こちらの原稿は4月3日の未明に頂いていたのですが、試合当日はプレビュー、試合翌日はレビューがあるので、4月5日の公開になってしまいました。ラグさんごめんなさい。でも試合ない日のほうがしっかりと読んでいただけると思うし、それだけ価値がある記事だと思うので是非お読み下さい。
代表ウィークの最中、皆さんいかがお過ごしでしょうか。僕はついうっかり「なんか書きますわ」的な呟きをしてしまったばかりに原稿を書いています。そして本当なら28日(日)か29日(月)あたりに公開するつもりだったのに、書く気にならなかったとか仕事が忙しかったとか言い訳色々ありましたが見事に書き終わらず4月2日の今に至っております。どうしてこんなの書くって言ってしまったんだ(それは僕にもわからない………)。
………さて、気を取り直して、今年のグランパス、去年以上に固いですよね今んとこ。その守備力について、「DAZN経由で見てるだけでもわかること」だけを書いて説明しようというのがこの企画です。たぶん、読み終えた方が「そんなん言われんでもわかっとったわ」と思うと思うんですどね、まあいいじゃないか、付き合ってくれよ。そういうわけで本題に入ります。
基本の守備陣形
まずは基本を抑えておきましょう。自陣に撤退して4-4-2で守備セットする場合、この配置が基本となります。
で、相手の配置によってマッチアップが変わります。細かくし出すとキリがないので、対4-4-2と対3-4-2-1の場合を例として見てみましょう。
相手のサイドハーフはこっちのサイドバックが、相手のサイドバックはこっちのサイドハーフが対応する、というのがポイントです。
3バック相手だとこんなかんじ。相手のウィングバックをこっちのサイドハーフで対応する、相手のシャドーをサイドバック・センターバックの近い方が対応するというくらいで、対4バックと比べても、配置は変わりません。基本を踏まえた上で、各ポジションの守備を見てみましょう。
トップは中切り&カウンター要員
こちらのトップ二枚は相手CB→CMFへのパスコースを阻害しつつ、やんわり前プレ。ボール奪えなくてもOK、外(サイド)へ相手がボールを展開してくれたらヨシ! 中切って外誘導、それが仕事です。あとは主に山﨑が前に残り、柿谷は守備やビルドアップに落ちたりしつつ、カウンター時のボールの収め役として頑張るのが二人の仕事です。
中盤センターは気合で幅広く
中盤の選手としてJリーグ屈指の走力・守備力を誇る二人が構えるグランパス。二人を比較すると、米本の方がボールへの寄せ・プレッシングのスピード・強さに優れ、稲垣の方が攻守両面でのスペース管理に優れている印象です。
そんな二人、特に相手のCMFにボールが入った時には、まず米本が前にプレスし、稲垣が米本の空けたスペースを管理する。もし米本が剥がされても、稲垣が気合で時間を稼ぐ内に米本がスペースに帰ってくる。基本的にはその繰り返しです。片方チャレンジ、残りがカバー、それを早く強く、気合でやり続ける。が、がんばれ~……。
サイドハーフは前から後ろまで走る
サイドハーフは、カウンター時に前に行くカードをちらつかせることで、相手サイドバック・ウィングバックの攻撃参加を阻害しつつ(ピン留めとか言いますね)、こちらが押し込まれたら自陣最後尾まで下がって対応。そしてカウンター時には最前線までダッシュ。
今のグランパス・サイドハーフには、何よりもこの「最前線から最後尾まで走り切る体力」と「攻守切り替え時のスピード」が求められています。という文脈でなら、純粋な走力体力に優れる相馬マテウスがスタメンで使われ、前田や斎藤学がベンチスタートなのも頷けるのではないかと。
今のマッシモ・グランパスの生命線はこのサイドハーフで、彼らの走力と攻撃力とがないとマジでどうにもならんことになると思われます。大変だろうが頑張って欲しい………。
サイドバックはサイドハーフと連動
原則として相手SH・WGをケアするグランパスSB陣。対面の相手が外に出たり中に入ったりしても、基本的にはついて行って相手のマークを外さないようにします。それならば、相手としてはグランパスSBを釣り出して、空いたスペースを使えば良いじゃん………ということになるわけですが、SBが空けたスペースはSHが死ぬ気で埋める。それがグランパスのサイド縦関係だ! 相馬、そのスペース埋めが去年と比べやたら上手くなったんですよね。マッシモ調教の賜物っぽいんですが、なんなんですかねこれ。そういう意味ではマッシモがマジですごいのかしら?
センターバックは「ヤバい」位置を潰す
センターバックは基本に忠実、危ないエリアに侵入されたら前向きな守備(インターセプト、相手に前を向かせないプレッシング等)をします。丸山、中谷という日本代表級の実力者がいるから安心!
以上の動きをリアルタイムで組み合わせる
相手もボールも動き続けるのがサッカー。以上で述べたことは、実際にピッチ上で起きていることの局所的な切り出しでしかありません。実際には、相手の動き、ボールの動きによって各選手が各々のタスクをこなしつつ連動して=組み合わせて、チーム全体としての守備を構築しています。
去年途中からのグランパス守備のすごさは、その連動・組み合わせ部分ではないかと思っています。誰かがチャレンジしたら別の誰かがしっかりカバーする。チャレンジ&カバーという基本を、とんでもない速度と強度とでやり続ける、それがマッシモ・グランパス守備の基本ではないでしょうか。イタリア式に言えばディアゴナーレ&スカラトゥーラを愚直にやり続けてるってことなんだと思いますが、それを選手に仕込んだマッシモはけっこうすごいし、90分やり切………いや、あんまやり切れて無いけど………だいたい無失点に抑えている選手達はスゴイ。
編注:ざっくりとした解説はラグさんのもので良いのですが、ディアゴナーレ&スカラトゥーラというイタリア流の守備をもっと知りたい場合は、 守り方を知らない日本人 日本サッカーを世界トップへ導く守備のセオリー の一読をお勧めします。
では、グランパスの守備を崩すには
チャレンジ&カバーをやり続けるグランパスですが、その大前提として、「地上戦の一対一で相手に負けない」が必須条件だと思われます。つまり、相手選手にドリブルで1~2人剥がされたら一気にやべーことになるわけですが、そこで抜かれないor抜かれても追い付けちゃう選手を揃えている。好意的に言えば選手の長所を活かした守備戦術なわけですよね。
しかし、そんな選手がうっかりドリブルで剥がされたら本当にヤバいことになるし、チャレンジ&カバーはいいけれど、カバーに来た選手まで剥がされたらそうとうに危ないことになると思われます。
つまり、グランパスの守備を崩すならば、グランパス守備陣を数人同時に混乱させるか、もしくはドリブルで突破しちゃうか、その辺が必要になると思います。国内でそれがやれるのどこでしょうね。まあ川崎さんなんでしょうね。負けねーぞコンチクショウ。
もう一つ。とにかく帰陣のクッソ早いグランパスよりも更に早くカウンターで刺されたら、それはどうしようもないでしょうね。なので「有無を言わさず早い系の選手」を要するチーム相手には苦戦を強いられそうです。
おまけ 木本クローザーシステム
この守り方で、構造的に穴になりがちなのがCB-CMF間のスペース。そこを木本で埋めちゃって、木本を相手の高い奴に競らせ、その辺のヤバいスペースにきたボールをケアさせる、それがここ数試合の木本クローザーシステムだ!
木本的には不本意かもしれませんし、あんま細かい守備連携を仕込んでるわけでもなさそうなので、木本が常になんか悩みつつプレーしているようにも見えますが、鹿島戦みたいに効くときはめっちゃ効いてるので、頑張って欲しい。
最後に
如何でしたでしょうか。DAZN見てりゃ、こんなん言われなくてもわかってるよって感じだったでしょうか。だと思いますが、もしわかってないって方がいたら、多少なりとも役に立てばいいなーという感じです。
とにかく、自陣撤退→チャレンジ→カバー→再撤退→チャレンジ→………と強く早くやり続けるのがマッシモ・グランパスの強み。欧州基準だとこんくらいできてて当然ぽいけど、Jリーグではなかなか見られないその守備機能をちゃんと見よう! だいたいそんな感じ