期限付き移籍契約そのものの説明については以下の記事をお読み下さい
いま現在名古屋グランパスには3人の期限付き移籍契約の選手が加入しています。
期限付き移籍契約には必ず移籍元・移籍先のチームごとに「目的」があるはずです。そしてその「目的の達成度」があります。達成度はもちろん、目的をどれくらい果たせているか、で定性評価が中心になります。
定性評価:数値化して表すことのできない属性について、評価を行うことを指します。 ゲームではないので選手の能力は数値化できません。どうしても評価者の主観が影響することが弱点です。
目的にしても達成度にしても、外部から見たモノは所詮想像に過ぎないことをご理解の上、本記事をお読み下さい
今回はその3人の期限付き移籍契約の是非について語ります。
中島大嘉の場合
8月5日の国立競技場新潟戦でデビューを果たした中島大嘉はどうでしょうか?
本人の目的:
本人の目的は、インタビューでも答えているように「パリ五輪」のメンバーに入ることです。東京オリンピックの際はFWに選ばれたのは3名。現状候補になる選手といえば以下の選手になるでしょうか。
現所蔵チーム(期限付き移籍元) | 今季成績 | |
細谷真大 | 柏レイソル | 22試合1814分8ゴール |
鈴木唯人 | 清水エスパルス(移籍前提で離脱中) | 3試合111分1ゴール |
中島大嘉 | 名古屋グランパス(北海道コンサドーレ札幌) | 8試合113分0ゴール |
藤尾翔太 | 町田ゼルビア(セレッソ大阪) | 24試合706分3ゴール |
染野唯月 | 東京ヴェルディ(鹿島アントラーズ) | 5試合119分0ゴール(鹿島)5試合447分2ゴール(東京V) |
このほかにも西川潤(サガン鳥栖(セレッソ大阪))や小田裕太郎(ハーツ)などがいます。ただ絶対的エースと言えるのは細谷真大だけで、残り2枠はまだ確定できない状況だと思います。
中島大嘉は、出場機会を得て、そこに滑り込むことを目標にしています。
移籍元(コンサドーレ)の目的:
おそらくコンサドーレとしては、現状の実力ではいまのチームのなかで出すところがない、という事情があって、試合経験を積ませたい、という思惑があると思います。
また、ミシャ政権はまだ続くと思われるので、そこに適合しなかった選手の場合は、売り抜けるという冷徹な判断もあるかもしれません。
移籍先(グランパス)の目的:
グランパスの前線は、決定力と組み立て力のユンカーと貴田遼河、献身的な動きでチャンスを創る永井謙佑と酒井宣福、ターレス、ドリブルで局面を変えることを期待される前田直輝がいます。しかしそこに欠けているのが高さです。現状のメンバーにクロスを入れてもあまり効果はありません。その高さを与えてくれる選手としての期待が大きそうです。
移籍元(コンサドーレ)の目的の達成度:
まだ1試合だけですが、既に出場機会を得ています。まだ達成度を語る段階ではありませんが、いまのままであれば目的は達成できそうです。
移籍先(グランパス)の目的の達成度:
まだ1試合だけなので達成度というのは難しいところですが、既にその高さで前田直輝のチャンスをつくるなど、十分に名古屋グランパスの目的は達成できそうです。
中島大嘉はこれからどうなる?(予想)
当たり前ですがパリ五輪の代表に選ばれることを目的にしている以上、出場機会が得られれば本人としては成功です。キャラクターの被るキム・ゴンヒがいる以上、出場機会が得られれば名古屋グランパスの買い取りを望むでしょう。ただ名古屋グランパスとして移籍補償金がどれくらいに設定されているかというところも影響しそうです。
内田宅哉の場合
ここまで19試合1100分の出場機会を得ている内田宅哉、特に中盤中央にポジションを移してからは出色の出来だと言われています。彼の場合はどうなのでしょうか。
移籍元(FC東京)の目的:
基本的に下部組織の出身者なので、保持しているとホームグロウン枠を埋めることができます。東京の中盤は松木玖生・東慶悟・青木拓矢・原川力らがいます。主力がいるなかで下部組織出身者に出場機会を得させるというのが目的でしょう。
移籍先(グランパス)の目的:
彼のユーティリティ性はベテラン層が多く、いろんなところに穴が空く名古屋グランパスとしては、とてもありがたいものです。若き日の和泉竜司と同様、センターフォワードとセンターバック以外はどこでもできる、という選手が欲しいというのが当初の目的だったと思います。
移籍元(FC東京)の目的の達成度:
2年連続でこれだけ出場機会を得ているわけなので、FC東京の目的は達成できているのではないでしょうか。
移籍先(グランパス)の目的の達成度:
これだけの活躍をしてくれているので、当初の目標は達成しています。それどころか、セントラルMFとして米本拓司に取って代わろうとしているところは想定以上だと思います。
内田宅哉はこれからどうなる?(予想)
一番の争点は契約がどうなっているか、です。内田宅哉は期限付き移籍契約延長をしているので、その際に買い取りオプションを付けているかどうかです。
松木玖生の海外移籍があった場合、FC東京は、中盤を強化するために内田宅哉を戻したいと考えるでしょう。
名古屋グランパスは当たり前ですがレギュラー格の選手を戻したいとは思わないでしょう。買い取りオプションが設定されていた場合、名古屋グランパスが内田宅哉以上のスーパーな選手をセントラルMFとして獲得できたときは移籍補償金を支払わない可能性もありますが、可能性は低いでしょう。
買い取りオプションが設定されていない場合は、内田宅哉がどちらのチームにいるのが良いと考えるか次第、ということになりそうです。
キャスパー・ユンカーの場合
22試合1695分11ゴールと、絶対的エースとなっているキャスパー・ユンカーはどうなるでしょうか?
移籍元(浦和レッズ)の目的:
実績的には問題なかったキャスパー・ユンカーを放出したのは、クラブ内部との軋轢が原因と思われます。本来は買い取りをしてもらいたかったのだと想像します。
移籍先(グランパス)の目的:
点取り屋が必要で、ユンカーと同じタイプであるトクマック・ングウェンを獲得しにいっていたことからも、スピードがあって決定力の高い選手が欲しいと考えていたと思われます。
グロインペイン症候群が心配されているので、安全を考えて期限付き移籍契約にさせてもらったと想像します。
移籍元(浦和レッズ)の目的の達成度:
買い取りオプションを付けて放出していることが確定しているので、そもそも現金化できていないので達成度は低いと思われます。
移籍先(グランパス)の目的の達成度:
21試合11ゴール(リーグ戦のみ)ということを考えると、最終スコアは20ゴール近くになることが予想されます。十分に目的は達成できているでしょう。
キャスパー・ユンカーはこれからどうなる?(予想)
買い取りオプションが設定されていることが明言されているので、名古屋グランパスが買い取れるかどうか、というところにかかっていると思います。
一説には買い取り金は2億円とも言われています。果たしてそのあたりが用意できるか、ですね。
ユンカー自体はサッカーダイジェストのインタビューによると名古屋グランパスでのプレーに納得が行っているようなので、まずは支払ができるかどうか。
名古屋グランパスフロントの資金繰りに期待しましょう。
補足:記事公開後、キャスパー・ユンカーにサウジアラビアのクラブからオファーというニュースが出ました。2クラブ分の移籍補償金と違約金が必要なことと、あとはキャスパー・ユンカー本人の意思次第になります。