執筆時点は2024年12月18日です。
17日に井上詩音選手の完全移籍が発表されて、タイムラインは賛否両論が吹き荒れています。
なかには誹謗中傷と受け取れるような発言も散見されました。
それに対して、私、編集長は以下のような発言をしました。
これに対して以下のような意見も見かけました
- 無理に擁護している
- うさんくさい
また別の機会にはこんな言葉も
- グラぽは公式から金を貰ってやっている
もちろんそんな事実はありません。
そもそも論点は?
見かけた言葉をまとめると
- 獲って1年で放出するなんて選手が可哀想
- ユース出身者に対して大切にしなさすぎ
- カネの使い方がムダ遣いがすぎる
- 結果的に2024シーズンの補強は大失敗だった
表現的にはマイルドなのを抽出しましたがこんな感じの意見が多いです。(ドメサカブログからサンプリングすると、危ないのは消されているのでマイルドになります)
実際、多くの行き過ぎた言葉が飛び交っていたと思います。山口素弘GM・長谷川健太監督・強化部に対して、ここで引用することがコンプライアンス的にできないような言葉をいくつも見ました。
事実関係を整理してみましょう。
- 名古屋は2024年のパトリック・井上詩音、2023年の山田陸・仙頭啓矢・レオシルバ、2022年の木本恭生・児玉駿斗と3年連続で獲得翌年放出が続いている
- 名古屋の補強は失敗ばかり(以下データ)
- 2024夏獲得の選手のうち、徳元悠平・菊地泰智は大活躍 2/4
- 2023-24冬獲得の選手のうち、ハチャンレ・パトリック・椎橋慧也・山岸祐也・中山克広・三國ケネディエブス・倍井謙・山中亮輔は一定以上の出場機会を得た 8/14
- 2023夏獲得の選手のうち、森島司・久保藤次郎・中島大嘉は一定以上の出場機会を得た 3/4
- 2022-23冬獲得の選手のうち、ユンカー・和泉・米本・野上は一定以上の出場機会を得た 4/7
1番上は、間違いなく反省すべきポイントかもしれません。
レオシルバ、パトリックはもともと高年齢の選手で長期の契約は考えにくかったので受け入れることもできますが、それ以外は決してほめられた結果ではないです。
ですが、ここ2年4回の移籍期間で獲得した選手で、戦力化できた割合は17/29=59%です。
これで炎上しちゃうの?っていうのが自分の疑問です。
そもそも炎上ってどういう風に起きる?
炎上はだいたい以下のような仕組みで発生します。
今回で言うなれば、「犯人役」は山口素弘GMであり、強化部であり、長谷川健太監督です。
本当に山口素弘GM・強化部・長谷川健太監督がわるものなの?
まず読んでおいて欲しいのがこちらの記事
選手の移籍については、NPB(プロ野球)と異なり、チームが選手を売り買いすることはできません。
移籍には本人の意思が必要だということです。
なので、今回の件、井上詩音選手に移籍の意思がなければ発生しないものなのです。
だとすると、移籍の悪者は本当にGMや強化部・監督なのでしょうか?
起用しないで移籍したいように追い込んだのが監督じゃないか!監督が悪い!
その方にはこの記事を読んでいただきたい。赤鯱新報とインサイドグランパス両方に同じインタビューが掲載されていますが、ライブ感あるのは赤鯱のほうです。(お小遣いが許せばインサイドと赤鯱は両方契約したほうがいいと思います)
Jリーグのチームは4チーム目ですし、育成から上がってきた選手がどれほどクラブにとって宝なのかっていうのもよくわかってます。そういう選手を育てて、それをまたクラブに還元して、地域の人に喜んでもらってっていうのもわかってるつもりではいる。何かHGを増やしたいっていう思いは私も一緒なんですよ。だけど、以前にも言ったように、じゃあそれを優先させて、要はそういう選手を特別扱いするってわけにもいかない。そこはもうシビアに見ながらメンバーは決めさせてもらっていると。ただ、この最終戦に限っては『頑張れ、若手!』という思いで1週間、先週の末ぐらいから練習から見てはいるんですけど、なかなかやっぱり、さっきも言ったように、ハードル下げても入ってこないっていうのは、頑張れって思うしかないですね…。
https://www3.targma.jp/akasyachi/2024/12/07/post118992/2/
このインタビューにすべての答えが含まれています。
三國ケネディエブス選手と内田宅哉選手、河面旺成選手がレギュラーで出ているわけですが、彼らを下げてチャンスを与える、というのは大きな決断です。
今度は下げられたほうがモヤることになるでしょう。結局、この3人を下げるだけの「理由」を作れなかった。そこに尽きるわけです。
使われないのになんで獲った!GM・強化部が悪い!!
まず使われるだろう、と思って獲ってるのは間違いないです。
甲府から獲った山田陸選手・井上詩音選手にはそれぞれ事情があります。
まず山田陸選手。米本拓司・稲垣祥の両巨頭がいて、吉田温紀は新人。絶対に1人必要でした。今年の椎橋慧也にも求められたものでしたが、組立て役のCMFがどうしても必要でした。(一応できるという枠では内田宅哉もマルチロールとして専念できるわけでもない。重廣卓也はシャドーより。)
ただ、椎橋慧也は最終的にアジャストしてくれましたが、山田陸はしてくれませんでした。自分に求められたタスクに違和感を覚えていたのかもしれません。そこにオファーがあったことで飛びついた。
強化部に責任があるとすると、どういうタスクを求めるのかをきちんと納得させることができていなかったことかもしれません。
井上詩音選手については、開幕当初は三國ケネディエブス選手と横一線だったと思います。ハ・チャンレ選手が復帰したことで、どちらかしか残せない。そのときに差になったのがおそらくは身体能力です。たぶんそれくらいの違いでしかありませんでした。
その後もなんどもチャンスはあったはずです。三國ケネディエブス選手がやらかしたとき、出場停止のとき、ハ・チャンレ選手がやらかしたとき。
そのチャンスを掴めなかった。アピールがたりなかった。それだけなのではないでしょうか。
じゃあ獲らなきゃよかったじゃないか、っていう声も見かけましたが、三國ケネディエブス選手が開幕戦でメンタルやられてレギュラーをとったのが井上詩音選手だった可能性もあります。
獲得する時点で、未来はわかりません。
CB3人がいなくなって、正直いって、三國ケネディエブス選手と井上詩音選手、どちらもポテンシャル採用だったと思うので、どちらかがモノになってくれればいいな、くらいの温度感だったのではないでしょうか。
ここまで三國ケネディエブス選手が成長するなんて、2024年1月の時点で誰も想像していなかったのでは、と思います。
井上詩音選手については強化部に責任はあったかもしれませんが、もっと理由として大きいのは、不幸な巡り合わせだった、と思っています。
井上詩音選手はグランパスのことを恨んでいるのでは?
その可能性はあります。が、本人は公の場で語ることはないでしょうね。
なぜ完全移籍だったのか、ということについて、ヒントになるインタビュー(相馬勇紀選手)があります。
同じ環境でずっとコンディション、モチベーションを保つのは僕の性格上、難しいとも考えていました。それこそ(大卒で入団した)名古屋には感謝しかありません。でも、ここで新たな環境に進むべき、刺激的な場所で挑戦をしたいという想いが芽生えていたんです。(中略)また、それこそ名古屋とは半年契約が残っていたなかで、移籍金を払ってもらい、名古屋に移籍金を残すことで、恩返しもできるんじゃないかと考えていました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/757966ae577677c61ca0b63647958d3e895512f5
井上詩音選手は移籍獲得ですので、おそらく商慣習的に2年契約です。ありがちな期限付き移籍ではなく、完全移籍を選んだのは同じ理由かもしれません。(あくまで想像)
そろそろ「悪者」を作って、それを叩くのはやめませんか
ここまで冷静に読み進んで頂いた方は、もう既にそうしていただいていると思うのですが、
強化部も、GMも、監督も、そして選手も。みんな自分の職務に忠実にやってるだけだと思うんです。
それでもうまくいかない時はいかない。思った通りには進まないことなんていくらでもある。
みんな頑張ってやってるだけなので、それがうまくいかなかったからといって叩いてもしょうがなくないですか?
ここがうまくいかなかったね。
次はうまくやろう。次、次!
これでよくないですか?
誰かを悪者にして叩いても、なにもいいことなんかないです。
「○○が悪い」って発想をやめてみたら平和になると思うんです。いかがでしょうか。