept Remove Opponents) 、(ZONE、PAI )
  • 攻撃→守備:5秒以内奪取数
  • 守備→攻撃:Fast Break

興味を惹くのは、最後のファストブレイクだ。長谷川健太監督の代名詞とも言えるファストブレイクについての指標はこんな感じで分析されている。

これはカウンター指標で、ボールを奪ってから規定時間内にアタッキングサード(以下A3)までボールを運べた回数を表しています。

「Fast Break」としてカウントされる条件は以下のようになります。

  • ディフェンシブサードで奪ってから10秒以内にA3に侵入
  • 自陣ミドルサードでボールを奪ってから6秒以内にA3に侵入
  • 敵陣ミドルサードでボールを奪ってから4秒以内にA3に侵入
  • A3でボールを奪う

つまりボールを奪ってからいかに時間をかけずにA3までボールを運べたかを評価する指標

おそらく長谷川健太監督のファストブレイクの定義はここに基づくものなのだろう。

ただ、分析フレームワークを見る限り、どちらかというと監督の意思決定支援のためのデータのように見える

名古屋グランパスの変化

名古屋グランパスの変化については赤鯱新報の以下の記事を見て欲しい(有料記事)

さりげなく紹介されているが、トヨスポのこれまで記者席があったところにテントが設営され、練習の最中にも何度もそこに選手が集合していることが観測されている。

どうやらこのテントにはビデオ映像を確認できるモニターが用意されているようだ。練習のなかで実際選手たちがどうプレーできたのかを確認できるようになった、ということだ

選手育成の動画を使ったPDCAサイクル
選手育成の動画を使ったPDCAサイクル

動画を使ったシンプルな指示と、実際にプレーをしてみた様子を映像で分析し、それを見せてフィードバックをする。言葉であーだこーだ言われてもなかなか伝わらなかった選手にもこれならわかりやすい。

素晴らしい指導、素晴らしい理論であっても、相手に伝わらなければ意味がない。伝わるようにする工夫を行ったことが今年序盤の躍進に繋がったのではないだろうか。

長谷川健太監督の2年目は強いから、と、根拠の薄い表現で今年の序盤の好調を説明する向きが多いが、実はこのようにやり方を変えたことが原因であると仮説を立てている。

皆さんはどうお考えだろうか?

About The Author

グラぽ編集長
大手コンピューターメーカーの人事部で人財育成に携わり、スピンアウト後は動態解析などの測定技術系やWebサイト構築などを主として担当する。またかつての縁で通信会社やWebメディアなどで講師として登壇することもあり。
名古屋グランパスとはJリーグ開幕前のナビスコカップからの縁。サッカーは地元市民リーグ、フットサルは地元チームで25年ほどプレーをしている。

Leave A Reply

*

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

Share / Subscribe
Facebook Likes
Tweets
Hatena Bookmarks
Pocket
Evernote
Feedly
Send to LINE