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[コラム] 名古屋の3-6-1の特徴と、課題

3-6-1フォーメーションの導入後、連勝をすることができ、すっかりグランパスサポーターの間にも楽観ムードが漂っています。しかし、本当に3-6-1を導入することでもう安心なのでしょうか?

広島戦を振り返ってみる

広島は攻撃時5トップ編成となり、ミキッチと柏の両WGが前に比重を置いてサイドを制圧し、中の3枚の連携で相手ディフェンスを崩すという形を特徴としています。去年までの鍵となっていたのはシャドーに位置していた高萩選手(現ウェスタン・シドニー・ワンダラーズ)と石原選手(現浦和レッズ)です。サイドをえぐって出てくるボールを活かすというだけではなく、佐藤寿人選手と石原選手に高萩選手から裏を突くパスが多数出てくることで相手に守備のポイントを絞らせない形ができあがっていました。しかし今年の広島は石原選手の代わりがドゥグラス選手、高萩選手の代わりが森崎浩司選手となり、メンバーが変われば連携のレベルも下がってしまっています。

そうなるとボールの出処としてミキッチ選手と柏選手に絞られることになり、そこを永井謙佑選手と矢野貴章選手が完全とは言わないまでもかなりカバーできていると、広島側としては攻撃の手詰まり感が出てしまうのは間違いないでしょう。ちなみに東京戦ではそのあたりのバランスがかなりカイゼンされていたので、次回の対戦時に同じ展開になるほど甘くはありません。

名古屋の攻撃はどうだったでしょうか。攻撃はサイド起点なことに変わりはありませんが、前3枚の連携は広島同様に熟成されていたとは言いがたい状況です。松田力選手と小屋松知哉選手の動きは散発的で、連動性は少なかったように思えます。ただ、個別には優秀な選手であることは間違いないため、チャンスは少なからず作れていましたが、完全に崩したと言い切れるシーンはそれほどありません。多くの場合ロングボールやその流れから川又堅碁選手かシャドーの2枚が抜けだして、というシーンがシュートシーンのほとんどです。広島もバランスが崩れてきた後半になってはじめて普通のチャンスがシュートまで行けるようになりました。

サイド攻撃だけで良いのか?

広島の優勝時や、来週対戦する浦和は、強力なウィングを擁しているだけではなく、強力なシャドーを持っています。たとえば2015年1stステージ6節の浦和レッズ対横浜Fマリノス戦での浦和レッズは、梅崎司と武藤雄樹の2シャドーが1トップのズラタンと連携して分厚い攻撃を繰り出していました。中央を固めればサイドを抉られ、サイドをケアすれば中央突破を繰り返される。さらにその両方を連動した攻撃もあり得ます。

サイドだけであれば、サイドにふたをすれば、多くの場合は手も足も出なくなります。永井謙佑選手と矢野貴章選手という、非凡なサイドを活かすためには、中央の圧力を高める必要があります。幸いにして川又堅碁選手の1トップが1年かけてようやく様になってきている状態です。すると2シャドーの働きが重要になってきます。2シャドーは積極的に動けて攻守ともに貢献できる選手が望ましいと思われます。松田力選手も小屋松知哉選手も攻撃面では見るべきものがあり、また松田力選手の攻守の切り替えの良さは特筆すべきです。ただ、攻撃面での怖さは松田力選手の清水戦の1得点だけでは怖さを相手に与えるには不足ではないでしょうか。シャドーからも点が取れる、と相手に印象が定着すれば、サイドをより活かしやすくなるはずです。

そこを解決する方法は、怪我人の復帰を待つか、そのポジションに求められる動きを既存の選手がより深く理解して実践するか、この2つしかないでしょう。

関連する怪我人と言えば、レアンドロ・ドミンゲス選手と野田隆之介選手、田口泰士選手が挙げられます。田口泰士選手が復帰できれば矢田旭選手をシャドーに上げることができ、またレアンドロ・ドミンゲス選手や野田隆之介選手もシャドーとしての怖さを持つ選手です。ただ残念ながらここに挙げた3人は少なくともあと1ヶ月で復帰できる見込みはありません。

そうなると今いるメンバーのシャドーとしての戦術理解度を上げていくしかないのでしょう。幸いにして清水戦で先発した小川佳純選手はサイドへのカバーのタイミングといい、攻め上がる場合の押し上げといい、戦術理解度の高さを伺えました。小川佳純選手は今年守備的中盤を最初担当しており、そこで得た知見がシャドーの際に役だっているということもあるのでしょう。

しかし小川佳純選手も30代のベテランです。これからの連戦に備えるならば、若手の奮起が必要になってくるでしょう。今いるシャドー候補は小川佳純選手のほか、松田力選手、小屋松知哉選手、そして矢田旭選手です。若手3人の更なるレベルアップがこれからのグランパスの勝利の鍵になりそうです。

サイドのバックアップはどうなるのか?

ストロングポイントになりつつあるサイドですが、清水戦で永井謙佑選手からダニルソン選手に代わったあとは格段に崩される可能性が高くなりました。ダニルソン選手の良さまでスポイルされてしまったかのようにも見えました。

また右サイドの矢野貴章選手も30代で、中2日、3日の連戦でどこまで出場を続けられるかわかりません。どちらのサイドもバックアップは必要です。

右サイドのバックアップは、田鍋陵太選手、田中輝希選手、竹内彬選手。左サイドのバックアップは佐藤和樹選手、ダニルソン選手、田中輝希選手です。

一応本職と言って良いのは田鍋陵太選手と竹内彬選手、佐藤和樹選手です。竹内彬選手は現在センターバックの起用が続いているので、本職の田鍋陵太選手と佐藤和樹選手の奮起が一番期待したいところです。

2015年4月20日付けの中スポ/グランパスウォッチャーで、田中マルクス闘莉王選手が佐藤和樹選手に対する叱咤激励を語っています。田鍋陵太選手もまもなく復帰ができるとはいえ、現在も負傷離脱中であり、この二人がちゃんとゲームのなかで起用できる目処が立つことが最大の補強になるでしょう。下克上で自分がポジションを掴む!くらいの気持ちを見せて欲しいと願っています。

About The Author

グラぽ編集長
大手コンピューターメーカーの人事部で人財育成に携わり、スピンアウト後は動態解析などの測定技術系やWebサイト構築などを主として担当する。またかつての縁で通信会社やWebメディアなどで講師として登壇することもあり。
名古屋グランパスとはJリーグ開幕前のナビスコカップからの縁。サッカーは地元市民リーグ、フットサルは地元チームで25年ほどプレーをしている。

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