丁寧に出来ていれば。が全てだった。清水戦を経て選手達の意識が変わった事で構造は安定して来たものの、ゴールまでの道筋のどこかで誰かが適当になって最後まで行けない。最後のクオリティが落ちる。が起きてしまった。適当さのお仕置きを何とか0で抑えた守備陣に感謝。
試合情報
プレス対策の2パターン
352対3421で配置がほぼ同じだったため、岡山は人対人の守備を選択した。それに対し、名古屋は右へスライドさせて4枚での対応を選択。ここで、ピサノをビルドアップに組み込むかどうかの判断が求められた。
ピサノをビルドアップに組み込む場合、三國とピサノが中央に位置し、佐藤が左へ開くことで4バックを形成し、岡山のプレッシャーを誘う形となる。この形が成立すれば、右SBの位置に椎橋が避ける必要がなくなり、左WBの手前に選手を配置できる。その結果、中央のスペースを広げつつ、CMF2枚が中央に留まる形が生まれる。清水戦では、CMFが高い位置に立てるか、下がってきたIHとローテーションできるかという点が成功の鍵となった。名古屋にとって、この試合では最終ラインの動きのみでCMFの位置をコントロールするという新たなチャレンジとなった。
基本的には最終ライン+1での対応となるが(06分46秒~、10分55秒~)、岡山はこの局面で+1の選手に田部井を突っ込ませる選択をした。岡山のボランチが守備において縦関係を形成したことで、藤田の周りのスペースが広くなり、前線の選手がボールを受けやすい状況が生まれた。
もう一つの形として、従来通りの右スライドを採用し、ピサノの前に佐藤と三國を配置。左サイドでは、徳元が降りるか椎橋が展開することで、中央を広げる形を作る。岡山にとって、この形の方が守備が難しかったように見えた。3バックに対して3枚を当てていたところから4枚へ変更されたことで、岩渕がSBの位置にいる原に対応し、右IHの江坂はルカオと2トップを組んで2CBを監視。だが、名古屋のCMFを囲む形は不自然であり、ルカオと江坂が守備の局面で適切なスペースを埋めず、どの選手にも関与できない時間が長く続いた(29分03秒~)。
👍ポイント
2つ目の形でスタートすることが多かったため、江坂とルカオの守備の曖昧さを考慮すると、ビルドアップの開始に苦労しないはずだった。しかし、意外にも容易には進まなかった。
右サイドでは、岩渕と原のマッチアップにより、縦向きの守備の圧力が強くかかる状況だったにもかかわらず、三國と佐藤が常に視界に入る原に頼りすぎた印象が強かった。
そもそもIHの配置が歪だったのは江坂のサイドであるため、前半はもう少し左サイドにボールを預けることで、相手を引き寄せる撒き餌とし、広がって運ぶ動きによって右サイドの渋滞を解消してもよかった。データサイト「sporteria」の時間帯別・総合のパスネットワークを見ても、WBが高い位置を取る場面があったとはいえ、佐藤と徳元の間のパス本数は少ないことが分かる。
30分付近から約4分間にわたり、左右にボールを振る形を確認すると、その状況がよく分かる。33分04秒の場面では、左へ展開したことで岩渕が巧みにスライドし、原がフリーとなった。30分35秒の場面では、原と岩渕のプレスが近い距離でかかっていたため、椎橋がSBの位置まで張り出してビルドアップの抜け道を作った。しかし、三國は2本とも右サイドを選択してしまい、2本目のパスは明らかに無理筋だった。1本目のマテウスの縦パスはまだしも、2本目のパス選択はミスであり、それによってボールを失った原を責めるのは酷である。
守備で走らなくて済む形
岡山は後方の3枚がビルドアップのために立ち位置を臨機応変に変える、というスタイルではなかった。しかし、阿部がやや外を気にしながらスタートした。3CBの動きは少なく、2ボランチが降りてきて相手のプレスを誘うことができれば上出来という形だったと考えられる。
岡山はCBがやることがない場合、ボランチが降りてくるため、名古屋の前線の選手たちは両脇のCBへボールが渡ればプレッシャーをかけるが、基本的には中央で降りてくるボランチを抑えるという決まり事があったと考えられる。
動きが中央に集中し、WBもサポートのために降りることから、岡山の攻撃のポイントはCBの脇またはその手前に限定され、ルカオが基準となることでマークは容易だった。ここで江坂がトップ下の位置で受け、ボランチからルカオへ下のルートを作るような形が取れれば、以前柏が使用していた「どちらが受けるか分からない」形となり、名古屋にとって厄介だったはずだ。
後半になっても岡山は攻守ともに大きな構造を変えなかったが、ブラウンノアが投入されたことで前線のプレスが強化され、前半よりWBを押し込んでからのビルドアップが増えた。江坂もサイドに展開するようになり、受けるポイントが増加した。原の対面で運動量が多かった田部井を佐藤に交代させるなど、軸は維持しながら選手を入れ替える戦術が採られた印象が強かった。
つぶやき
- 清水戦の形をもう一度掲げて挑んだのは良かった。実際、IH全員がボールを受ける意識を高く持ち、ビルドアップにおける立ち位置の変化の意図がようやくチームに浸透した感覚があった。
- 攻撃の形は継続できており、ゴール前まで運べるようになってきた。しかし、決めきれなければ結果にはつながらない。
- リーグ上位のパワーFWを擁し、それを軸に戦うチームと対戦し、細かい内容を比較すると、普段「積み上げがない!」「仕込みが無い!」と嘆く人々も「意外とやることはやっている」と実感できる試合だった。こうしたチームと対戦できたことは、選手たちにとっても良い経験となったのではないか。
- 形や考え方が良くても、ミスがあれば意味はない。それが今節も呪いのように付きまとった。ミスがあるスポーツであっても、勝つためには「ここだけはミスしないでほしい」という局面が存在する。そこを突き詰めるのは難しい。