グラぽ

名古屋グランパスについて語り合うページ

メニュー

推定市場価値に基づくJ1・2024シーズンプレビュー(2) konakalab編 #grampus #グランパス

概要

  • transfermarktで公開されている「推定市場価値(Estimated Market Value)」と順位の関係を調べて,2024年の展望に活用します.
  • 「リーグ平均の市場価値の選手を集められないことは降格への第一歩である」という知見が得られました.

本編

transfermarktと「推定市場価値」について

transfermarktというWebサイトをご存じでしょうか?

世界中のサッカーリーグ・選手を網羅している驚異的なサイトなんですが,特に異彩を放っているのが「市場価値(Market Value)」を選手ごとに推定・公開している点です(そもそもサイト名がドイツ語で「移籍市場」を意味しています).

その市場価値をどのように推定しているか?について(当時の)サイトCEOにインタビューした記事も書かれています.

本稿では,このサイトの推定市場価値がおおむね間違ってはいない,という前提のもと,チームごとの市場価値と結果の関係を調べた結果を紹介します.対象はJ1リーグです.

「推定市場価値」と成績の関係(2017年から2023年)

2017年以降のJ1リーグについて,クラブの選手の推定市場価値の合計値および順位を集計しました.リーグ全体の推定市場価値は年毎に変化があるので,ここではリーグ平均の何倍であるかに着目しました.「相対推定市場価値」と呼ぶこととします.1より大きければリーグ平均よりも高い評価の選手がそろっているクラブ,と思ってください.

横軸に相対推定市場価値,縦軸に順位とした散布図です.

グラフ1:相対推定市場価値と順位の相関
グラフ1:相対推定市場価値と順位の相関 (横軸:相対推定市場価値,縦軸:順位,青線:線形近似直線.J1リーグ2017年から2023年.データ元:transfermarkt.jp)

相関係数R=0.298と,弱い相関があるかな…という程度です.推定市場価値が平均以下(比が1以下)でも優勝しているチームがあります(2019年と2022年の横浜Fマリノス).平均の2倍以上はいずれも神戸(2018年,2019年)で,イニエスタ選手の市場価値が非常に高額だったことが影響しています(クラブの総推定市場価値の約半分がイニエスタ選手だった).


用語解説:
相関係数は2つの量がどの程度関係あるのかを表す値.0だと関係なし(一方の値がわかってももう一方の値がまったく分からない),1だと一方の値がわかるともう一方の値が確実にわかることを意味します.0から1の間であれば一方からもう一方が何となくわかることを意味しており,その程度は言葉に置き換えられることも多いです.よく使われるのは次の表に示す表現です.

0.0から0.2ほとんど相関関係が無い
0.2から0.4弱い相関関係がある
0.4から0.7中程度の相関関係がある
0.7から1.0強い相関関係がある
相関係数と関係の目安

また,相関係数と散布図の見た目の関係の例を図示しました.

参考グラフ:相関係数と散布図の見た目の関係の例
参考グラフ:相関係数と散布図の見た目の関係の例

選手の市場価値はクラブの成績と関係ない?

それでは選手の市場価値は結果とはほとんど関係ないのだ!となるかというと,実はそうではありません.それぞれの順位ごとに,「推定市場価値が平均以上」と「平均未満」のクラブ数を集計すると次の図が得られます.

グラフ2:順位ごとの「推定市場価値が平均以上」と「平均未満」のクラブ数
グラフ2:順位ごとの「推定市場価値が平均以上」と「平均未満」のクラブ数(横軸:クラブ数,縦軸:順位,青と赤の帯:推定市場価値が平均以上,平均未満のクラブ数.データ元:transfermarkt.jp)

J1からの降格(POも含む)は長く16位から18位でしたから,ここに入ってしまったクラブだけを抜き出すと推定市場価値が平均未満ばかり,ということがわかります(21クラブ/23クラブ中).順位の値との線形相関は強くありませんが,「降格しない程度に強いかどうか」は市場価値と関係がありそうです.「リーグ平均の市場価値の選手を集められない=降格への第一歩である」と言えそうです.

次に,クラブごとに「この期間での相対市場価値の平均」と「順位の平均」を計算し,散布図にします.

グラフ3:クラブごとの推定市場価値と順位
グラフ3:クラブごとの推定市場価値と順位(横軸:相対推定市場価値の平均,縦軸:J1順位の平均.データ元:transfermarkt.jp)

単年では相関係数は0.3程度と弱い相関でしたが,複数年の平均とすると0.68となり中程度から強い相関が認められます.特に相対推定市場価値を1で左右に分けて着目すると,見事に上位(1位から9位)と下位(10位から18位)に分かれていることがわかります.

「Jリーグ クラブ経営ガイド」(2022年11月発行)

https://aboutj.jleague.jp/corporate//wp-content/themes/j_corp/assets/pdf/Jleague_club_guide2022.pdf

の31ページにも同様の分析結果が掲載されています.

こちらはきちんと「チーム人件費」と「直近10年程度の順位」それぞれの分析期間内の平均を算出しており,相関係数が0.82と強い相関を示していることが明示されています(チーム人件費の調査は大変だしすでに公式が結果を公開しているので,推定市場価値を使ってみるか…というのが本校執筆の裏の動機です).

Jリーグのクラブの大きな目的は「勝利」であり,それが選手の評価や給与に反映されるのは健全です.「長期的には資金力があるクラブが長くJ1に参戦できる」「ただし,年毎の優勝は資金のみで買えるものではない」というのは,プロスポーツとして妥当で良い傾向だと思います.

J1・2024シーズン展望

ということで,2024シーズンの展望です.

グラフ5:2024年予測相対市場価値と順位の関係(横軸:相対推定市場価値,縦軸:順位.赤丸:2024シーズンの相対推定市場価値と予測順位.青丸:2017年から2023年の実績)
グラフ5:2024年予測相対市場価値と順位の関係(横軸:相対推定市場価値,縦軸:順位.赤丸:2024シーズンの相対推定市場価値と予測順位.青丸:2017年から2023年の実績)

リーグ全体の平均は22.7億円(1ユーロ=160円で計算),最高と最低はそれぞれ浦和(40.6億円)と東京V(11.3億円)でした.名古屋は23.4億円で平均を少し上回っています.名古屋の予測順位は9位前後ですが,同じ相対推定市場価値でも上下のブレは大きいので,選手や監督の頑張り次第では上位進出も可能ではないでしょうか.

ということで,推定市場価値からみた(私見も含む)プレビューをまとめます.

  • 名古屋の選手の推定市場価値はリーグ平均より少し高い.
  • 残留のための戦力はそろえられた.
  • 選手や監督の頑張りで上位進出を実現できるのでは?

Leave A Reply

*

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

Share / Subscribe
Facebook Likes
Tweets
Hatena Bookmarks
Pocket
Evernote
Feedly
Send to LINE