3度目の正直。雨の試合3試合目で嫌な流れを断ち切った。最後は川崎戦の時のようにほぼ気合という試合。見てる方も変な所に力が入りますね。
パロマ瑞穂スタジアムからの帰り道「いやー、マリノスはつえーな。やっぱサッカーが綺麗だったわ」と相手を褒めるしかなかった去年。今年は違った。「いやー、名古屋の選手。やっぱりスゲーわ。」胸を張って歩く。
両チームのスタメン
名古屋は前節ケガで途中交代した前田の代わりに阿部が投入され、シャビエルと阿部の同時起用。成瀬に変わりオジェソクが入った。並びはいつも通り。開けてびっくりしたのはマリノスサイド。まさかの3バック。マリノスサポーターもSNSで「なぜ3バックなのか」論争が試合前行われていた。
マリノスの対名古屋式
3バックを採用するチームは通常、守備ラインを減らした分、サイドで数的有利を作りながら前進する。相手守備がサイドに寄ってきたら中央や逆サイドに展開する。相手が人数が不利な状態のままサイドで守備をしようものなら縦に突破して崩していける。確かにサイドの仲川や前田のスピードを活かすための手段として十分ありえるものだろうと感じた。
ただ、この3バックはそれを意図した物なのか疑問だったが、あるマリノスサポーターのSNSでのつぶやき「チアゴを扇原に置き換えたら分かりやすい。433のビルドアップの時の形を配置でやってるんだよ」この言葉でハッとした。もしやポステコグルー監督、名古屋対鹿島を見てこの3バックを選択したな?と。
前節の鹿島戦2失点目。相手の中盤の選手がCB間に降りて名古屋の2トップのプレスをいなし、中盤以降のマークのズレから中盤がオープンな展開を導き出す。最後はサイドを崩して得点、という場面があったからだ。
マリノスは名古屋が442で守備をしてきて2トップがプレスに来ると踏んで、それなら「お前たちが苦手な形を可変せずぶつけて名古屋の攻撃と守備を分断してやるぞ」という対策だったのではないだろうか?案の定、サイドから攻略されるシーンは多かった。オジェソクと吉田である程度封殺出来たのは名古屋といては大きかった。
釣り出せ喜田!抜けろ裏!
この試合、金崎が降りて受ける事に頼らなかった。金崎が降りるときは明確な約束事があったように見えた。
それは「喜田が前に突っ込んだ時」という明確な指標。
喜田を釣り出すために阿部が両サイドに顔を出し、釣り出せれば金崎が受けて米本や稲垣が前を向いて走り出してるサイドに出す。
喜田が釣り出せなければ相手の3バックとウイングの裏に単純にロングボールを蹴ってもいい。
ボール保持にこだわらず、安全な選択肢と、試行回数の多さ。無理に自分たちの型にはめず、相手に合わせて柔軟に対応した。それも阿部浩之という選手がいたからこそできたのかもしれない。
260 – 名古屋は第15節の横浜FM戦で、2018年以降ではチーム最少のパス数(260本)、ポゼッション(30.2%)、パス成功率(66.5%)を記録して勝利。同チームは同期間、パス数が400本以下の試合では1敗しかしていない(10試合:7勝2分)。捷路。
— OptaJiro (@OptaJiro) September 9, 2020
勝手に出来る小休止
前半からサイドの同数を捌いた後ぽっかり空いた中央で待つ稲垣や米本の元へボールがこぼれ、そこから前進、と言う場面があった。そのぽっかり空いた穴が名古屋が「これなら行ける!」という気持ちを保ち続けられる小休止所となった。
ボールを持った瞬間にそこまで強く当たられない事が稲垣、米本のプレーのクオリティを保つ助けとなった。(もちろん稲垣と米本がスタミナお化けという事もありますが。)
リスクを負う。型にハマらないという事。
飲水タイムがターニングポイントという言葉がこの試合ちらほらSNSで出ていた。まさにその通りなのだが、どのように変わったのか?
簡単に言えばいつもの型にハメたブロックを組みながら様子を見て待ち受けるのではなく、「ハッキリと人に人を付ける形」に変えた。もちろん前から人を当てていくとサイドの人数で名古屋は負けてしまう。そこで阿部の登場だ。
阿部は相手のパスコースを切りながら的確にサイドへ誘導。誘導できない時はすぐにマテウスやシャビに下がる指示を出す。そして相手を誘導する時は自分が最速で詰めに行く守備のスイッチ係になった。
阿部がいる事によって守備時に「どこで取るのか?」「いつ取るのか?」が明確になった。試合中何度も「サイドがポイント」や「サイドだけ強く!」と言っている姿や、ベンチに下がった後でもピッチに指示を出している姿が印象的だった。
いつもの型にはまらず、取る所を決めて必要なリスクは背負いながら能動的にボールを取りに行く。チームに一番必要だった事が阿部が入ることによって補われた。ピンチになった場面は1対1に無理やり持ち込まれた時だけだった。
得点シーン(2点目)
2点目を振り返ろう。
シャビエルに対しては、前半のシュートの印象がついていたはず。実際マリノスディフェンダーの注意はシャビエル自身に向いていたはずだ。その逆をとってパスを選択したシャビエル。相馬の外からの全力デコイ(おとり)ラン。金崎の完璧なつぶれ役。マテウスの存在の消し方。前線四枚が全員与えられた役割をこなした結果の得点。後ろと前が分断されてもしっかり残った選手で取りきる。マリノスが一番やりたかった点の取り方で名古屋が点を取った。
失点時
これもおまけ程度に失点時の振り返りを。
オジェソクのパスミスに見えるがその前の丸山の選択でも失点は防げたのでオジェソク1人の責任にするのは少々酷だ。
丸山はオジェソクにパスを出す前、前線の選手が走り出すかどうかを見ながらかなり長い時間悩んでボールを持っていた。
前でサントスと競り合った中谷は当然いない。そうなると、パスの選択肢は前線かオジェソクか吉田かランゲラック。
吉田のサイドは仲川とマルコスが寄っていた為、選択肢から外れる。そうなるとオジェソクかランゲラック。丸山がギリギリまで前線にパスを送ろうとサーチしていた状況を考えるとマテウスはすぐには降りてフォローには来れない。となるとオジェソクにボールが渡ったとしてもオジェソクが取れる選択肢はランゲラックに戻すか、前にボールを運ぶ。の二択。丸山はランゲラックにも返さずに、前線に蹴りだしもしない。
そんな状況で自分にボールを渡したという事は丸山からのメッセージは「ランゲラックに戻さずに前にも蹴るな」という用にオジェソクは捉える事が出来る。だからこそ前に運ぼうとした。安全な選択肢を取らないという事は何かしらのメッセージがあるという事になるのがサッカーだ。
もちろん技術があり、パスミスもなければおこらなかった失点だが、こういう風に考えると特定の選手のミスとは言い難い
良かった所
- 阿部の復帰による型にはまることからの脱却
- 中3日あると選手がだいぶ回復してること
- 試合は苦しいけれど選手自体のフラストレーションはそこまでたまってそうにない事。
心配な所
- 動けなくなるまで酷使する選手起用(変えたくないとはいえオジェソクの強行はかなり怖かった。大けがに繋がる)
- 質で上回られた時の対策が「気合」しかない事。
最後に
川崎戦にしろ、今回のマリノス戦にしろここで心が折れたらやばいという重要な試合を「気合」で乗り切る名古屋。見てる方は具合が悪くなりそうなくらいハラハラしますね。
叫びたい気持ち、選手に声をかけたい気持ちは皆一緒ですが、まだまだ厳戒態勢の中での試合です。スタジアムや外で見るときは「約束事」は守って応援しましょう!