3月7日、ホームであるパロマ瑞穂で行われたルヴァンカップCグループ初戦、対浦和レッズは1-4での敗戦となりました。僕はリアルタイム観戦できなかったのですが、「とにかく成瀬竣平を見ろ」という某フォロワーさんの勢いに押され、戦う態勢が整った後半だけでも、と見てみたところ、これは聞きしに勝る、と感銘を受けました。どこが良かったか、少し並べてみようと思います。
判断力の伴った「前に出る勇気」
後半早々に浦和の対面の荻原がミスタッチをした後の喰いつき、そしてチームが押し込んでプレーできるようになった後、ネガトラ時の相手のパスをカットしたシーンなどに表れているように、守備における彼の動きは「少しの相手の綻びを見逃さずに圧力をかける」勇気が感じられるものでした。
その一方で無理なときはしっかりと急所を埋めるという判断も、少なくとも後半のあの時間帯は上手くできており、ただ若さに任せてイケイケになるのではなく、リスクを判断する力を伴った前に出る勇気というところに大きな価値を感じさせたと思います。
ボールを受ける自信と技術
アンダー世代でも代表に選ばれているだけあって、彼もまた「技術に自信あり」ではあるのでしょうが、上のカテゴリーにおいても怖がらずにボールを受ける姿勢が実に素晴らしいと思います。
そしてその自信の土台になっている技術についても、単純な足技だけでなく「相手を見て、矢印の逆をとる」というプレーを何度となく見せていました。まだ受けるためのポジショニングや動きに改善の余地はありそうですが、「相手を見て、自分とボールをコントロールする」という概念が既にトップカテゴリで体現できるほど身についていることに、頼もしさを感じずにはいられません。
最後まで闘う意志
風間監督に抜擢されて90分間試合が闘いぬける、というだけでも十分以上に凄いことなのですが、この試合ではそれ以上に感銘を受けたシーンがありました。
試合も85分過ぎくらいの時間帯、左サイド奥でボールを受けた対面の萩原がドリブルでカットインを仕掛け、成瀬が身体を当てて対応したシーン。ボールはそのまま中央にこぼれてプレーは続いたのですが、ここで潰された萩原は足を攣り、その場で座り込んで足を伸ばす様子が映り込んでいました。
で、この接触のシーンを良く見返してみると、潰した成瀬のほうも右足を気にしているのです。おそらくこの接触で攣るか攣りかけるかしていたのでしょう。ただ、プレーが続行しているのを見た成瀬は、倒れ込むことなくラインに復帰すると、隙を見て自分で足を伸ばしながらもラインを埋め続けたのです。
対面の選手が倒れ込んで動けない中でも一緒に倒れ込むようなことをせず、プレー続行中は出来る限りのことを行おうとする姿勢。この試合の成瀬のプレーで一番感心したのは、技術でも判断力でも自信あふれたプレーでもなく、この闘い続けることの出来る振る舞いでした。「セルフジャッジ」などと揶揄される振る舞いが多かった名古屋にあって、風間監督の指導でその悪しき習慣が少しずつ風化してきていると感じてはいたのですが、このシーンは彼がなぜ2種登録の身で抜擢されているのか、ここにその答えが詰まっていたように思います。
ハートのサイズでプレーできる
「大切なのは身体のサイズじゃない、ハートのサイズだ」小さな身体でNBAのトップスターに上り詰めた選手の名言です。そしてこれと同じことが、身長165cmと小柄な成瀬竣平がこの試合で見せたプレーにもはっきり表れていたと思います。技術面もさることながら、小さな身体にたっぷり詰め込まれた勇気、判断力、自信、闘志。試合後に風間監督から「彼ができることは分かっていた」と最大限の賛辞を受けた彼に、今後も注目していきたいですね。