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[妄想] ルコックのあと、なぜミズノになったのか ※訂正あり

[妄想] ルコックのあと、なぜミズノになったのか ※訂正あり

ちょっと長い記事です。株価や業界動向、経営の視点から、推理をしています。そういうのがお好きな方、お読みください。

http://www.nikkei.com/article/DGXLZO07758430Y6A920C1TI5000/ 日本経済新聞:デサント「ルコックスポルティフ」の国内サッカー事業撤退

http://nagoya-grampus.jp/news/pressrelease/2016/0927post-661.php 名古屋公式サイト:ミズノ株式会社とオフィシャルサプライヤー契約締結のお知らせ

名古屋グランパスから、ルコック・スポルティフからミズノに選手のユニフォーム、スタッフのウェアが変わることがアナウンスされました。

欧米ブランドの契約解消や契約縮小の流れ

個人的には、ルコック・スポルティフの事業縮小はあり得ると思っていました。事業にはボリュームメリットというのがあり、ある程度の規模がないと事業を展開していてもメリットがないというものです。

実はアパレル業界では、このブランドの契約解消や、契約縮小が相次いでいます。

なかでも一番有名なのが、三陽商会とBURBERRYの契約解消でしょう。

https://thepage.jp/detail/20140907-00000007-wordleaf?pattern=6&utm_expid=90592221-74.LdrGpjcWS4Czgnu3l9N7Eg.3 : 国内のバーバリーブランドはどうなるの? ライセンス契約終了の背景と先行きは

 今回のライセンス契約打ち切りの背景には、同社の世界的なブランド戦略があるといわれています。それを強力に推し進めたのが、ダナ・キャランやリズ・クレイボーンなどを経て2006年にバーバリーのCEOに就任したアンジェラ・アーレンツ女史。低迷していたバーバリーを革新的なデジタル戦略や中国・中南米市場の開拓によって再生させ、リーマンショックなど世界的な不況の時期に売り上げを3倍、株価を4倍に引き上げた功労者です。

バーバリーブランドの再構築にあたり、アーレンツ女史はブランドアイデンティティを「デモクラティック・ラグジュアリー(誰もが着ることのできる贅沢)」と定めました。米経済誌『Forbes』のインタビューでは「私たちの出自はコートづくり」と語り、英王室御用達でもあるバーバリーブランドを「特別な人たちの服ではなかった」と形容しています。「デモクラティック」は「世界中どこにあっても、同じブランド価値を共有できること」でもあります。デジタルマーケティングの推進もその同一線上にあり、たとえばバーバリーのeコマースのサイトは、世界6ヵ国語に対応し商品構成も共通。世界中のどこからでも同じ商品にアクセスでき、迅速に購入が可能ということです。

そこで矛盾が生じるのは、各国のライセンシーが展開するローカル商品群。ことによってはブランドの陳腐化すら招きかねません。とくに「価格は英国の半額程度」と言われる日本オリジナルのブルー&ブラックの両レーベルには、そうした指摘がそのまま当てはまってしまいます。

バブル崩壊、リーマンショックの2連打でノックアウトされてしまった日本経済に較べて、米連邦、英連邦、ドイツ、フランスなどの各国はリーマンショック単体の影響を早くも抜け出して、大きくジャンプアップしてきています。それに対してデフレ不況に喘ぐ日本は上記引用でもあるように、ブランド本体のある欧米各国から見ると、奇異に映るようです。

価値観が共有できない状態であれば、決裂もやむなしです。昨年度から今年にかけて、アパレル大手のワールドでも10から15ブランドの廃止が明言されています。時代の流れと言わざるを得ないでしょう。

http://www.nikkei.com/article/DGXLZO86957960Y5A510C1TI5000/ :ワールド、500店閉鎖 不採算ブランドも廃止

デサントと他社の業績

それでは、デサントの業績も、他アパレルと同じように難しい状態なのでしょうか。

決算期 売上高 営業益 経常益 最終益 1株益 1株配 発表日
     2013.03 91,932 5,419 5,639 3,561 47.3 8 13/05/09
     2014.03 109,944 6,271 6,643 4,470 59.3 10 14/05/08
     2015.03 123,128 9,136 9,543 6,563 87.1 15 15/05/12
     2016.03 135,778 10,376 11,053 7,870 104.5 17 16/05/10
  予  2017.03 138,000 10,400 10,500 7,500 99.5 17 16/05/10
前期比 +1.6 +0.2 -5.0 -4.7 -4.8 (%)
実は2016年3月期に過去最高益と売上高を叩き出しています。これは意外でした。
ちなみにミズノはこんな感じです。
決算期 売上高 営業益 経常益 最終益 1株益 1株配 発表日
     2013.03 163,650 3,604 4,095 1,946 15.6 10 13/05/16
     2014.03 183,204 5,692 5,816 2,640 21.1 10 14/05/15
     2015.03 187,076 5,051 5,209 3,342 26.6 10 15/05/08
     2016.03 196,072 2,971 2,778 2,085 16.5 10 16/05/10
  予  2017.03 200,000 5,500 5,500 3,500 27.7 10 16/05/10
前期比 +2.0 +85.1 +98.0 +67.9 +67.9 (%)
どちらもリーマンショック直後に相当な売上ダウンがありましたが、徐々に復調気味です。ちなみにアパレル大手、BURBERRYを失った三陽商会は以下の通りです。
決算期 売上高 営業益 経常益 最終益 1株益 1株配 発表日
     2012.12 107,630 5,855 5,933 2,144 17.1 8 13/02/14
     2013.12 106,350 7,053 7,499 3,648 29.0 8 14/02/14
     2014.12 110,996 10,213 10,348 6,318 50.3 8 15/02/13
     2015.12 97,415 6,577 7,036 2,595 20.6 8 16/02/12
  予  2016.12 70,000 -6,800 -6,600 -9,500 -75.6 4 16/07/29
前期比 -28.1 赤転 赤転 赤転 赤転 (%)
かなり壊滅的な状態ですね。ミズノの1/3強、という売上高見込みで、赤字転落です。
このように売上高一つ取ってみても、ユニクロのようなファストファッションにやられている一般アパレルに較べて、国内に固定的に購買層がついているスポーツアパレルの分野は堅調なことがわかります。

ではなぜルコック・スポルティフを縮小しなければならないのか?

では、なぜ堅調なデサントが、ルコック・スポルティフのサッカー事業を辞めてしまうのでしょうか?秘密は先程の実績から読み取れます。
この場合、目安になるのは売上高に対する営業利益の割合(売上高営業利益率)です。営業利益は企業本来の営業活動の成果を意味し、売上高に対する営業利益の割合である売上高営業利益率は、企業の本来の実力、儲ける力、や企業の管理効率を示します。
同じスポーツアパレルのミズノの売上高営業利益率は、1.52%です。一方でデサントの場合は、7.6%です。通常1%から3%くらいが標準的、5%を超えると優良企業。7.6%のデサントは超優良企業と言えるでしょう。
その秘密は営業活動の効率化です。ブランドが多ければ多いほど、当たり前ですがコストはかさみます。カタログも、ポスターも、その他CMや宣伝、さらには営業活動も別々に行わなければなりません。
そこでデサントは、ここ数年ブランドの整理を行っています。カルバン・クライン・ゴルフ、ホールアース、スポーツスタディオ・ィッテム、クレージュなどが廃止されました。それでもまだ、ルコック・スポルティフ、アリーナ、アンブロ、マンシングウェア、スキンズ、ランバン、カッターアンドバック、イノヴェイトなど多数のブランドが残っています。
少し整理すべきという意見が出るのもおかしくないでしょう。実際ルコック・スポルティフ・ゴルフ、マンシングウェア、ランバンスポールなどのあるゴルフからはカルバン・クラインがはじき出され、女性向けアスリートウェアではライカをかかえているためにクレージュ(おそらくライセンス料が高い)がはじき出されました。
徹底的に売上原価となるライセンス料や、営業活動のための重複分を整理した結果が売上高営業利益率につながっているのではないでしょうか。
そのような成功体験を持っていれば、その成功体験にすがるのが当然です。

ルコックとアンブロを選択する決め手

一つヒントになるのが、名古屋グランパスにおけるルコック・スポルティフ=デサントの位置づけです。
デサントは、オフィシャルパートナー、クラブパートナー、単なるサプライヤーの枠組みで言うと、オフィシャルパートナーに位置づけられています。
オフィシャルパートナーというのはトヨタ自動車、豊田自動織機、豊田通商、トヨタファイナンス、トヨタホームなどと同格のパートナーという位置づけです。それだけ深い関係にあったということがわかります。実際に赤Tの無料配布などは、デサントの協力あってのものと考えることができるでしょう。おそらく、単なるサプライヤーという枠を超えた、お金がかかっていたのでは?と想像ができます。さらにドラガン・ストイコヴィッチ元監督の個人スポンサーとしても、永らくの付き合いがありました。1990年代後半から2000年代はじめの引退まで、ピクシーがルコック・スポルティフの広告塔だったことも大きいのだと思います。ただ、調べてみた処、グランパスにアドバイザリー契約を結んでいる選手は居ません。(サッカー全体に広げても、元ガンバの橋本英郎選手のみ)
一方で、ガンバ大阪、FC東京にとっては、単なるオフィシャルサプライヤーであり、クラブスポンサーの一種でしかありません。
ガンバ大阪においては、オフィシャルパートナーの一覧のなかにデサントもアンブロの名前にも含まれていません。そこに名古屋グランパスの場合との温度差があります。
ガンバ大阪では、ダイアモンドパートナーになっています。グランパスと同等ですね。
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是非広告ブロックに引っかかるようなサイト作成は避けていただきたい・・・。
ここからは妄想に過ぎません。裏情報もありません。
普通のビジネスの流れであれば、デサントがルコックのなかの不採算部門、他のブランドとの重複部門を整理することになった。でもこれまでの関係からしたら、同じデサントがアンブロで継続っていう話が自然ですよね。
でもそうならなかった。
そこには、単なるサプライヤーではなくて、オフィシャルパートナーとしての取り組みをする余裕がなくなったということが想像できます。上にも書きましたが、オフィシャルパートナーというトップランクのパートナーというからには、単なる用具のサプライヤーの枠を超えた協力があり、そこに費用がかかっていたのでは?と想像ができます。
ルコックなくすから、アンブロでサプライヤーに降格してください。っていうのがグランパスに受け入れられなかったのか、それともそういう申し入れがデサントにできなかったか。そのどちらかでしょう。

一つヒントになるのは、ガンバ大阪とFC東京とはサプライヤー契約ということです。しかし、リターンだけ考えたら、ガンバ大阪やFC東京と名古屋グランパスに大きな違いはありません。そうなると、グランパスだけの特別扱いというのを、デサントの株主か取締役会が許さなかったのでは・・・という想像はできます。

アンブロというブランドを考えた場合に、トップランクのパートナーとして取り組む予算が1チーム分しかなかったとしたら・・・?
ガンバ大阪と名古屋グランパスだけの特別扱いを考えた上で、そうしたらアンブロにとってこれまで継続してきたガンバ大阪を取ることが当然と思いますし、ブランドの広告塔でもないのにパートナーとしての特別扱いを、デサントの株主か取締役会が許さなかったのでは・・・という想像はできます。

個人とチームでの違い

デサントはアンブロにおいて個人スポンサーに力をいれています。ガンバ大阪の遠藤保仁選手、藤春廣輝選手、FC東京の高橋秀人選手、吉本一謙選手、鹿島の遠藤康選手、元神戸の森岡亮太選手、名古屋では、明神智和選手です。
このように関わり合いの多い選手が多ければ多いほど、そちらのブランドを優先するという結論が近づきます。
オフィシャルパートナーだけど、選手との付き合いがないブランド、サプライヤーだけど、選手とのアドバイザリー契約が多数確保できているブランド。影響を考えると、デサントがアンブロを選択することは無理のないことだと思われます。

ミズノとグランパスの関わり合いは?

実はミズノの契約選手には、名古屋ゆかりの選手が非常に多いのです。
本田圭佑選手、吉田麻也選手のOBだけでなく、永井謙佑選手、田口泰士選手がオフィシャルブランドアンバサダーに選ばれています。それ以外にも小川佳純選手らがアンバサダーではないけれど、契約選手であることがわかります。
そして、もう一つ大きいのが、名古屋の誇るプロホペイロ、松浦紀典さんもミズノのブランドアンバサダーなのです。そういったつながりの深さが今回のオフィシャル・サプライヤー契約に繋がったのではないか、と思われます。

 

 

 

About The Author

グラぽ編集長
大手コンピューターメーカーの人事部で人財育成に携わり、スピンアウト後は動態解析などの測定技術系やWebサイト構築などを主として担当する。またかつての縁で通信会社やWebメディアなどで講師として登壇することもあり。
名古屋グランパスとはJリーグ開幕前のナビスコカップからの縁。サッカーは地元市民リーグ、フットサルは地元チームで25年ほどプレーをしている。

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