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#鈴木陽人 は 金子拓郎・ルーカス フェルナンデスになれるのか? #grampus

#鈴木陽人 は 金子拓郎・ルーカス フェルナンデスになれるのか? #grampus

昨年末リーグ戦デビューを果たした鈴木陽人。彼に関する報道が増えています。

ミニゲームでは連続でゴールを挙げ、監督から「ブラボー!」の声がかかったそうです。

「はい、けっこう声もよくかけてもらうので、そこはいい感じかなって思います。自分は自信持って楽しくプレーできてるんで、そこもいいかなと思います」

https://x.com/akasyachitargma/status/2010689117106168068?s=20

彼の強みは圧倒的スピードとドリブル、そしてカットインしてのシュートだと思います。

主な主戦場はおそらくサイド。ミシャ式戦術ではウイングバックと呼ばれるポジションです。

鈴木陽人についてはプロ入りが発表されたときに以下のような記事で紹介しています。

ミシャ式戦術におけるウイングバックの定義と重要性

ミハイロ・ペトロヴィッチ監督(通称ミシャ)、彼はサンフレッチェ広島、浦和レッズ、そして北海道コンサドーレ札幌と、彼が指揮を執ったクラブはいずれも独特の攻撃的なスタイルを確立し、多くのファンを魅了してきました。この「ミシャ式」と呼ばれるシステムにおいて、戦術の生命線であり、最も過酷かつ高度なタスクを課されるポジションが「ウイングバック(以下WB)」です。

可変システムのメカニズムとWBの負荷構造

ミシャ式戦術の根幹は、攻撃時と守備時でシステムが流動的に変化する「可変システム」にあります。

  • 守備時(リトリート時): 5-4-1(あるいは5-3-2)のブロックを形成し、スペースを消して守ります。
  • 攻撃時(ビルドアップ時): ボランチが最終ラインに落ちる「サリーダ・デ・バロン(出口を作る動き)」をスイッチとして、3バックの両脇(ストッパー)がサイドバックのように開き、両WBが高い位置を取ることで「4-1-5」または「3-2-5」のような超攻撃的陣形へと変形します。

この変形プロセスにおいて、ピッチ上の誰よりも長い距離を移動し、かつ戦術的な責任を負うのがWBです。彼らは守備ラインの構成員(DF)としての規律と、攻撃の最前線(WG/FW)としての破壊力を、数秒の間に切り替える能力が求められます。この構造的な宿命が、後述する驚異的なフィジカルデータへと直結しています。

求められる圧倒的な走力

ミシャ式のWBを論じる際、避けて通れないのが「スプリント回数」と「総走行距離」です。これらは単なる体力の指標ではなく、ミシャ式というOSが正常に稼働しているかを示すバロメーターでもあります。データは、ミシャ式のWBがJリーグの平均的なサイドプレイヤーとは一線を画すアスリート能力を要求されていることを明確に示しています。

スプリント回数における「異常値」の常態化

Jリーグでトラッキングデータが公開されるようになって以来、スプリント(時速24km以上での走行)の回数は選手の貢献度を測る重要な指標となっています。一般的なチームにおけるサイドハーフやサイドバックのスプリント回数は、1試合あたり15回〜20回程度が標準的であり、25回を超えれば「よく走った」と評価されます。しかし、ミシャ式のWBにおいてはこの基準が全く異なります。

北海道コンサドーレ札幌におけるデータ分析(2019-2022)

ミシャ体制下の北海道コンサドーレ札幌は、チーム全体のスプリント回数において他チームを圧倒しています。特に2019年シーズンのデータ1は衝撃的でした。

  • チーム総スプリント回数: 167回(2019年第22節)
  • 比較対象: 同節の他チームは100回〜130回程度が多く、2位の鹿島アントラーズでも166回、3位の浦和レッズ(当時のミシャ式の影響を残す)で156回でした。

このチーム全体の数値を牽引しているのがWBです。以下の選手別データをご覧ください。

選手名

ポジション

スプリント回数/試合

備考

金子拓郎

右WB

35回

攻撃的な仕掛けと守備戻りの往復による数値

白井康介

右WB

29回

上下動の量によるスペース制圧

菅大輝

左WB

25回以上常時

強度を落とさず90分間アップダウンを継続

ルーカス・フェルナンデス

右WB

高水準

ドリブル突破と帰陣の繰り返し

特筆すべきは金子拓郎選手の「35回」という数字です。これはJリーグ全体の平均(チーム全体で約120〜140回)と比較しても、彼一人でチームの1/4近いスプリントを担っている計算になります。FWの選手が裏抜けのためにスプリント回数を稼ぐことはありますが、WBがこれほどの回数を記録するためには、攻撃参加だけでなく、守備時の全速力での帰陣が含まれていることを意味します。

なぜこれほど走らなければならないのか

この膨大な運動量は、精神論ではなく、ミシャ式の以下の戦術的メカニズムによって強制的に発生します。

  1. 「おとり」としてのフリーランニング(デコイラン):
    ミシャ式の攻撃では、中央にシャドー(ST)とワントップ(CF)が密集し、相手の守備ブロックを中央に収縮(ピン留め)させます。この瞬間、WBは相手の視界の外側(大外のレーン)を全速力で駆け上がり、相手の最終ラインを横に広げる役割を担います。ボールが出てこなくても、相手SBを引っ張り出すために全力で走らなければなりません。これを90分間繰り返すため、ボールに触れないスプリントが積み上がります。
  2. ネガティブ・トランジション(超長距離の帰陣):
    攻撃時に4-1-5のような陣形をとるミシャ式は、ボールを失った瞬間に最終ラインが手薄になるリスクを抱えています。相手にカウンターを仕掛けられた際、高い位置にいるWBは、自陣のペナルティエリア脇まで60m〜70mの距離を全力で戻らなければなりません。これを怠れば失点に直結するため、サボることは許されません。金子選手やルーカス選手のような攻撃的な選手であっても、守備のスプリントが必須とされるのはこのためです。
  3. マンツーマン・ディフェンス(札幌時代の特徴):
    特に札幌時代においては「オールコート・マンツーマン」気味の守備戦術が採用されました。WBは対面の相手(相手のSBやWB)に対して、どこまでもついていくことが求められます。相手が下がれば敵陣深くまでプレスに行き、相手が上がれば自陣深くまで戻る。この「個での完全追従」が、スプリント回数と走行距離をさらに押し上げる要因となりました。

高強度ランニングの質と回復能力

単に総走行距離が長いだけでは不十分です。ミシャ式WBに求められる真の素養は、「スプリント反復能力」の高さです。

一度全力疾走した後、短いインターバル(30秒〜1分)で再びトップスピードを出せる能力がなければ、このポジションは務まりません。

ミシャ監督のトレーニングは非常に負荷が高いことで知られていますが、それは試合で求められるこの「連続的な高強度運動」に耐えうる身体を作るための必然的なプロセスなのです。

質的優位を作る「個」の力

走力はミシャ式WBの「参加資格」に過ぎません。彼らが真に評価され、チームに勝利をもたらす要因となるのは、高い位置でボールを持った際に発揮される「テクニック」と「破壊力」です。

「アイソレーション」とドリブルによる局面打開

ミシャ式のビルドアップは、非常に論理的に設計されています。後方で数的優位を作り、相手の守備を中央におびき寄せた後、意図的に空けたサイドのスペースへボールを展開します。この時、WBは相手サイドバックと広大なスペースで1対1(アイソレーション)の状況を迎えます。

この「お膳立てされた1対1」で勝てるかどうかが、ミシャ式戦術の成否を分けます。そのため、WBにはDF出身の選手よりも、ドリブルが得意なウイングやアタッカー出身の選手がコンバートされる傾向にあります。

金子拓郎(札幌)のスタッツ分析

金子拓郎選手のプレイングスタイル指標(コンサドーレ札幌時代)
金子拓郎選手のプレイングスタイル指標(コンサドーレ札幌時代)

2022シーズンの金子拓郎選手のデータは、ミシャ式WBの攻撃的理想像を体現しています。

  • ドリブルCBP(チャンスビルディングポイント): 19.21(リーグ1位)
  • 攻撃CBP: 59.09(リーグ4位)
  • クロスCBP: 10.75(リーグ16位)

ドリブルポイントがリーグ全体で1位であるという事実は、彼が単なる「クロッサー」ではなく、「局面を独力で破壊するユニット」として機能していたことを証明しています。

ミシャ式においてWBがドリブルで相手を剥がすことができれば、相手のセンターバックやボランチがカバーに出ざるを得なくなります。すると中央のシャドーやFWがフリーになり、決定的なチャンスが生まれます。金子選手の高い攻撃CBPは、この連鎖反応の起点となっていたことを示しています。

ルーカス・フェルナンデスのスタッツ分析

ルーカス・フェルナンデス選手のプレイングスタイル指標(コンサドーレ札幌時代)
ルーカス・フェルナンデス選手のプレイングスタイル指標(コンサドーレ札幌時代)

ルーカス・フェルナンデス選手のデータもまた、WBの攻撃的貢献度を表しています。

  • ドリブル総数: 116回
  • ドリブル成功率: 46.6%
  • クロス総数: 143回
  • チャンスクリエイト総数: 106回

ドリブル成功率46.6%という数字は、一見すると半数以上失敗しているように見えますが、敵陣深くでのチャレンジドリブル(失敗すれば即カウンターのリスクがある場所での仕掛け)が多いことを考慮すれば、十分に高い数値です。むしろ重要なのは、失敗を恐れずに116回も仕掛けたという「試行回数」であり、これが相手DFに精神的な圧力を与え、ディフェンスラインを押し下げる効果を生み出します。

クロスの量と質

WBはフィニッシャーへの主要な供給源です。ルーカス選手のクロス総数143本、成功数78本は、1試合平均で約4.5本のクロスを供給している計算になります。

ミシャ式では、クロスに対するターゲットが豊富です。

  • ワントップ(CF)
  • 2人のシャドー(ST)
  • 逆サイドのWB

特に「逆サイドのWB」がゴール前に飛び込んでくる動き(後述)により、ターゲットが最大4人になります。これにより、WBは単純な放り込みだけでなく、マイナスの折り返しや、ファーサイドへの滞空時間の長いクロスなど、状況に応じた球種の使い分けが求められます。

「チャンスクリエイト総数106」という数字は、彼のクロスやパスが単なるボール運びではなく、シュートに直結する決定的なものであったことを証明しています。

フットボールIQとポジショニング

フィジカルとテクニックに加え、ミシャ式WBには高度な戦術眼(フットボールIQ)が求められます。単にサイドに張っているだけでは務まりません。

「5レーン理論」の先駆的実践とインナーラップ

近年、欧州サッカーを中心に「5レーン理論」が一般的になりましたが、ミシャ式はそれ以前からピッチを縦に分割して数的優位を作る概念を持っていました。

WBは基本的に「大外のレーン(ウイングレーン)」を担当し、幅(Width)を作ります。しかし、シャドーの選手がサイドに流れた場合や、相手の守備が広がった場合には、WBが内側のレーン(ハーフスペース)に侵入する「インナーラップ」も求められます。

浦和レッズ時代の関根選手や宇賀神選手は、このインナーラップとコンビネーションプレーに長けていました。彼らはサイドに張るだけでなく、シャドーとのワンツーで中央突破を図る動きを見せ、攻撃のバリエーションを増やしました。

逆サイドからのフィニッシュ(シャドー・ストライカー化)

ミシャ式WBの最も特徴的な動きの一つが、「ボールと逆サイドにある時の振る舞い」です。

右サイドで攻撃が展開されている時、左WBは後方でリスク管理をするのではなく、ペナルティエリア内まで侵入し、実質的なFWとして振る舞います。

  • 菅大輝(札幌): 毎シーズンのように強烈なミドルシュートや、ファーサイドでの詰めから得点を記録しています。の走行タイプ別データにおいて、彼がスプリント回数で上位にいるのは、自陣からのカウンターだけでなく、この「ゴール前への70mスプリント」を繰り返しているからです。
  • 関根貴大(浦和): 彼の得点の多くは、逆サイドからのクロスに対してファーサイドで合わせる形や、カットインからのシュートでした。

この役割を全うするためには、「今は攻め切れる時か、カウンターに備えてステイすべき時か」を瞬時に判断する「リスク管理の認知能力」と、FW並みの「シュート技術・得点感覚」が不可欠です。

守備における「対人制圧能力」

札幌時代における「マンツーマン」戦術の導入により、WBの守備タスクはより「対人(デュエル)」に特化したものへと変化しました。

ゾーンで守るのではなく、目の前の相手を個の力で止めることが求められます。ルーカス選手の「被ファウル総数80」という数字がありますが、逆に彼自身も守備時に激しいコンタクトを行っています。

WBが1対1で抜かれてしまえば、3バックの脇(ストッパー)が引き出され、中央が手薄になり失点します。したがって、WBには「絶対に抜かれない対人守備力」が、攻撃力と同等の比重で求められるようになりました。

定量的データによる「理想のミシャ式WB」プロファイリング

以上の分析と収集されたスニペットに基づき、現代のミシャ式WBに求められる「定量的な基準値(KPI: Key Performance Indicators)」を策定します。これらはスカウティングや評価のベンチマークとなります。

評価項目

基準値(1試合平均/シーズン通算)

データ的根拠と戦術的意味

スプリント回数

25回〜35回

リーグ平均(15-20回)を大きく上回る必要がある。攻守の切り替え(トランジション)への即時反応と、おとりの動きの総量。1

総走行距離

11.5km〜12.5km

90分フル出場時の基準。単なるジョグではなく、高強度ランニング(HIR)の割合が高いことが必須条件。

ドリブル成功数

3回以上(成功率40%超)

アイソレーション局面での打開力。相手守備組織を破壊し、数的優位を確定させるための必須スキル。

チャンスクリエイト

3回以上

シュートに直結するラストパス。クロスの本数だけでなく、その質が問われる。

クロス供給数

4本〜6本

攻撃の完結手段。CK獲得数にも直結し、セットプレーの機会を増やす。

シュート関与

2本以上

自身がフィニッシャーとなる回数。逆サイドからのクロスへの飛び込みや、カットインシュート。

最後に:鈴木陽人はこの先生き残れるのか

ここまでミシャ式戦術におけるウイングバックの条件を明らかにしてきました。

ミシャ式戦術におけるウイングバックとは:「マラソンランナーのような心肺機能」と「ウインガーとしての破壊的なテクニック」、そして「適切なポジションを取る戦術的知性」の3つを兼ね備えた、Jリーグにおいて最もタフで、かつ最もスペクタクルなポジションであると定義できます。

彼らのスタッツ(スプリント回数やドリブル数)が突出している時こそ、ミシャ式戦術が健全に機能し、ピッチ上で「ミシャ劇場」とも呼ばれる魅力的なフットボールが展開されている証なのです。

過去の記事で挙げたように、鈴木陽人のプレーの特徴は森下龍矢のものに近い選手です。

森下もドリブルとデュエル、そして思い切りの良い仕掛けを持っていました。体格的にも近いものがあります。

鈴木陽人もこんな要素を持っています。

  • 規格外の体幹からくる馬力
  • 大宮アルディージャを圧倒したフィジカル
  • 右利きだが、左足も遜色なく使える
  • 小柄だけどタフ
  • プレスをサボらない
  • ドリブルがうまい
  • セットプレーの精度が高い
  • 森下のようなアツいメンタリティと、プロへの強い意識

きっかけさえ掴めれば、大化けできる可能性のある素材だと信じています。

一方で昨年末デビューのときに得意のドリブルを望月ヘンリー海輝に完封されていたことからも、まだ成長は必要です。

ミシャ監督の指導のもと、殻を破ることができるか?期待しましょう

About The Author

グラぽ編集長
大手コンピューターメーカーの人事部で人財育成に携わり、スピンアウト後は動態解析などの測定技術系やWebサイト構築などを主として担当する。またかつての縁で通信会社やWebメディアなどで講師として登壇することもあり。
名古屋グランパスとはJリーグ開幕前のナビスコカップからの縁。サッカーは地元市民リーグ、フットサルは地元チームで25年ほどプレーをしている。

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