サッカー中継を見ていて、選手のことをボランチだとかサイドハーフだとか、専門用語がいっぱいで、わけがわからなくなってしまうことがありますよね。
そんななかでこんな投稿が。
こちらのリクエストにお応えするカタチでポジションについて語っていきたいと思います。長くなると思うので分割でご紹介していきます。
サッカーのキホン シリーズ
サッカーのポジション(1)MF #サッカーのキホン | グラぽ
サッカーのポジション(2)DF #サッカーのキホン | グラぽ
サッカーの選手のポジション
ポジションとは、チームのなかの「位置」または「役割」について付けられる名称です。純粋な位置について付けられる名前としては、以下のような分類があります。
- 敵陣に一番近い位置の選手:FW(フォワード)
- フィールドの中央に位置する選手:MF(ミッドフィルダー)
- 自陣のゴールに近い位置の選手:DF(ディフェンダー)
さらにそれぞれの「役割」に応じてポジションがわかれていきます。
中盤の選手をなんと呼ぶか
フォーメーションによって、それぞれの位置の役割が変わります。役割が違うと、同じMFの選手でも呼び名が変わります。
4-4-2の場合
いろいろ意見はあると思いますが、現代サッカーの基本フォーメーションは4-4-2です。この表記はDF4人、MF4人、FW2人で構成される、という意味です。
ポジションのバランスが取れているため、攻撃にも守備にも柔軟に対応することができます。
守備を考えた場合、この広い幅を守るには最低4人が必要なので、DFを4人、その前にMFを4人置いて、「面」を作って守り切ります。この面の構築についてはフィッカデンティは素晴らしい監督でした。
攻撃ではFWが2人しかいないので、主にMFとDFのサイド(両端)を担当する選手がバランスを崩して攻めます。相手も4-4-2なら、8人いることになるので、そこで作られた「面」を崩すには2人では足りないからです。時にはMFの中央にいる選手まで参加することもあります。そのような攻撃をかつての小倉監督は「5人目まで絡む攻撃」と表して、目指していたりしました。
通常、4-4-2ではMFの選手を逆台形のように配置しています。中央に狭めに2人、ワイド=サイド幅広くに2人、というカタチが基本ですが、様々なバリエーションもあります。
サイドの選手
この場合、サイドにいる選手は サイドハーフ あるいは サイドMF と呼ばれます。イタリアでは エステルノ 、スペインでは インテリオール と呼ばれますが、サイドMFの選手をそう呼ぶことは、日本ではあまりないように感じます。
中央の選手
中央にいる選手は、日本では 守備的MF(ディフェンシブMF=DMF)と呼びます。英語では セントラルMF=CMF ですね。日本では守備的といいますが、実際のゲームではこのポジションの選手は攻撃にも守備にも両方に貢献することが求められているため、守備的MFという呼び方はあまり適切ではないと考え、グラぽではあまり使用していません。
また、ブラジルではボランチという言葉を使うことがあります。プリメイロ(第1)・ボランチ が守備的MFのことを指し、セグンダ(第2)・ボランチ はより攻撃的なMFのことを指します。ボランチだけだと役割があまりハッキリしませんし、グラぽではあまり使用しないようにしています。
3-5-2、4-3-3(中盤逆三角▽の場合)の場合
4-3-3はDF4人、MFを3人、FW3人で構成するフォーメーションです。
FWを3人置くことがキモで、攻撃に特化したかたちとも言えるでしょう。そのFW3人を支えるのがMF3人です。MF3人は通常、FW寄りに2人、DF寄りに1人の逆三角形を構成します。
3-5-2はDF3人、MF5人、FW2人を配置したフォーメーションです。
3-5-2は基本的に、守備を重視しカウンターを狙う堅守速攻のフォーメーションです。名古屋グランパスが採用しているのも、この堅守速攻(ファスト・ブレイク)を目指しているからですね。
中盤に人数をかけて積極的にボールを奪いに行き、奪ったらショートカウンターを仕掛けます。特にウィングバックと呼ばれる中盤のサイドに位置する選手が攻め上がるサイド攻撃が有効になります。名古屋グランパスで言えば、森下龍矢と相馬勇紀ですね。ウィングバックは「両刃の剣」で、ウィングバックが敵陣に攻め込むと、後ろの人数が不足してしまいます。カウンターを食らったときにサイドを狙われるのはそれが理由です。サイドをケアするために中央の選手がずれると今度は中央にスペースができ危険な状態を招いてしまいます。
だからと言ってウィングバックが後方にずっと位置取っていると、今度は前線の枚数が不足して、攻撃に迫力が出ません。そのためウィングバックの攻守の切り替え、3人のDFや中盤の他の選手が声で指示を出してウィングバックをうまく動かすことが3-5-2成功のカギです。
サイドの選手
上で説明した通り、サイドにいる選手は ウィングバック と呼ばれることが多いようです。イングランドでは単に サイドMF だったり、5バック扱いされて サイドバック 扱いのことが多いようです。
中央の選手
中盤中央の3人は前述の通り、逆三角形を作ります。
FWに近い2人を インサイドハーフ と呼びます。名古屋グランパスでは現在、稲垣祥と仙頭啓矢が務めているポジションですね。スペイン語では インテリオール と呼ぶ人も。サイドに近い選手はそう呼ぶ傾向があるようです。スペイン大好きな人なんかは使うことがあります。イタリアでは インクルソーレ(侵入者)=積極的に敵陣まで進出してフィニッシュにも絡むタイプ という呼び方をしますが、イタリア自体でもあまり使う人はいなくなってきているようです。でもイメージ的には稲垣祥はまさに「侵入者」と呼ぶのに相応しいプレーヤーだと思っています。
DFに近い1人を、アンカー と呼ぶことが多いです。船の場所を固定するために使う「錨」という意味です。単に日本語では 中盤の底 と呼びます。スペインでは ピボーテ と呼びますが、これも「軸」という意味なので、チームの中心となる非常に重要な役割である、とどの国でも考えられているようです。
この位置の選手のうち、ゲームをDFに近い位置から操る役割の選手をイタリアでは レジスタ と呼びます。イタリアではそういう役割の選手を尊ぶ傾向があり、レジスタの名選手をたくさん輩出しています。
4-2-3-1(中盤三角△の場合)の場合
名古屋グランパスが今年はじめまで採用していた4-2-3-1は、実は4-3-3の中盤のカタチがことなるバリエーションになります。守備に1枚MFが回るだけですが、その△の頂点は、FW3枚を操る司令塔という意味合いで、日本ではFWの下という意味で トップ下 と呼んだりしています。
このトップ下を英語圏では オフェンシブハーフ やオフェンシブMFと呼ぶことが多いです。そのなかでもチームの指揮官と言える選手を プレイメーカー と呼びます。日本ではゲームメーカーと呼ぶことがありますが、それは和製英語のようです。
イタリアではトレクァルティスタ、スペインではメディアプンタと呼んだりしますが、どちらもそれほど最近では使う人は減ってきているようです。
あれ?よくセンターハーフっていうのを聞くけど?
実は、センターハーフは日本での誤用です。ナイトゲーム(夜に行われる試合)をナイターと呼ぶのが定着してしまったように、勘違いから日本では中盤中央の選手をセンターハーフと呼ぶことがあります。
かつて英語圏内でセンターハーフは日本で言うセンターバックを指す言葉でした。いまはそのような使い方はしませんが、混乱を招くために現在も英語圏内でセンターハーフという呼び名は使いません。2018年以降、グラぽでも使用しないことにしました。
いかがだったでしょうか?次回はDF編に行きたいと思います。