どこのスタジアムにもいる?神出鬼没で有名な川崎フロンターレの名物サポーター「鬼限」さんに川崎フロンターレ目線でのマッチレビューを寄稿いただいた。川崎フロンターレサポーターからみたら、同じ試合はどう見えたのか。グランパスサポーターに取ってみるとツラい内容も含まれると思うが、是非フラットな目で見てみて欲しい。
5月4日。
我が軍にとっての大事な大事な決戦の日がやってきた。
残念ながらこの大事な試合の日にちょっとした諸事情で今季初の等々力非参戦という事となってしまったが、現地に行かれるサポーターに思いを託し、自宅から現地にいるつもりで熱い気持ちでこの試合を見つめていく。
相手は2位の名古屋グランパス。
我が軍こと川崎フロンターレにとっては優勝を争う筆頭のチームだ。
前回対戦は敵地で快勝したが、名古屋がこのままやられっぱなしで終わるわけがないのは分かっている。
この等々力での90分は第一ラウンドとはまた違った試合になるだろう。
そして15時。
運命のキックオフの笛が吹かれた。
前半
豊田スタジアムでの第一ラウンドから中4日での一戦。
川崎はベンチメンバーが小塚から長谷川となった程度で第一ラウンドと全く同じスタメンとシステム。
一方で名古屋は4人を変更。この日は長澤がスタメンに名を連ね、第一ラウンドの途中から採用していた中盤を3センターにした4-1-2-3のシステムを第二ラウンドではスタートから採用することとなった。
ミラーゲームとなったこの試合。
名古屋は前回の対戦で川崎に守備時4-4ブロックの構造を丸裸にされ、結果的に中盤の空いたスペースを徹底的に狙われてしまった。
中盤を3センターにしたのはその反省を踏まえたもの。中盤の3センターで川崎の3センターをマンマークし、スペースの処理と数的不利を解消。特にシミッチに対してのマークは強く感じられた。
さらに、川崎のビルドアップの際にジェジエウにボールを持たせるケースが多かった。
彼のボールを扱うスキルは日に日に向上は見せているが、現状は組み立てに関しては難があることには変わりはない。名古屋としては彼に保持をさせることで攻撃を停滞させ、ボールを右サイドに流すことで決定的なパスを阻止に成功した。
じゃあ、川崎としてはどうするか?実はそれを打ち破る方法があった。
中盤の3センターは川崎の3センターをマンマークをして献身的な働きを見せていた。特に稲垣に関してはシミッチに対して強くマンマークをしていた。だったらその3人を思いっきり利用してしまえばいいのだった。
前半の途中からジェジエウが右サイドに流れ、シミッチは最終ラインまで下がるようになってボールの配球を行うようになった。それに応じてIHもやや下がり目に位置。
名古屋の3センターがマンマークしてくるということは、シミッチや両IHに対してどこまでもくっついてくるということ。
すると、彼らを利用していくうちに見事に中盤にスペースが出来上がってしまったのだ。
そうなると第一ラウンドみたく登里のフリーランが生きてくる。
マークをされない立場にいる彼が思い切りよくスペースに飛び込んで敵陣に侵入することで、名古屋の守備を打ち破ってみせた。
この流れから、31分に川崎はCKで先制点を奪った。
名古屋の攻めはストロングポイントである左サイド。しかし、前回はそのストロングポイントの中心だった相馬は山根に封じ込められてしまった。
今回は山根と対峙する相手をマテウスにして、彼の特徴を活かした突撃を図る形に変更。この日は山崎が1トップということもあり、彼をターゲットにチャンスを生み出すことだって可能であった。
その狙いはハマり、8分ではカウンターをキッカケに攻撃での人数を増やして連動で圧力をかけてチャンスを作ってみせた。
しかし、マテウスは山根はどうにか出来てもカバーに入るジェジエウには敵わなかった。ジェジエウはオルンガも止めれる選手なだけにマテウスにとってはとても分が悪かったかなと思う。
すると、川崎はだんだんとそのやり方に慣れ始め、田中碧の行動範囲の広さを活かしたカバーリングによって左サイドをシャットアウトされてしまった。
前半は1-0で川崎リードで折り返す。
後半
後半の立ち上がりは川崎がややフワって入ったことから、名古屋が左サイドからチャンスを作る場面が増えてきた。
この左サイドの攻めは田中碧が前半より積極的にカバーリングをしなくなったのがキッカケで、吉田とマテウスのホットラインが再び開通し始める。
しかし、キーとなるマテウスはここでもジェジエウが立ちはだかって突破出来ずになかなかゴールまでは持ち込めなかった。
そんな中での川崎の2点目。
登里同様に山根も隙あらば内側に侵入する意識を強く持っている選手。このケースも家長からボールを受けてカットインで内側へ運ぶと並走するマテウスを振り切り、田中碧のスルーと登里を経由して三笘へサイドチェンジ。名古屋はこのサイドチェンジで対応に遅れてしまい、三笘にとっては絶妙な形で成瀬との1on1に持ち込めた。
そして成瀬を振り切って内側に侵入すると、攻め残っていた山根にラストパスを送り、それを山根が押し込んでみせた。
追加点を奪われてしまった名古屋は、59分に丸山とランゲラックの連携ミスでオウンゴール。2点リードされた状況となってしまった。
しかし、名古屋は交代選手と立ち位置変更によって流れを変える。
ジェジエウの壁に弾き返されていたマテウスを右サイドに変更。右サイドであれば、相手は登里とカバーに入る谷口なので自身の特徴を活かした突撃は可能となる。
さらに右サイドでコンビを組んだ森下は、積極果敢なオーバーラップでマテウスと素晴らしいコンビネーションを見せていく。
名古屋の1点目もマテウスの引きつけから森下のオーバーラップがハマった形。稲垣も見事なシュートだったと思う。
さらに2点目はマテウスのFK。
あの位置からのFKは昨年のルヴァン鹿島戦でも決めており、他クラブは今後覚えておいた方が良いかも。
2失点した川崎だが、こちらは交代選手は良さを発揮出来なかった。
知念はダミアンに負けじとサイドに流れてポストして優位な状況を作れたのだけど、点を取るという役割を求められていることに関しては全く発揮出来なかったのは痛かったなと。それは長谷川も同様のことが言える。
最後は塚川と車屋を投入し、名古屋の猛攻を防ぎ切って試合は終了。
3-2のスコアで首位攻防戦の第二ラウンドも川崎が制し、首位をガッチリと守りきった。
最後に
第二ラウンドは川崎にとっては、これからの戦いでの課題が浮き彫りに出てしまった。
特に交代選手で出場した知念や長谷川に関しては彼らへの期待値が高い分、まだまだ彼らのパフォーマンスには正直満足は出来ていない。
だが、彼らの練習動画や試合での姿を見ている限りは試合で活躍したいという気持ちは十分に伝わるし、何か目に見える結果を出せれば状況は大きく変わるはずだと私はそう信じている。
これからも全力でトライし続けてほしいものだ。
そして、この2連戦を全力で立ち向かってくれた名古屋グランパスには本当に感謝をしたい。
監督不在の中で特に3失点目の後は彼らの意地とプライドが見えたし、1点差に迫られた際は同点に追いつかれてしまうんじゃないかという不安を感じさせるぐらいに勢いは凄まじかった。
3失点の後にそこから2点を返せたことは、名古屋グランパスのこれからの新たな可能性を見つけ出すキッカケとなったんじゃないのかなと敵目線でそう思うことが出来た。
今シーズンは名古屋との対戦は終了したが、ACLを含めたカップ戦では対戦する可能性が残っている。
この2連戦で改めて名古屋グランパスを倒さなければ優勝は出来ないという認識をさせられたし、今度はマッシモ・フィッカデンティが率いる名古屋グランパスと対戦がしたいという想いが日に日に強く感じているものだ。
これから先、川崎フロンターレと名古屋グランパスはJリーグを代表する大きなライバル関係となっていくことだろう。
J1優勝を争う筆頭のライバルとして、またカップ戦の優勝を争うライバルとしてお互いにより強くなるための高みを目指していければと思う。
そして今回はご縁がありまして、グラぽさんの記事で書かせていただくことになりました。
この場をお借りしまして、本当にありがとうございました!