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「プロサッカー選手の契約、登録および移籍に関する規則」の改定がもたらすもの #JLeague

「プロサッカー選手の契約、登録および移籍に関する規則」の改定がもたらすもの #JLeague

「プロサッカー選手の契約、登録および移籍に関する規則」が改定されます。

その規約改正がもたらす影響はどのように現れてくるのでしょうか。

規約改正の概要

2025年7月17日に決議されたJリーグの規約改正案は、選手契約のあり方からシーズン日程、移籍ルールに至るまで、多岐にわたる大きな変更を含んでいます。

主な変更点は、「契約制度の簡素化と待遇改善」「チーム編成の自由度向上」「シーズン日程の国際標準化」の3つに集約できます。

契約制度の変更点 📝

  • プロA・B・C契約の撤廃: これまで選手の出場時間などに応じて区分されていた複雑な「プロA・B・C契約」がなくなり、シンプルな「選手契約」に一本化されます。
  • 最低基本報酬の設定: 2026年7月1日以降、リーグのカテゴリーに応じてプロ選手の最低年俸が保証されます。
    • J1: 480万円
    • J2: 360万円
    • J3: 240万円
  • 初年度の報酬上限の変更: 初めてプロ契約を結ぶ選手の年俸上限が、これまでの460万円(プロC契約)から1200万円に引き上げられます。
  • 支度金の簡素化: これまで家族構成によって上限が異なっていた支度金が、一律で500万円を上限とするシンプルな形に変更されます。

登録・編成ルールの変更点 ⚽

  • 選手登録人数の上限撤廃: これまでプロA契約選手は原則27名までという上限がありましたが、この枠が撤廃されます。ただし、2026年7月1日以降、Jクラブは20名以上のプロ選手を登録する必要があります。
  • 外国籍選手枠の撤廃: Jクラブのトップチームにおいて、登録できる外国籍選手の人数に制限がなくなります
  • ホームグロウン制度は継続: 自クラブの育成組織で育った選手を一定数登録する「ホームグロウン制度」は、2025年シーズンと同様の基準で継続されます。

シーズン・移籍ルールの変更点 📅

  • 秋春制(シーズン移行)へ: 2026-27シーズンから、ヨーロッパの主要リーグに合わせた秋春制(7月開幕、翌年6月閉幕)へ移行します。
    • 移行措置として、2026年2月1日から6月30日までの短い「2026年前半シーズン」が設けられます。
  • 登録ウインドー(移籍期間)の変更: シーズン移行に伴い、選手の移籍・登録が可能な期間も変更されます。
  • 国際移籍手続きの明確化: 海外クラブとの選手移籍に際し、FIFAのオンラインシステム「TMS」を使用することが明記され、手続きの国際標準化が進められます。

規約改正の全体的な狙い

今回の規約改正は、Jリーグをより国際的な基準に適合させ、競争力を高めることを目的とした大規模な変革であると推察されます。主な狙いは以下の3点に集約できます。

  1. 国際標準化(グローバリゼーション): シーズンをヨーロッパの主要リーグに合わせた秋春制へ移行し 、それに伴い登録ウインドーも変更すること 、そしてFIFAの規則に準拠したトレーニング補償金制度の改正 などは、海外クラブとの選手の移籍を円滑にし、Jリーグの国際的なプレゼンスを高める狙いがあります。国際移籍手続きにおいてTMS(Transfer Matching System)の使用を明記したこと も、この流れを裏付けています。
  2. 競争原理の強化とチーム編成の自由度向上: これまで存在したプロA契約選手の登録上限(通称27名枠)や、J1クラブにおける外国籍選手の登録人数制限を撤廃する ことで、クラブ間の競争を活性化させようとしています。これにより、各クラブは資金力や戦略に応じて、より自由なチーム編成が可能になります。
  3. 選手の待遇改善とプロフェッショナリズムの確立: プロA・B・C契約という複雑な区分を撤廃し、単一の「選手契約」にまとめると同時に 、リーグカテゴリに応じた最低基本報酬額を設定したこと は、プロ選手の立場と生活基盤を安定させ、サッカーに専念できる環境を整えることを目的としています。これは、プロ選手という職業の価値を高め、リーグ全体のレベルアップを目指すものです。

個々の選手が受ける影響

選手のキャリアパスや契約条件に、光と影の両側面から大きな影響が及ぶと考えられます。

【ポジティブな影響】

  • 収入の安定化: J1で年額480万円、J2で360万円、J3で240万円という最低基本報酬額が保証されるため、特に若手選手や下位カテゴリの選手の経済的な基盤が安定します 。
  • 契約の透明化: 複雑だったプロA・B・C契約の区分がなくなり、よりシンプルで分かりやすい契約形態となります 。
  • 移籍の自由度の向上: 契約更新に至らなかった場合、これまではクラブが半ば義務的に選手を移籍リストに登録していましたが、改正後は選手の希望に応じて登録される形式に変わります 。

【ネガティブな影響・懸念点】

  • 熾烈なポジション争い: クラブの選手登録上限や外国籍選手枠が撤廃されることで、チーム内の競争が激化します。特に日本人選手は、実力のある外国籍選手との厳しいポジション争いに直面することになります。
  • プロ契約のハードル上昇: 最低年俸が設定されたことで、クラブがコストを考慮し、プロ契約を結ぶ選手をより厳選する可能性があります。
  • 若手トップ選手の年俸抑制: 初めてプロ契約を結ぶ選手に対して、初年度の報酬上限がC契約の480万から年額1200万円に変更されるため 、これまではC→A契約変更で大きな数値に変えられた将来を嘱望されるトップクラスの若手選手にとっては、初年度の待遇が抑制される形となります。

個々のクラブが受ける影響

クラブの経営戦略やチーム編成方針に、大きな変革が求められます。

【ポジティブな影響・新たな戦略】

  • 柔軟なチーム編成: 選手登録数の上限や外国籍選手枠がなくなることで、各クラブは独自のフィロソフィーや財政規模に応じた自由なチーム作りが可能になります 。
  • 強化戦略の多様化: 資金力のあるクラブは国内外からスター選手を集めてチームを強化する一方、他のクラブは育成組織(アカデミー)を重視し、ホームグロウン選手を中心としたチーム作りを目指すなど、戦略の多様化が進む可能性があります。

【ネガティブな影響・経営課題】

  • 人件費の高騰: 最低報酬額の導入により、クラブが負担する総人件費が増加する可能性があります。特に経営の安定しない下位カテゴリのクラブにとっては、経営を圧迫する要因となり得ます。
  • 戦力格差の拡大: 資金力がチームの戦力に直結しやすくなるため、ビッグクラブと中小クラブとの間の戦力・財政格差がさらに広がる懸念があります。
  • 育成の重要性の増大: 選手獲得競争が激化する中で、自前で優秀な選手を育てるアカデミーの価値が相対的に高まります。ホームグロウン制度は維持されるため 、育成への投資がクラブの持続的な成長に不可欠となります。

リーグ全体が受ける影響

Jリーグの構造や競争環境、国際的な地位に大きな変化がもたらされるでしょう。

【期待される効果】

  • リーグの競技レベル向上: トップクラブに国内外の有力選手が集中することで、リーグ全体の、特に上位争いのレベルが向上し、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)など国際大会での好成績が期待されます。
  • 国際市場との連携強化: 秋春制への移行により、ヨーロッパ市場との選手の移籍が活発化します。これにより、Jリーグがアジアにおける才能のハブ、あるいはヨーロッパへの登竜門としての地位を確立する可能性があります。
  • 魅力の向上: スター選手の増加やハイレベルな試合展開は、観客動員数の増加や放映権料の上昇に繋がり、リーグ全体のビジネス規模を拡大させる可能性があります。

【懸念される課題】

  • 戦力の一極集中と競争の固定化: 特定の資金力豊かなクラブに戦力が集中し、「一強多弱」の構図が固定化されることで、リーグ全体の競争の面白みが損なわれるリスクがあります。
  • 「育成のJリーグ」からの変質: これまで培ってきた、リーグ全体で若手を育て、地域に密着するという文化から、より資金力と競争原理を優先するリーグへと性格が変化していく可能性があります。
  • 若手有望選手の海外流出増加: グローバル化を進めることで、入り易くなるということは出やすくなる、ということで、若手有望選手の海外流出増加が進むと思われます。

グランパスに今回の改定はどう影響するのか?

グランパスにとって、今回の改定で一番ネガティブな影響は、若手有望選手の海外流出が増加するであろうことです。

ここ数年だけでも、森下龍矢・藤井陽也・貴田遼河・相馬勇紀と若手有望株が海外移籍をしてしまっています。今後も活躍した選手がすぐに海外に抜かれる可能性は高いと考えられます。

初年度の年俸制限は、ベースになる給与を固定されることになるので年俸の上昇を阻害します。ですから海外移籍への歯止めにはなりません。

秋春制になることで、この流れはさらに加速すると思われるので、もう若手有望選手の海外流出は防げないと切り替えた方がよいでしょう。

本当に有望な選手はきちんと移籍金を取ることができています。私たちもタダで貰ったものってなんとなく雑に扱ってしまいがちですが、タダで移籍する選手よりお金を払った選手が優先されるのは当たり前です。きちんと移籍金を取る契約を結ぶことが重要です。

また、トータルの人件費は高騰することになると思われます。チームとして儲けを出していかないと、この先のJリーグを生き抜いていくことはできないでしょう。我々はそこに貢献していかないといけません。

ここから先はより弱肉強食の文化傾向が強まることになります。名古屋グランパスがそれを生き抜いていくことができるように応援しましょう。

About The Author

グラぽ編集長
大手コンピューターメーカーの人事部で人財育成に携わり、スピンアウト後は動態解析などの測定技術系やWebサイト構築などを主として担当する。またかつての縁で通信会社やWebメディアなどで講師として登壇することもあり。
名古屋グランパスとはJリーグ開幕前のナビスコカップからの縁。サッカーは地元市民リーグ、フットサルは地元チームで25年ほどプレーをしている。

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