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名古屋グランパス2024年シーズンレビュー (5) グラぽ編集長編 後編 グランパスの攻撃は改善できたのか? #grampus

シーズンレビュー前編はこちら

後編は、誰もが指摘する攻撃面での問題点について考えてみましょう。

今年はFWの得点が本当に少なかった年でした。永井6点、パトリック5点。これでは上位は難しかったでしょう。

ゴール期待値実ゴール
2024年(稲垣6永井6パトリック5)1.1191.13
2023年(ユンカー16)1.3081.18
2022年(マテウス8永井4)1.2320.79
2021年(稲垣8マテウス7柿谷5)1.0021.10
2020年(マテウス9金崎7前田6)1.1851.20

昨年はキャスパーユンカーの16ゴールが目立ちましたが、それ以外の選手の得点が本当に少なかった年でした。過去5年の間では2番目に得点が多く、そしてゴール期待値はナンバー1でした。そのマテウスは失ったものの、そこに山岸祐也という触媒を加えた今年への期待は大きかっただけに、残念な結果だった、としかいいようがありません。

半分マテウス・カストロがいた2023年にくらべてどう変化したのか?

攻撃系データのイメージ図
攻撃系データのイメージ図
2024年と2023年の比較:攻撃
2024年と2023年の比較:攻撃

比較してみると以下のことがわかります。

  • 攻撃回数は 116.7→109.6で6%ダウン
  • 平均30mライン侵入回数、平均ペナルティエリア侵入回数は大きな差なし
  • 平均シュートは12→10.6で12%ダウン
  • 枠内シュートは4.3→3.4で、なんと21%ダウン
  • その割にゴール自体は9%ダウンで済んでいる

これを漏斗モデルで見てみましょう。

攻撃系データの漏斗モデル
攻撃系データの漏斗モデル

109.6回攻撃して、やっと1点、というのが今のグランパスです。平均よりは少ないですが、びっくりするほど少ないわけではありません。サッカーという競技そのものが、これだけ得点が入りにくいものだ、ということがおわかりいただけると思います。

NeilSメソッドで比較してみると、どう変化が見て取れるのか?

NeilSさんのメソッドについては以下の記事を参考にみてください。

2023年は、マテウス・カストロの離脱前後でまったく違うサッカーになってしまっていました。そこを分けて比較してみましょう。

NeilSメソッドでの攻撃系データ
NeilSメソッドでの攻撃系データ

マテウス・カストロ移籍前と後で、大きくことなるのは以下のポイントです。

  • 30mライン侵入率:2023年マテウス移籍前 << 2024年 << 2023年マテウス移籍後
  • PA侵入率:2023年マテウス移籍後 ≦ 2024年 <<< 2023年マテウス移籍前
  • シュート到達率:2023年マテウス移籍後 < 2024年 <<< 2023年マテウス移籍前
  • 枠内シュート率:2023年マテウス移籍後 ≦ 2024年 <<< 2023年マテウス移籍前
  • 枠内シュート得点率:2023年マテウス移籍後 < 2023年マテウス移籍前 <<< 2024年

注目したいのはマテウス移籍前のシュート到達率、枠内シュート率が非常に高いことです。シュートに持って行けなくなったので、マテウス移籍後は攻撃の試行回数を増やした(=30mライン侵入率がアップ)が、そこからの精度が低かったのが特徴です。

一般的な考えでは、攻撃回数が多ければ多いほど、実際の成功数も多くなるのでは?というイメージを持ちます。

しかし2023年後半の数値を見ると、非保持型の名古屋グランパスが30mライン侵入やペナルティエリア侵入をやみくもに増やしても効果はないのでは?という疑問が出てきます。

仮説を試合ごとのデータで検証してみよう

では、試合ごとの攻撃系データで検証してみましょう。ブルーで塗った試合が敗戦。白が勝利。グリーンが引分けです。

試合ごとの攻撃系数値とゴール期待値・ボール保持率
試合ごとの攻撃系数値とゴール期待値・ボール保持率

敗戦したときだけに注目して見ると、敗戦にも2パターンありそうです。

攻めに行って攻めきれず、失点してしまったパターン(1節鹿島戦、10節浦和戦、21節セレッソ戦、37節鳥栖戦など)と、完全に押し込まれて攻撃も散発的になってしまったパターンに分かれそうです。

逆に勝利のときも、敢えてボールを持った場合と、敢えてボールを持たなかった場合に分かれそうです。

この考えで分類してみると以下のようになります。

非保持チームにおける攻撃系データ勝利時と敗戦時の比較
非保持チームにおける攻撃系データ勝利時と敗戦時の比較

こうしてみると勝ちに行って負けたときは

  • ゴール期待値が伸びてない
  • =いい位置でシュートを打てない
  • =きちんと崩せてない

という仮説が立てられます。

勝利できたときはペナルティエリア侵入もシュート数も高い値、なによりもゴール期待値が高いので、きちんと崩せているという風に解釈できそうです。

非保持で勝利できてしまったときはちょっと特徴的です。

平均シュートは10本を切っているのに平均ゴール数は2。攻撃回数100切りの試合も5試合もあります。

非保持で勝利した場合の試合ごとの攻撃系データ
非保持で勝利した場合の試合ごとの攻撃系データ

こうしてみてみると、非保持の名古屋グランパスの場合、攻撃回数から積み上げる方法では判断できなそうです。

非保持型の名古屋グランパスが30mライン侵入やペナルティエリア侵入をやみくもに増やしても効果はないという仮説は検証できそうです。

ただ、ハイプレスでのサッカーが確立できた29節新潟戦以降は、少ない攻撃回数の割にハイプレスで30mライン侵入回数が多く、そこが確立された「プランA:対保持チーム決戦仕様」の特徴になりそうです。

2024年サッカーのまとめ

2024年のサッカーは相手が保持型だった場合は、高い位置でボールを奪い、ショートカウンターで仕留めるという形が確立できていました。

一方でハイプレスからのショートカウンターが不発だと、非保持だと相手の攻撃試行回数は多くなるわけで、昨年までに比べて経験不足の守備陣では耐えきれずに先に失点してしまう=敗戦に繋がる、と考えられます。

2024年名古屋の戦術分類
2024年名古屋の戦術分類

問題は相手が非保持だった場合で、典型は37節鳥栖戦です。

この試合、鳥栖は徹底してボールを持たず、名古屋にボールを持たせてきました。

鳥栖戦のスタッツ
鳥栖戦のスタッツ(鳥栖の3倍のクロスを上げても、成功率はわずか7.1%)

中央が固く崩しきれなかった結果、クロス頼りの攻撃になってしまいました。しかしその精度は低く、なんと成功率7%。鳥栖の3倍のクロスを上げてもこれでは工夫がないと結論づけられてもおかしくないと思われます。

相手が非保持のときには、中が固くされていることがほとんどです。

それならば、相手のズレを作らなければなりません。この試合の鳥栖はアウトサイドは捨てて中の人数を絶対に減らさないようにしていたので、そのズレを作るには相手の守備陣の間でボールを受けて至近距離で落としてシュートに持ち込むなどの工夫が必要です。

※この試合、前半でポストのできる山岸祐也が脳しんとうの疑いで交代になってしまったことも工夫のなさに繋がったかもしれません。

2025年の課題は、「プランA:対保持チーム決戦仕様」以外の戦い方を確立できるようにすることだと考えられます。

おまけ

守備のスタッツは、そこまで悪くなっているわけではありません。警告と退場以外は・・・

今年はより熟成できると思いますので、警告退場含めた改善をお願いしたいところです。

2024年と2023年の比較:守備
2024年と2023年の比較:守備

About The Author

グラぽ編集長
大手コンピューターメーカーの人事部で人財育成に携わり、スピンアウト後は動態解析などの測定技術系やWebサイト構築などを主として担当する。またかつての縁で通信会社やWebメディアなどで講師として登壇することもあり。
名古屋グランパスとはJリーグ開幕前のナビスコカップからの縁。サッカーは地元市民リーグ、フットサルは地元チームで25年ほどプレーをしている。

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