2024シーズンプレビューの振り返り
2024年シーズンは、勝ち点50、15勝5分18敗、得点44、失点47、得失点差-3で終わりました。
当たり前ですが、これは満足できる成績ではありません。
シーズン開始当初の体制は正直言って不安しかありませんでした。そりゃそうです。堅守を誇った守備ラインがほぼ居なくなってしまったのですから。
以下の2024シーズンのプレビュー記事(2024年2月22日公開)で書いた新シーズンを測るポイントは以下の通りでした。
- キャスパーと山岸で良い相互作用を作れるか?
- 森島司・和泉竜司はトップ下というより3トップとセントラルMFの両方を状況に応じて埋める役目だと思うが、そこをうまく機能できるか?
- 2CMFの最適な組み合わせが見つかるか?
- 3CBの最適な組み合わせが見つかるか?
ポイント1.キャスパーと山岸で良い相互作用を作れたか?
そもそも、キャスパー・山岸が揃って先発できた試合は、2試合しかありませんでした。
28節のアウェイ湘南戦。はじめて先発でキャスパー・ユンカーと山岸祐也が揃いました。
しかし2人の間でかわされたパスは10本未満。30分から45分の間は78%45分で2人とも交代になってしまいました。
もう1試合は33節アウェイ福岡戦です。
この試合ではスタートから60分間名古屋が圧倒しました。
この試合では素晴らしかったのはパス456と、今シーズンの平均を大きく上回っており、特にこの試合では山中亮輔、森島司とそしてアンカーっぽく振る舞っていた菊地泰智が素晴らしい働きを示してくれました。ただ、61分で計画的交代。そこからバランスを崩して自滅してしまいました。
この試合は負けたものの、この後への期待を持たせて貰える展開でした。ただ、この組み合わせが試されたのはこれが最後でした。
- 山岸のポストで前を向いてキャスパーが攻める。
- 高い位置で山中・中山が受けてマイナスのクロスをあげてキャスパーや山岸が決めきる。
これが2024年の名古屋グランパスの構想だったはずです。
そんな構想がやっと形になりはじめたところでの敗戦で、それが失われてしまった。
これが個人的には最大の残念ポイントです。
ポイント2:森島司・和泉竜司をどう使うか?
グラポはシーズン前に、3412を予想しており、そこを森島司・和泉竜司でポジションを分け合うと考えていました。
しかし結果的に3412にたどり着いたのは、29節新潟戦までかかりました。
グランパスが4節から28節まで採用していた3421の特徴
- 一般的な3トップはウイングと呼ばれるプレーヤーがサイドをえぐり、クロスでチャンスを創ったりカットインしてチャンスに絡む
- 名古屋グランパスの2シャドーは1トップと近い距離で前を向いてチャンスに絡む(ウイングの役割はウイングバックが担う)
3421は一般論で言うと、1トップの選手はどちらかというと2シャドーを活かすタイプの選手ということになり、そうなると2シャドーには決定力が必要になります。
残念ながらシャドーをもっとも多く務めていた森島司らはチャンスメイクに優れているものの、それほど決定力に優れているわけではありません。永井謙佑でさえ6ゴールです。
それよりも大きな問題はウイング役をやるべきウイングバックが高い位置を取れていなかったことです。
ウイングバックが高い位置を取るにはパターンが2つあります
- 相手の守備ラインが高く、スペースがある状態でロングボールを出せるとき
- 前線でボールが収まり、ウイングバックが上がる時間を作ってくれたとき
名古屋の1トップの選手では、キャスパー・ユンカーはボールを収めるタイプではありません。
パトリックは比較的ボールを受けることができますが、そこでキープをして時間を作るのが得意なほうでもありません。
それで2トップにして森島司や和泉竜司を前線に置き、プレス要員としてだけでなく、WBが高い位置を取れるようにするようにしました。前半戦と後半戦ではWBの平均位置がまったく違います。(DAZNのデータなので、スクリーンショットを貼れないことをお許しください)
特に野上結貴はほとんどFWと並ぶくらいの位置を取ることができるようになりました。
プレビューとは違った形でしたが、森島司・和泉竜司という「上手いプレーヤー」を活かすことができるようになったということは良い形でした。
ポイント3:最適なCMF2人の組み合わせは見つかったのか?
今期、CMF(ボランチ)で起用されたのは先発に限れば、稲垣祥33試合、椎橋慧也28試合、米本拓司9試合、森島司2試合、菊地泰1試合となります。
結果的に移籍になってしまいましたが、当初は椎橋慧也と米本拓司、稲垣祥で3人でローテを考えていたようです。
しかしそのローテーションをしようとしたことが米本拓司のプライドを傷つけたのでしょうか。かつて橋本拳人にポジションを奪われたときのことがフラッシュバックしてしまったのでしょうか。
結果として移籍することになり、そのあとは特別なケースを除いて稲垣祥・椎橋慧也の固定になってしまいました。
疲労はかなりのものだったはずで、いつ怪我に繋がってもおかしくなかったと思います。
結果として、ローテーションを回すことには失敗したわけで、菊地泰智や森島司のCMFも結局緊急時のオプションにしかならなかった、というのが結論です。
ポイント4:3CBの最適な組み合わせは見つかったのか?
前年から残っているCBは河面旺成と野上結貴だけ。野上結貴と内田宅哉は右WB兼任というなかで誰が
三國ケネディエブス35試合、河面旺成23試合、ハチャンレ20試合、内田宅哉14試合、野上結貴13試合、吉田温紀7試合、井上詩音1試合、稲垣祥1試合という結果に終わりました。
最終的に最適な組み合わせは左から、「河面旺成ー三國ケネディエブスー内田宅哉」という結果になりました。しかし河面旺成の怪我や内田宅哉の出場停止などもあり、それを固定できない試合のほうが多かったことが最大の誤算でしょう。
なぜこの3人だったのか、という考察は以下の記事で書いています。
まとめると、名古屋グランパスのCBに求められる要素は以下の4つです。
- ラインを上げて裏を突かれてもカバーできるスピード
- WBが戻らず、数的同数・数的不利でも守り切れる守備力
- 高い位置にいるWBにパスを届けられる正確なロングパス能力
- 攻撃参加した際にセカンドボールを拾えて、それを攻撃の選手に繋げるショートパス能力(チャンスクリエイト能力)
優先順位としては希少な左利きCBの河面旺成にはスピードがあまりないため、右CBと中央CBには絶対的なスピードが求められ、3人ともブロック・タックルそしてデュエルに強い選手でした。
既に以下の記事で新たに加わった宮大樹・佐藤瑶大選手のデータを紹介しました。
攻撃特化型CBとも言える佐藤瑶大は特殊な例ですが、どういう選手を当てはめていくのかという選手像は明らかになったと思われます。
続きは2025年正月に、後編「グランパスの攻撃は改善されたのか?」