“自分達がボールを持っている限り、相手はゴールを決められない”
ロスタイムの決勝ゴールってドラマですよね。最後までドキドキさせてくれて最高です。苦しみながらもジョーの2ゴールでなんとか勝利したグランパス。これで4連勝。4連勝っていつ以来でしょうか………(ググる)………2013年以来5年ぶりですかそうですか。もうあれは5年も前のことか。もういっそのこと、クラブ記録の10連勝を更新してしまえば良いんじゃないかな。ちなみに10連勝は1999年の出来事です。19年前ですかあれは………(絶句)………ついつい加齢臭の漂う回顧トークをしてしまいました失礼しました。
さて、試合内容は中断明けで最も苦しいものでした。負けた浦和戦でも内容的にここまで苦しんではいなかったでしょう。どうしてそこまで苦しんでしまったのか。それはマリノスのグランパス対策により試合の主導権を握られたからです。順番に振り返りましょう。
マリノスの対策とグランパスの守備
マリノスの幅を使ったスペース攻略
グランパスが押し込まれた場合の守備は、4-4の8枚ブロックでペナルティエリアの幅で構え、選手個人の守備範囲に入ってきたボールを防ぐことを基本としています。それに対し、マリノスはピッチの幅を使った攻撃で対抗してきました。ピッチの幅を使われるとは、単純に言えば、ピッチの幅=横方向を広く使った攻撃をされる、ということです。より具体的には、グランパスSBの外側のスペースを基点にDFラインを左右に揺さぶってくる攻撃です。
グランパスのSBの外側を狙ってきたマリノス。ここで仮に宮原の外側でボールを持たれるとどうなるでしょうか。
単純に宮原がチェックに行くと、宮原と中谷の間にスペースが生まれ、マリノスのシャドーストライカーにそのスペースを使われる危険があります。では、そこを空けないようにするとどうなるでしょうか。
宮原が外に出た分だけDFライン全員でスライド(横移動)すると、逆サイドが当然空きます。こうすることで、同一サイドの攻撃が手詰まりしたら空いている逆側へ展開し、グランパスのDFラインを左右に揺さぶって破綻させていく。そんなマリノスの攻撃戦術でした。以上は説明のための模式図でしたので、実際の状況を例に見てみましょう。
前半途中、マリノスに攻められていた状況です。グランパスDFラインは全体でスライドし、小林やネット、逆サイドの玉田まで絞り込んで来ていますが、マリノスの菱形のポジショニングにより斜め方向へのパスコースを確保され、ボールを奪えません。
直後の状況。マリノスは攻撃のサイドを変え、グランパスもそれに合わせ左へ全体がスライドしています。特に注目すべきはネット、前田、玉田の位置で、滅茶苦茶です。これだけ振り回され、そしてボールは奪えず、DFラインとしては決壊寸前のように見えますが、選手の認識はどうも違ったようです。
意外と耐えるグランパスの守備
公式の金井試合後コメント(無料部分)より引用すると
https://inside.nagoya-grampus.jp/inside/detail/index.php?sid=355&cid=102
”結局サイドの裏を取られなければあまり怖くないということ。サイドの裏を取られてからのセンタリングが一番危ないと分かっていました。マリノスは間を締めればサイドに逃げてきます。”
”(松原)健に出た時に右足を切ってしまえばクロスも上がってこないので。”
”ニアに速いボールを入れられないようにということを意識していましたね。”
とのことだそうです。つまり、選手の意識としては、逆サイドを空けるのはもう良しとして、『SB-CBの間(ハーフスペースと呼びます)を締めて、サイドに逃げさせて、ファーへのクロスを入れさせて撥ね返す』だったのでしょう。そうは言いつつもマリノスからボールを奪えなかったグランパスでしたけど、マリノスとしては攻めあぐねてボール保持をしてしまっていた、ということなのかもしれません。
不幸にも失点してしまう
ところが、そうやって『外へ逃げさせよう』としていたのが災いするからサッカーは面白いです。
外に逃げさせようとした結果、早めにチェックに行かず、一瞬だけ空いたシュートコースに、マリノスの松原(得点者)曰く「100年に1度出るか出ないかのシュート」を蹴り込まれました。相手自ら100年に1度=奇跡と言ってしまうようなシュートは、どうしようもないシュートで、こちらとしては不運そのもの。金井には止めるチャンスもあったでしょうけど、前半から狙い通りだった、外に逃げさせる守備をいきなり変えるのも難しかったでしょう。何にせよ、失点シーン以外では、数本の惜しいミドルシュートを蹴られたくらいで、後は中央で撥ね返しきったグランパスでした。そのためには、それだけGKとCBの質が要求されますから、ランゲラック、丸山、中谷頑張った。中谷が22節のDAZNベストイレブンに選出されたのも当然と言うべきでしょう。
グランパスは何故ボール保持できなかったのか
守備でどうにか耐えて1失点に抑え、結果としては勝利しましたが、風間サッカーでは自分達でボールを保持し、相手を押し込むことを企図しているはずで、この試合でも本当はそうしようとしていたはずです。ところがボール支配率ではマリノス59%に対しグランパス41%。つまり、大まかにはマリノスの3分の2の時間しかボールを保持できていませんでした。何故そうなってしまったのでしょうか。
マリノスの即時奪回プレス網に引っかかった
攻撃時に選手の菱形配置を維持しボールを持っていたマリノス。その菱形内でボールを奪っても、即座にプレスをかけられ奪い返される、所謂ゲーゲンプレッシングにグランパスの選手は晒されていました。
マリノスもこれだけ前線に人数をかけているので、ロングボールを3バックの横または背後に蹴られたらカウンターでピンチになってしまいます。実際にその形でグランパスは先制に成功しています。しかし、ロングボールを蹴る前に即時奪回されてしまうとグランパスにとっては厳しい。じっくりビルドアップしようにも、それもできない。ピッチの幅を使ったマリノスの攻撃で、なかなかボールを奪えず、奪ったら即時奪回された、それがボール保持をできなかった要因の一つでしょう。
連戦の疲労でマリノスに走り勝てなかった
仙台、ガンバ、鹿島に勝った試合では、グランパスは相手と比べチーム全体で数km多く走っていました。ところが、マリノス戦ではほぼ同距離でした。
(参考:直近4試合の走行距離比較)
グランパス 116km vs 113km 仙台
グランパス 112km vs 106km ガンバ
グランパス 105km vs 100km 鹿島
グランパス 109km vs 109km マリノス
戦い方や展開の違いなどもありますから、相手より走っていても必ずしも良いとは限りません。しかし、6:4でボールを相手に持たれた上で走行距離が同じというのは、それだけ『相手のボールを追いかけさせられていた』証拠でもあります。サッカーの一般論として、自分達がボールを持って攻めている時は疲労をあまり感じない、とよく言われます。この試合のグランパスの選手達はきっと多大な疲労感を抱えていたでしょう。
小林裕紀の怪我(軽い打撲?)
マリノスから厳しいチェックを受けていた小林が前半25分頃に痛み(恐らく軽い打撲)、そこから明らかに走れなくなっていました。空いたスペースを埋めたりパスを受けに顔を出したりと、小林の担うタスクと責任の多さは尋常ではありません。よく、僕(ラグ)はツイッターで『グランパスの中盤は小林がいなくなった瞬間に崩壊する仕様』と冗談半分に呟いておりますけども、それが悪い意味で現実になってしまいました。風間監督はきっと小林に代えて八反田か和泉を投入したかったはずです。しかしエドゥアルド・ネットもまだ体調万全ではなく、何分まで使えるか定かではありませんでしたから、小林を引っ張らざるを得なかった。そんな状況でもチームトップの11.7kmも走る小林の隠れた鉄人具合には拍手しかありません。
最後に
風間監督としては非常に不本意な内容だったはずですし、選手達も最初からこんな試合展開にしようとはしていなかったはずです。しかし、それでも勝った。やりたい試合内容ではなかったけど勝てた。マリノスのようにピッチの横幅を使って攻撃してくる相手とは相性が悪いグランパスですけども、それでもどうにか勝った。4連勝という結果はチームに今まで以上の確信と勇気を与えてくれるでしょう。連勝はいつか途切れるものですけど、連勝が途切れてもきっと選手達の心は揺らがない。僕達ファンとしても、8月全勝と、降格圏脱出を願って、鳥栖戦と浦和戦を応援しましょう。
天皇杯はターンオーバーでお願いします。(小声)
金井「マリノスは間を締めればサイドに逃げてきます。」
―「自分たちは場所を攻めるのではなくて、人を攻める」と監督は語っていますが、この意味について教えてください。
風間監督「人というのは動きが限られているので。その人の逆を突いて一人を崩してしまえば、組織は壊れるということです。場所というのは、探しだしても空いていない。なぜかというと、空けたくない場所はみんなが潰していくわけですよ。場所を探していくと、だいたいいらないところに行くわけです。だけど、人を崩すとそこが場所になる。だからもし良かったら、練習を見に来てください。」
この二人の発言は面白いなと笑
既に分かり合えてる感じがします
コメントありがとうございます!
金井も監督のリクエストがあったんだろうなあ、ということが伺えるプレーぶりですね。鳥栖のような相手にこそサイドバックの攻撃での貢献が求められるでしょうし、鳥栖戦でも躍動してもらいたいものです。