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マッシモ名古屋はいかなる意味で”堅守”だったのか? ~チーム内変化とチーム間比較から~ NeilSのシーズンレビュー

はじめに:ひとくちに「堅守」とは言うけれど

2020シーズンの名古屋グランパスの持ち味をひとことで表現するのなら、多くの人が「堅守」を挙げるのではないでしょうか。

28失点はリーグ最少であり、小中先生のシーズンレビュー(データで振り返る:2020名古屋グランパスレビュー)にもありましたが、平均失点が1.0を下回る史上初のシーズンともなりました。 また、年間17試合のクリーンシートは「年間34試合制となって以後のJリーグ」という条件下で、2008年大分と並び最多タイとなりました。さらにランゲラック選手は浦和の西川選手がもつ2014年の記録を抜き、個人としての無失点試合数の新記録を樹立しています。

最小失点&最多クリーンシートという守備面の最終的な「結果」は非の打ちどころがないもので、称賛に値するものです。 しかし小西社長は最終節後挨拶(代表取締役社長小西工己 広島戦後コメント)で以下のように指摘しています。

「戦国時代には「一夜城」というものがありましたけど、サッカーの世界はそう甘くないと思っています」

この言葉の通り、守備組織全体の最終成果たる「失点」の減少の裏には、日々の試行錯誤の積み重ねがあったはずです。

失点という最終アウトプットの変化だけを評価するのではなく、守備の各プロセスにおけるスループットの変化をデータから評価することにより、彼らが堅守を実現させるために行った努力の内実をより深く理解したい、というのが本記事の目標となります。

そこで、JリーグでNo.1の「堅守」に結実した名古屋の守備組織の特徴や変化をデータから捉えるために、本記事では以下の二つの角度からの「比較」を行います。

  1. 「タテ」の比較:守備に関する指標の推移を確認し、シーズン間&シーズン内の時系列変化をとらえる
  2. 「ヨコ」の比較:他の「堅守」といわれるJ1クラブと、守備に各局面におけるKPIを比較し、名古屋の守備組織の特徴をとらえる

風間八宏からマッシモ・フィッカデンティへの現場指揮官の交替は、ファミリーだけでなく日本サッカー界に関わる誰から見ても、非常に振れ幅の大きいスタイルの変化を伴うものと言ってよいものです。「攻守一体のサッカー」というマジックワードをそこに添えて一貫性を演出してはみたものの、そこには疑うべくもない「守備重視」への方針転換がありました。

その方針転換の結果か、失点数という最終アウトプットを劇的に改善されています。それでは、具体的に風間体制とマッシモ・フィッカデンティ体制では守備のどの局面において特に改善が見られたのでしょうか。 さらにいえば、2020シーズン内でどのような成長・変化があったのでしょうか。それを明らかにするのが「タテ」の比較です。

また、名古屋の誇る守備組織が、失点の少なさが上位の他クラブと比べてどのような特徴や強みを持っているのかも把握していきます。

ひとくちに「堅守」といっても、その守り方や力の入れ所にはバリエーションがあるはずです。

守備は敵チームがボールを奪った瞬間に始まります。相手がゴールに迫るべく侵攻してくる過程のどの段階で、名古屋の守備は強みを発揮しているのでしょうか 他クラブとの比較から、そのような名古屋の守備の強み/弱みを明らかにするのが、「ヨコ」の比較です。 それでは、さっそく分析に移っていきましょう。

タテの比較:時系列変化からみたマッシモ名古屋の「堅守」の構築

それでは、まず「タテ」の比較から行っていきましょう。2019~2020年の時系列変化をデータから追っていきます。

2019~2020年の時系列変化

上の表は、2019年を風間体制時(26試合)とマッシモ体制時(8試合)に区分し、2020年は17試合ずつ前後半に区分したうえで、各時期の攻守の主要指標の値の推移を記載したものとなります。

本題の守備面の変化を確認する前に、少し攻撃面についても確認してみましょう。攻撃に関しては、(おそらく多くの方が実感しているだろう通り)殆どの指標で2020年は2019年の風間期より数値上のパフォーマンスは下がっています。

得点、ゴール期待値、シュート数、シュート到達率(=シュート回数/攻撃回数)、ペナルティエリア侵入率、AGI(Fooball LABの独自指標:「攻撃の際にどれだけ相手ゴールに近づけたか」を表わす)は軒並み低下し、数値上改善された指標はシュート枠内率(5%アップ)だけです。

しかし平均勝点の上昇が示すのは、2020年はこの攻撃力の低下というコストを、守備力の改善によるリターンが大きく上回った年である、ということです。それでは「風間前監督時に比べて、2020年の名古屋の守備は何が一体改善されたのか?」というメインの問いを検証していきましょう。

守備面の統計指標のうち、風間体制時と2020年を比較したときに大きな改善トレンドがみられたといえるものを緑色でハイライトしています。

顕著な変化の要点は以下です。

  • 失点だけでなく、被ゴール期待値自体も低下しており、2020年通年での被ゴール期待値は1.10とリーグ二番目の少なさである。また、風間体制時と違い、期待値よりも実際の失点が少なくなっているのが、マッシモ就任以降の特徴である。
  • 被シュート枠内率・被枠内シュートの失点率という「シュートを打たしてしまった後」の数字が改善している。
  • こちらが犯してしまうファウル数が監督交代以後は下がり続けており、2020年後半は風間体制時に比べて一試合平均で3回以上少ない。

これらをふまえて、「風間前監督時に比べて、2020年の名古屋の守備は何が一体改善されたのか?」というメインの問いへの答えをひとことでまとめると、「侵入を許した「後」の自ゴール前での最終局面での対応が改善した」と言えるのではないかと思います。

ペナルティエリアに侵入されたり、シュートに持ち込まれたりする確率自体は、実は風間体制時からそこまで顕著な変化はありません。

(本筋からはそれますが、2020年リーグトップレベルだったペナルティエリア被侵入率や被シュート到達率といった項目については、実は風間体制時とあまり違いはありません

つまり、シュートを打たれる「前」の段階の守備に関してはすでに風間体制時にある程度の水準が充足されていた、ということです)

しかしシュートを打たれること自体は回避できなくても、より「質が低い」シュートを打たせることができていたのが2020年の名古屋だといえます。

風間体制時には 失点期待値 < 実失点数 であった関係が、マッシモ・フィッカデンティ体制になってからは失点期待値 > 実失点数と反転したのはこの自陣ゴール前の強靭な粘りがもたらされたからだと推測できます。

この変化の要因として、稲垣・丸山・中谷・ランゲラックの全試合出場組を中心とした個人の頑張りは間違いなくあるでしょう。 しかしそれだけでなく、4-4の並びの守備ブロックの形成と絶え間ない再構築についての練度が向上し、ある程度押し込まれてはいても前を向いた状態で守備ができる時間帯が増えたことも理由として挙げられるのではないでしょうか。

マッシモ・フィッカデンティの母国であるイタリアでは、ゾーンディフェンスに関する「ディアゴナーレ」や「スカラトゥーラ」という原則を個人戦術として叩き込むことが重視されます。 その要諦には、1人が抜かれても常に次の1人がカバーにいけるような正しい「守るための立ち位置」をチームの各員がとっていることへのこだわりがあります。

予期しない「後追い」で対応せざるを得ない状況が生じたときにファウルがかさむことを考えると、ファウル数の減少はそういった守備組織の練度向上を裏付けるデータであるともいえそうです。

ヨコの比較:他の「堅守」クラブとの差異から見えてくる名古屋の守備組織の特性

前項では風間体制時から2020年にかけてのチーム内変化を検討し、マッシモ・フィッカデンティがチームに根付かせたものを明らかにしました。続いて本項においては、他のクラブとの比較から2020年名古屋の守備の在り方の特徴を描き出すことを企図して分析を進めます。

失点が多かったクラブと比較しても「良いところ」しか浮き上がってこないのは目に見えているので、名古屋と同じように「堅守」といえるクラブとの比較を行っていきます。そこで、失点数上位4クラブとして名古屋(28失点)のほかに、川崎(31失点)、セレッソ(37失点)、広島(37失点)を加えて比較を行っていきましょう。

比較のアプローチとしては、守備の各プロセスにおけるKPIを設定し、その値の4クラブの間での差異を確認していきます。すなわち、相手がボールを奪い攻守交替が起こった瞬間を起点して、最終的にゴールに迫るまでの攻撃のプロセス

  1. 相手ゴールまで30m以内までの侵入
  2. ペナルティエリアへの侵入
  3. シュートを打つ
  4. シュートを枠内に飛ばす
  5. ゴールを奪う

と段階的に捉えたうえで、それぞれの攻撃側の狙いをどれだけ防ぐことができたのかについて、5段階の「守備側のねらい」と、そのKPIを定義しました。

5段階の「守備側のねらい」とKPI

5段階のKPIを各クラブについて比較してみましょう。
KPIの4クラブ比較
比較結果は上表の通りです。

Step1:30mラインに侵入されるか
Step1:30mラインに侵入されるか

第1段階の「ゴールに近づけさせない」というねらいについて評価してみましょう。

これについては名古屋は、川崎や広島に比べてそこまで高いパフォーマンスを発揮できていません。10回攻めてきたら3回しか自ゴールから30m以内(アタッキング・サード)に近づかせない川崎に対し、名古屋は4回弱は同ラインへの侵入を許している計算になります。意外なことにセレッソはリーグ最下位です。ロティーナ監督(当時)の守備組織構築が評価されていましたが、かなり相手を引き込んだ状態での守備をしていることになります。

Step2:ペナルティエリアに侵入されるか
Step2:ペナルティエリアに侵入されるか

第2段階のKPIとしては、30mに侵入を許してしまっただけでなく、ペナルティエリア内への侵入を許した確率を評価しています。

この点については、名古屋は堂々のリーグ1位です。マッシモ名古屋の守備組織を相手にした場合、アタッキングサードへの侵入に成功したとしても、そのままペナルティエリアに侵入できる確率は4回に1回以下しかないことになります。

ただし、比較対象となっている3クラブも軒並み近い水準にあり、ここが最少失点につながる本質的な差を生み出しているわけではなさそうです。

Step3:ペナルティエリアのなかからシュートが打てているか
Step3:ペナルティエリアのなかからシュートが打てているか

続いて第3段階のKPIとして、30mに侵入を許してしまった上で、シュートにたどり着く確率を評価します。

この指標についてもマッシモ名古屋の守備組織はリーグトップの広島に肉迫する値でリーグ2位となっています。どのクラブも被シュート到達率がPA被侵入率より軒並み数値が高いことは、ペナルティエリア侵入を諦めた相手がエリア外からシュートを打ってくるということを考えれば当然ですが、そういったペナルティエリア外を含めた敵のシュート機会全体を低く抑えられていることがわかります。

「タテ」の比較の項でも確認したように、これら第二・第三のKPIに関してはある程度「風間体制でもできていたこと」を継続できている結果がそのままリーグ上位となっています。マッシモ・フィッカデンティが大きく改善した部分の相対的評価を問われるのは第四・第五のKPIです。

Step4:シュートを枠内に打たせているか
Step4:シュートを枠内に打たせているか

第四段階のKPIとしては、「シュートをどれだけ枠内に打たせないか」を評価しています。

この点に関して、名古屋は0.265でリーグトップの数字となっています。また、他の3クラブとの値自体の開きも大きいことから、「シュートを枠内に打たせないこと」が他の「堅守」クラブと比べたときのマッシモ名古屋の大きな強みの源泉となっていると言ってよいと思います。

Step5:枠内をどれくらい防げているか
Step5:枠内をどれくらい防げているか

第五段階のKPIとしては、「枠内シュートのどれくらいを防げたか」を評価しています。

この点に関しても、トップのセレッソの後塵を拝してはいるものの、枠内シュートの失点率0.238はリーグ2位で、0.310の川崎や0.331の広島とは大きく差をつけることができています。

ミッチェル・ランゲラック選手の素晴らしいパフォーマンスがこの主因であることは疑うべくもありませんが、同じくミッチが正GKであった2019年と比べてもこの数値が改善していたことは前項で確認した通りです。

シュートを枠内に飛ばされたとしても、コースは限定したり、身体を寄せて強いシュートを打たせないようにしたり、という守備組織全体の改善がその背後にはあるでしょう。

以上が、守備の各局面における「ヨコ」の比較となります。

これらから名古屋の守備を総評するならば、守備の各ステップKPIのリーグ内順位が11位・1位・2位・1位・2位となっている通り、「自陣深くへの侵入を防ぐ」という第一の防波堤の強度はそこまでではないものの、自陣側1/3のゾーンに侵入を許した後については、まぎれもなく2020年の名古屋はリーグトップの堅守であった、と結論付けてもよいのではないでしょうか。

継続すべき名古屋の守備の長所

「タテ」と「ヨコ」の両面の比較から分かった通り、名古屋の堅守は単に最終失点が少ないというだけでなく、自陣深くに侵入されてからの各局面で高いパフォーマンスを見せられています。

つまり、風間体制時に既に高水準であった

  • 「ペナルティエリアに入らせない」
  • 「シュートを打たせない」

点はそのままに、マッシモ・フィッカデンティが

  • 「質の良いシュートを打たせない」

最終局面での強さを付加したことで、堅牢な守備組織が完成されたといえます。

木本・長澤・森下の加入をはじめとして人員の入れ替えがあっても、あるいは新たな戦術的オプションへの取り組みをするとしても、これらの強みは小西社長が言うような「名古屋城の石垣」として維持していくべきでしょう。

2021年の名古屋の守備の課題(=伸びしろ)

最少失点かつ最多クリーンシートという素晴らしい「結果」を残した2020年のマッシモ名古屋の守備ですが、改善点がないというわけでは勿論ありません。 以下では、現時点での課題であり、今後伸びしろとなりうる部分を論じていきます。

インターセプトの少なさ

「ヨコ」の比較の段においても少し触れましたが、名古屋は同じ1試合平均1失点以下の川崎と比べると、そもそも「ゴールに近づかせない」という点によっては改善の余地があります。つまり早めに網を張ってビルドアップ段階で相手からボールを奪う、ということはあまりできていないということです。

(厳密にいえば「できていない」というよりは4-4の守備ブロックの形成・維持を最重要視しており、カウンタープレス等の即時奪回戦略を「重視していない」のかもしれませんが)

この傾向は、インターセプト数にも表れています。

上図は、失点数が少ない4クラブの1試合あたりの平均インターセプト数と、そのポジション別内訳を並べたものです。名古屋はセレッソと並び、インターセプト数がリーグ最下位(1試合平均11.35回)となっています。

相手のパス回しを早めの段階でうまく阻害できていない、現状の名古屋の守備の課題が反映されている数字です。他のクラブと比べてFWのインターセプト数が少ない(1試合あたり平均0.353回:リーグ最下位)ことも特徴で、前線で相手のパス回しを「引っ掛ける」ことはできていないことがわかります。

ここで「インターセプト数が少なくても最終的に失点が少ないのならばよいのではないか」という反論も考えられるかもしれません。

確かに全ての試合でグランパスが先行逃げ切りの展開に持ち込めるできるのであれば、その反論は妥当します。しかし問題なのはビハインドの展開を強いられたときです。守備に関する指標のうち、ビハインドから追いつく際に非常に重要となってくるのがインターセプト数なのです。

(手前味噌で恐縮ですが)私が以前執筆した記事

【追加データ検証】マッシモ名古屋(とロティーナセレッソ)が前半先行されると追いつけないのはなぜか

では多変量解析により、前半をビハインドで終えたチームが最終的に勝ち点を獲得するうえで統計的に有意な影響を与える重要な要因のひとつとして、インターセプト数が見出されています

実際に、2020年の名古屋とセレッソ(インターセプト数最下位)は成績自体は上位であるのにもかかわらず、「前半をビハインドで終えた試合が全て勝点0」というクラブでもありました。

2021シーズンはACLを戦うことによる過密日程に加え、各クラブの名古屋対策もより深化してくることが予想されます。ゲームプラン通りに進まない試合も増えるでしょう。

ビハインドの展開になったときにそれを覆すような、「前から引っ掛けに行く守備」が必要になってくると思われます。

フィッカデンティ監督は2020年のはじめに「理想はリバプール」と発言しましたが、クロップ顔負けのカウンタープレッシング(”ゲーゲンプレス”)をひとつの戦術的オプションとして仕込めるかどうかも、2021年のカギになりそうです。

空中戦の弱さ

FW/DFの空中戦勝率
上のグラフには、今シーズンのJ1各クラブのFW/DFの空中戦勝率がプロットされています。

名古屋は湘南と並び、このグラフの左下の極に位置しており、少なくとも今シーズンに限っては「空の戦いの弱者」であったことが分かります。

この対空の弱さがありながら、最少失点を記録した組織力は褒めねばなりませんが、弱点は補強するに越したことはないでしょう。

そこで着目されるのが、新加入選手の役割です。
新加入選手を合わせた空中戦勝率
木本選手は空中戦勝率66.0%を誇り、今シーズンのレギュラーCBである丸山・中谷両選手を上回る勝率を記録しています。また、攻撃力に注目が集まりがちな森下龍矢選手も今シーズン右SBのレギュラーを争ったオ・ジェソク選手や成瀬選手よりも空中戦を得意としている選手です。したがって対空面に関していえば、新戦力の加入はプラスをもたらす可能性が高いと思われます。

ちなみに上のグラフで見たFWの空中戦勝率は、単に攻撃に関連する数値としてだけではなく、ロングボールやクリアによる陣地挽回の成否を通して守備にも間接的に関わってきます。

実際に金崎夢生選手を怪我で欠いた11/11のアウェイ広島戦以降の7試合では、クロス成功率が14.9%とリーグ最下位であっただけでなく、ロングボール成功率もリーグ14位の46.3%と低調でした。この問題に関しては、現時点で判明している前線の補強(柿谷選手と齋藤選手?)は解決策にはならないので、かつてのケネディのようなタイプの外国人FWの電撃加入でもない限り、2021年に持ち越しになる可能性が高いと思われます。

※山﨑凌吾選手は長身ですが、サポートがない状態でハイボールのターゲットとなることは不得手であるように個人的に思っています(むしろ周りと連動した崩しのシーンで持ち味が出せる選手に見えます)。

「100%の阿部浩之」の躍動への期待

現状の守備組織の弱点を埋めるのは、新戦力だけではありません。個人的には、阿部浩之選手の『守備の上手さ』が発揮されることによって、さらなる守備力の向上、特に前から絡め取る守備の改善が見込めると思っています。

今年加入した阿部浩之選手のプレーのクオリティの高さは誰もが認めるところですが、本人も「来シーズンは今シーズンの悔しさを晴らしたい」と不完全燃焼感を滲ませている通り、


7/22での大分戦での怪我の影響もあり、彼の実力を遺憾なく発揮できたとは言い難いシーズンとなりました。

阿部選手の良さとして、パスセンスやミドルレンジからのシュートを含めた決定力、そして位置取りの妙など、攻撃面で違いを生みだせる能力についてはもはや異論はないでしょう。しかし同時に彼は、中村憲剛選手が絶賛するほどの『守備の上手さ』をもつ選手でもあります。

戸田和幸さん・中西哲生さんが憲剛選手にインタビューしている以下動画(7:20あたり~)では、憲剛選手が阿部選手の守備のうまさについて力説しています。

川崎Fの最少失点優勝を支えた「ブレイク」の意識と「リプレイ」されなかったベガルタ仙台戦の守備。【中村憲剛インタビュー2/4】

  • 敵DFのパスの出しどころがいつの間にか「無くなって」しまうようなパスコースの消し方のうまさ
  • いわゆる「アリバイ守備」ではなく本気で獲りに行く迫力
  • 一度プレッシャーに行って外された後も落ちないプレスバックの速度

の3点について、あの中村憲剛が阿部の守備の上手さを激賞しているのです。

また阿部選手の守備のすごさは、本人自身の守備能力の高さだけでなく、読みと声を駆使して周りを効果的に動かせる点にもあります。

ホームでの横浜FM戦のゆってぃ氏のレビュー(URL:2020年J1第15節 横浜F・マリノス戦マッチレビュー 3度目の正直。 #grampus #fmarinos)でも、その点について細やかな解説がなされています。

「阿部は相手のパスコースを切りながら的確にサイドへ誘導。誘導できない時はすぐにマテウスやシャビに下がる指示を出す。そして相手を誘導する時は自分が最速で詰めに行く守備のスイッチ係になった。阿部がいる事によって守備時に「どこで取るのか?」「いつ取るのか?」が明確になった。試合中何度も「サイドがポイント」や「サイドだけ強く!」と言っている姿や、ベンチに下がった後でもピッチに指示を出している姿が印象的だった」

実際に、阿部選手の存在が相手の効果的な攻撃を阻害していることは、データからも読み取ることができます。

  • 「守備の際にどれだけ相手を前進させなかったか、相手を自陣ゴールに近づけなかったか」を表わす指標であるKAGI(参考URL:KAGI,AGIとは | データによってサッカーはもっと輝く
  • ペナルティエリアへの被侵入率(=敵のペナルティエリア侵入回数/敵の攻撃回数)
  • 地上戦におけるDFのデュエル勝率

を①阿部選手欠場(9試合)、②阿部選手が45分以下出場、③阿部選手が46分以上出場(14試合)、の3つの場合に分けて比較してみます。

上の表から分かるのは、阿部選手の出場時間が長いほど、KAGIが高く(=相手が自陣ゴールに近づけさせず)、ペナルティエリアに侵入される確率が低くなり、DFの地上戦勝率が高くなっている、ということです。

(ちなみに攻撃面に関しては、阿部選手が長く出場しているとロングボールを使わずに相手のペナルティエリア内に侵入できる確率が高まっていることが分かります)

憲剛選手が高評価するような阿部選手の「コースを消す力」は、敵が直線的に名古屋ゴールに向かうことを阻害すると同時に、守備陣にとっての次の「狙いどころ」の予測可能性を高くすることでその後のデュエルを有利にしているのではないでしょうか。

阿部浩之の出場時間における各種指標

巻き返しを図る阿部選手が2021年に本領を発揮することができれば、敵兵が名古屋城の本丸に攻め込んでくる前の早い段階・高い位置で、攻撃の芽を摘む機会が増えてくると考えられます。

むすびにかえて

以上、本記事ではマッシモ・フィッカデンティ率いる現在の名古屋がいかなる意味で「堅守」であるのかを、タテ・ヨコの比較を用いてデータから明らかにしてきました。

みなさんの感想はいかがでしたでしょうか。「そうそう、これ予想通りだよ」というデータもあれば、「あれ?印象と違うなぁ」というデータもあったのではないかと思います。

瑞穂で、トヨスタで、あるいはDAZNで、各々が自分の「眼」で見て記憶していた印象との一致や差異を楽しむことができるのが、データから振り返ることの効用なのではないかと私は考えています。

失点数の減少という最終的な成果だけでなく、守備の各局面での指標の変化を多面的に追うことで、2020年の選手やスタッフの努力の成果をより違った形で理解できるのではないか、と考えてこの記事を書きました。

ですので、本記事の分析が、少しでも皆さんがマッシモ名古屋の守備をより深く&より楽しく観ることの一助となれば、それを上回る幸せはありません。

今年も名古屋の勝利を、Jで、アジアで、ひとつでも多く見られるように、一緒に応援しましょう。

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About The Author

NeilS
子供のころからグランパスのサポーターで、趣味でたまにJリーグのデータ分析をしています。
歴代の在籍選手の中でも特に中村直志選手と玉田圭司選手に心を奪われています。

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