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噛み合わない意図と試合中に見られた進化 天皇杯 JFA 第103回全日本サッカー選手権大会準々決勝 柏レイソル戦マッチレビュー #grampus #reysol

8月最後の試合。残念ながら敗戦となりました

次に繋げるために「振り返る」

試合情報

1.柏レイソル・名古屋グランパスのスターティングメンバー・ベンチ
1.柏レイソル・名古屋グランパスのスターティングメンバー・ベンチ

守備から入れない難しさとその裏返し

最初に違和感を感じたのは試合開始直後3分経った頃の名古屋のプレス。

酒井に繋がらなかった後の守備への切り替えのシーン。

酒井が流れていたことにより、切り替え直後の配置は前田と酒井が外からのスタート、重廣が中央からキーパーへのプレスを行う。

重廣がキーパーへプレスに行く2度追いを判断した時点で、重廣は柏の中盤にパスを通される警戒をしていたのか縦方向へのパスのルートを消しながら追う。

しかし、重廣が消したコースの裏は酒井がすでに抑えていた。

当然、柏は重廣が消してない方向、酒井がスライドしていなくなった場所へ球を逃がす。

セットプレーの延長で最終ラインが引いた状態から長いボールを選択した名古屋。

両脇のWBの押し上げなどできているはずもなく、前田のエリアで不利を背負わされることになった。

前線の守備で想定していない不利を自分達から背負わされることになれば、後ろの連動などできるはずもない。

稲垣はスペースを消す動き、山田はなんとかプレス連動に参加しようとした。

結果的に稲垣と山田のプレーのズレから発生したパスコースを使われ、サイドから中央へ顔を出した小屋松によってプレスを回避されてしまった。

2.噛み合わないプレス
2.噛み合わないプレス

柏は中盤の2枚が名古屋の前線3枚の裏でボールを引き出すことで名古屋の前線3枚の外側への守備のフォローを遅らせる。

そうすることでWBをSH、SBで攻略する算段をする。

特に重廣の速い動き出しによる守備の横スライドを利用して逆の前田と久保に対して数的優位をとるような動きも試合開始直後から見られた。

3.守備の横スライドでできたスペースを使われる
3.守備の横スライドでできたスペースを使われる

一方で名古屋は上記の柏の攻撃や自分達のプレスの曖昧さにより前線の守備者も中央に集結させられる状況となる。柏のCBと中盤の4枚に対して前線3枚で壁を作るような構え方となり、大外のWBがプレッシャーに行く形も取りづらくなっていく。

そんな中で攻守の切り替え後は酒井が積極的に斜めに走ることで外の上がりを待つ役割や中央の両チームの密集を散らす役割を担った。

4.酒井宣福がサイドの裏を使う
4.酒井宣福がサイドの裏を使う

早い展開を選択する選手たちはサイドを選択し柏の構造にジャブを入れる一方で、ボールを散らす選手達はWBを使って相手を揺さぶる選択が少なかった。特に和泉は降りる状況も高い位置に逃げた場面でも味方から選択されることが少なく、苦労しているように見えた。

後半になり山田が「運んでWBに寄る動き」を増やしたことで改善に向かうことになる。

しかし、水沼さんが名古屋の両WBが交代する際に、「あまり思ったように絡むことができなかった」という趣旨の発言があったが、それはWBにボールを預ける回数の少なさを受けての発言だと推察される。

柏の構え方~名古屋のアプローチ~

柏は基本的には442のブロックの形から前線2枚のどちらかが最終ラインのボールホルダーに詰めに行く。

名古屋は07:31〜の場面のように、稲垣が外に出ることで2列目のブロックを外に広げ、前田が中央に受けに入るような形を取る。

5.大外の久保藤次郎を浮かせる仕組み
5.大外の久保藤次郎を浮かせる仕組み

10:16〜のように稲垣、前田が中央でブロックを収縮させているならば久保が大外で受け、奥でブロックを広げて中に折り返すような形を選択

6.中央を締めてできた外側のスペースで、久保藤次郎がボールを受ける
6.中央を締めてできた外側のスペースで、久保藤次郎がボールを受ける

10:16〜の場面のような展開で山田、重廣が内側(ハーフスペース)で受けるような動きをしてた事、久保がこの場所にパスを刺し込めた事は非常にポジティブな要素で「人が変わっても構造が継続できる可能性」を示した。

柏のブロックが動かない時の最終手段として有効だったのが、ハーフスペースに立つ前田や重廣の降りる動きから酒井がポケットに走る動き。

久保や和泉が高い位置にいる事により柏の外側はどうしても広がってケアをするor捨てる。と言った「横向き」の判断が必要な中で、前田や重廣が「縦の動き」をいれる。その両方の動きで空いたスペースに動き出す酒井は有効な動きとなった。

(前述した斜めに走る動き)

選手間の距離とプレー選択

柏のブロックを揺さぶる為に山田との距離を離す時間が多かった稲垣。

内田のように顔を出す位置を変え続ける。囲まれた場面での剥がす能力に長けている。と言った強みとは違う強みを持つ山田にとって常に柏の三角形に囲まれる前半は、そこを脱出する方法と受け手の顔が見えない状況に苦労する事になった。

いままでなら囲まれてる選手の相方の稲垣が受けて運ぶような試合も見られたが、今回の試合では、稲垣が「受けて反転して運ぶ」を行なっていたエリアには前田と重廣がおり、先程説明した名古屋の攻めの形の影響もあり、「山田が狭い場所に立ち、出し入れする事」が名古屋のボールの前進に“直結”するような形にはならなかった

(間接的には人を固定して名古屋の他の選手が幅を取れるような立ち方をしていたが、最終ラインが長いボールを選択する事も多く、中々目に見える効果として表出しなかった)

7.稲垣祥が動き回ることで、常に複数枚のマークに囲まれる山田陸
7.稲垣祥が動き回ることで、常に複数枚のマークに囲まれる山田陸

しかし、後半に入ると柏のブロックの外で待って「運ぶ」プレーを選択する事で前半では「受け手の顔が見えなかった状況」を「顔を自分から出す状況」へ変えた。

8.山田陸が能動的に運ぶようになる
8.山田陸が能動的に運ぶようになる

直近数試合、中々ハーフスペースの奥を取る動きが見られなかった稲垣に変わり侵入する動きも増やした事で前半の手詰まり感を解消させた。

試合雑感

  • 守備から入るチームなのは変わらないので試合開始直後から守備整理できてなかったのが結果的に中盤の空洞化につながった。
  • 今シーズン1番酒井が輝いた試合になった。ただ、いつもの役割と違う展開になり味方が面食らってたのが勿体無かった。
  • 後半に球を運び出した山田。以前守備の詰める時の予備動作がわかりやすくて誘われて逆を取られる。と指摘した事があったが、運ぶ際も予備動作が大きくて全て動作が同じだった。後半運良くFKを獲得した時の相手の守備は完全に予備動作待ちだった。
  • 失点シーン。森下のケア不足が目立つが元を辿ると、仙頭がサヴィオにパスを出す前の山田の位置もかなり厳しい。構えてる選手達は全力詰めしないなら、中谷と野上を結んだ線の上に立って欲しかったはず。そのラインに壁がなかったので仙頭に走られてケアに入るしかなかった稲垣。そこのズレは“構えの理詰め”。
  • 人が変わっても、相手の構造にジャブを入れながらゴールに迫れる事は示した。本当にこの試合は普段出ていない選手の擦り合わせできない差。

最後に

シーズンはまだ終わらない。止まってる暇は無い。

スペシャルワン 稲垣祥との付き合い方を見つけたように見える山田陸
スペシャルワン 稲垣祥との付き合い方を見つけたように見える山田陸

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