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1対1の「負けターン」を理解する 天皇杯準々決勝 #サンフレッチェ広島 戦ワンポイントレビュー #グランパス #grampus Y0222

開始5分で先制されたものの2点返して2-4。プロとして若手ベテラン関係なく厳しい声が現地でもSNSでも止まらない状態に。今シーズンなんとなく勝ててきた相手なだけにハードルも高めになった事も反動だった。

試合情報

マンツーマン、1対1の質

最近の名古屋の試合は、開始直後のプレーにその試合の本質が凝縮されていることが多い。このサンフレッチェ広島戦も例外ではなかった。試合の行方を左右した「1対1の質」、そして「対面相手の攻略」というテーマについて、詳細に分析する。

試合の縮図となった序盤のプレーと「対面攻略」の欠如

森島がプレスにいった後、自分達のボールになって森島→山岸のカットから始まる広島の攻撃の場面を見てみる。

試合開始直後、森島がプレスをかけた流れからマイボールとなり、森島から山岸へパスが供給される場面。ここに、チームが抱える課題が見えた。

外に流れてボールを受けた森島に対し、広島のウイングバック(WB)が対応する。この時点で森島の対面はWBとなり、名古屋のWBである徳元がフリーな状態になった。ここで森島は前方の山岸へパスを選択したが、これは相手にカットされてしまう。一見、山岸の周りにはスペースがあり、そこにパスが通れば決定機に繋がりそうに見えたが、そもそも成功する確率は極めて低かった。

その理由は「対面する選手を攻略しきれていない」からである。森島は動きによって対面の相手をWBに変えたが、完全にフリーになったわけではない。WBはパスコースにプレッシャーをかけられる距離を保っており、結果としてパスの精度が落ちた。

同時に徳元は浮いていた。徳元のマークしていた対面の相手を受け取る動きをした状態では森島自身の対面が「居ない訳ではない」。そうなると森島が出すパスにもアプローチがかかる。

森島のように中盤の選手であれば、マークする相手を替える動きをすることで、新たにフリーの選手を生み出せる。しかしバックラインは同じようにはいかない。

そのような場面では、この試合で言えば河面のように、相手との距離や幅を調整する立ち位置を取ることが有効である。そうすることで、対面する選手を攻略しながら、相手のプレッシャーの距離や矢印の向きを変えられる。その結果、マークの受け渡しがなくても空間が生まれる。そして、誰かがひとつ相手を替える動きを加えるだけでフリーの選手が生まれ、「相手をずらす再現性」が高まるのである。

今回の場面でも、徳元が使われず山岸にボールが入った。しかし「マークする対面のイメージ」ができていれば、徳元に下げたタイミングで山岸も下げてプレスを誘い、その裏、すなわちWBの裏の木村を使うといった選択肢が取れたはずである。その方が守備側のアプローチを受けにくく、成功率も高かっただろう。

今回は試合開始早々に気になった部分として森島の選択を挙げたが、現状では多くの選手にこの感覚が欠けている。その一例として、中央のCBから左のCBへボールが渡る際に、左のCBがボールを止めずに流しながら身体の向きも左に流してしまう場面がある。この時点で相手の守備者からすれば、どちらにボールが出るかが分かりやすい。半身で左を向けば選択肢は左の縦かキーパーへのバックパスの二択であり、対面との駆け引きとしては、ボールを受ける時点ですでに負けているのである。

1対1の「負けターン」を理解する

この「対面との駆け引き」の問題は、失点シーンでより深刻な形で表面化した。

1失点目:チャレンジが招く「負けターン」

先制点はスローインの流れから、木村が相手選手にノーファウルで反転されたことから始まった。この瞬間、名古屋は守備における「負けターン」に突入したと言える。「負けターン」とは、1対1で攻略され、その時点で守備のバランスが崩れ、後続のプレーでズレが生じることが確定する状況を指す。

木村と森が相手に剥がされたことで、名古屋の守備は「-1」の不利な状況に陥った。問題は、この不利をリセット(±0に戻す)せずに、さらに無理な形でボールを奪いに行こうとしたことだ。これは数式で言えば「-1 + n = ?」という状態である。nは「成功確率の低いプレス」、?は「結果がどうなるか分からない不確実性」を意味する。

対する広島は、一度剥がされても「-1 + 1 = 0」というように、まずは全体の陣形を整えて不利な状況を解消してから、改めてプレスに行くという原則が徹底されていた。

名古屋は、誰が剥がされたのか、そのズレを誰が埋めるのかという原則が曖昧だ。剥がされた選手が最後まで責任を持つのか、周囲がスライドしてカバーするのか。その判断の遅れが、そのまま失点という最悪の結果に繋がった。

2失点目:原則なきプレス

2失点目はさらに分かりやすい。引いていた山岸が前にプレスに出たことで、森島とスペースの埋め方で齟齬が出てしまった。山岸のプレス自体も判断ミスだが、根本には「マークする対面相手がズレたとき、次に危険なスペースを消す」という守備の原則が欠けていた。自分たちが守備で注意すべき点を、そのまま相手にやられてしまった形だ。失点は必然だった。

☝️ポイント

先制失点のシュート場面では、結局森が新井と田中を相手にしていた。本来、対面を剥がされた時点では森と木村が対面していたはずであり、そのズレがそのまま失点に直結している。次のプレスを成功させるかどうかを「ズレて当たるかどうか」という変数にするのであれば、最初の局面で対面を攻略された選手が最後まで責任を持つべきである。この点がかなり曖昧になっている。

永井、和泉、森島は逆サイドに展開された段階でプレスバックする回数が多少あるが、木村、山岸、キャスパーになるとそこまで戻らない。そのため、人の役割変更が形の変更に反映されていない印象を受ける。

攻撃の局面でも問われる「1対1」の質

この「1対1」と「対面」の課題は、ビルドアップの局面でも同様に見られた。

前半12分7秒、三國から原へパスが渡る場面。スローインの段階で森島ー椎橋が相手IHの対面になっていた。その前の流れで、稲垣が前に動いたことで相手のマークにズレが生じ、椎橋がフリーになっていた。ここで三國が一度、フリーの椎橋にボールを預ければどうだろうか。相手のマークをさらに引きつけ、より有利な状況で最終的に原へパスを供給できたはずだ。結果として原は厳しいプレッシャーの中でボールを受けることになり、前を向くことはできなかった。

スローインの段階で、森島―椎橋がIHの対面となり、稲垣が前に出てフリーになる。これを利用して三國にボールが入る。その後、稲垣が下がって右に流れる。つまり、稲垣に付いていった田中は、通常なら椎橋の対面になるはずである。対面の受け渡しが起きた場面で、原、稲垣、椎橋のうち誰が対面を外していたのか。明らかにこの場面では椎橋であった。

例えば、三國が完全にフリーであったため、椎橋に預ければ田中のマークを稲垣と椎橋に動かすことができ、状況を見ながら受け直すことも可能であった。椎橋にボールが動けば、稲垣と原で中村のマークを選択させることができ、最終的に原に預けるにしても、三國→原の展開より中村のプレスは確実に遅れていた。中村の立ち位置が少しでも内側や前寄りであれば、原が前を向いて受けることもできた。

後半になると、三國とピサノが広がって相手を引き込み、スペースを作ることで顔を出すタイミングで対面との勝負所を作らせた。試合中、ピサノが「もっと降りて来てくれ」という仕草を見せていた場面もあり、「その時間にそんなことをしている場合ではない」という声もあった。しかし実際には、キャスパーや永井、山岸といった選手に最大限の価値を発揮させるセットアップを狙っていたと推測できる。彼らは対面にズレを生み出せる選手だからこそ、その意図が見て取れる。

得点シーンでは、和泉が個の力で相手を剥がして数的優位を作り、永井と山岸の1対2を作る立ち位置に加えて、野上と森の動き出しがポイントであった。和泉が受けた後、野上と森がすぐに広島の選手を越えて前に出ていく動きは、守備直後に広島に「負けターン」を押し付けるものであり、先制失点の形と類似していた。結果的には左サイドを使うことになったが、1対1に勝った時にいかに相手へ「負けターン」を押し付けて攻撃を始められるかが、自分たちにも可能であることを示す場面であった。

つぶやき

  • アクシデントによる交代ではあったが、河面が投入されたことで、「対面の相手とどう駆け引きするか」を意識できる選手がピッチに入り、チームが落ち着きを取り戻したのは確かだ。
  • 椎橋のように、立ち位置を変えるだけで相手をズラせる選手は貴重だが、彼一人に攻守の負荷が集中しすぎている。周囲が彼の動きを理解し、彼が作ったスペースを有効に活用するイメージを共有する必要がある。広島戦はそれを助ける木村の構図だったが、降りて対面をずらしながらボールもキープする仕事人にボールを入れるイメージが出来ていなかったバックラインが残念だった。
  • 結局のところ、「1対1」の始まりとは、「自分が最も価値(バリュー)を発揮できる立ち位置に、いかにして立つか」である。稲垣のように自身の価値の出し方を熟知している選手はいるが、味方の価値を活かしたり、自身の価値を出すための最適なポジションを見つけられていなかったりする選手が散見される。この「イメージの乖離」こそが、今のチームが抱える迷いの正体なのかもしれない。
  • 立ち位置が見つけられない時はボールを動かしながら解決策を探るのも一つの手だが、それには選手間の技術レベルと戦術理解が伴わなければならない。個々の選手の持つ価値を、いかにしてチーム全体の組織力へと昇華させるか。それが、このチームに残された最大のテーマである。

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