今年春のホームセレッソ戦もご寄稿いただいたさかりーにょさん
プレーヤーとしては大学サッカー日本一を経験され、その後海外でプロサッカー選手としても活躍。JFAライセンスB級を持つ指導者でもあり、分析官としてのキャリアを目指してAlliance of European Football Coaches’ Associationの研修も修了し、日々アウトプットの日々を過ごされています。そんな方にご寄稿いただきました。
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本篇
最近調子を落としている名古屋グランパス。再浮上するための具体的な方法が知りたいのですが・・・
どうもさかりーにょです。
本記事は2024 J1第21節セレッソ大阪VS名古屋グランパスの試合を基に分析していきたいと思います!
本記事の信頼性
- 年間平均200試合以上を分析しながらオリジナルの「さかりーにょ分析メソッド」開発
- JFA公認指導者ライセンスB級
- CAF(アフリカ大陸サッカー指導者) C級
- JFAフィジカルフィットネスC級
- IFCO公認サッカー戦術アナリストベーシックコース修了
- AEFCA公認マッチアナリストコース修了
- 元海外プロサッカー選手&指導者
2024 J1第21節 セレッソ大阪 VS名古屋グランパス
スタメン
マッチアップ図
スタッツ
名古屋グランパス3-4-2-1のシステム上における優位性
実は3-4-2-1は“4-4-2(4-2-3-1)キラー”の異名を持つほどに4-4-2との相性が良い。
3-4-2-1を4-4-2と組み合わせた際に構造的にフリーになる優位ポジションは3バックと前線の5枚だ。実にフィールドプレーヤーの8割が優位性に立つことができる。
システムの噛み合わせ上の攻め方のセオリーは両CBにボールをドリブルで運ばせ、相手のプレスのかけ方に応じてWBやIHへボールを届けて前進するというものだ。
名古屋グランパスが再浮上するために今すぐ改善すべき3つの課題
システム上の優位性があるにも関わらず敗戦してしまった名古屋グランパス。よくよく試合を分析してみると以下の3つの課題解決が再浮上するための鍵であることが判明した。
課題①:サイドに偏りすぎた攻撃パターン
課題②:整理されていないビルドアップ
課題③:整理されていないプレッシング
ここからはこの3つの具体的な課題内容とその解決策について分析していく。
課題①:サイドに偏りすぎた攻撃パターン
名古屋グランパスの攻撃パターンはカウンターとサイド攻撃だ。特にボールを持たされた際にWBがSBをつり出し、IHがその背後に侵入するというパターン攻撃は非常に有効であるがそもそもの3-4-2-1の優位性を活かしきれていない。
破壊力のある前線3枚であれば多少ルーズなボールを入れて3枚の距離を近づけ、フリックやワンツー、3人目の動きなどでゴリゴリに一番怖い中央をこじ開けるという選択肢を持つべきだろう。中央を見せ続けることでより相手DFが中央に寄るために得意のサイド攻撃がより効果的に、よりペナルティエリアの近くからクロスを上げることができるようになると分析する。
長谷川健太監督同様の3-4-2-1の使い手であるモウリーニョの芸術的な中央突破を参考に紹介しておきたい。
課題②:整理されていないビルドアップ
“詰まったらWB”。
今の名古屋グランパスはWBをエスケープゾーンに指定しているが、その先のビジョンが見えない。
むしろ、距離感が狭いCB三枚で各駅停車されて運ばれてきたWBへのボールは格好のターゲットなり、非常に強度の高いプレスにさらされている。
3-4-2-1の立ち位置のままボールを前進させるにはやはり個のスキルがよほど高くないと難しいのが現状だ。
それではどのように相手のマークにズレを生じさせることができるのか?
理想はマンCが採用しているようにCBを一枚中盤に上げるというものだ。
3CBの中で最も足もとの技術が高いハチャンレをアンカーの位置まで引き上げることで両DMはWBにより近い位置に立つことができ、数的優位を作りやすくなるだけでなく、中央突破の起点となる楔のパスを打ち込むことができる距離と角度を確保することができるようになるのだ。
これは余談であるが2失点目の起点となった吉田選手のボールロストであるが、吉田選手にボールが渡った時点でパスコースはほぼない状態であり、セレッソに誘導される通りにボールを動かしているので失うべくして失ったとも分析できる。エスケープゾーンであるサイドエリアにおいてそれだけ良い距離間で数的優位を確保できるのか、そのカギは3CBの1枚を思い切って1列前に立たせることなのだ。
課題③:整理されていないプレッシング
この試合において、名古屋グランパスはあと一歩のところでプレス回避されて最前線までボールを運ばれてしまうシーンが目立った。
この原因はセレッソ大阪のビルドアップに対するプレッシングが整理・共有されていないためだ。
具体的には、
- 両WBを前のプレスに押し出せないために後方で数的優位を形成される
- 落ちてくる上門選手のマークを誰が担当するのか定まらないためにズレが生じる
- セレッソの両SBがIHの立ち位置を取る際のスライドの方法、マークの担当が明確ではない
というものだ。
セレッソのビルドアップの特徴である両SBとトップ下の中間ポジションは事前の分析で明らかなはずであるので具体的な縦ずれ、横ずれとマークの担当を明確にしておくことでより高い位置でボールを奪い、ショートカウンターに繋げられるシーンが増えたことは間違いない。このフロントプレスに関しては各相手毎にそのビルドアップの特徴と穴を入念に分析してその穴を突くための対策を仕込む必要がある。
さかりーにょEYEs
選手のポテンシャルに疑いの余地はないが、3CBのビルドアップ能力が低いためにボールをスムーズに前線に運べないケースが多い印象だ。
セットプレーの工夫とロングスローの導入などをすることでより長所を活かして得点力を上げることができるようになるだろう。本分析シートが名古屋グランパス再浮上のきっかけになることを願う。
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