長かった2か月半のオフも終わりです。シーズンがはじまります。
シーズン開始前に、今年のグランパスのどこを見て行けばよいのかをおさらいしていきましょう
2023年グランパスの特徴
2023年のグランパスの特徴は、グラぽ読者の方であればある程度把握されていると思いますが、整理しておきましょう
昨年の基本布陣は3-4-3(5-2-3)です。基本的にラインが低い、ロングカウンターのチームでした。
数値が高いのはロングカウンター、そしてボール保持は自陣あたり(ローブロック)、カウンター時にはボールを持っていない選手も相手陣内に入っている(ラインブレイクラン)となります。
そもそもなんでこんな戦術になったか、というと、キャスパー・ユンカー、永井謙佑、マテウス・カストロという3トップは攻撃面でのアドバンテージはあるものの、長谷川健太監督が好む、最前線でのハイプレス(前線からの守備)には向きません。
また、前線(ハイ)でボールを奪えないということは、ミドル(中盤)、ロー(守備陣)のどちらかでボールを奪わなければなりません。
長谷川健太監督のサッカーは、「速攻」がキーワードになりますので、2023年は相手を自陣に引き込んでボールを奪い、相手の守備が少ない状態で速攻をかける、という形になりました。
図にまとめるとこうなりそうです。
この戦術のデメリットは2つあります。
- デメリット1:低い位置に守備ラインを引くと相手ゴールまでが遠く、ボールを運ぶ難易度が高くなる
- デメリット2:低い位置で守ると、ちょっとした事故で失点する
もちろんそのデメリットもコーチ陣が理解していて、対策を錬りました。
- デメリット1への対処:ボールを運べる選手(マテウス・カストロ)に頼る
- デメリット2への対処:守備の強度の高い選手で壁を作る
デメリット1への対処は、まあみんなわかってますよね。デメリット2について、守備強度の高い選手が必要でした。「上手い選手よりも、強い選手が必要」というのが2023年グランパスのDFラインです。
このチーム、マテウス・カストロの離脱の一番大きな影響は、シュートの数とかFK、CKではなくてデメリット1への対処であげた、低いラインから持ち上がれる選手がいなくなった、ということだと思います。
マテウス・カストロ離脱後の変化
マテウス・カストロによって、低い位置から長距離を運ぶことができなくなりました。最初のうちはそれでもなんとかボールを繋ぎましたが、すぐに限界を感じます。
結果、全体的にポジションを上げることにしました。それによってボールを前線に運べるようになりました。
相手の攻撃の圧が低ければ、かなり押し込んでサッカーを展開できるようになりました。しかしこの試合でもカウンター一発に沈んだ通り、これまで持っていた「固い守備」を失う結果にもなりました。
湘南ベルマーレ戦でも相手を押し込んでいながらカウンターに沈みました。今までやってきたことをそのままやられるような結果になったわけです。
「なんでそう変な方向にばかり思い切りがいいのよ!!」と言いたくなるくらい2023年前半と逆に振った感じです。
結果をまとめると、以下のようになります。
- 守備のラインを上げることで、ボールを前線に届けられるようになった
- 守備のラインを上げることで、ラインの後ろの守備が不安定になり、カウンターで沈むことも多かった
- 守備のラインを上げられないようなヴィッセル神戸などの相手には中盤でフィルターできずに押し込まれた
2つ目については、守備のラインを上げる約束事などをもっと細かく実装できないといけません。シーズン中にはそこまでできなかったということ。
正直、3つ目は実力不足です。
去年の大迫・武藤を完璧に抑えることは難しかった。
上記を踏まえた今シーズンの課題
決めなければならないことは、優先順位で並べると以下のようになると思います。
- どうやってボールを奪うか?自陣なのか、中盤なのか、相手陣内なのか?
- DFラインからのボール組み立てルート(複数必要)
- 相手守備陣の崩し方(複数必要)
岐阜戦を見ている限りでは、中盤を3枚にした効果はあまりなく、そこでボールを奪うということはできていませんでしたので、今年も自陣で3-2ブロックを組んでボールを奪うという形になりそうです。
2と3については、どういう仕込みなのかはまだ完全に見せて貰ってるわけではないでしょうから期待しています。
上記を踏まえた今年の課題は3つあると思っています
1.攻め方の変化を!
Football-LABのチャンスビルディングポイントのチーム集計を見てみましょう。チーム成績は6位なのに、攻撃・パス・クロス・ドリブル・シュート・ゴールのうち、1桁順位は9位のドリブルだけ。あとは12位から14位です。
特に問題が大きいのが「クロス」です。1位の森下龍矢、2位マテウス・カストロの2人はもう居ません。この2人を除いたら最下位レベルの数値です。
「ドリブル」でも1位マテウス2位森下ですが、3位のユンカーとそこまで差がありませんし、久保藤次郎がいることも大きいです。
そこでクロスのポイントの高い山中亮輔と中山克広を獲得したこと、そしてクロスを中で受けられる山岸祐也とパトリックを獲得したことは大きいです。
永井謙佑は足下に付けられるパスや裏に出されたパスを受けるのはかなり得意ではありますが、クロスの対応はそこまで上手ではありません。「ボールを収める」という感じではないんですよね。
そこにボールを受けてシュートもできるし、パスも出せる山岸・パトリックを獲得できたことは戦い方の変化をもたらせると思います
2.保持するのか?
倍井謙や榊原杏太、小野雅史や成瀬竣平、そして散々言われることの多い酒井宣福は、正直言うと、速攻主体のサッカー向きの選手ではありません。
また、2023年後半のサッカーというのは結果そうできていないですが、ボールを握って押し込もうとするサッカーになっていました。
長谷川健太監督は開幕前特番でも、「自分の芯となる部分は変えないが、トレンドは追っていく」と語っていました。
ただ、「ボールを握ることが目的ではない、ゴールを獲るためにというところは履き違えないように」という監督の言葉を、チーム全体で共有できれば、と思います。
3.可変システムを極めるの?
グランパスが今年、可変システムにチャレンジする、とニュースになって、言葉が一人歩きしているようにも思えます。ただもちろん狙いはあります。
可変するということのメリットは、配置のバランスを崩して複数のフォーメーションのいいところ取りができるというところですね。
ただ、配置のバランスを崩すことになるので、可変の途中で手薄になる部分というのが出てきてしまいます。これが一番のデメリットです。
もう1つデメリットがあるとすると、可変するということは、フォーメーション1の約束事とフォーメーション2の約束事、さらにはどういうとき可変するのかという約束事、単純に通常の3倍の約束事を、頭と身体にたたき込まなければならないというところです。
相当頭を使うことになるので、選手にとっては相当しんどいものだと思います。
結果として、可変がきっちりとハマるようになるのはシーズン後半になるのでは、と考えています。
今シーズンの予想布陣
山岸祐也が戻れるかどうか、ハ・チャンレが戻れるかどうかで随分変わってきそうですが、こんな形を予想しています。
ポイントは
- キャスパーと山岸で良い相互作用を作れるか?
- 森島司・和泉竜司はトップ下というより3トップとセントラルMFの両方を状況に応じて埋める役目だと思うが、そこをうまく機能できるか?
- 2CMFの最適な組み合わせが見つかるか?
- 3CBの最適な組み合わせが見つかるか?
だと思います。
選手名鑑も作ったので、良かったら読んでね
今年はどうなる?
今シーズンの課題、というところであげた項目が解決されていけば、実は結構いいところまでイケるのでは?と期待しています。
一方で解決できないと、結構キツい日々が続くかもしれません。
大きな変化(藤井陽也・中谷進之介・森下龍矢の移籍)があった後ですから、簡単な年ではないのは確かです。どうかみんなの声のチカラで、厳しいチームと選手たちを後押ししましょう。