2021年はカップ戦優勝を経験し、ACL出場とクラブとしての一つの句点が打たれた名古屋。22年の名古屋グランパスはどんなストーリーができるのか楽しみですね。
開幕前企画として「どういう名古屋が見れたら良いなと思うか考えてみませんか?」というお話をグラぽからいただいたので、普段は事実の振り返り(レビュー)担当ですが、少しだけ考えてみようと思います。
(この記事で今後出てくる図解は赤が名古屋グランパス、青がアウェイチームと想定します。)
21年のお話
昨シーズンまでの名古屋の「前からの守備」は1人のボールのチャレンジに対して順番に別ポジションの選手がフォローに入る形が多く見られました。
その結果、個人のフォロー能力で相手を上回るとボールを奪い、そのままゴールへ突っ込んでいく「戦術:稲垣祥」が誕生しました。
ただタクティカル(戦術)ベースやマクロ(盤面)ベースのチームゲームやチームスポーツに置いてこのシステムは時に「四天王方式」と揶揄され、集団戦や盤面戦術の練度が高い相手に対しては悪手とも言われてます。(去年の何もできなかった敗戦は忘れたいものですね)
新しい試み
その状況を変えるべく登場したのが長谷川監督の「ファストブレイク」という単語
前回のグラぽ編集長編の記事(ファストブレイクに適した布陣は? 2022年明治安田生命J1リーグプレビュー 1 グラぽ編集長編 #grampus)でも登場した「ファストブレイク」ですが、実際にどういう枠組みで行なう可能性があるのか?を考えてみます。
まずは「プレーの選択肢やプレーエリアを制限する」という点において、ピッチのどの部分が簡単にそれを実行できるのか?を考えます。おそらくというより当然中央でボールを囲むよりもサイドでボールを囲んだ方がプレーエリアが狭くなります。
その為にサイドから中央や逆へボールを脱出させない事が大前提です。相手はその局面を脱出させる為に人をどこからかサポートに回すことになり、その時点で脱出した先の盤面では数的有利が守る側に与えられることになります。
その形を作るとなると最初にプレスを開始するであろう前線の1~2人(トップorトップ+トップ下)の選手の仕事はサイドに誘導しながらプレッシャーをかける形か、間に合わないようであれば中央の最短ルートを消すようコンパクトにスペースを埋める事が予想されます。
“ファスト”という名前からいわゆる常時プレス(ゲーゲンプレス)のような想像をしがちですが、あくまでグラぽ編集長が書いた記事にあった通り「相手の攻撃の選択肢を狭めて奪い、確実にマイボールにする」部分が重要になるので時には相手の出方を見てスペースを埋めて耐える事も充分に想像できます。
キーポイントは?
この枠組みを遂行するにあたって重要となるのが1st、2ndディフェンスがどこに行きつくのかを想定しておく必要があるサイドの選手の存在です。
例えば、相手のビルドアップのスピードが早くないのであればプレッシャーに行く選手達は相手のセンターバックやサイドバックまでプレッシャーに行くこともあるでしょう。
逆に相手のビルドアップや球離れが速い場合は深くまで追う間にボールが脱出される危険性があるのであまり追わないかもしれません(相手のCMやCDMの位置までしか追わずに最奥の相手選手は置いておく)
そのプレッシャーをかける味方の予測、相手のプレイスタイルをいち早く感じ取り様々な立ち位置を取れる選手がサイドに起用されるのではないかと思っています。
プレッシャーに行く1人目の動きでサイドの選手の動きが明確化されることで、「前の守備が想定外の脱出のされ方をしない限り」センターの選手が横移動でのフォローに入る事は減ると思われます。(いわゆる去年までの順番に剥がされる現象)
センターの選手は守備のフォローに奔走するというよりは「こぼれ球やボールを奪取するポイント」を優先的に考えられるようになってくると、チームとして枠組みが完成したという基準になるかもしれません。
レオシルバのスタミナの心配をしていた人は安心材料になるんではないでしょうか?
但し、この枠組みで蓋を開けたらセンターの低い位置にいる選手(昨シーズンの木本ポジション)達がガンガン釣り出されてセンターバックが晒されてしまうような形になった時は皆さん心の中で「蛍の光」を歌うか、「残念そこはランゲラック」を願いましょう
先日CWC(クラブワールドカップ)で世界一となったチェルシーFCでさえ、前からの守備においては「相手の攻撃の選択肢を狭め、ボールを脱出されない事」が出来た試合と出来なかったときの差はサイドハーフ(チェルシーにおいてはシャドーの選手ですが)の守備戦術眼や守備判断能力だと言われ、長谷川監督が最終着地点にしようとしている目標は世界最高峰の選手が集まっているクラブでさえサッカーIQの高さが要求される枠組みなのだという事が分かります。
攻撃における枠組み
これもまたグラぽ編集長の記事からの引用になりますがファストブレイクの説明の中に「オフェンスの数的有利を作り出してシュートに持ち込む」という解説がありました。
守備から攻撃への切り替え時だけでなく、ボールを保持している時もその理念を遂行すると考えられます。
数的有利を作るためには相手の選手に「人」という選択肢をいかに押し付けるか?という部分が重要になるでしょう。
1.5列目の選手が守備で左右に走る可能性がある事は前の新しい試みの部分で話したかと思います。そんな中で攻撃において場所に相手に「人」という選択肢を押し付けるためにはどうするのか?
例えばこのように1.5列目の選手とサイドの選手、センターにいる選手で中央で数的優位を取り、前が降りてくることで後ろのビルドアップ部隊はどこか一枚相手とのかみ合わせを浮かせる。そして中で数的優位を作ったことで後ろからの長めのパスもどこかに通るようになる。それが攻撃の合図。といったような形。
こんな形が観れたら今の名古屋は相手に恐怖を与えられるのかな?と思います。
「後ろに人を落としたら前の人数がへって崩せないよ!」と思う方もいると思いますが、公開練習(SNS掲載可の回)に観に行った時に行っていた練習メニューでは「出したら動く」「ボールを回しながら前へ運ぶ」といった「瞬間的に数的優位を利用するユニットでの攻撃」を重要視しているような練習メニューだったので後ろの攻撃の合図に人を割いても今の名古屋のメンバーなら問題ないとは思います。
枠組みを遂行するためのメンバー
この新しい枠組みを遂行する為の形を考えてみます。
基本は4231を予想します。但し、1.5列目は守備の追い回しがあるので1.5列目に固定というよりは完全に攻守でのフリーマンと想定する。
下記の布陣表は1st、2ndの差異はなく可能性という点だけで表記しました。枠組みを遂行する上で相手がいる事を前提とする可能性が高い為、例えば左にマテウスが入る場合はバランスを取るキーマンとして右に阿部が入るパターンや、右に相馬が入れば左にキーマンとして齋藤をおくなどして選手配置でバランスを取ることは充分に考えられるかと思います。
ボール保持になったらこんな形が見れたら面白いですよね
齋藤のように1.5列目の選手の変わりに深くまで追う選手や、阿部のような盤面整理の得意な選手が入ることで毎試合、毎分様々な形にチームが変わっていく様子も観られたらいいですね。
また、齋藤選手や阿部選手が入ることで相手が釣り出されて、サイドバックの選手達のインナーラップやオーバーラップが得点へ直結するプレーになる機会も増えるかもしれません。
但し、1つ懸念点があります。それはストライカーが欲しいボールを供給できるかどうか?という点です。攻撃のスタートやユニットでの崩しのスタートが2列目以降の感覚に依存する可能性があるので、最初はストライカーが欲しいボールが来ずに囮役になってしまう事が増えるかもしれません。そんな中でやって来る少ないチャンスで失敗してしまっても当分は「ナイストライ」と心の中で声をかけてあげましょう。
今シーズンのここに注目
- サイドの選手の立ってる場所
- 相手の選手の間やハーフスペースに立つ選手の数
- 昨シーズンに比べてセンターの選手、1.5列目選手の走行距離、ヒートマップ
- 最終ラインからのロングボールに逃げる回数(個人的には去年みたいな取りあえず蹴りだす長いボールは減りそう!)
さいごに
「ファストブレイク」という言葉と少しの情報しかなく、コロナ禍で練習もできていない名古屋グランパス。観れる情報、使える情報をフル活用して「こんな名古屋グランパスが完成すればいいな!」という事でプレビューを書きました。少しは開幕に向けてワクワクをお届けできたのではないでしょうか?
あくまでこれらは「想定」ですが、チケットの売れ行きも思った以上に伸び悩んでる中で、これを読んで少しでも「観てみよう」となればいいなあと思います。