2025年1月14日、名古屋グランパスアカデミーの体制が発表されました。
今回の変化では少し気になるところがあったのでそれをまとめます。
2025年アカデミーの指導体制の変化サマリー
2024年の指導体制は18名でしたが、2025年は19名と1名の増員がありました。
簡単にまとめると、以下のようになります。
- 山口素弘GMはトップチームに専念
- 中村直志サブディレクターがディレクターに昇格
- 井口U18コーチがサブディレクターに昇格
- アカデミースカウトが増員
- 徳島ユース前前監督・IDPコーチの玉城航コーチがU18指導陣に着任
なんでアカデミースカウトを増員したの?
ながらくアカデミーのスカウトは元名古屋グランパス、元中京高校監督の岡山哲也さんが務めていました。
しかし近年ではFC多摩、U16日本代表の吉田湊海選手(2024年、1年生ながらにプレミアリーグU18イースト得点王)の獲得に失敗など、東海地方外の選手の獲得がうまくいかないケースが目立っていました。
今回増員された安楽さんは、関西トレセンのスタッフ経験もあり、現在も関西のクラブチームのコーチをしていた方で、名古屋以西のスカウトを担当することになるのではないでしょうか。
アカデミーに選手が加入すると、余程の事情がないかぎりU18までは持ち上がります。クラブの継続的強化のためにもアカデミーに良い選手を集めることは重要です。
東海地方では現在岐阜の下部組織も強くなってきており、そこに対抗するためにもスカウティングを強化する必要があったのだと思われます。
IDP(個別育成計画)ってなんなの?
現在Jリーグのアカデミー組織では、IDPという個別育成計画を実施することが盛んです。
特に冨安健洋選手(アビスパ福岡→アーセナル)の育成にこのプログラムがいち早く適用されていたこと、イングランドサッカー協会が育成を立て直すために導入したことでも知られています。
今回井口コーチに代わって加入した玉城コーチは、徳島ユースでこのIDPコーチというのを担当していました。これはIDPに詳しい人を加入させることで、名古屋グランパスアカデミーの個を伸ばしていこうという取り組みなのではないか、と考えました。
世界に通用する選手の育成とは
[選手や指導者の資質を紡ぎ、ワールドクラスの選手を輩出することを目的に、Jリーグは今年2月に育成重点施策「PROJECT DNA」を発表した。Jリーグの「2030フットボールビジョン」の一環として立ち上げられたもので、選手だけなく、指導者、レフェリーなども含め、「世界で最も人が育つリーグ」を目指す。
「PROJECT DNA」の重要戦略としてふたつの柱が挙げられる。ひとつは各クラブのアカデミー組織がより機能するための「アカデミー・パフォーマンス・プラン」。もうひとつがヘッドオブコーチングを養成する「JHoC」(ジェイホック)である。] https://www.jleague.jp/news/article/14694
このアカデミー・パフォーマンス・プランの中核を担うのが「IDP(個別育成計画)」です。
継続的な強化を行うために、トーナメント戦だけでなくリーグ戦を実施することで重要な高いレベルの試合経験を増やすことは、高円宮プレミアリーグU18という形で実現しました。
しかし、リーグ戦を実施することで、チームとしての成績を上げることにフォーカスされている傾向があるのでは?と考えます。
トップチームに上がれる選手は毎年0人から多くても4人。名古屋グランパスU-18から過去戦力化された選手といえば、吉田麻也選手、菅原由勢選手、藤井陽也選手、吉田温紀選手といますが、たとえば柏レイソルやサンフレッチェ広島のようにアカデミー出身者だけでスターティングメンバーの大半を占める、なんていうことはできていません。
「個の能力が高くなければトップチームでは活躍できない」というのが厳然とした事実です。
チームとしての強化と同時に個の強化も必要ということが求められています。
単なる個別指導とIDPはなにが違うの?
中高生向け学習塾などでは、個別指導というのが盛んです。たとえば大学受験では受験科目はある程度決まっており、どれくらいのレベルの成果を出せば良いのか、ということがある程度わかっています。
なのでそこから逆算して足りない部分を積み上げれば良い、ということになります。
しかしサッカーはそこまで単純ではありません。細かく言えばポジションの種類は10種類以上にもわたりますし、同じポジションでもどういう選手、という選手像もさらに細かく分けることができそうです。
編集長の理解では、IDPは「どういう選手になりたいのか」=Willに対して、「現状のできること」=Can、その差分を「すべきこと」=Mustという3点を明らかにして、なにができるか、それによってどういう選手になりたいのか、ということを明確にしていく手法だと考えます。
単なる個別指導との違いはこの「どういう選手になりたいのか」という選手像を定めるところから始まるというところではないでしょうか。これは人それぞれなので、パターン化して指導をラクすることはできません。本当の意味での個別指導ということになります。
これを編集長の前職ではWill Can Mustシートというものにまとめており、IDPシートはそれとかなり類似しているものになっています。
具体的なWill Can Mustシートは次の通りです。
実際に欧州で使われているIDPシートは、ポジション別に項目は異なるものの、作りとしてはほぼ同じものだと思っています。
[IDPに沿って1年間のトレーニングを行うと、各選手は振り返りの個人面談を行います。
面談は、選手・保護者・コーチを含めた3者が参加し、「(昨年と比較して)伸ばせた部分はどこだったのか?」「どうしてそれが実現できたのか?」「来年はどこを伸ばすか?」をコーチと擦り合わせて、IDPをブラッシュアップさせます。 ] https://newspicks.com/news/8772039/body/ より引用
どのような選手になりたいのかというWillをもとに成長を図っていく。
本当の意味でトップチームで、そして世界で通用する選手を育成するということに本腰を入れ始めたのだな、と感じました。
こういった育成は、数ヶ月で結果が出るものではありません。長いスパンで見て行く必要があります。
ですが、やるべきことをやる。そういうことができる組織であることを誇りに思います。
今後の名古屋グランパスアカデミーの選手たちに期待しましょう。