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オフシーズンのためにサッカーのサポーターが知っておきたい 移籍と契約 のこと 2026年版 後編 秋春制はなにをもたらすのか? #Jリーグ #grampus

オフシーズンのためにサッカーのサポーターが知っておきたい 移籍と契約 のこと 2026年版 後編 秋春制はなにをもたらすのか? #Jリーグ #grampus

前編はこちら: オフシーズンのためにサッカーのサポーターが知っておきたい 移籍と契約 のこと 2026年版 前編 #Jリーグ #grampus | グラぽ

長いけど、損はしないので是非読んでください!

はじめに

ドキュメントや規約の変更については、前編でお伝えした通りです。 この規則・規約の変更が、今後どんな未来に繋がるのかをはっきりと言い切ることはできません。

私の理解がJリーグの中の人からすると「わかってないなー」なんて言われる可能性もあると思っています。

 © 大川ぶくぶ/竹書房 より引用
© 大川ぶくぶ/竹書房 より引用

もしかすると誰も想像もしなかった未来が待っているかもしれません。

そうはいっても、今回は自分の知識の範囲で考えられる予想をまとめてみました。あくまで「予想」に基づく後編であることを、あらかじめご理解いただければと思います。

2026年の規則変更はなにをもたらすのか?

今回の新しい規則は、FIFAの「選手の地位及び移籍に関する規則(Regulations on the Status and Transfer of Players: RSTP)」に沿うことを目指していると考えています。これは、単にカレンダーを統一するだけの話ではありません。

Jリーグのクラブ経営は長い間、日本独自の「紳士協定」によって守られてきました。 たとえば、従来のJリーグ規約では、他クラブの選手と交渉を始める際に、現所属クラブへ事前に「書面による通知」を行うことが義務付けられていました。これにより、クラブ側は選手の契約を守るための対策を取ることができていたのです。

しかし、ヨーロッパのクラブと同じルールに合わせることになると、これまで守られてきた仕組みが維持できなくなる可能性があります。

2025年シーズンの問題点

日本独自のシステムは、以下のような構造的な不利益を生んできました。

  • 戦力維持の困難性: 欧州クラブが新シーズンに向けて戦力を整える7〜8月には、Jリーグのクラブが主力選手を引き抜かれるリスクに常にさらされていました。
  • 移籍金交渉の劣位性: 選手本人の海外挑戦への意欲が高い場合、シーズン途中であってもクラブは放出を認めざるを得ず、結果として足元を見られた移籍金になりやすい状況がありました。
  • 獲得の障壁: 逆にJリーグが欧州から選手を獲得しようとすると、欧州シーズンを終えたばかりの選手は疲労が大きく、さらに日本の高温多湿な夏にすぐ適応しなければならないため、大物選手の獲得が難しいという問題がありました。

これら3つの問題は、新しいシーズン制度によって解消される見込みです。

しかし、良いことばかりではありません。前述した「書面による通知」が不要になる可能性が高いからです。

  • FIFA基準(新制度) FIFA RSTP第18条第3項では、契約満了の6ヶ月前(残り半年)になると、選手は現所属クラブへの通知や許可を必要とせず、他クラブと自由に交渉し、契約を結ぶ権利を持つと定められています。

この変更は、「クラブの秩序」よりも「選手の労働移動の自由」を優先するというFIFAの方針が、日本にも適用されることを意味しています。

「交渉開始通知」がなくなることで起きる変化

これまでの「交渉開始通知」制度では、現所属クラブが「どのクラブが自チームの選手を狙っているのか」を把握することができました。いわば、一種のインサイダー情報が共有されていた状態です。しかし、2026年以降は、この透明性が失われることになります。

タンパリングの合法化

FIFAのルールでは、契約満了の6ヶ月前から選手に接触することは、タンパリング(不正な事前接触)ではなく、正当な権利として認められています。

  • 水面下の攻防: 代理人は、契約満了が近づく1月1日(6月満了の場合)を待たずに、極秘でマーケット調査を進めます。そして1月1日になった瞬間、複数のクラブから正式なオファーが届くことになります。
  • クラブの防衛策不能: 現所属クラブとしては、選手が普段通り練習場に来てトレーニングをしていても、その裏でライバルクラブとすでに合意している可能性を否定できません。これはチームマネジメントにおいて、疑心暗鬼を生む要因となります。

事例シミュレーション:主力選手の流出シナリオ

【シナリオ:J1有力クラブの主力MF(26歳・日本代表クラス)の場合】

  • 旧ルール下:
    • 契約は1月31日までとなっていました。前年夏に海外クラブからオファーがあっても、クラブ側は「優勝争い中」であることを理由に、放出を断りやすい状況でした。
    • 国内の他クラブによる引き抜きに対しては、高額な移籍金(違約金)を設定することで、事実上ブロックすることが可能でした。
  • 新ルール下(2026年以降):
    • 契約は6月30日までと仮定します。
    • 1月1日: 契約満了まで残り6ヶ月となり、海外クラブや国内のライバルクラブと自由に交渉できるようになります。
    • 1月15日: 選手はドイツのクラブと「来季(7月)から加入する」という内容でプレ契約(Pre-contract)を結びます。
    • 2月〜5月: 選手はJリーグの0.5シーズンを「消化試合」としてプレーすることになります。怪我を避けようとしてパフォーマンスが落ちるリスクもあります。

このシナリオでは、クラブは「戦力ダウン」と「移籍金ゼロ」という二重の損失を受けることになります。これを避けるためには、1年前の段階で選手を売却するか、非常に高額な年俸を提示して契約延長するしかありません。

2025年-2026年オフの移籍タイムライン(旧制度最後の流れ)
2025年-2026年オフの移籍タイムライン(旧制度最後の流れ)

クラブ経営への経済的・戦略的な影響

移籍金ビジネスモデルの確立

Jリーグが「世界トップレベル」のリーグを目指すためには、これまでの放映権料やスポンサー収入だけでなく、「選手を移籍させることで得られる収入」を大きな収益の柱として育てていく必要があります。 シーズンが「秋春制」へ移行することは、こうしたビジネスモデルへと舵を切る大きなきっかけとなります。

ROI(投資対効果)を意識したクラブ運営

これからのクラブ経営では、選手を単なる戦力としてだけでなく、クラブの大切な「資産」や「投資対象」として、よりシビアに管理していくことが求められます。

  • 選手を迎え入れる時(獲得) 支払った移籍金(取得コスト)を契約年数で割り、1年あたりの経費(償却費)を明確に計算します。
  • 選手が活躍している時(保有) 選手の市場価値がどのように変化しているかを常にチェックします。活躍によって価値が高まった「一番の売り時」を逃さないように見極めることが重要です。
  • 選手を送り出す時(売却) 計算上の価値(帳簿価格)を上回る金額で売却することで、クラブに利益(売却益)をもたらします。

これまでは「チームの勝利に欠かせないから残す」という純粋な強化の視点が中心でした。しかし今後は、そこに「価値が下がる前に売却する」という経営・財務の視点が、より強く関わってくることになります。

複数年契約と契約解除条項(バイアウト条項)の標準化

選手の保有権をしっかりと守り、クラブの財産として維持するために、契約の形はこれから大きく変化していくと考えられます。

  • 複数年契約の導入 中心選手や将来有望な若手選手に対しては、3年から5年といった「長期契約」を結ぶことが不可欠になります。これまでの単年契約は、ベテラン選手やバックアップを担う選手などに限定されるようになるでしょう。
  • 契約解除条項(バイアウト条項)の設定 選手が長期契約に応じるための条件として、「〇〇ユーロ(約〇〇億円)以上の移籍金が提示された場合は、移籍を認める」という取り決め(バイアウト条項)を設けることが一般的になります。
    • メリット: クラブはあらかじめ決めた最低限の移籍金を確実に受け取ることができ、複雑な交渉の手間も省けます。
    • デメリット: 設定した金額を超えるオファーが届いた場合、クラブが「残ってほしい」と望んでも、強制的に引き抜かれてしまいます。そのため、この金額をいくらに設定するかが、経営陣の腕の見せ所となります。

財務ガバナンスとリスク管理の徹底

多くのJリーグクラブが余裕のない経営状況にある中で、移籍市場がより自由で活発になることは、選手の人件費が高騰するというリスクもはらんでいます。

  • コスト増大への懸念 契約満了による「フリー移籍」が増えると、獲得するクラブ側は移籍金がかからない分、選手の年俸や代理人への手数料を高く設定しがちになり、結果として全体のコストが跳ね上がる傾向があります。
  • Jリーグによる支援と基金の役割 降雪地帯のクラブを支援するための「100億円基金」など、リーグ主導のセーフティネットも準備されています。しかし、これらはあくまで全体の環境を整えるためのもので、個別のクラブが抱える赤字を肩代わりしてくれるわけではありません。
  • FFP(ファイナンシャル・フェアプレー)の視点 今後、クラブライセンス制度において、売上に対する人件費の割合や債務超過の状態が、より厳しくチェックされる可能性があります。計画性のない無理な補強は、最悪の場合「ライセンス剥奪」という大きなリスクを招くことにもなりかねません。

用語解説:財務ガバナンス:クラブが「お金を正しく、計画的に使っているか」をチェックし、管理する仕組みのことです。 具体的には、一部の人の判断だけで無謀な投資(高額すぎる選手の獲得など)をして経営を破綻させないよう、客観的なルールに基づいてブレーキをかけたり、透明性の高い経営を行ったりすることを指します。Jリーグが各クラブに課す「クラブライセンス制度」などは、このガバナンスを強化するための代表的な仕組みの一つです。

代理人(フットボールエージェント)の役割と影響力拡大

2024年11月に改正された「JFAフットボールエージェント規則」は、2026年の市場開放に向けた準備と言えます。代理人の役割は、単なる「契約の事務手続き係」から、選手の「キャリアを設計するパートナー」、さらには「市場を動かす存在」へと大きく変わっていきます。

エージェントが主導する市場の仕組み

クラブ同士の交渉が中心だった時代から、エージェントが情報をコントロールする時代へと移り変わります。

  • オークションのような交渉の発生 有力なエージェントは、担当する選手の契約満了が近づくと、国内外の複数のクラブに極秘で連絡を取り、より良い条件を提示させるようになります。
  • パッケージ取引の増加 エージェントが特定のクラブと強い信頼関係を築き、監督から主力選手まで、自分の顧客でチームを構成するような「パッケージ契約」を提案するケースも増えるかもしれません。

外資系フットボールエージェントとの協力とライバル関係

シーズンが欧州と同じ「秋春制」になることで、世界的な大手エージェント会社(Wasserman, Gestifute, CAA Stellarなど)が日本市場へ本格的に参入するきっかけとなります。

  • 提携: 日本の代理人は、欧州に強いパイプを持つ海外大手と手を組み、日本人選手の海外移籍をさらに加速させる可能性があります。
  • 対立: 一方で、日本の有望な若手選手を巡って、国内と海外の代理人の間で激しい争奪戦が起こることも予想されます。名古屋グランパスではピサノアレクサンドレ幸冬堀尾選手のような若い日本代表選手の争奪戦が予想されます。
  • 手数料: 世界的なルールで代理人への手数料には上限が設けられましたが、移籍金そのものが高騰するため、クラブが支払う手数料の総額は増えていく傾向にあります。

選手育成と若手への影響:才能を守り育てる戦略

相対年齢効果(RAE)」の緩和と教育システム

秋春制への移行には、日本の学校制度(4月入学)によって生じる「早生まれ(1〜3月生まれ)の選手が体格などの面で不利になりやすい」という問題を解消する側面もあります。

  • 仕組み: シーズンが8月始まりになれば、学年の区切り(4月)とシーズンの区切りがずれます。これにより、これまでの「同じ学年の中での差」による選抜の偏りが少しずつ解消されることが期待されています。
  • 学生サッカーとの調整: 高校選手権や大学リーグとの日程調整という課題はありますが、プロを目指す選手にとっては、若いうちから欧州と同じリズムで活動できることは大きなプラスとなります。

若手選手の「青田買い」と育成への還元

18歳になった瞬間に解禁される海外移籍に対し、クラブはどう対応していくかが鍵となります。

  • アカデミーからの引き抜き: Jリーグの育成組織(アカデミー)にいる有望な選手に対し、欧州のクラブが18歳の誕生日を待って直接アプローチするケースが増えるでしょう。
  • トレーニングコンペンセーション(TC): 23歳以下の選手が移籍する際、その選手を育てたクラブ(Jクラブ、街クラブ、高校など)に支払われる「育成補償金」のことです。国際基準が適用されれば、これまでの国内基準よりもはるかに大きな金額(数千万円規模)が動くようになり、育成に力を入れるクラブの貴重な資金源となります。
  • 連帯貢献金: 選手が移籍金(違約金)を伴って移籍するたび、その金額の5%が過去に所属した育成組織に分配されます。移籍金が高騰すれば、それだけ過去の所属先への還元額も増える仕組みです。

若手選手の成長を促すための戦略

JFAは2026年に向けたナショナルチーム編成(U-23など)を見据えています。若手選手にとって、2026年の移行期は大きなチャンスとなります。

  • 出場機会の増大: 0.5シーズンや、主力流出後の穴埋めとして、若手の抜擢が進みます。
  • 期限付き移籍の活用: FIFAの新レンタル規制(貸出人数の制限など)に準拠しつつ、出場機会を求めて下位リーグや提携クラブへ武者修行に出る動きが、より戦略的に行われるようになります。

用語解説:相対年齢効果(RAE):生まれた月の違いが、身体能力の差として現れ、その後のスポーツキャリアに影響を与えてしまう現象です。特に成長期の子供たちにおいて、4月生まれと3月生まれでは体格差が大きいため、早生まれの選手が評価されにくいという課題があります。

用語解説:トレーニングコンペンセーション(TC: 選手を「育てた」クラブへの感謝金のような制度です。12歳から21歳までその選手を教育・訓練したクラブに対し、その選手が初めてプロ契約を結んだ時や移籍した時に支払われます。

Jリーグがこれから目指すべき姿とは?

欧州中堅リーグ(ベルギー、オランダ、ポルトガル)のようなモデルへ

Jリーグがこれから目指す、あるいは時代の流れとして自然と近づいていくモデルは、欧州の「セリング・リーグ(育成型リーグ)」のようなスタイルではないでしょうか。

  • ビジネスモデルの変化: 才能ある選手を安く発掘して育て、高く売却する。クラブ経営の柱は、リーグからの放映権料以上に「移籍金による収益」が支えることになります。
  • スカウティングの拡大: 才能を探す目は、国内だけでなく全世界(南米、アフリカ、アジアなど)に向けられます。
  • Jリーグの立ち位置: これまでは「アジアの選手にとってのゴール(最終到達点)」でしたが、今後は「欧州へ羽ばたくための登竜門」としての機能が強まります。これを「主力が抜けてしまう」と悲観するのではなく、「次世代のスターが育つリーグ」という新たな魅力として捉え直せるかがカギになりそうです。

2026年以降の世界を生き抜くには?

2026年以降、Jリーグの移籍市場は大きく様変わりするはずです。これまでの日本独自の「守られた市場(紳士協定的な調整)」から、世界基準の激しい競争原理へと移行していくでしょう。 最初は少しずつ変化し、ある日突然、期待の若手スターが引き抜かれる衝撃をきっかけに、一気に怒涛のような変化が押し寄せる、そんな未来が予想されます。

この変化は、クラブや選手、代理人、そして私たちファンも含めた、すべての関わる人たちに「意識のアップデート」を求めてくることになるでしょう。

クラブ経営への提言:GM機能をもっと高度に

こうなってくると、もはやこれまでの「現場の強化担当者」の頑張りだけでは対応しきれなくなります。次のような専門家を結集した、高度な「GMチーム」の編成が不可欠です。

  1. 法務のプロ: 契約書の条項ひとつで数億円が動く世界です。国際的なスポーツ法に精通した担当者が常に目を光らせておく必要があります。
  2. スカウト・データ分析: 主力が引き抜かれてもすぐに穴を埋められるよう、世界中の選手データを常に更新し、「次の候補」を即座にリストアップできる体制が求められます。
  3. 資産管理: 選手を「資産」として捉え、契約年数や市場価値をリアルタイムで把握し、「いつ売るのがベストか」という売買タイミングを見極める力が重要です。

ただ、名古屋グランパスに関しては坂本亮史スカウトの退任でスカウト部門のパワーダウンというニュースもありましたね。このタイミングでの決断が、今後どのようにクラブ経営やRTSPへの対応、チーム編成に作用していくのか。クラブが描く「これからのスカウティングの形」がどのようなものになるのか、じっくり見守っていきたいポイントです。

リーグ全体の展望:痛みを乗り越えた先にある成長

短期的には、きっと「痛み」も伴うでしょう。 主力選手の流出や、愛着のある「バンディエラ(生え抜きスター)」とのお別れ、あるいは契約トラブルの多発……。体力の弱いクラブにとっては、経営が厳しくなる懸念もあります。

ですが、長期的にはポジティブな未来も描けます。Jリーグが世界の移籍市場のサイクルに組み込まれることで、海外からの外貨を獲得できたり、世界基準のタレントが日本に入ってきたり、そして日本代表クラスの選手が欧州で当たり前に活躍するようになったりといった成果を得られるはずです。

「優先交渉権」という守られた温室から出て、厳しい荒野でどうたくましく生き残るか。2026年は、Jリーグが新たな生態系を築くための、大きな「分水嶺」となるでしょう。

前編はこちら。5ページと長いけど、読んでね。

付録:FIFA「選手の地位及び移籍に関する規則(RSTP)」とは?

FIFA「選手の地位及び移籍に関する規則(RSTP)」は、サッカー界における「世界共通の移籍・契約の憲法」のようなものです。

1. 契約の安定性と遵守(最も重要な原則)

選手とクラブが結んだ契約は、原則として期間満了まで守らなければなりません。

  • 契約の尊重: 契約期間中に、一方的に契約を解除することはできません(「正当な理由」がある場合を除く)。
  • 契約期間: 原則として最小1年、最大5年まで。
  • 保護期間 (Protected Period): 28歳未満の選手は契約から3年間、28歳以上は2年間、特に厳重に保護されます。この期間内の不当な契約解除には、スポーツ上の制裁(出場停止や補強禁止)が科されます。
  • 【重要】自由交渉の解禁 (Bosman Rule準拠): 契約満了の6ヶ月前になった時点で、選手は現所属クラブの許可なく、他クラブと自由に交渉・契約することができます。

2. 未成年者(18歳未満)の保護

「子どもを商品のように扱うこと」を防ぐため、非常に厳しい制限があります。

  • 国際移籍の禁止: 原則として、18歳未満の選手の国際移籍は禁止されています。
  • 例外: 以下の3つのケースのみ認められます。
  1. 両親が「サッカー以外の理由(仕事の転勤など)」でその国へ引っ越す場合。
  2. EU/EEA圏内での16歳〜18歳の移籍(住居や教育の保証が必要)。
  3. 国境付近(自宅から50km以内かつクラブから50km以内)での移籍。

3. 育成クラブへの金銭的還元

選手を育てたクラブ(特に資金力の乏しい中小クラブや街クラブ)が、正当な対価を得られる仕組みです。

  • トレーニング・コンペンセーション (育成補償金):
    • 選手が「初めてプロ契約を結んだ時」や「23歳になるまでの移籍」の際に、新しいクラブが、過去に育成したクラブ(12歳〜21歳の期間)へ支払うお金。
  • 連帯貢献金 (Solidarity Mechanism):
    • 契約期間が残っている選手が移籍金(違約金)を伴って移籍する場合、移籍金総額の5%を、12歳〜23歳まで所属していた全クラブに分配する仕組み。ビッグマネーが動くたびに、過去のクラブにも恩恵があります。

4. 移籍期間 (登録期間) の厳守

シーズン中、いつでも好きな時に選手を獲得できるわけではありません。

  • 年2回のウィンドウ: 各国サッカー協会は、年に2回だけ選手登録期間(移籍ウィンドウ)を設けます。
    • 第1登録期間: シーズン開幕前(最大12週間)。
    • 第2登録期間: シーズン途中(最大4週間)。
  • 例外: 契約のないフリーの選手は、期間外でも登録できる場合がありますが、原則はこの期間内のみです。

5. 代表チームへの招集義務

国とクラブの利益調整のためのルールです。

  • 拘束力: FIFAが定めた「国際Aマッチデー(インターナショナル・マッチカレンダー)」には、クラブは選手を代表チームに派遣する義務があります。
  • 拒否不可: 怪我などの正当な理由がない限り、クラブは招集を拒否できません。

この規則の目的は、「契約の秩序を守りつつ、選手の移動の自由を保証し、かつ若手育成にお金が回るようにすること」です。

About The Author

グラぽ編集長
大手コンピューターメーカーの人事部で人財育成に携わり、スピンアウト後は動態解析などの測定技術系やWebサイト構築などを主として担当する。またかつての縁で通信会社やWebメディアなどで講師として登壇することもあり。
名古屋グランパスとはJリーグ開幕前のナビスコカップからの縁。サッカーは地元市民リーグ、フットサルは地元チームで25年ほどプレーをしている。

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