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勇気を出せなかった前半と出せた後半 第35節 #ガンバ大阪 戦ワンポイントレビュー #grampus Y0228

前半から惜しいシーンがあり、1点を掴めない展開だった。ナイスセーブに助けられた場面もあったが、最終的には自分達のエラーで試合が決まってしまった。ガンバ大阪にボールを持たれた部分を中心に、ワンポイント解説を行う。

試合情報

ボールを取るタイミングの設計

ガンバ大阪は、名古屋の河面(WB)の対面に満田あるいは山下を送り込むことで、大外のラインを意図的に押し込んできた。これと同時に、名古屋の中盤(CMF:稲垣祥・森島周辺)に対して陣形を圧縮し辛い状況を作り出した。(CBのラインを上げたくても、大外が押し込まれている状況では、WBとCBの縦幅にギャップが生まれてしまう。)

右サイドでも原と森を奥抜で押し込むタイミングで、ジェバリが(中盤に)降りて来る動きを見せた。ガンバとしては、まず最終ラインにギャップを作ってから攻める、という点が第一優先事項であった。

その中で、名古屋は河面が山下と対面するケースが多くなった。そうなると、IHの和泉は、相手SBが(自分のマークを外して)出て来るのかどうかを見極めながら、相手のビルドアップを阻害する必要に迫られる。

もし、相手GKの一森を含めた2CBに対して名古屋がプレスに出ていく形を選択した場合、和泉はSBとCBの両方に出ていく負荷を背負うことになっただろう。しかし、前述の通り山下によって河面が押し込まれ、最終ラインが前に圧縮し辛い状況下では、和泉と河面の間のスペースが空洞化してしまう。そのため、名古屋の左サイドは、相手の圧力に素直に従う(受け入れる)形を取った。

ギャップを作ろうとするガンバのビルドアップに対し、名古屋はある程度受け身になりながらも、自分達が「プレスに行くタイミング」を作れた形が、13分0秒からのセットアップである。

具体的には、2トップ(山岸、木村)と2CMF(稲垣、森島)で、ガンバのボランチである美藤と安部を挟み込み、CBからSBへのパスルートか、あるいは長いボールを蹴らせるように誘導する形だ。この時、山下の立ち位置によって、満田とジェバリに対しては藤井と佐藤がプレッシャーに行けなかった。しかし、ガンバがサイドからやり直しの展開を図っても、人がズレるような(効果的な)展開は起きていなかった。その結果、逆サイドでは福岡がジェバリにしかパスの出し所が無い、という限定された形を作ることができた。

☝️ポイント:和泉の献身的な動き

森がボールをロストした後の、和泉の動きは評価できる。和泉のポジションは、こうした前後動が多くなるポジションである。トランジションが続く局面では、チームの約束事を守らない方が楽な場面もある。

しかし彼は、プレスに行こうとする途中で、この試合での「しんどいポイント」、すなわち山下と河面のマッチアップを思い出し、瞬時に守備に戻る動きを見せた。これは非常に良いプレーであった。

ガンバの牽制と後退させられたライン

ピッチの中央で構えてからのプレスが機能している形もあった。その一方で、ここから名古屋の守備ラインが後退していく過程は、当然ながら気になる点である。

13分0秒から14分0秒にかけてのガンバの流れを見てみよう。名古屋が2トップと2CMFで相手ボランチを挟んでいるところから、安部がSBの位置でボールを受けた。これにより、森島が前向きに引っ張られる。対面的には森島が「担当する選手」ではあるが、結果としてスペースを与えることになった。

この展開で、さらに初瀬がボランチの位置に入り、森が福岡に突っ込んだ。これにより、山岸は(守備のために)引かざるを得なくなる。

名古屋のスタートプランは、山岸と木村を相手2CBに当てる形であったはずだ。しかし、サイドで山岸も押し込まれ(和泉はそもそも約束事として守備位置が低い)、相手にビルドアップをスタートさせられた。

これにより、本来名古屋が主導権を握るべきプラン、すなわち「3-5-2のミドルブロックから、いつプレスに切り替えるか」というプランが、「5-4-1」の受け身のブロックを敷かされる形へと変えられてしまった。この結果、「守備局面(3-5-2のミドルプレス)から攻撃の局面(ショートカウンター)」という名古屋のプランが消されていったのである。

この一連の場面は、中谷がボールを運んで和泉のマークがズレた、といった点が重要な課題に見えがちだ。しかし、それ以前の局面で、名古屋のプランを消した「相手の牽制」の部分こそが、より重要なポイントである。

☝️ポイント:守備のスイッチと意思統一

13分50秒から、和泉と森島は、中谷がボールを持った瞬間に、守備のスイッチを無理やり入れようとした。チームが5-4-1で構える展開になるのを矯正しようとする動きであった。

しかし、これに木村が反応しなかったため、結果としてチームは「5-4-1」のブロックを受け入れる展開を選択したように見えた。ここは、チーム内での判断や戦術の優先順位が関わるため、難しい所である。木村が悪いというわけではない。(実際、あそこでスプリントして制限をかけたところで、プレッシャーが絶対にかかるわけでもないためだ。)

守備は、最前線の選手の選択と(後方の選手の選択が)ズレると、簡単に配置のズレが起きてしまう。ガンバのように、ジェバリや満田がその「ズレ」の所に立つことを目的とするチーム相手に、守備の意思統一を図ったのは、リスクを避ける無難な、安牌とも言える選択だった。

23分0秒付近の河面、森のクロスのシーンでは、高い位置でプレッシャーをかけることで、ガンバの選手が低い位置からのスタートをせざるを得ない状況を作った。この場面で、いかに相手を前進させないかが勝負所であった。

続く23分16秒から美藤が運ぶシーンでも、ジェバリや満田の存在が気になったのか、名古屋のミドルプレスの形(ボランチを前後で挟む形)が作れなかった。山下も低い位置にいたため、ここは名古屋として自分達の色(=狙い通りのプレス)を出したかった所である。

勇気を出せなかった前半と、出せた後半

前半は、ガンバがボランチを消した局面から、名古屋の選手がプレスに出づらくなるタイミングが生まれた。つまり、名古屋は5-4-1のブロックを敷かざるを得ない状況に追い込まれたのである。その局面で奥抜は、森との対面を意図的に選択した。結果として、名古屋はさらにプレスに出ていきにくくなった。

ただ、出ていき辛くなった中でも、「守備のハメ方」を約束通り実行できる場面はあった。それは、28分34秒からのように、ガンバの選手が(前に)出て来て、互いのマークが噛み合う時である。構えていても、「噛み合うタイミング」は必ず存在する。

この場面では、森が初瀬を、山岸が美藤をマークするところから守備が始まった。このような「自分達の形」になった場面で、安部に対して(次の選手が)出ていけなかったのは、今までに「勝ちメンタル」を積み上げてこられなかった影響が否めなかった。

※勝ちメンタル:積み上げられた成功体験に裏打ちされた迷いなくプレーができる精神状態

しかし、後半に入ると、見るからに修正が施されていた。守備の形を「5-3-2」にし、そこから前に出ていく形へと変更した。

それに対しガンバは、前半に初瀬が牽制として行っていた「内側に入る動き」を、半田も見せるようになった。SBが名古屋のセンター脇にアプローチすることで、IH(インサイドハーフ)を(前に)出ていき辛くさせる(もしIHが出ていくと、その背後が「ポケット」と呼ばれる危険なスペースになる)形を取った。

ビルドアップにおいても、前半からロングボールや、ワイドな位置から斜めにボランチの裏へ入るボールは有効であった。森のチャンスシーンも、稲垣が(最終ラインに)降りた所から木村へボールが入る形が起点となった。

後半、名古屋がボールを持てる時間が増えてくると、ガンバは前線の3枚(満田、ジェバリ、山下)が最終ラインへプレスをかける形になった。この展開になると、ガンバのボランチが(前線に)連動してこないタイミングが多くなり、名古屋のセンター(中央)にボールが入る展開が増えた。

このようなタイミングで、加藤や菊地など、相手ボランチの周りで価値(バリュー)を出せる選手を投入していく。

しかし最後を崩すに至らず、逆に組立てのミスからカウンターを食らうことになったのは残念だった。

雑感

  • 「構えてゾーンで守ります!」という意図的な守備というよりは、「そうさせられた(構えざるを得なかった)」感の強い試合であった。とにかく負けない試合を作ることが大事な現在の順位が、そのまま前半の雰囲気として表れていた。
  • 案外、前線へ(ロングボールを)蹴り出した方がボール奪取率は良かった。しかし、そのボールのターゲットが適当(=狙いが不明確)だったのは、もったい無かった点である。

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