王者らしく勝ち!とは行かず。何度も顎が外れそうになりながら見守る試合になりましたね。苦労した訳をワンポイントで振り返りましょう。
試合情報

宮崎がターンオーバー、名古屋は代表ウィークに入る為にほぼフルメンバーというリーグティア(層)に差がある試合ではあまり見られない光景となった。ピサノがスペイン遠征という事もありシュミットの実践復帰になった事で名古屋のメンバーの“本気感”が際立つ事に。
守り方の巻:どのポジションを脅威とするか?
前半10分付近までは対角(主にWBに対して)長いボールが多い名古屋。
それを見たベンチから「幅を使って、相手を広げろ。」という指示が出る(09:22~ベンチリポート参照)。
試合開始からの宮崎の守り方を見ると、長いボールを使っていた理由とベンチからの指示が出た理由が分かりやすい。
守備時に宮崎は4-4-2のフォーメーションを採用していた。
2トップと2列目の中央守備的MF(CDM)+サイドハーフ(SH)の組み合わせで稲垣と加藤を挟み込む形を作っているのが特徴だ。その結果、加藤と稲垣にパスが通りにくくなる状況が生まれる。
一方で、宮崎が悩むのは名古屋の3バックの存在だ。2トップ対3バックの構造になっているため、両脇のセンターバック(CB)に誰が対応するのかが課題となる。
選択肢としては、4-2-3-1の前線3人でプレッシャーをかける形を取るチームもある。しかし、名古屋がウィングバック(WB)を配置していることから、WBとCBのどちらをより脅威と捉えるかを考える必要がある。その結果、宮崎はWBを脅威と判断し、サイドハーフ(SH)を引いて守る選択を取った。

宮崎のSH(サイドハーフ)の選手たちがWB(ウィングバック)をケアするためにCB(センターバック)へのプレッシャーを避けたことで守備が楽になったかといえば、決してそうではない。
名古屋はIH(インサイドハーフ)を配置しており、CDM(守備的MF)の脇、つまりSHの近くに森島や浅野が頻繁に顔を出す。そのため、宮崎のSHがWBの対応に専念するわけにはいかない状況であった。
宮崎がWBに対処するタイミングについては、「両脇のCBにボールが入った時」と決めていた可能性があるとピッチ上の動きから判断できる。
佐藤や河面にボールが渡ると、SHが外側までアプローチし、それに合わせて中盤の選手たちがスライドする形を取った。
つまり、名古屋の両脇のCBにボールが渡ると、中央に位置していた宮崎の守備ブロックが自然と寄せられる一方で、CBに対して直接的なプレッシャーはなかった。その結果、佐藤や河面から見れば逆サイドのWBが空いている状態が際立って見えた可能性がある。それが、名古屋で頻繁にサイドチェンジが行われた理由と考えられる。
☝️ポイント
09:00~のビルドアップが分かりやすい。全体的にサイドを起点に動く宮崎を名古屋が揺さぶる。佐藤が和泉を見ていたがキャンセル。その後、原に預けて右に宮崎を寄せきる。やり直した時に阿野が河面に行くと和泉が空いた局面やその後、河面がボランチの横の動きの逆に縦に入れたシーンなど。宮崎の守り方に対してWBを基準にした名古屋のボールの動かし方が分かりやすい。

攻めづらさは後ろから:立ち位置の精度
かといって宮崎もこのままでは済まなかった。
指示があったのか、それとも本人の判断なのかは定かではないが、途中から阿野が河面やボールを受けに来た和泉に対して厳しく当たり始めた。このあたりから試合の流れが怪しくなった。
松本、吉澤、阿野が3バックに対面するような立ち位置を取るようになると、横に動かしたボールに対して縦方向にアプローチする阿野の動きが目立ち始めた。その結果、名古屋のビルドアップの主軸であった河面にボールを預けるのが難しくなり始めた。
さらに、宮崎の守備の選択と噛み合ってしまった要因として、試合序盤から歪だった名古屋のCBの立ち回りが挙げられる。
具体的には、佐藤と三國が対面する松本と吉澤を「立ち位置」を利用して動かすことができていなかった。試合序盤から3バック対2トップの構図でありながら、佐藤と三國は松本と吉澤の前に立つ選択をしていた。
つまり、2トップによって「消されている」状態が続いており、その結果、唯一フリーだった河面も守備の的になったことで、名古屋の3バック全員が宮崎の守備に封じ込まれる形となった。

宮崎側の視点で考えると、佐藤と三國が動かないため、吉澤と松本で相手を抑える形を取れた、となる。
さらに宮崎側としては幸運なことに、加藤と稲垣も同じラインに立っていたため、一石二鳥の状態であった。
佐藤に関しては、ライン間で待つことや降りてくるタイミングが多かった原にほとんどパスを出せず、「立ち位置」の変化も少ない状況に陥っていた。さすがにハーフタイムで修正の指示があったのか、後半では少し改善が見られた。
三國は両脇の選手がほとんど動かなかったため、「立ち位置」以前に動けない状況に陥っており、少々気の毒ではあった。
特に佐藤と三國の距離感が問題であった。24分30秒の場面では、河面が「奥に開いてくれ」とジェスチャーをしているシーンが見られる。
その後、シュミットからのパスを受け取った際、素直に開く様子から、佐藤には自身のプレー選択に対する強いこだわりがあることが伺えた。
試合時間が30分を越えた頃から、CB間の距離がしっかり広がり始めた。
そして31分23秒のシーンでは、佐藤から浅野へのパスが通り、簡単にゴール前まで迫ることができた。このことから、三國や原、内田がリーグ戦で当たり前に行っている「立ち位置」の工夫が、この試合でも見られたならば、状況は違っていたかもしれない。
ボールの動かし方の約束事が変われば、攻撃が難しくなるのは当然である。
☝️小噺
CB(センターバック)の立ち回りの影響を大きく受けたのは加藤であった。18分35秒からのロストシーンがその典型例である。
佐藤が広がらないことに気づき、加藤を少しでも楽にするために稲垣がサイドへ展開する動きを見せた。
佐藤→加藤→佐藤→稲垣というパスワークを見せた後、本来なら佐藤→加藤で松本と吉澤の守備範囲に変化を与えることが可能であったはずだが、稲垣を経由せずに再び中へパスを通してしまった。
この選択肢が完全に悪いわけではないが、浅野がSH(サイドハーフ)の動きを制限している点が見逃せない。原がフリーの状態であり、稲垣にパスを出せば相手の守備陣が確実に動く状況にもかかわらず、加藤に対して「ボールを受ける準備をしておいてほしい」と要求する行為は宮崎側の意図を逆手に取ったものではなく、単に加藤を困惑させるだけの行動であった。
後半~:立ち位置を変えてもう一度
後半になってCBの立ち位置に修正が入る。河面に開いてもらって、三國の左幅が取れるようにした。佐藤を右側に押し出すよりも三國をズラす事で多少最終ラインの幅が変わる。
幅が変わって最終ラインと2トップが3対2の状況で宮崎が名古屋の両脇のCBにボールが入る現象はどうしよう?を選ぶところからスタートさせる。

☝️ポイント
後半では阿野や坂井といったSH(サイドハーフ)が縦に長く走ったり外に開いたりする動きが際立つようになった。WB(ウィングバック)にボールが入る際、前半では宮崎の守備が横方向に動いてスライドしていたが、後半になると守備全体が広がり、スライドの動きがあまり目立たなくなった。
宮崎の守備ブロックが広がったことを受けて、大外の交代が実施された。山中と中山が投入され、個人の質の差を活かす形となった。CB(センターバック)からWBまでの距離が長くなったものの、山中のサイドでは加藤が外に出る動きが見られ、中山のサイドでは森島が中継役となる動きを見せながら、宮崎のDF(ディフェンス)間を外側から攻略しようとする意識が感じられた。
個人の質の差が影響した時間もあったと思われるが、宮崎としては延長に入り、試合開始直後に行っていた「中央をコンパクトに守る」戦術を再確認したものの、それを突破されてしまったことに悔しさが残るかもしれない。後半では守備ブロックの間延びが減少し、スライド対応のタイミングで守備を試みた結果、佐藤から山中への展開が生じた。
これは前半でWBが浮いていた仕組みが逆転したことがきっかけであった。先制点直前の宮崎の守備を見ると、その状況が非常によくわかる。
つぶやき
- 松本の斜めのランニング(三國を外す動き)はいやらしかった。足の速さか足元が付けばどのチームも欲しそうな選手。阿野も試合中になんとなく当たり方変えた方が良いかも?って判断できる感じはすごくよい。ヴェルディユースの左利きで色々納得
- デカい選手に当てる!っていう理由で場所を変えられる三國は中々大変だろうなと思いつつ。三國の配置変動の弊害を野上や原、内田が喰らって欲しくないなとも思う。
- ゾーンなのにファーを空けてその上で、ニアの逸らしに走られていい。にしてるのは単純に謎だった。ポストに感謝
- 442でセンターが囲まれる試合。今シーズン何回やっててすんなりピッチで解決策が出てこないのか?選手は前向かないといけないだろうけど忘れていいわけじゃない。自分が誰をどういう手段で動かしたらどうなるのか?普段の練習から頭も丁寧に使って行きたい。中断期間で良い整理をしてくれたら。