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試合にこめられた意図を紐解く 2025年J1リーグ第23節 東京ヴェルディ戦ピンポイントレビュー #グランパス #grampus #verdy Y0214

名古屋のサポーターからは「そんな暑くない日」なんて感想も聞こえた31.9℃の豊スタ。名古屋に慣れた椎橋も試合後には「暑さはこんなもん。」という感想も。見ている34,095人は「熱くなる試合」にして欲しかったかもしれない。

試合の熱さを求めた名古屋と温度感を重要視したヴェルディの一戦をワンポイントレビューで振り返っていく。

試合情報

ミラーマッチとなるため、両チームの出方が非常に重要となる。名古屋は出足よく前線からプレスを仕掛けていく。一方でヴェルディは、前線の3枚がずらされた場合にはブロックを形成して引いて待つという構え方で試合に入った。

やりたい事は明確

名古屋の狙いは、試合開始から2回目の攻撃局面、すなわち04分46秒からの場面で既に明確に見えてくる。

最終ラインの3枚と前線の3枚が噛み合う局面において、徳元が最終ラインに降りる動きを見せ、これによって翁長を一列前に引き出す構造をとっていた。加えて、インサイドハーフ(IH)がセンター脇に立つことで、ヴェルディのサイドに配置されたセンターバックを外に引き出す(この時は永井が宮原を引き出す動きを担っている)。

翁長が縦向きに開く動きと合わせて、サイド奥にスペースを生み出すことで、トップの選手(この時は森島)がそのスペースへ走り込む展開を狙っていた。

ヴェルディはスペースを作られたくないという意図のもと、翁長を押し下げる形で対応している。この場面では、翁長と宮原の間にインサイドハーフ(IH)が立つことで、翁長がWBに対してアプローチしづらい状況が生まれ、それによって徳元がフリーでボールを持てる構造が形成されていた(05分47秒〜、フリーキックからの展開などが該当)。

実際、05分47秒からの徳元によるアーリークロスの場面を見ると、宮原と翁長の2人が山岸1人によって見事にピン留めされている様子が確認できる。

基本的には、以下の2つの要素が名古屋のビルドアップにおける手札として機能している。

  • 翁長の上下動を利用することで守備側の配置を揺さぶること
  • 福田に対し守備の選択肢を2択(内か外か)に限定させること

06分08秒からの攻撃への切り替え場面においても、野上の守備チャレンジに対するリアクションとして、椎橋がサイドに捌き、徳元への配球においてスムーズな立ち位置を取っていた。左サイドにおけるビルドアップの共有は、非常に統率が取れていた印象が強い。

※編注: 前の試合では野上-徳元ラインがかなりぎこちなかったので、そこが改善されたことは素晴らしい。この1週間でかなりガッチリしこんできたものと思われる。一方でその仕込みを徹底したことで、相手の強みである左サイド(相手にとっての右サイド)の組立てに偏重してしまったことが難しさを産んだのではないかと思われる。

一方、右サイドに関しては、いわば「稲垣システム」と呼ぶべき構造が見られた。左サイドで組み立てを行っている際、稲垣が中央の高い位置に入り込むことで、原がそのカバーとしてボランチ位置へスライドする。この動きに伴い、斎藤がセンターの脇に立って守備対応する場面が多く見られるため、ここをどうにか攻略したい意図がある。

もっとも分かりやすい攻略方法として挙げられるのが、09分22秒からの展開である。原が外に張り出し、三國がボールを運んで、和泉・三國・原の三者で斎藤・福澤に迫っていく流れだ。この場面で重要なのは、三國が自らボールを保持しながら前進した点にある。ここまで運ぶことで、斎藤がそのポジションに釘付けになり、守備選択肢が増加する位置までボールを運ぶことの重要性がよく表れていた。

手札と流動性

ただ、前半で健太さんが懸念したのはこのセットアップが有効的に作れているかどうか?の部分だった(以下健太監督談)

ー流動性が出たことで狙いを出せなかったとお話しされましたが、狙いとどういったギャップがあったのでしょうか?

永井(謙佑)が中にいったり、右にいったりして、逆に山岸(祐也)は左に開いたりしていました。山岸は真ん中でポストプレーするというか、あくまでも彼が起点になり、森島(司)や永井が飛び出すようなシーンをもっと作りたかったです。永井が速いタイミングで飛び出して、ボールが出てこないから真ん中にきて、バランスを取るために山岸が左にいってしまうと、徳元(悠平)にボールが入ったときに幅を取る選手がいなくなってしまいます。右サイドでも和泉(竜司)が中に入るのは構わないのですが、そこに森島がいないと。いつもは右サイドの深いところを取ったりするのですが、原(輝綺)と和泉、森島と稲垣が絡むシーンを作ることができなかったので、そこに関して話しました。今日の試合は山岸が中央、綱島(悠斗)のところで起点を作ることができれば、永井のスピードを生かすことができると考えていましたが、前半はうまく表現することができませんでした。

https://inside.nagoya-grampus.jp/inside/detail/?sid=3902&cid=105

要するに、左サイドでは福田の守備上のバグを利用し、翁長の上下動をコントロールする構造をとっていた。加えて、サイドでの翁長と宮原の駆け引きに関しては、サイド奥を取れる永井に任せる方針であった。宮原を中央へ引き出すような動きや連携は山岸に担わせたほうが、各選手の“強み”をより活かせるだろう。実際、35分39秒からのように押し込んだ場面でも、相手のラインが高い状況においてWBとの縦方向の駆け引きを担っていたのは永井ではなく、森島であるケースが多かったことが示唆的である。

一方で、右サイドでは原がボールを持った際に、縦の同一ライン上に森島がポジションを取っていることで、斎藤に対して数的優位を確保できる。和泉がWBを押し込む働きによって、原がボールを持った際の横幅(パスコースを探す幅)が生まれ、深い位置でもサイドで数的優位を作れる構造が形成されていた。ここで奥までスペースを取れると、稲垣と原が後方からミドルレンジのフィニッシャーとして侵入する展開が可能となる。この意図は、13分04秒からの場面において特に鮮明に現れていた。

レビューを読んでくれている読者であれば、インタビューの真意を読み違えることはないだろう。健太氏自身、「流動性そのものを否定している」わけではない。前半において名古屋が、相手に引かれた中でミスを待たれるような状況に陥っていたことを踏まえると、限られた縦幅で相手にスペースを使われることを避けるには、横幅から勝負を仕掛ける展開、すなわち個人の“役割の強さ”によって相手を動かす必要がある。相手の守備が動いた後に流動性を絡めていくべきなのではないか、という提案であり、「流動性の先行ありき」ではないという示唆と受け取れる。

この流動性の弊害が如実に表れていたのが、36分20秒からのプレー選択である。名古屋が利用したかったのは、福田・翁長 vs 徳元・野上の構図であり、この時間帯ではヴェルディもセンターバックへのプレスを控えていたため、最終ラインには比較的自由があった。徳元が翁長を押し込む形になっていたため、野上が福田を引き出す、あるいは翁長を引き出すように前進できれば、稲垣と椎橋が囲まれていた状態でも、相手を外に押し出してスペースを作ることが可能であった。

(この文脈において、斎藤が守備時に下がってくる傾向が強いため、福田が低い位置まで降りてしまうと、名古屋のセンタープレーヤー2枚は前向きで受けることが難しくなる。だからこそ、引いて構えた福田を再度引き出すか、斎藤を横に引き出すかという2択に持ち込みたい場面であった。)

しかしこの状況では、縦方向のスペース配置、そして福田の立ち位置を踏まえれば、本来であれば翁長を動かしてサイド奥のスペースを取りたい場面である。ところが、翁長と宮原の間に前線の選手がポジションを取っておらず、連動が成立していない。野上が徳元側から展開するよう指示を出したが、三國→稲垣のパスは、どちらも外の状況を見ず、結果的にロスト。出し手も受け手も、“気を使って動くこと”としての流動性が求められる局面で、その位置に存在していなかった。求められたタイミングでポジションに現れない、という感覚を持たされる展開であった。

なお、インサイド・グランパスの椎橋および山岸のインタビューを読むと、そうした状況認識に関する言及があり、「受けるべきタイミングで出てこない」「出せる状況で動きがない」といった趣旨のコメントが記されている。

修正したものの…。

後半に入ってマテウスを投入した意図は明確であり、それは翁長の背後を突くことにあった。ヴェルディが後半開始とともにエンジンをかけ、プレスを強めてきたため、中山も起用して両サイドの縦幅で勝負を仕掛ける方針が立てられていた。

しかし、マテウスのアクシデントによって左サイドへの意識が強まり、右サイドへの展開が極端に少なくなった。加えて、森への交代で手札の修正を試みたものの、ピッチ全体での柔軟性が乏しく、展開はちぐはぐな印象を受けた。

最終的には、椎橋・稲垣・山岸の3人の運動量が落ちたことで押し込まれる展開となり、後半はそのまま終了した。

つぶやき

  • 後半に入ってから、徳元および三國の側に積極的にプレッシャーをかける構えを見せたのがヴェルディである。だからこそ名古屋は、背後を取るためのWBおよびIHを配置した。サイドに展開してから奥を取る構造を徹底したかったが、結果としてサイドに逃げるだけに終わってしまった。中途半端にビルドアップを覚え始めたチームにありがちな現象であり、こういう局面で明確に割り切ったプレー選択を誰が担うのかが問われる場面であった。
  • 「一度広げる」といった展開が見られなかった分、後半は中央エリアが過密状態となり、菊地もあの構造ではさすがに守備者の数に対して孤立せざるを得なかった。
  • 前半は省エネで45分を凌ぎ、後半に勝負をかけてきた相手に対して、名古屋が90分を通して主導権を握る姿勢を打ち出した点は評価に値する。
  • 「福田のマークが曖昧になったことで守備構造に綻びが生じた場合は、徹底してブロックを敷いて対応する」という作戦に、迷いなく割り切った胆力は純粋に驚嘆に値する。
  • 名古屋の選手がインタビューでも語っていたように、守備時の構えに求められる集中力は、もはや精神論の領域にまで達していた。

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