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オフシーズンのためにサッカーのサポーターが知っておきたい 移籍と契約 のこと 2026年版 前編 #Jリーグ #grampus - 2

新しい契約のしくみ

規約などは基本的に以下の2箇所にまとめられています。

Jリーグの規約は前者にまとめられていますが、移籍や選手契約については後者にまとめられています。

プロサッカー選手の契約

プロサッカー選手の契約は、JFAなどは、こちらに従う必要があります。

Jリーグでプレーするサッカーの選手は「日本サッカー協会選手契約書」を結ぶ必要があります。

この契約書は2026年度より、新たな契約書に切り替わる予定です。

新契約書(ABCの契約種別なし)
新契約書(ABCの契約種別なし)

最も大きな変更点は、「複数年契約に対応した報酬欄の改定」「契約更新手続きに関する条項の削除」、および「電子契約・電子署名への対応」です。

1. 報酬の記載形式(単年か複数年か)

報酬(基本報酬)の記載方法が、単年ごとの記載から、複数シーズンを一覧できる形式に変更されました。

  • 旧契約書(第4条):
    • 「総額」および「月額」を文章形式で記入するスタイルで、基本的に単年または更新ごとの記載を想定した形式でした。
  • 新契約書(第5条):
    • 「1シーズン目」から「6シーズン目」までの記入欄がある「表形式」に変更されました。
    • これにより、長期契約を結ぶ際の各年度の報酬額を契約当初から明記できるようになっています。

2. 契約更新手続きに関する条項の削除

旧契約書にあった「契約更新の通知期限」や「移籍リストへの登録」に関する具体的な条項が、新契約書の本文からは削除されています。

  • 旧契約書(第12条 第2項・第3項):
    • クラブは協会の定める期限までに更新通知を行わなければならない。
    • 通知を怠った場合、クラブに契約意思がないとみなされ、選手は「移籍リストへの登録」を請求できるという権利が明記されていました。
  • 新契約書:
    • 当該条項がなくなりました。第4条で「有効期間」の日付を指定するのみとなっています。
    • ※この変更により、契約満了時の取り扱いについては、別途JFAの規則(プロサッカー選手の契約、登録及び移籍に関する規則など)や、個別の合意に委ねられる形になった可能性があります。解釈の情報は今後もウオッチしていきます。

3. 有効期間の条文位置の変更

契約期間を定める条文の位置が変更され、より冒頭に近い位置に配置されました。

  • 旧契約書: 第12条「有効期間および更新手続き」として、契約書の後半に配置されていました。
  • 新契約書: 第4条「有効期間」として、義務・禁止事項の直後、報酬の直前に移動しました 7

4. 署名欄および形式(電子契約・エージェント情報)

契約締結の証拠(署名・保管)に関する規定が現代化され、エージェント情報の詳細化が行われました。

  • 電子契約への対応:
    • 旧契約書: 「正本2通を作成し…それぞれ1通ずつを保管」と紙媒体を前提としていました。
    • 新契約書: 「本書の電磁的記録を作成のうえ電子署名を施し、各自保管する」という文言が追加され、電子契約が可能であることが明記されました
  • フットボールエージェント情報:
    • 新契約書: クラブ側・選手側双方のエージェント署名欄に、新たに 「FIFA フットボールエージェント No.」 を記入する欄が追加されました。

5. 条文番号のずれ

「有効期間」の条項移動や「保管」条項の統合に伴い、条文番号が一部変更されています。

  • 旧契約書: 全16条
  • 新契約書: 全15条
  • (例)「費用の負担」は旧第5条→新第6条、「休暇」は旧第6条→新第7条へと順次繰り下がっています。

新しい契約書テンプレートは、長期契約を前提とした報酬管理デジタライゼーション(電子署名)、FIFA規則(エージェントID)への対応が進められた形式となっています。一方で、旧第12条にあった更新通知義務の条項が削除されている点は、選手・クラブ間の契約終了時のプロセスにおいて重要な変更点と言えます。

契約期間の考え方

1. 基本的な契約期間のルール

JFA(日本サッカー協会)の規則により、選手の標準的な契約期間は以下のように定められています。

  • 期間: 2月1日 ~ 翌年1月31日(2026年度からは、ここが夏春制に書き換わります)
  • 最長: 5年

2. なぜ複数年契約でも「契約更新」が出るの?

ここで疑問が浮かびます。 「複数年契約を結んでいるはずの選手も、毎年『契約更新』のお知らせが出るのはなぜ?」

実はこれ、日本のプロスポーツの先駆けであるプロ野球(NPB)の慣習が影響しています。 プロ野球の統一契約書が「1年単位」を基本としているため、「複数年契約であっても毎年契約更改(見直し)を行う」というスタイルが定着しました。Jリーグもこの慣例にならい、形式上1年ごとの契約書作成や確認を行うことが一般的になっていました。

まだ実運用が始まっていないのでわかりませんが、新フォーマットは複数年を前提にしているため、この習慣が変わる可能性もあります。

3. 「本当の条件」は別の場所に

表向きの「統一契約書(プロA契約など)」に書ける内容はごくわずかです。 年俸や条件面の詳しい中身は、通常「付帯契約(個別契約)」という別の書類で細かく設定されます。

【付帯契約に含まれる主な内容】

  • インセンティブ: 出場数や成績に応じたボーナス
  • 移籍補償金(違約金): 移籍する際に発生する金額の設定
  • 特別条項: 最低試合出場数の保証や、レギュラー確約など(稀なケース)
標準的な移籍補償金の規定
標準的な移籍補償金の規定

能田達規先生のサッカー漫画『となりの代理人』第2話に、海外移籍が決まった若手選手のために代理人が「今日は契約書作りで徹夜だ!」と意気込むシーンがあります。

実はここで彼らが必死に作っているのが、先ほど説明した「付帯契約」なのです。たとえ複数年契約の最中であっても、毎年の交渉のメインはこの「付帯契約(条件面)」の見直しになります。

【豆知識:複数年契約の見分け方】 選手が複数年契約かどうかを推測するヒントがあります。それは「契約更新発表の時期」です。

  • 12月中旬ごろまでに発表される場合複数年契約の可能性が高い

これは、ベースの契約期間が残っており、付帯契約の微調整だけで済むため、サクッと早期に発表できるからだと考えられます。(名古屋グランパスは残念ながら年明け一括発表なのでこの手が使えません)

次のページに続く(Next. 契約のステークホルダーたち)

About The Author

グラぽ編集長
大手コンピューターメーカーの人事部で人財育成に携わり、スピンアウト後は動態解析などの測定技術系やWebサイト構築などを主として担当する。またかつての縁で通信会社やWebメディアなどで講師として登壇することもあり。
名古屋グランパスとはJリーグ開幕前のナビスコカップからの縁。サッカーは地元市民リーグ、フットサルは地元チームで25年ほどプレーをしている。

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