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両チームの守備における指標の違い 第33節 #セレッソ大阪 戦ワンポイントレビュー #grampus Y0226

首の皮一枚から上半身ぐらいは繋がる結果となった、セレッソ大阪戦の勝利。この試合における名古屋の2得点の裏には、両チームの守備における指標の違いが見えた。本稿では、そのポイントを解説する。

試合情報

名古屋の前線の守備選択

この試合は、セレッソと名古屋、両チームの前線3枚がどのような守備を選択するのかという点から始まった。

名古屋は試合開始直後から、チーム全体でのプレスを選択肢に入れ、高い位置から守備を仕掛けた。ウイングバック(WB)を相手サイドバック(SB)の対面まで上げることも辞さず、セレッソが低い位置からボールを保持することを制限しようという意図が見られたのである。

この制限をかけるにあたり、名古屋がチーム全体の指標としたのが、和泉竜司とマテウス・カストロであった。この二人が前線からビルドアップの制限(サイドへの誘導)をかけられる状態か否かを、チーム全体でプレスに行くかどうかの明確な判断基準とした。これが、ここ最近の課題であった守備のグレーゾーン問題に対する一つの解答となったのである。

守備のグレーゾーン問題については過去の記事を参照して欲しい

👍ポイント

この指標の分かりやすさは、10分30秒からの展開に表れている。清水主審にボールが当たったことによるドロップボールから、名古屋はボールを押し返すためにマンツーマンで対応し、ビルドアップのやり直しに持ち込んだ。そして10分43秒から守備の局面が再スタートする。セレッソは柴山昌也と香川真司のローテーションによって、マンマークの際に生じるスペースのズレを作り出そうと試みた。

しかし、名古屋にとって重要だったのは、ビルドアップが再開される瞬間に、相手センターバック畠中槙之輔に対し、和泉とマテウスがどのような選択肢を取れているかという点であった。この2人がmoボールホルダーの前に立てない状態ではプレスへの切り替えは無い。そのため、この場面で森島司は和泉とマテウスに対し、「(パスコースを限定するために)降りるか、中に絞るかしてくれ」というジェスチャーで要求を出している。

マテウスとしては、畠中と柴山の2対1の状況を作られており、早く畠中の前に立てば柴山を使い直されるという難しい状況であった。しかし、WBを外に配置している以上、中に通されるのと、降りてきた柴山に出されるのと、チームとしてどちらがより厳しい状況になるのか。その判断が求められていた。(そもそも、この守備の指標となる役割に、新加入の木村勇大を組み込めないのが戦術的には痛手である。しかし、彼はシーズン途中での加入であり、元々守備を得意とするFWではないため、既存の選手たちが厳しい役割を担うのは致し方ない。)

これに対し、セレッソの無難な解答は、サイドバックの大畑歩夢を内側に立たせる形、もしくはマテウスを外に引き出して畠中が中央から楔のパスを入れることであった。大畑を内側に立たせる形は、名古屋がハイプレスに来る展開でSB対WBのマッチアップになるため、大畑が絞って名古屋の野上結貴を内側へ引きつけ、外側のレーンで柴山やチアゴにボールを受けさせることで、名古屋の3バックを外に引き出す狙いがあったように見えた。

24分31秒からの展開では、名古屋側がビルドアップの制限ができていないにもかかわらず、前線の枚数が同数であることからハイプレスに行った。この場面では大畑が内側に絞り、畠中から外側のレーンへ綺麗にボールを運び出すことに成功した。しかし、ボールが出た先の局面でチアゴや柴山が3列目のギャップを使えなかったため、好機には繋がらなかった。このプレーには、セレッソのパパス監督もノートをベンチに叩きつけるほど苛立ちを見せた。

セレッソ側の曖昧な前線

名古屋側の前線の守備選択から起きた展開が分かったので、次はセレッソの前3枚+柴山の守備選択を考える。

最初の明確なビルドアップ阻害の守備局面は06:52~。ハットン、柴山で2センターを消しながらSHはWBにマークに行けるように。という形を作りつつも森島にハットンと本間の中間で受けられて柴山も稲垣に裏を簡単に取られるという展開に。そもそもWBが降りて来ている状況のビルドアップ阻害をやってない感じもあり、スローイン直前に香川が必死に「下がって来い」というのがカメラで抜かれていたのが印象的。但し、ここからは名古屋側も何故かロングボールを使って行くのではっきりとした守備局面は中々訪れない。

次に、セレッソの前線3枚と柴山を含めた守備の選択について見ていく。

最初の明確なビルドアップ阻害の局面は、6分52秒からであった。セレッソはハットンと柴山で名古屋の2センターを消し、サイドハーフ(SH)がWBにマークに行けるような形を作ろうとしていた。しかし、森島にハットンと本間至恩の中間でボールを受けられ、さらに柴山も稲垣祥に裏を簡単に取られてしまった。そもそも相手WBが低い位置に降りてきている状況でのビルドアップ阻害が徹底されていなかった様子で、直前のスローインの際には、香川が必死に「下がって来い」と指示する姿がカメラに映っていたのが印象的である。ただし、この後、名古屋側もなぜかロングボールを多用し始めたため、明確な守備局面はしばらく訪れなかった。

次に印象的だったのは、25分5秒からの名古屋のゴールキックの局面である。名古屋は武田洋平、佐藤瑶大、藤井陽也で3バックを形成し、中山克広と原輝綺がSBのように位置取った。4バックのセレッソからすれば、SHを原と中山に明確に付け、センターバックを数的優位で対応するのが定石のはずであった。(WBがいることで、SHと2トップが対応に困っていた可能性はある)

しかし、ハットンが武田へプレスに行くような高い位置を取った影響か、本間は中山を放置してしまい、結果的にそこからチャンスが生まれることになった。

名古屋の先制点の直前のビルドアップ場面でも、セレッソはハイプレスを仕掛けた。しかし、3列目まではプレスの際のマークが何となく見えていたものの、最終ラインのマークは曖昧な状況であり、チームとして連動するのは難しい状態であった。そんな中で「本番」のハイプレスが急に始まったのである。当然、マテウス対畠中の局面は計画されたハイプレスではないため、ボールを奪い切れる確率は低い。そして、この試合でセレッソが守備対応に苦慮していた中山をどう捕まえるか、という問題がここでも発生した。

両チームの守備における決定的な違い

両チームとも前線は3枚で、守備をスタートする枚数は同じである。しかし、そのアプローチには明確な違いがあった。

  • 名古屋グランパス:守備の指標となる「選手」を決めていた。(例:10分30秒40分9秒のプレー)
  • セレッソ大阪:守備の「形」だけを決めていた。

セレッソは失点してからは守備の形がはっきりしたものの、試合開始からの選択が曖昧であった。その時間帯に、名古屋は得点を挙げることができたのである。

試合後雑感

  • マテウスと和泉が二度追い、三度追いとプレスをかけ続けたおかげで、チーム全体の守備の選択がはっきりした。それに伴い、1対1の局面を作られがちだった最終ラインも、よく対応していた。
  • 森島がボランチの役割に慣れたというよりは、守備における状況判断能力が向上した点が大きい。「今は行くべき」「今は行かないでくれ」という判断を、実際は自身の守備のしやすさで決めているのかもしれない。しかし、稲垣や椎橋のように対人守備に特化していないからこそ、良い意味で「普通のチーム守備」における最適な選択が分かり、チームのバランスを保つことに繋がっている感覚がある。
  • 後半のセレッソは、まるで浦和レッズとのアウェイ戦の時の名古屋を見ているようであった。ビハインドのチームによくある展開として、ボール保持率は高いものの、2点を取り返すほどのパワーが不足していた。
  • 相手を研究し尽くして相手が嫌がるサッカーをしてくるチームも多いが、今回は名古屋のWBを放置してくれていたことからも、セレッソ大阪はスカウティングを重視せず、自分たちのサッカーを大切にするチームなのだな、という驚きがあった。

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