この試合のみどころ
- 中盤で奪いたいチーム同士の駆け引きに勝て
- サンフレッチェ広島のラストパスを阻害できるか
- サイドを使って攻略できるか
サンフレッチェ広島はどんなチームか
クロスからスルーパス&裏抜けへ
城福浩監督のもと、3年目のシーズンを戦うサンフレッチェ広島は世代交代も進めており、古くから残っていて出場チャンスも得ている選手といえば、青山敏弘と林卓人、佐々木翔、清水航平くらいだろうか。完全なレギュラーといえば青山敏弘と佐々木翔くらいだ。
サンフレッチェ広島の伝統と言えば、サイドからのクロス。
古くは現大分トリニータ監督の片野坂知宏、現U16日本代表監督の森山佳郎というクロスの名手がおり、近年でも駒野友一やミキッチ、柏好文ら、クロスを得意とするサイドアタッカーは沢山いる。しかし駒野友一やミキッチは既にチームを去り、柏好文も怪我で欠いている。残る清水航平も盤石のレギュラーとは言い切れないようだ。
現在のサンフレッチェ広島には、レアンドロ・ペレイラ(190cm)とドウグラス・ヴィエイラ(189cm)という高さもあり、スピードもあるフォワードがいる。しかし、クロスによる得点はあまりないようだ。
第6節のガンバ大阪戦でも、レアンドロ・ペレイラのヘディングシュートはあったが1本に過ぎない。むしろレアンドロ・ペレイラやドウグラス・ヴィエイラの身長は長いストライドで裏抜けする時に活かされているように思える。サンフレッチェ広島の攻撃は流動性が高く、前線の3人がポジションを入れ替えることが多い。(その点は名古屋グランパスと近い部分もある)
ガンバ大阪戦の後半でも何回も見られているように、川辺駿や青山敏弘のパスに前線の3枚が抜けだすという形は要警戒だ。
デュエルの強さに警戒
サンフレッチェ広島というチームを理解する際に、もう1つ忘れられないのがデュエルの強さだ。城福浩監督のサッカーでは特に甲府での指揮以降、デュエル(1対1)の強さを重視する傾向がある。特に後ろの7枚に関してはその傾向が顕著だ。
Sofascoreから、両チームの守備の要でもある荒木隼人と丸山祐市を比較しよう。
- 荒木隼人(引用元:https://www.sofascore.com/player/hayato-araki/976199)
Total duels won |
5.5 (70%) |
Ground duels won |
1.8 (73%) |
Aerial duels won |
3.7 (69%) |
- 丸山祐市(引用元:https://www.sofascore.com/player/yuichi-maruyama/218786)
Total duels won |
3.7 (61%) |
Ground duels won |
1.7 (71%) |
Aerial duels won |
2.0 (55%) |
比較してみると、地上戦ではほぼ互角ながら、荒木隼人の空中戦の競り合いの強さが際立つ。結果的にデュエルでの勝率(1試合あたり)は9%もの差が出ているということだ。このスカウティング結果を踏まえると、不用意に攻撃陣が突っ込むだけではボールを奪われてカウンターを誘発することになる可能性がある、ということだ。ボール回しは大分戦の後半の前半分のように、慎重に行く必要がある。
サンフレッチェ広島の予想布陣
前節ガンバ大阪戦後半は現在4位のガンバ大阪を圧倒する形だった。
そのため、スターティングメンバーはガンバ大阪戦後半の形が基本になるのではないかと思われる。
ただ、少しアレンジは加えている。
- 前節45分の出場に抑えた青山敏弘は先発復帰
- ドウグラス・ヴィエイラの疲労が見えるので永井龍の先発起用を予想
- サンフレッチェのスピードスター、藤井智也は後半からの切り札に
サンフレッチェ広島対策
中盤で奪いたいチーム同士の駆け引きに勝て
Football labによると、サンフレッチェ広島のパス交換の数は以下のようになっている。(引用元:https://www.football-lab.jp/hiro/ranking/ )
- 荒木隼人→佐々木翔 73
- 野上結貴→ハイネル 50
- 青山敏弘→佐々木翔 46
- 荒木隼人→野上結貴 46
- 佐々木翔→森島司 44
- ハイネル→野上結貴 42
- 川辺駿→青山敏弘 41
- 佐々木翔→青山敏弘 39
- 青山敏弘→川辺駿 39
- 佐々木翔→荒木隼人 35
特徴としては、パス交換にFWやシャドウの選手が1人もいないということだ。上位の数字は10位まですべて3-4-2-1(3-4-1-2)の後ろ半分(3-4)の間で回されているものだということだ。
昨年のプレースタイル指標を見ると以下のようになっている。
引用元:https://www.football-lab.jp/hiro/style/?year=2019
注目すべきは、数値的に高い「敵陣ポゼッションの高さ」だ。敵陣でボールを回しながら相手の隙を狙うスタイルだ。
上記のようなDFや中盤のパス回しを自陣で行うのではなく、敵陣内で行っていることが多いということだ。
サンフレッチェ広島のラストパスを阻害できるか
ということは、そのDFや中盤のパス回しを阻害できれば相手のチャンスを阻害できる可能性が高いということでもある。
サンフレッチェは、中盤の守備で奪ったらラストパスを出して前の優秀な3人に託すというショートカウンターがとても多い。
football-labのラストパスのランキングは以下の通り。
- 川辺駿 10本
- 青山敏弘 9本
- 森島司 9本
- レアンドロ・ペレイラ 6本
- ハイネル 6本
川辺駿、青山敏弘、森島司のラストパスを阻害し、裏抜けからのシュートを防ぐかという、中盤のせめぎ合いに注目しましょう。
裏抜け対策としては、そもそもベタ引いて裏のスペースを無くすという手もありますが、前線の決定力の高いサンフレッチェ相手にはそれは禁物です。
大分トリニータ戦と同じような守備を、相手の質が高い分、さらに高い精度で行うことが対策になるでしょう。
名古屋の先発予想
名古屋グランパスの先発布陣は以下のように予想する。フィッカデンティ監督にとっても成功体験だったと思われる大分トリニータ戦のメンバーが中心になるのではないか。
疲労を考慮しての交代と思われる稲垣祥はそのまま先発継続、前節負傷交代の阿部浩之と米本拓司は先発から外れる予想。阿部浩之の代わりはシャビエル、米本拓司の代わりはシミッチが務めると予想する。
闘い方は変わる?
米本拓司を欠くことになると、間違いなく中盤の守備の強度は下がる。そのフォローをいかに他の選手ができるかどうかがキモだ。
中盤の数的優位を作らせるな
名古屋は金崎夢生とシャビエルを除く4-4ブロックで守りたい。
しかしピッチ上には相手も同数いるわけで、見ようによっては4-4ブロックの中央2人(稲垣祥とシミッチ)をサンフレッチェ前線の3人と川辺駿・青山敏弘の2人の5人で挟むこともできるようになる。
局所的に2:5で囲まれると、さすがの名手2人でも分が悪い。ボールをこの位置で奪われると怖いショートカウンターを誘発することになる。
思い出して欲しいのは、サンフレッチェの選手はデュエル:1対1に優れた選手が多いということだ。たとえば上図でいえば青山敏弘がシミッチからボールを奪って永井龍にスルーパスを出したら、おそらくすぐにキーパーとの1対1の状況を作れるということだ。
それを防ぐためにはシミッチや稲垣祥からのパスの出口を整備して、プレスをかわすことだ。場合によってはかっこ悪くてもクリアを選択することが必要かもしれない。セントラルMFの位置でボールを奪われることだけは避けなければならない。
簡単ではないが、同じくプレスがきつい大分トリニータ戦、パスを使って出来たことを、もう一度やれば良いということだ。きっとできると信じている。
もっと最悪の事態
ここで数的不利を解消しようと、シャビエルや金崎夢生が下がりすぎると、より最悪の状況が発生する可能性がある。
シャビエルがセントラルMFの位置まで下がると、サンフレッチェDF(特に佐々木翔・野上結貴)はこのプレスに直接関与しやすくなる。
特にこういうときに下がりすぎる傾向のあるシャビエルがセントラルMFの位置まで貰いに下がった場合、1枚増やすことで余計相手DFを上がりやすくすることになる。
佐々木と野上が押し上げることができるようになると、局面的に7:3の状況ができあがる可能性もある。
だからシャビエル金崎夢生は「深さ」を採ることが必要になる。DFが簡単に上がれない状況を作り上げるしかない。稲垣祥やシミッチから苦し紛れでも前線にフィードが送られるとき、それを受けにいけるように備えるべきなのだ。
サイドに相手を押し広げさせろ
グランパスの4-2-3-1と、トリニータやサンフレッチェの採用する3-4-2-1はそのポジションでミスマッチが起きる。中央では上記の通りサンフレッチェの数的優位を作りやすい。
逆にサイドではグランパスの数的優位を作りやすいということでもある。
サンフレッチェの3-4-2-1の形では、両WBのサイド攻撃も重要な要素になる。
中国新聞「サイド攻撃へ原点回帰 26日の名古屋戦、得点力不足の打開期す」
中盤での攻防が手詰まりになりつつあるということで、サンフレッチェ側もサイド攻撃も重視するということらしい。この戦い方も頭に入れておく必要があるかもしれない。
しかし大分戦の得点はどちらもサイドからの攻略から始まった。マテウス・前田直輝が対面の茶島、ハイネルを押し込むことができるかどうか。さらにその裏にいる野上結貴や佐々木翔が上がれなくなると、数的優位は中央一部でしか作れず、サンフレッチェは苦しい。その状況を作りたい。
サイドのユニット マテウス-吉田豊と、前田直輝-成瀬竣平がどれだけ相手を「剥がして」押し込むことができるか。中央の強度が低くなった分、その役割が重要になってくる。
さてサンフレッチェ広島戦、阿部浩之の欠場の可能性が高い苦しい試合だ。ここを乗り越えられればもう1段階上のチームになれるはず。良い試合になることを祈っている。