平日の弊害もあり、ホーム開催で8089人が見守る試合となりました。
直前の雨にも関わらずの水撒きが行われたり、両チーム共に気持ちよくプレー出来たとは言い難い試合コントロールなどのイレギュラーがあった中で結果は痛み分けとなりました。
試合情報
難しくしない:名古屋の守り
選手の入れ替えが発生した影響や中2日の連戦の影響もあり、守備に関して細かな落とし込みや修正が出来ないと踏んだのか、名古屋は原点回帰のような形を選択する。
シーズンを通した守備の形の理解や落とし込みに参加していない森島と中島がいる状況で、彼らに分かりやすい守備タスクを与える必要がある。
今回の試合では中島の所に手当てが必要だった。
中島は中央の底で絡みに来る鹿島の選手の周りに立ち、ボールホルダーに対しては対面する。という事をチームは最優先にさせた。
酒井の様にマークの受け渡しの部分での精度がないので、チーム全体で相手に“ちょっかいを掛けに行く”という選択は出来なかった。その代わりに“デカさ”を活かしてプレーエリアに蓋をするという選択。
森島は前節の守備での「立ち方」に課題が出た為に、ある程度守備の役割を免除させ、鹿島の最終ラインへの1stプレス部隊として高い位置で放置する形。
長谷川監督も焦らずやるしかない。と森島に対してコメントしていたり、本人の試合後のインタビューでもチームでの守備の約束を遵守させられているような雰囲気が無い発言があった為、ある程度ロジカルな部分の課題は許されていると推察する。
右の高い位置の選手が守備の構造の部分で明確に数に数えられない場合、(マテウスロール完成前のマテウスがいた頃)名古屋はどう対処していたのか?
逆サイドの同じ高さに配置された選手(この試合では永井)が下がることで曖昧な場所を中央のスペースを消す選手と共にケアしていた。
この試合でも永井が低い位置を取り、センターが逆側へスライドしてもスペースが出来ないように守備時の空間の管理に細心の注意をはらっていた。
この試合では永井が下がり、中島がスペースを絞める。森島のサイドにボールを横移動させられたら森島がちょっかいを掛けに行く。という前線3枚の役割が明確になり、相手に攻略される時間=自分達の前線の誰かが役割を遂行できない瞬間。(攻撃から守備への切り替え時etc…)という分かりやすい状況となった。
前線が突破された後の処理には内田がチャレンジする形を造った。
鹿島のキツさ、狙い所
鹿島は基本的に名古屋に構えられてしまうとズラす術があまりない。
前半は攻守の切り替え後の永井や中島が守備に戻りきれていないタイミングでしか中央でのボールの前進はできなかった様に見えた。
ただこういった瞬間を見逃さなかったのが鈴木で、永井が戻ってないと見ると内田の脇でボールを受ける動きや、中島の蓋が無い場面では中央でボールを受けに降りるなど相手を見て動くプレーが名古屋は厄介だった。
中島がスペースを埋めて立ってしまうと、中盤2枚が中島の前まで降りてきて中島を動かそうとするような行動もあり、やられる瞬間とやられない瞬間が非常に分かりやすい前半で、特にやられるような雰囲気は感じられなかった。
名古屋の継続と変化
名古屋は基本的に外の枚数が相手の配置上余るので外に預けてサイドバックとセンターバックの間を空ける為に動く。
左サイドでは、横浜FC戦と同様に森島が外へ外へと旋回してゆく形で相手を引き付ける。
右サイドでは相変わらず稲垣を高い位置に押し出す方を取り、その形を作るために藤井と野上がリスクを取って高い位置でボール保持を試みた。
右サイドで森島と稲垣が縦に並ぶと渋滞が発生し、稲垣が高い位置を取らなくなるという現象がここ最近見られていたが、鹿島戦では修正がみられた。
前半8分のシーンでは永井が低い位置にいる事で稲垣が前に押し出される。
稲垣と森島の渋滞が課題だった縦並びも、永井が低い位置にいる事で中島が外に流れるような立ち位置を取ることで、森島が2トップの一角としてポジショニングをするようになった。
森島が左右の大外と左の高い位置を取るようになった(稲垣に対する理解度が上がった?)影響で森島が右に居た場面でも稲垣が高い位置でプレーする時間が以前より増えた。
しかし、大外にボールが回った時の鹿島の撤退の判断が異常に早く、中の撤退をどう崩すのか?が中々見出せない前半となった。
選手交代とチーム構造のバランス
後半からセカンドレグを見てのことなのか、点を取るためにリスクを取る必要があると判断したのか、永井からキャスパーへの交代となる。
この試合に於いて、守備ではチームフィットが間に合わない選手の為のサポートの働き、攻撃では逆算する選手を常に意識した立ち位置。で大きな仕事をしていた永井を外す決断をした。
この判断が失点シーンでは凶とでた。
前半から鹿島が狙っていた中央に蓋がない場面でのボールの早い進行。
永井から森島に変わった事による守備者の技術の違い、配置が変わった事によるプレーの約束事の変更。
内田も中島とキャスパーが前にいないと判断した時に、森島の動きを確認する余裕が無かった。
前半は左に居たことで、そもそも森島の動きを見てプレーするという約束ではなかった為、ああいったイレギュラーが起きた時に「最低限決められたプレー」として潰しに行く選択をした。
失点前から稲垣を底に置く選択をした。その後、右に前田が入った事を考えると、前田というスペースを使って仕掛ける選手を置く事により右で「渋滞」する事を嫌った配置だったと考えられる。
試合雑感
- 中島が難しかったのは、ゴール前に行くまでのチーム構造と彼のストロングのズレ。
酒井と似た問題で、攻撃時の逆算の中心が彼では無いという事。
キャスパーですら「僕ら前線をもう少し見てくれたら…」というコメントがある状況の中で、この試合一発で結果を出せたら日本にはいない。
前半18分の様に流れて時間を作る術も持っているので、そういうチームの一助になるプレーを続けながら逆算の「先」をうまく見つけて欲しい。
後半のセットプレーや前節ではかなり味方を喰っているポジショニングをしているので、ピッチ内外で有意義なコミュニケーションをとりながら信頼を勝ちとってくれたら。
今節の中島選手の試合後インタビューは読み応えがあるので是非:
- 今回の失点もそうだが、ここ最近は「自分達から構造を自壊させたことがきっかけ」になっているシーンが多く見られる。過密日程によるマネージメント問題もあるので難しいと思うが、すこし心配。
- 前半、左サイドで内田、和泉、森島が見せたトライアングルは“メシウマ”。
- 押しているシーンで内田と森島が最終ラインのケアに入る場面。途中から稲垣までもがその場所に入り始めて「球捌く3人」が最終ラインに入った時があったが、それは想定済みなのか?
- 野上と藤井を上げる都合上あの形になるのかもしれないが、「それは違わない?」感が
さいごに
追いついたメンタルアドバンテージをセカンドレグへ。