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勝てれば大収穫だった仕込み 2025年J1リーグ第20節 ヴィッセル神戸戦マッチレビュー #グランパス #grampus #visselkobe Y0212

強度が~、相手にボールが~なんて言葉で片付けられそうなこの試合。おそらく今シーズンで一番のターニングポイント。これで勝てれば大収穫だった仕込みの部分を振り返る。

試合情報

天皇杯で結果を残した菊地を頭から起用。神戸の中盤3枚に対応できるように降りても良し、そしてリーグ戦でキャスパーと役割被りのような動きもしていた和泉が入って前線を作る。

一方で、後方の構成に大きな変更は見られなかったものの、WBのキャラクターは天皇杯から変更された。天皇杯では、相手が4-2-4の布陣を採用し、大外から守備の矢印を向けてきたことで、前半のビルドアップが機能しなかった。これを踏まえ、大外にポジションを取らせ、「外で釣り出す」構造を選択肢として活用できるように調整した。

天皇杯で苦しんだ「後方の組み立ての選択」が、名古屋にとって重要なポイントになると予想された。

神戸のウィークポイントを探す

前半15分までは、両チームともにバタついた展開が続き、ボールが落ち着かない時間帯だった。互いの牽制が本格的に始まったのは、17分前後の時間帯だろうか。

名古屋がロングボールを多用する理由は、アンカー脇にある。宮代、井手口が前向きにボール回収へ動くことにより、扇原の脇にスペースが生まれる。このスペースの管理は、永戸と酒井の絞りによって行われていた(17分14秒〜)。ロングボールが先行する場合は、SBが先に絞って対応する。扇原脇でボールを回収できれば、WBの前進によってSBを外側に釣り出すことが可能となる。

この選択ができないのは、どういった場面か。井手口あるいは宮代が扇原のサポートに入る時である。この試合で言えば、守備局面では両者がトップ下気味のポジションで守備免除された形となっており、相手は実質的に4-2-3-1のような布陣で構えてくる局面だった。これに対して名古屋の選択は、原と中山を大外に張り出させ、4-2-3-1の3列目(SH)の位置にいるパトリッキと広瀬を外側に引き出すところからスタートしていた。

神戸のWGが外に引っ張られたとき、名古屋が次にゴールへ向かうために目指すべき形はどのような展開か――という話である。先に述べたように、扇原の脇のスペースを空けることができれば、WBが上がったタイミングで神戸のSBを外側へ引き出すズレと連動が作れる。この点で、18:23〜のようにパトリッキを引き出し、稲垣と椎橋の間に空間を作っていく狙いは有効だった。

ただし、この場面では中山が前方へ蹴り出したボールを、跳ね返りに反応した井手口が回収。低い位置にいた井手口に対して名古屋のセンターが食いついたことで、神戸に順を追ってスペースを使われる展開となり、名古屋が本来狙っていた形を、逆にやり返される格好となった。

神戸も、宮代の周辺にビルドアップ経由でボールを差し込まれると守備構造をどう整えるかに悩んでいる様子が見て取れる。

それが顕著に表れていたのが、20分42秒からの展開である。バタつきながらも山岸がボールを受け、宮代の背後へと差し込む。この場面で、扇原は菊地と山岸に出ていくことを嫌がる様子を見せていた。

こうしたプレー選択からも、後方からの組み立てによってWGが外に引っ張り出される形に対し、神戸が明確に対応に苦慮していることがうかがえる(特に26分35秒〜のオフサイドになった展開は、宮代の背後からの場面として象徴的である)。

👍ポイント

この構造を理解したうえで、絶対に見返しておくべき重要なシーンがある。それが21分40秒からのビルドアップやり直しの場面だ。山岸と中山のローテーションによって酒井がワイドに開き、ボールを菊地に預ける。そこから佐藤が開いて、左サイドは佐藤・椎橋・三國という構成になる。椎橋と稲垣のポジションには、それぞれ原と菊地が代わる形だ。

名古屋が狙っている形は、WGを一瞬遅れて引き出す構造にある。この場面では神戸のWGであるパトリッキが菊地に対応し、広瀬は扇原とともに稲垣を見る役割を担っていた。要するに、広瀬がサイドへ広がる必要がない――つまり神戸からすれば危険ではない構造であったということだ。

ここで注目すべきは、三國がボールを持った瞬間の原と菊地のパス要求の仕草である。彼らはそれぞれ、対面するSBである内田と佐藤を指さしているのだが、その指す方向は互いに真逆であった。これは何を意味するか。

菊地は、三國と内田の距離感、そして自らがパトリッキをピン止めしている状況を見て、名古屋が目指すべき構造――「WGを外に引き出すことで中央にスペースを生み出し、最終的に扇原の脇を攻略する」――を再現するよう要求していた。この菊地の意図をビルドアップ部隊がどれほど共有できていたのかが、今後の名古屋の完成度を左右すると同時に、菊地自身のビルドアップ理解度・処理能力の高さを示すシーンでもあった。

原も内田への展開を求める動きを見せていたが、広瀬が確実に外に広がると確定している状況において、原がサポート役として関与できた場面は、原-三國対佐々木の構図であった。原は佐々木にアプローチするような立ち位置を取っており、ゆえに椎橋からパスを受けられるよう、あと半歩内側にポジションを修正する工夫や、逆に佐々木に守備の選択を迫るためにより早くワイドに開くといった駆け引きがあれば、三國がボールを持ち運ぶ選択肢も生まれ得た。この点は非常に評価できる。

「内田が早く降りてこない」という見方ではなく、「広瀬をあそこまで押し込んでいる」と捉えることで、ボランチの位置に入ったからこそ生まれる展開があっても面白かった。なお、30分頃からは原自身が外へ開いて運ぶシーンも見られ、決して状況を把握できていなかったわけではない。内田との意思疎通の問題であり、実際、原の得点も(後述するが)決められた約束事に基づくプレー選択から生まれたものであった。

構造の消化力を再現性

後半開始から、左に和泉、右に中山という布陣に変更された。ここ最近は原と中山の組み合わせで、中山が低い位置を取る試合も増えていたことから、その関係性を元に戻す形となった。ただし、目指すところは結局同じである。

52分59秒の場面では、佐藤がパトリッキを引き出すことに成功したことで、和泉が酒井を釣り出すという狙いを実行したい局面であった。実際にはWBが使われず、山岸に対しても酒井の動き出しを見てからプレー判断の軸が急にずらされる場面が続き、やや無理のあるアドリブを求められる状況が多かった。それでも、山岸は受けるための動き出しを粘り強く続けていた点は評価に値する。

得点シーンにおいても、初期の約束事の連動性が成果に繋がったことがよく分かる場面である。パトリッキと広瀬を外側に広げ、それによってSBも引き出す。そして、扇原と井手口がポジションをずらして出てくるタイミングに対し、森島がそのズレに走り込む。井手口しか対応できない状況となったことで、原が背後へ侵入してフィニッシュへ持ち込んだ。

つぶやき

  • 先制点に至る場面では、「どこを嫌がるべきか」という認識がチーム内で統一されていなかった。酒井から配球されるのが嫌なのか、それともパトリッキが外に開くことでセンターバックまで引き出されるのが嫌なのか——どちらを警戒すべきかが、前半の段階から明らかに後者であった(WBを釣り出されたが、幸いにも神戸の中盤が中央へ侵入してこなかった場面が幾度となくあった)。にもかかわらず、CB→SBという二度追いの対応ではなく、単発かつすべてのプレスに付き合ってしまった時点で勝負は決していた。プレスにおける経験値の差が顕著であり、永井であればCBを切りながらSBに寄せるといった対処で対応できたはずだ。守備技術についても、数をこなすことで身につけていく段階である。
  • この試合における名古屋の問題は、強度の不足やパスが繋がらないといった現象自体よりも、それらを引き起こす要因にあった。つまり、技術の問題ではなく、戦術的な約束事を無視したプレー選択が原因だったということである。振り返ってみると、プレーそのものの精度よりも「選択の精度」が低かったために、ボールが回収できず、繋がらなかった。スタッフも含めて準備してきた攻略プランや実行方法があったにもかかわらず、それを無視してしまった点が切ない。選手個々が自己を見つめ直すには、極めて示唆に富んだ試合だった。
  • 国立での清水戦も同様であり、「ズレの作り方は理解している。あとは相手よりも早くズラすだけ」という段階にまで落とし込まれていた。原の得点は、前半に設定された決まりごとを全員が共通理解し、それを相手よりも一足先に遂行した結果である。そのプロセスには再現性が十分に備わっていた。

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