今シーズン相性の良い相手という事もあり、ホームで連敗ストップとなりました。
これから夏に向けて止まない雨を継続して“止める”にはどうしていけばいいのか。きっかけを柏戦で掘り下げます。
試合情報
自分たちの強味を思い出す
ここ数試合、勝ちから遠のく試合が続いた事やスカッドコントロールに苦労したこともあり、チームとして“非保持”のクオリティを削った試合が続いた。
しかし、今節は非保持の所で変化を付けて試合に入る。
柏の形についておさらいしてからその変化に触れると分かりやすい。
柏は今シーズンのルヴァンでの1stレグの闘い方を軸にこの試合に臨む形となった。
基本的には柏SHが内側を取る事で名古屋の2CMF対柏の2ボランチのかみ合わせを作ってしまう。その結果SHがCMFの裏に立っている形になる。特にルヴァンでは右サイドSHの島村の動きに苦労したのが記憶に新しい。
そんな相手のSHの立ち位置が重要な試合で、名古屋はどう変化をつけたのか?
特に目立ったのは稲垣の非保持の時の立ち位置。小屋松に執拗にマークに入った。
柏のゴールキーパーからのロングボールの場面では最終ラインに居る小屋松に張り付き中盤を捨てるような形を取った。椎橋の後ろに小屋松が立とうが稲垣が張り付いて内田の前を開けても良しとするような形も許容していた。
三國の試合後のインタビューを見ると失点時に内田の前のスペースに対する“反応”の話が出ていたので稲垣が柏の前線の中でも自由に動く小屋松をマークし、彼の“ギャップ作り”に対して先に手を打ち、最終ライン(CB)が前向きにアプローチするような設定にしていたと考えられる。(サイドにCBが広げられるような展開になった時のリスク管理をしていたと考えられる)
この形に対して柏は早い段階でサヴィオとジエゴが各々内田と中山と1対1になれる事を悟る。(02:35~ぐらいの立田から逆に振ったボールの時には既に柏全体が内田の前を勝負ポイントに設定していることが小屋松の受ける動きを付ける場所などから分かる)
稲垣を小屋松のマークに動かす為、前からハメる形が普段と変わって来た。
永井か森島が椎橋とコンビを組むような形で柏のボランチとの対面になる。試合前半は永井が椎橋と組んで森島が内田の前の空間と古賀へのアプローチの形を取った。
前のハメ方を変える事で森島と稲垣をSHの内側へ立つ侵入を防ぐ置き石にしたかったのかもしれない。
設定が変わる難しさ
当然、プレーが切れる場面では稲垣が定位置(小屋松を外して右のCMFの位置)に入ってスタートする展開もあるわけで、“稲垣がギャップ作り対策に入らない局面”の方が名古屋の守備者の判断が遅れる事になった。(プレー判断が変わる)
その難しさが失点に直結したのが分かりやすかった。森島と永井が稲垣を中心とした守備戦術に合わせてスペースを埋める。ボランチのマークに入るというプレー選択をしていた中で攻撃の局面で森島と永井が前に出ていく。それと同時に小屋松が稲垣を引っ張って名古屋の最終ラインの“いつもの設定”をイレギュラーにさせた(いつもの設定=稲垣が最終ラインのサイドへの釣り出しやギャップ埋めをしてくれていた設定)
サヴィオが上手い部分もあるが、個人の責任ではなくチームの守備設定が切り替え後に戻せない場面までリソースを割いた時に中途半端に終わった事が問題だった。(今回で言えば相馬も中山も上がって攻撃に参加する以上切り替えが発生したら一大事となる場所は存在する。それを前線の選手達が理解してプレー選択をするか、設定の見直しが必要だった。)
ここまで聞くと「稲垣をマーキングの為に動かす形に意味はあるの?」と思うが、最終ラインの前向きのアプローチの心理的負荷の軽減や特に右のWB、CBがサヴィオやジエゴに押し込まれないようにする意図などは理解できる。戦術設定というよりは戦術を遂行するためのプレー選択の補助に使っているような感覚に感じた。それと同時にルヴァン軸の柏の形に対応する為の策としては大いにアリではあった。
設定を継続させる選手の力
失点後はそこまで稲垣も小屋松に意識は割かずに定位置スタートでの守備が多くなるが、最終ラインのギャップのリスク管理やサイドへの移動が完全独断になる。その局面で誰よりも首を振って稲垣に合わせてチームを動かして居たのが椎橋だった。
普段ならああいった場面でキャパの限界を迎えてプレーのミスが出る事の多かった椎橋だが、元の能力が高い事が証明された試合となった。
椎橋を含めパスの出し手側の選手達がキャパの限界を迎えなかったことで、森島や山岸が明らかに後半「パスを刺し込んでくる選手たちの立ち位置とタイミング」を理解して後半試合を進める事が出来た。河面の存在がビルドアップ部隊の負荷を下げている事も実感する事になった。
柏としては2ndレグで見せたように白井を落として3バックを作ってハメに来るのを誘う形や、高嶺を外側に走らせる動きがもっとあると状況が変わってきたと思うが、天皇杯を闘っている事が名古屋としては功を奏した形だったかもしれない。
WBの入れ替えはネガティブではない
30分から左右のWBの入れ替えをする。監督インタビューで発言していたがWBが持てない所を危惧した交換となった。(守備の部分よりも)
山田とサヴィオを比べると外向きの守備のアクションの速さがサヴィオの方が良く、中山を後ろ向きにさせる事が多かった。中山自身後ろ向きで持つ部分が得意なタイプではないので外側の縦向きの守備の意識が薄い柏の右サイドに中山を置いた。関根と山田の間に立つ、前向きと奥でボールを受ける脅威もあり、山田と関根は中に絞り切れない状況に、河面や椎橋から柏のSHとCMFの間を通してIHに入るボールも増えていく。
外向きのアクションが強いサヴィオは相馬の内向きに剥がす動きに苦労することにもなった。
守備の修正が攻撃の低下へ
後半に入ると片山、木下を入れて3421のミラーで挑む柏。小屋松ロールを消してミラーにした井原監督のコメントは「前線2枚は守備がハマっていなかった。同時にWBの所の緩さが気になった」とのこと。
(引用元→名古屋vs柏の試合結果・データ(明治安田J1リーグ:2024年7月14日))
保持の局面での小屋松の役割を消しても守備をハメたかったようだが、名古屋としてはマンツーマンになってくれた方が助かる状況であった。
名古屋は非保持での人数や配置のギャップが無くなり、柏はマンツーマンになったにもかかわらずWBの対面とCBに対してのプレッシャーのみの状況。久しぶりにあれだけ簡単に「剥がして受ける」「受けて運ぶ」が出来た後半になった。
結局2失点後は442に戻して垣田に中央でギャップを作って貰う動きをしてもらう事に。戻す前に勝ち越せてしまったのはGOOD
試合雑感
- ビルドアップを諦めないとIHの選手たちも受けられる場所が分かってくる。諦めないのが大事。
- ロスタイムのピンチの場面。最後の最後にきれいなアリバイ作りをした山岸。プレスに走り回っていたので緩める気持ちもわかるが、しんどいならその前にパトを前に出さない判断でもよかった。うしろも前もサボりたい。気持ちはそのうち足元を掬われる。
- 45:21〜の三國ー河面のパスのやり取り。河面に任せたい気持ちも分かるが、とんでもスピンパスから始まった擦り付け合い、河面が丁寧にきれいな回転で戻してあげたパスを三國がバウンドで返して河面が仕方なく蹴ってミスになった場面。現地では明らかに苦い顔をしてる河面がいた。もう少し味方の負荷を減らす選択が出来ると大事な場面での全体のミスも減ってくる。セントラルCBが頭で味方の負荷を減らしてくれたらチームも一段上がってくる。
さいごに
点を取った2人、点を防いだ1人に注目されがちですが、雨を止めたのは全員。