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1失点目を深掘りする 第32節 鹿島アントラーズ戦ワンポイントレビュー #grampus Y0225

アルビレックス新潟戦に続き、内容は悪くないものの、0-4という結果に終わった。これは順位通りの結果を見せつけられる形となったが、今までの試合とは異なり、ほんのわずかなタイミングの違いで試合展開が大きく変わった可能性のある試合でもあった。本記事では、失点シーンと希望が見えた部分を中心にワンポイント解説する。

試合情報

構えて取る姿勢

先制点が生まれるまで、鹿島アントラーズのボールロストの数を見る限り、名古屋グランパスの守備設計は機能していたと言える。

守備の基本布陣は、山岸と稲垣が鹿島ボランチを見る形でのプレスパターンであった。その中で、鹿島がビルドアップをやり直す際(ボランチ→センターバック)、そのボールの移動に合わせて山岸と永井謙佑がプレスをかけ、ボールサイドを限定するように誘導していた。これは、ボランチの舩橋佑を挟み、基本的にどちらのセンターバックにボールが渡ったかで、舩橋へのパスルートを切るという約束事があったと考えられる。

攻撃面では、森島司と稲垣が縦関係になる以上、相手フォワードの鈴木優磨が森島を動かすようにポジションを下げてくる場面が見られた。しかし、鈴木が下がってくる分、鹿島のゴール前には人がいなくなる。そのため、名古屋のファーストディフェンスによる誘導で、攻撃時に鈴木が絡んでこないような展開を作り出すことができていた。また、鈴木を起点としたポストプレーに関しても、パスの受け手を限定することで、セカンドボールの回収は理想的な形で行えていた。

鹿島がボールを保持している時間帯は、三竿健斗と舩橋が縦関係になったり、森島が引きつけられて空いたスペースに選手が入ってきたりする場面があった。しかしその分、名古屋がボールを奪って攻撃に転じる(ポジティブトランジション)タイミングで、永井、森島、山岸の立ち位置の良さが際立っていた。

(補足:ここでいう「立ち位置の良さ」とは、これまでのレビューで記述してきた「攻撃プランに沿った守備の設計」から生まれる、守備局面での良い立ち位置が取れているか、という点である。つまり、攻守のプランと選手の判断、立ち位置にズレがない時間帯であったことを示す。)

鈴木がポジションを下げる分、鹿島はサイドハーフが内側に寄り、サイドバックを高く上げる形を取っていた。そのため、名古屋がボールを奪った(ターンオーバー)後の形は、ウイングバックの中山・和泉選手が効果的に機能する形から始まっていた。ウイングバックから逆サイドのウイングバックへの展開も、ターンオーバー後の森島の選択肢を増やす良い展開であった。

鹿島としては、ボールを持たされてはパスコースを制限され、ボールを回収される場面が多い時間帯で、「この制限をかわせる」と確信した時間帯があった。

この場面、センターバックが下がってビルドアップを始める際、名古屋の守備陣形は「2センターバックに対し永井と山岸」「2ボランチに対し森島と稲垣」「2サイドバックに対しマテウス・カストロと中山克広」という形であった。名古屋がボールを回収できていた時間帯は、マテウスか森島のどちらかが狭いスペースで2人の相手選手を監視している状態であったが、2トップによるプレス制限によって、早い段階から2列目の守備が機能するタイミングであった。しかし、この時間帯は、前半で初めて「明らかにズレが発生する守備の意思決定の時間」であった。

ゴールキックからのプレーであったため、この選択自体の良し悪しを評価するのは難しい。ただ、ピッチ上の選手たちが選択した守備設計は、森島が背後の鈴木をケアしづらい状況になったということ、そして、名古屋の選手たちがこの試合で「前からハメる選択肢も持っていた」ということを示している。要するに、守備の戦術において、性質の異なる2つの選択肢があったのだ。新潟戦同様に、戦術の手札の色が変わるタイミング、いわゆる「戦術のグレーゾーン」がある試合を想定していることがわかる試合となった。

グレーゾーンの難しさ (先制点から学ぶ)

早川からのゴールキックに対し、名古屋はプレスを選択したものの、相手に制限をかけられない形を選んでしまい、そのまま試合が続行する。マテウスが二度追いし、相手センターバックからビルドアップが再開される状況となった。

ここで名古屋としては、永井がセンターバックにプレスをかけ、サイドバックまでボールを誘導し、森島がそのサイドバックの進行レーンを埋めながら、稲垣とマテウスが中央にスライドするという形を取りたかったはずだ(この形が、6分台に山岸が右サイドにボールを誘導し、マテウスがスペースを埋めてボールを回収した形である)。しかし、その選択ができず、永井はセンターバックからサイドバックへのプレスバックを強いられることになった。

ここで鹿島、というより鈴木優磨がうまかったのは、チームの「脱出先ポイント」となっていたことである。

名古屋が山岸の誘導で守備がうまくいっていた時も、鈴木は森島の対面でプレーすることを選んでいた。フォワードであれば、2トップの左としてセンターバックと駆け引きをし、サイドハーフとサイドバックが詰まらないようなサポートに入ることも十分に考えられたが、先制点が生まれるまでは、あくまでボールサイドに寄っていかない判断をしていた。

この森島を動かす延長線上の動きが、07:34〜の中山ー鈴木の対面作り。早川のゴールキックで中山ーSBの対面を作った事で鹿島的にも「基本的に誰を対面に設定しているのか?」が分かりやすくなった。マーク設定がばれた事で鈴木は中山の前に立ってSBをフリーに。鈴木に森島が寄ってこられると形がずれにくいのでチャヴリッチを前から落として入れ替える。(鈴木が降りてるときはチャヴリッチとレオで前2枚を張る展開もあった)

この森島を動かす動きの延長線上にあったのが、7分34秒からの中山と鈴木の対面作りである。早川のゴールキックで中山と相手サイドバックの対面を作ったことで、鹿島的にも「基本的に誰をマークの対面に設定しているのか?」が分かりやすくなった。マーク設定が明らかになったことで、鈴木は中山の前に立ち、サイドバックをフリーにさせた。鈴木に森島が寄ってこられると守備の形が崩れにくくなるため、チャヴリッチを前から落として入れ替えるというプレーも見られた(鈴木が降りている時は、チャヴリッチとレオセアラで前線2枚を張る展開もあった)。

この場面でこのような形にされた理由は、事の始まりがマテウスの二度追いにあった。これにより、逆サイドのインサイドハーフが引いて5-3-2の3センターを作り続けることが難しくなったのである。

この形を確実にセットアップするため、早川はマテウスを前方に留めるべく、即座にサイドバックへスローイングした。案の定、そこにマテウスが食いついた。ここで、「プレス」と「セットして回収」という2つの守備戦術の約束事が混線してしまったのである。「セットして回収」する場合は、インサイドハーフが「引いてくる」という約束事があり、「プレス」をかける場合は、「インサイドハーフとサイドバックで相手を挟み込めている」状態が前提となる。

鹿島はボールを戻してスローテンポの展開にしても良い場面であった。ここで永井は、マテウスが相手サイドバックと対面しているため、チームの約束ごと通りにプレスに行くと判断した。当然、うまくハメられるという算段である。一方でマテウスは、山岸が相手センターバックにアプローチするまで構える、という約束事を遵守していた。そのため、相手サイドバックに押されるように引いてきている動きであった。

それを見ていたのは森島と稲垣である。事前に鈴木をフリーにさせてしまい、濃野公人にペナルティボックスの奥まで使われたこともあり、森島もチームの戦術におけるグレーゾーンと、永井とマテウスが遵守している約束事の違いに惑わされてしまった。その結果、フリーの舩橋が生まれてしまったのである。

2度目のグレーゾーンの展開で、先制を許してしまった。

👍ポイント

では、なぜ今まではこういった展開を防げていたのか。それは、両サイドのインサイドハーフの存在である。彼らがサイドバックからセンターバックへ無理やり二度追いをすることで、強制的に相手に制限をかけてくれていたのだ。森島や和泉竜司といったインサイドハーフも、無謀だと分かっていてもサイドバックからセンターバックへの追い方で、無理やり後ろの選手が1対1の状況を作り出していた。それは、「ハメに行く」という色の手札しか持ち合わせていなかったことも大きい。

逆に、そこを剥がされると、二度追いがないのにプレスバックができていない、逆サイドが引いてくれていない、という状況になり、センターの選手がサイドに釣り出される展開になってしまう。今回に関しては、早川がビルドアップを牽制する中で、鈴木と森島のミスマッチを見つけ、そこを起点に崩す形を見つけられたことが大きい。鈴木が、相手を崩す場面で森島を動かすタスクを遂行できたことが、失点に繋がったのである。

サイドハーフが内側に入る動きに対してハイプレスを敢行し、結果としてズレが生じていく形(要するに、センターハーフの裏に選手が入り込む形)は、新潟戦の後半とほぼ同じであった。あの時も「やばいかもしれない」という段階で構える形を選択したが、今回は「やばいかもしれない」の段階で失点に繋がってしまった。

降りてくるFWを利用して

名古屋も、鈴木という「脱出ポイント」ではないサイドで勝負し、ウイングバックを脱出ポイントにする攻撃は効果的であった。失点するまでは、単純に外側へ展開する場面が多く、ビルドアップも、鈴木が守備局面と攻撃局面で配置が歪になるため、中央の森島からのボールの散らし方は効果的であった。

17分7秒からの展開は、山岸を囲うように名古屋の選手が前後に配置され、前線もレオ・セアラ一枚なので、森島と稲垣のどちらかはフリーになれるような形であった。ロングボールに関しても、攻撃局面で良い立ち位置を取りたい鈴木とチャヴリッチのおかげで、2失点するまでは、下からも上からもゴール前まで迫ることができていた。

35:17~のように鈴木が降りてくる分、降りたタイミングでボール奪取できると明らかに鹿島は陣形が崩れている。この場面もマテウスが降りてセンター兼任で守備をする事でサイドでマンツーマンになっても中央でズレが無く。尚且つ浮いている立ち位置を作ることが出来た。

得点した側の優位

後半に入り、47分25秒の場面では、山岸が相手ボランチに張り付き、稲垣が前に出て行くことで、センターとボランチの対面を作らせない守備から良い展開を作ることができた。しかし、その直後はまた悩ましい展開となる。サイドバックとウイングバックで当たるのかどうか、という判断の迷いから、ボランチとセンターのマークを起点にサイドバックに通されてズレる展開。これは前述のポイントにも書いたが、新潟戦と同じズレ方であった。

しかし、2失点している以上、引くわけにもいかない。

鹿島としては、前半にプレスを誘うとズレることが証明済みなので、低い位置から名古屋のプレスを誘う。ただ、名古屋も60分までにかなりの数のセットプレーを得ていたので、ここで1点でも返せていれば、鹿島の手札も変わっていたかもしれない。

試合雑感

  • 試合の中身に関しては、先制すれば1位のチームは当然このような試合運びになるだろう、という試合であった。その中で、次に繋がる意味のある試合や展開を作れたことは、ポジティブに捉えたい。
  • 大外からクロスを上げる・展開を大外に持っていってから中を見る・大外を使えるようなビルドアップをする。9月の終わりに、ようやくここまでたどり着いた。ただ、上位のチームは今、「誰にボールを入れるか」や「クロスが来た時にどこに入り込んでいくか」という、もう一段階先のフェーズにいる。その段階になってから戦えていれば、結果は違ったかもしれない。
  • 守備のグレーゾーンの問題は、チームというか長谷川健太監督の永遠の課題になりそうだ。グレーの部分まで細かく設定するには、スタッフの経験値という点でも難しそうな印象を受ける。還暦を迎えて新しいチャレンジをする姿勢には、リスペクトを持ちながらも、そう感じてしまう。
  • 後半の2失点は、結局、前半から走り続けたツケが回ってきた時間帯に、フルで出場している選手のところから生まれた。攻撃の時間が長い分、3列目から後ろの選手の上下動はとんでもない量になる。

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