2023年12月3日、J1リーグ最終戦になった柏レイソル戦。
名古屋グランパスは前半柏レイソルの攻撃に苦しんでいた。この試合で仙頭啓矢と並んで中盤を組み、セカンドボールを拾い続けたのが椎橋慧也だった。
柿谷曜一朗のような華麗なテクニックはない
米本拓司のような迫力あるボール奪取もない
稲垣祥のような必殺のセットプレーシュートがあるわけでもない
それでもプロ入り高卒2年目以降、ずっとJ1リーグで10試合以上出場、特に2020年以降はレギュラーで出続けてきた男、それが椎橋慧也選手だ。
なぜ、彼は生き延びてきたのか?
椎橋慧也選手とは
椎橋慧也選手は1997年生まれ、来年27歳です。
千葉県船橋市出身で、地元の公立中学校から市立船橋高校に進みます。名古屋グランパスには市立船橋高校出身者は過去多く在籍しています。中村直志さんや阿部翔平さん、小川佳純さん、和泉竜司選手も市立船橋高校出身です。3年生のときには高校選手権で3回戦で敗退、自身は怪我で交代したあとだけに悔しさもひとしおだったでしょう。
インターハイでは準優勝と、タイトルには無縁でしたが、優秀選手に選ばれていました。
卒業後の2016年、ベガルタ仙台に加入します。実はおそらく勧誘に関わったのが、現在名古屋グランパスの強化部長を務めている古矢武士さんです。2014年にベガルタ仙台に加入後、2015年からは強化・育成部長を務めていました。この頃からの縁になります。
ベガルタ時代の1年目はほぼ身体作りで終わってしまいましたが、2年目からはコンスタントに試合出場を重ねました。2017年は4月にはA契約を勝ち取るなど、順調な滑り出しを見せましたが、チームが2020年に債務超過に陥り、多数の選手が退団する流れになると椎橋も柏レイソルに移籍します。
柏レイソル移籍後は終始レギュラーメンバーとして活躍していました。
椎橋慧也選手の人となり
市立船橋高校時代のエピソードです
『プロ選手になるためにはどうすればいいのか』と自問自答し「技術がなければハードワークをしてチームとして勝つ。目立たないが縁の下の力持ちが大事だということに気付き、そこを目指そう」と自分の役割を導き出した。その後、コンスタントに試合に絡めるようになる
https://myfuna.net/archives/myfunanews/2311funabashinohito
主役というよりも、黒子になれるメンタリティ。
性格は明るく、ムードメーカーになれる選手だそうです。おとなしい選手の多いグランパスには助かりますね。
1分間質疑応答の様子はこちら
特徴は強度の高い守備と、視野の広さ
まずはこの動画を見てみてください。
脚の速さに関するインタビューが面白いので是非観てみて下さい。
直接のアシストになるようなプレーではありませんが、低い位置から前線に通す、鋭いパスが魅力的だということが伝わるでしょう。
これまで名古屋グランパスでは前線にボールを届けるための方法に苦労してきました。
そこで獲得してきたのが2022年の仙頭啓矢であり、2023年の山田陸でした。2人とも低い位置からのパス出しに魅力のある選手です。
しかしながら長谷川健太監督は、中盤の選手に「守備の強度」を求めます。その結果、試合出場時間が少なくなってしまうという結果に陥りました。当然「前線にボールを届ける」という問題は解決できていません。
そうなると考えられるのが「守備の強度がある & 前線へボールを繋げる選手」を獲得するという解決策です。
椎橋慧也選手のプレイングスタイル指標の比較
見て貰うとわかりますが、ボール奪取とカバーエリアに関しては、米本拓司と稲垣祥はリーグでも有数の選手だということです。米本拓司のボール奪取17は偏差値に直すと驚異の75、稲垣祥のボール奪取とカバーエリアの13は偏差値65です。
そこまで行かないまでも、それなりのボール奪取・カバーエリアを持ちながら、若く、そしてビルドアップやパスチャンスが同等以上の選手、というのを求めていたわけです。
思ったほど椎橋慧也の数値が良くないとお思いかもしれませんが、今年柏レイソルは残留争いでギリギリの線を戦っていた、不調のチームだったことを思い出してください。実際2022年や2021年はもっと良い数値を残しています。
上記から、水準以上の守備強度と、パス出しを両立できる選手としての期待ができることがわかります。
椎橋慧也選手が活動する場所
運動量や、活動エリアがどのあたりなのかというところが気になりますよね。
昨年のヒートマップを見てみましょう。左セントラルMFが多かったせいか、少し左気味です。
当然そのあたりはチームも把握しているでしょうから、出場するときは左セントラルMFでの出場が多いかもしれませんね。ですが、右利きですので右での出場も可能と思われます。
Sofascoreのデータ比較
試合出場データの比較
椎橋慧也選手はレギュラーですので、32試合の出場です。試合出場の平均時間は71分ですので、ほぼ米本拓司と同じくらいのイメージで考えれば良いでしょう。
シーズン最初の2試合はベンチメンバーでしたが、その後はほぼ先発をキープしています。
攻撃データの比較
シュートにはあまり積極的ではないことがわかります。シュートのスコアが付いているのは6試合のみ。
ある意味稲垣祥が規格外なだけで、米本も同じくらいの数値ですから、そこまで気にする必要はないかもしれません。
パスデータの比較
ボールに絡み続ける米本拓司と稲垣祥の凄さが伝わる数値です。パスの成功率などはそれほど差はありません。椎橋慧也の平均キーパス(前線に差し込むパス)が少ないのですが、前年の2022は米本・稲垣祥と同等の数値でした。
守備データの値の比較
米本拓司と稲垣祥の平均ボールリカバリー(ボールの支配権を取り返す数)が圧倒的過ぎます。平均タックル数もヤバいですね。これは比べる相手が強すぎるというか・・・
その他のデータの比較
これに関して注目したいのは平均ボールロストの低さですね。同じポジションで、守備に優れているはずの米本拓司・稲垣祥がかなりボールを失っているのがわかります。平均ファールも少なく、クリーンなプレーヤーであることがわかります。
椎橋慧也選手はどう使われるのか?
セントラルMFのポジションを争うことは間違いありません。
ライバルは米本拓司・稲垣祥のツインルンバだけでなく、巧みなポジションでボールを引き出すことに長けた内田宅哉、恵まれた体躯を活かしてボールを収め、時にミドルを打てる吉田温紀、どこからでもドリブルでボールを剥がせる和泉竜司、ダイナミックな上下動ができる重廣卓也と沢山います。
誰しも限られたレギュラーの枠を虎視眈々と狙っているはずです。
さいごに
仙頭啓矢・山田陸が挑んで破れなかったのが稲垣祥・米本拓司の厚い壁です。ですが稲垣祥・米本拓司も衰えることが考えられる以上、いつかは世代交代をしていかなければなりません。そのための2の矢(2つ目の手段)となるのがこの椎橋慧也の獲得だと思われます。
米本拓司や稲垣祥を「食えるか?」
これが実現するかどうかで、2024年が変わって来そうです。期待しましょう。