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[コラム] #森島司 のセントラル(中央)はなぜ必要だったのか #grampus

今年の夏から名古屋グランパスに起きた変化は3つありました

  1. 中山克広の左WB固定
  2. 森壮一朗の右WB固定
  3. 森島司のセントラルMF固定

この3点です。そこを少し考察していきましょう。

長谷川健太監督の選手起用の隠れたパラメーター

本題に入る前に、1点、確認しておきたいことがあります。

なんでこの選手使われないんだろう、という選手がいます。もちろんミスが重なって使われない場合もありますが、そうじゃない選手が2人います。

キャスパー・ユンカー選手と、河面旺成選手です。

2人に共通するのは、毎年のように怪我離脱の期間があるということです。

2人とも実力には疑いはありません。ただ怪我をすると、どうしてもコンディションを戻すにも時間がかかり、一定期間出場できないことになります。

「1年を通じて無事に出場し続けてくれる」ということがチームの柱となる選手に求めている隠しパラメーターであると推察されます。

2025年名古屋グランパスの問題点

さて、長谷川健太監督のグランパスで問題と思われることがいくつかあります。

  • 豪華なFW陣までボールが届かない

ということです。

それには理由があって

  • 理由1:セントラルMFの稲垣祥+椎橋慧也が前線にパスを供給できない
  • 理由2:サイド経由でしかボールが持ち上がれない
  • 理由3:GK/CBからのパスが不正確なロングパスになる

主に理由3のせいでいつもグランパスのパス成功率は低いままです。

理由2が現状のグランパスがボールを前線に供給する方法になっています。WBとシャドーの選手がサイドで絡み、相手PAまでボールを供給します。

そしてそれが、森壮一朗の右WB固定の大きな理由です。

サイズがあってスピードのある森は、裏に出されたボールに追いついてマイボールにすることができます。

サイドの深い位置でボールを持てることで相手のサイドの選手を押し下げ、中盤やDFラインの負担を軽減させることができます。

ただし、それは森が対面の相手に勝てることが前提になります。ファジアーノ岡山戦では佐藤龍之介に勝てず、そのメリットが活かせませんでした。

単純に守備やクロスなどでは野上結貴などのほうが上ですが、森壮一朗を使うメリットを取った、ということでしょう。

深刻なのは理由1です。中央のMFである稲垣祥・椎橋慧也はどちらかというと守備寄り。ハードワークがウリの選手たちです。奪取のポイント、カバーエリアのポイントは高くても、パスの数値はそこまで高くありません。

ここに「パス出しに優れた選手を置きたい」と考えるのは不思議ではありません。

理由1が解消できれば「理由2:サイド経由でしか前線にボールを渡せない」も解消でき、そして「理由3:不正確なロングパス」にも頼らないで済むようになり、名古屋グランパスの大きな課題が解消できそうです。

パス出しができるセントラルMFへの道のり

この試みは、実は何年も前から試みられてきました。2024年の最初に試されたのが稲垣祥・森島司・和泉竜司の3センターでした。しかし多くの人が覚えている通り、まったく機能しませんでした。

米本拓司の凄さと、怪我の問題

実は2023年、名古屋グランパスが近年でもっとも調子がよかった年は、キャスパー・ユンカーの加入やマテウス・カストロの円熟だけでなく、セントラルMFのポジションがうまくいっていたということもありました。そこには米本拓司がいたからでした。

彼は

  • 広いカバーエリア
  • パス出し
  • ドリブルでボール持ち上がり
  • 奪取も得意

と、理想的な選手だったと思われます。米本・稲垣祥のペアは最強でした。

ただここで思い出して欲しいのが最初に挙げた「隠しパラメーター」です。米本拓司は間違いなく最強のセントラルMFでしたが、年に何回も怪我での離脱がありました。

当初、椎橋慧也を獲得したのは山田陸・仙頭啓矢の代わりなのでは、と私は想像していたのですが、今考えてみると、無事是名馬という選手を求めていて、と推察できます。

しかし椎橋慧也の獲得と起用は、米本拓司のプライドを傷つけてしまったのかもしれません。

本当の理由は当事者しかわかりませんが米本拓司はシーズン途中で移籍してしまいました。これで中央経由の崩しが難しくなってしまいました。

椎橋慧也の奮闘

米本拓司の移籍で、名古屋グランパスのセントラルは椎橋と稲垣祥しかいない状況になりました。

上で紹介した記事の通り、椎橋の良さとして一発を狙うパスを通せる、ということがありましたが、守備の負担からか、だんだんその数も少なくなっていきました。

加藤玄によるパス出しができるセントラルMF再チャレンジ

2025年、加藤玄が1年前倒しの加入をします。彼の良さはCB出身であることから守備力もあり、パス出しに優れるところです。

しかし、川崎フロンターレとの開幕戦で大敗したことで、このチャレンジは頓挫してしまいます。

森島司のセントラルMF再チャレンジ

森島司の良いところは、ボールが収まる、テクニックのあるところだと思います。それでもうまくいかなかったのは長谷川健太が以下のように語っています。

(有料記事より一部引用)まず守備のところで抜けた選手を見失うことが多かったんですけど、そういうシーンが減ってきたっていうところ。球際で1回じゃなくて2回、3回と行けるようになってきたっていうのは、非常にボランチとして使いやすくなったというか。コースを切ったりもできなかったんで、スクリーンが上手くかけれなかったりもあったりしましたけど、そういうことが自然と、しっかりとクサビのコースに対してスクリーンかけられたりとか、そこから寄せて、ついていって、ということもできるようになってきましたし。

https://www3.targma.jp/akasyachi/2025/09/21/post130711/

これにより、もともとの森島司とセントラルMFとしての素養が合体させることができるようになった、と云っていいでしょう。

数値で見る森島司の良さ

実は森島司の数値が極端に良くなったのは、川崎フロンターレ戦からです。あそこからなにかを掴んでくれたのではないでしょうか。

Sofascore調べ、CMF3人のスタッツ比較

森島司のデータはここ4試合の平均です。うち、2試合が退場者を出したツラい状況だったことを考えてもパス成功率が高く、成功パス数も高い、そしてキーパス(ゴールにならなくても「シュートに繋がったパス」が3人のなかで一番高いです。

それだけでなくデュエルの数も稲垣祥なみに多く、勝率も良い。これもシャドーをやっていた時期よりもかなり高くなっています。

椎橋慧也よりも森島司が今起用されている理由は、この数値を見ればわかるはずです。

これからの名古屋グランパス

いままでの名古屋グランパス対策は、中盤中央の選手を窒息させ、サイドに追い込んでクロスさせる。中央は高くて強い選手を置いておけばゴールになることはほとんどない、というようなパターンがあったかと思います。

藤井陽也が入り、最終ラインからのパスが安定し、それを中盤で森島司が受けて捌けるようになると、名古屋グランパス対策は単純ではなくなります。

サッカーは基本的に相手に守備の選択肢を増やさせることが大事。そうすれば相手は迷い、守備のポイントをしぼれなくなる。

森島司がこのままセントラルMFとして成長を続けてくれれば、グランパスの状況は大幅に改善されるはずです。

森島司の起用で中山克広が一番恩恵を受けているように思われます。森島司が左セントラルになってから左WB中山克広が活きるようになりました。信じて走り抜ければボールが出てくる、という信頼がなせることなのかもしれません。必ずしも森島がパスを出しているわけではありませんが、迷いなく裏を駆け抜けることができるようになりました。

そして森島司を教師として、加藤玄ら次世代の選手も鍛えられるはず。

これからに期待しましょう。

About The Author

グラぽ編集長
大手コンピューターメーカーの人事部で人財育成に携わり、スピンアウト後は動態解析などの測定技術系やWebサイト構築などを主として担当する。またかつての縁で通信会社やWebメディアなどで講師として登壇することもあり。
名古屋グランパスとはJリーグ開幕前のナビスコカップからの縁。サッカーは地元市民リーグ、フットサルは地元チームで25年ほどプレーをしている。

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