![成績が悪いとき、一般的な組織ではどう対処するものなのか 2025年J1リーグ第6節 東京ヴェルディ戦 [マクロ] レビュー #グランパス #grampus GR659](https://i0.wp.com/grapo.net/wp-content/uploads/2025/03/%E6%88%90%E7%B8%BE%E3%81%8C%E6%82%AA%E3%81%84%E3%81%A8%E3%81%8D%E3%80%81%E4%B8%80%E8%88%AC%E7%9A%84%E3%81%AA%E7%B5%84%E7%B9%94%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%81%A9%E3%81%86%E5%AF%BE%E5%87%A6%E3%81%99%E3%82%8B%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%AA%E3%81%AE%E3%81%8B.png?fit=776%2C381&ssl=1)
いまさらかよ!という声が聞こえてきそうですが。中断期間の暇つぶしにお読み下さい。
ショートの振り返り
負けているときにはなんらかの手を入れることが普通です。この試合、判っていたことは
- ヴェルディはハイプレス・ショートカウンターで来ること
- グランパスは前線にボールを収めることができる選手がいないので持ち上がるしかない
という2点です。
クロスも徳元がいませんし、そうなると中山・浅野がえぐってのクロスに期待するしかありません。
まずハイプレスで来ることが判っていましたので、出口を整備します。佐藤からは椎橋・稲垣祥・三國、河面からは椎橋・森島・和泉です。
三國を高い位置に置いたことで、中山の初期配置はほぼFW同様の位置に置けました。※ポイント1
森島司はシャドーの位置が初期配置ではあったものの、前後左右によく動き、中盤が空きがちなグランパスのなかでボールを繋ぐ役割を果たしてくれました。※ポイント2
前半よく攻めることができたのはこういった配置の影響が大きかったのではないでしょうか。
後半は三國・中山のサイドに山見を投入され、プレッシャーをかけられます。
守備の時間が多くなると中山の良さは活かせません。徐々に押し込まれる時間帯が増え、それでも攻め上がったタイミングで不用意なロストから同点、セットプレーもあそこでドフリーにしてしまい逆転されてしまいました。
ファーストプラン以降の工夫が足りていなかった、あるいは対抗策を打てなかったと、という風に評価しても良いでしょう。
たしかにこの試合のベンチワークはもう少しできたことがあったのではないかと思います。
勝てない原因はなんなのか?
リーグ戦6試合で2分4敗、これはかなり厳しい結果です。
勝てない理由はなんなのでしょうか?
選手のスキルが低い?
たとえば失点シーンのいくつかは、ミスが原因で発生しているな、と思わされるところがあります。
ただし、サッカーのなかでミスが一切発生しないということはありません。ミスがなかったら極論、得点するまで相手にボールが渡らないことになってしまいます。大なり小なりミスは発生するものです。
かつてピクシー ドラガン・ストイコヴィッチは「技術的なミスは許せるが、戦術的なミスは許せない。」と語りました。
自分も同意で、技術的ミスがほとんどだと思っています。戦術的なミスではないものがほとんどですから、そこを責めてもな、と考えます。
監督の戦術が悪い?
名古屋グランパスの戦い方は2パターン
- 対保持チーム:前線からハイプレス・ショートカウンター
- 対非保持チーム:即時奪回で相手の守備が整わないうちに攻める(ファストブレイク)
これ自体はとてもオーソドックスな戦術で、なにも難しいものではありません。
ハイプレス・ショートカウンターについてはある意味確立された戦い方なので問題ないと思います。
敢えて言うなれば、ハイプレスをできるFW・攻撃的MFの選手の数が足りないくらいでしょうか
対非保持チームの戦いかたについては、即時奪回(ボールを失ったときに高い位置で奪い返して速攻する)をやるには対保持チームの戦い方と共通のメンバーでいけますが、問題は奪回したあとに持たされてしまった場合です。
たとえば2025年3月25日の日本対サウジアラビアを見ていただければわかるように、守ると決めたチームを崩すのは代表レベルでも難しいです。しきりにスルーパスでポケットを取りにいきましたが、スペースがなさすぎて、中村敬斗と久保建英・伊東純也が何回か形を見せられただけでした。
現時点での対非保持の試合で起きた問題は
- 即時奪回できずにカウンターでハイプレスの裏を使われ、いきなりDFライン前にボールを通されてやられる(セレッソ戦)
- ボールを持たされて相手を押し込んだときに、ミスでショートカウンターを食らう(ヴェルディ戦など多数)
の2点です。
(対保持・非保持関係ない問題としてはセットプレーの守備がありますが、それはセットプレー担当の河野コーチなんとかして、という感じです)
即時奪回できない場合というのは前にハイプレスで枚数をかけているわけなので枚数が少なくなり、守備が難しいというのは確かです。
これも2025年3月25日の日本代表の試合を見ていると、即時奪回に失敗するとカウンターを食らい、板倉や鈴木彩艶のチカラでなんとか無失点に抑えたというだけでした。
確立できている対保持チームの戦いかたは、保持のチームがどんどん減っている以上、難しくなっています。
対非保持の戦い方は、ゲーム的な言い方で言えば、まだレベル5くらいで、ちょっとミスをするとすぐ死んじゃうくらいな感じです。
そこを詰められないのは責任があるかもしれません。ただミスがらみの失点が多い以上、自分としては監督の責任だけとも思えないのです。
怪我人がでているのに補強しない強化部・GMが悪い?
怪我人がでているのは確かです。特にキャスパー・ユンカーと山岸祐也の2人を欠いているのはしんどいところです。純粋なFWは永井謙佑だけとなり、彼の負荷も高くなっています。単純に永井謙佑の負荷だけでなく、攻撃の種類が単調になってしまうことは相手にとって守りやすくさせてしまいます。
細谷真大・武藤嘉紀へのオファーが報道されたときは、名古屋グランパスの現状分析が良く出来ているな、と感心させられました。やはり前線からの守備と運動量、チャンスクリエイト力を兼ね備えた選手が必要だということは間違いありません。
しかし2人は獲得できず、結果来たのはマテウス・カストロでした。
怪我明けでまだコンディションも万全でない彼に大きな期待をすることは酷ですが、そもそも求めている選手スタイルと一致していません。
過去記事で、アジャストしてくれるのではという期待をしていましたが、そう簡単には行かないようです。
現状ではマテウス・カストロを活かす形が必要であり、それはもちろん去年とは別の形を意味します。
キャンプ後半からそこに切り替えたところも今シーズンを難しくさせている一因だと思っています。
ただ、狙った選手が獲れないことはよくあることです。違ったタイプの選手を獲ったといっても、マテウス・カストロはJ1クラブからもオファーがあったようですし、他のチームに行かせるわけにもいかないということがあったでしょう。
そこが難しいところです。
監督を解任することの難しさ
前述の通り、この試合は監督・コーチの側からできたことはあったはずですので、少なくとも「こうできたはず」という批判はあって良い状態でした。
チーム戦術の仕込みなどがそれほど綿密に行われないNPBの感覚ですと、調子が悪くなったらすぐ解任!となります。
しかしサッカーはそう簡単ではありません。未だに人気の高いマッシモ・フィッカデンティさんも、途中就任では結果を残せていません。
1勝3分4敗。理由は、仕込みができなかったからだと思われます。
特にフィッカデンティさんのサッカーは、センチ単位で守備のコントロールを求める緻密さを求めるものであり、途中就任ではその緻密さを仕込むことができなかった、というところが想像できます。
監督解任をしてうまく行くケースはどんなときなのか?
1試合1試合を見ていて、明らかに戦術や試合のマネージメントがおかしすぎるような場合を除けば、負けがこんだら解任とはならないのがJリーグのチームだと思います。
ただ解任したあと、劇的にチーム状況が改善することもあります。ほとんどの場合、それは監督と選手の関係性が破綻している場合です。
そうじゃなければだいたいの場合は慎重に行動するものです。
成績が悪いとき、一般的な組織ではどう対処するものなのか
ワンマン社長のいる私企業だったら、「おまえはクビだ!」とすぐに解任するかもしれませんが、一般的な企業ではできることを洗い出して、安易に人を変えるよりもできること=対処をしっかりとしていきます。
1. 現状分析とデータ収集
現状の問題の正体を数字(定量情報)と現場感覚(定性情報)の双方から把握し、どこにボトルネックがあるのかを明確にします。
- 定量データの精査: コンウェンさんがよくまとめてくれているようなデータの推移を確認し、異常値や状態の変化を見抜きます。
- 定性情報の収集: 部門内のミーティング、個別面談、アンケート調査などを通して、選手や監督から現状の課題や「現場感覚」を聞き取ります。
- ポイント: 数値だけでは見えない、モチベーションや組織風土、コミュニケーションの問題にも注目する。
2. 根本原因の特定
現状の悪化がどこから発生しているのか、表面上の不振の背後にある根本的な問題を洗い出します。
- 原因分析ツールの活用: 勝てない問題の本質(リーダーシップの不足、業務プロセスの非効率、外部環境の変化、リソース不足など)を洗い出します。
- 内部・外部要因の洗い出し: ・内部要因:組織の文化、リーダーシップ、業務フロー、選手のスキルレベル ・外部要因:戦術トレンドの変動、競合の動向、ジャッジの変化
3. 監督・コーチとの戦略的対話
監督と現状や課題について率直に議論し、共通認識を形成して改善への道筋を共有します。
- 現状認識の共有: 集めたデータと分析結果を基に、監督・コーチと現状を冷静に共有します。 質問例: 「チームで最も大きな障壁は何だと考えられますか?」「現状のリソース配分についてどのように感じていますか?」
- 意見交換と原因の共通認識形成: 監督・コーチの意見を尊重しつつ、改善のための第一歩として、双方で課題の優先順位を決め、今後の方向性を協議します。
4. 改善計画の策定
課題に対する具体的なアクションプランを策定します。達成すべき目標、施策、担当者、期限などを明確に設定し、実行可能な計画に落とし込む。
- 具体的な目標設定: 具体的に、短期的な目標、シーズン単位での目標など、定量・定性的な目標を明文化します。 ※ SMARTな目標設定(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)が有効です。
- アクションプランの立案: 下記のような形で、具体的な施策、担当、期日を整理します。
- リソースの再配分: 具体的施策ごとに必要な資源(人材)を洗い出し、不足部分には補強や配置転換を検討する。
補足:
- SMART目標の設定
- Specific(具体的): 例えば、「今後3ヶ月で10試合中4勝する」「失点を30%減らす」など。
- Measurable(測定可能): KPIや数値目標を設定し、達成状況を定期的に評価する。
- Achievable(達成可能): 現実的なリソースと状況を考慮した上での目標設定。
- Relevant(関連性のある): 全体戦略や経営方針に沿った目標であること。
- Time-bound(期限): 具体的な達成期限(例:1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月など)を設定する。
※SMARTの5項目には諸説あります
5. 実行と進捗のモニタリング
アクションプランを実施します。
もし予定よりも進捗が遅れている場合や、予定外の障害が発生した場合には、原因を迅速に分析し、計画の修正(例えば、施策の優先順位の変更、新たなアクションの追加)を行います。
- 施策の実施: 策定したアクションプランを速やかに実行に移します。短期間で対策が打てるもの、長期的な施策など、段階的に着手することが大切です。
- 定期的なレビュー: 週次のミーティングで、現場からのフィードバックと数値データに基づく進捗状況をチェックします。必要に応じて、計画の修正や追加対策を検討します。
- フィードバックループの確立: チーム全体で情報を共有し、成功事例や課題を横展開できるような仕組みを構築します。
6. 結果の評価と次のステップの決定
改善策の実施効果を定量・定性的に評価し、今後の方針や追加改善策を決定します。
- 成果の総括: 一定期間施策を実施した後、事前に設定した目標と実績を比較し、改善効果を評価します。
- 次の対応策:
- 目標達成に近づいていれば、さらなる成長戦略や、成果を定着させるための継続策を講じます。
- 改善が見られない場合は、首脳陣の刷新など、より根本的な対策も視野に入れます。
最後に
安易に人を変える、というアプローチばかり取っていたら組織のなかになにも根付きません。
選手や監督はいつかは去っていきますが、「キチンとした改善サイクルを回す」という文化はチームに残すことができます。
現在のチームは、おそらく上記でいえば3:監督・コーチとの戦略的対話、4:改善計画の策定などをこの中断期間に行っていると思います。
その改善サイクルの進捗を見守っていきましょう。