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2026年向き合いたい言葉:LTV、ファン・エンゲージメントと共創について #グランパス #grampus GR718

お正月にはいくつかの記事を予定していますが、そこで使用している言葉をJリーグなどのプロスポーツの興行ではどのような意味を持つのか、ちょっと整理をさせてください。

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LTV(顧客生涯価値)とは?

一言でいうと、「ファン一人が、そのチームを応援し続ける一生の間に、合計でどれくらいのお金を使ってくれるか」を表す指標です。

日本語では「顧客生涯価値(こきゃくしょうがいかち)」と言います。

LTV(顧客生涯価値)とは
LTV(顧客生涯価値)とは

1. LTVの分解

少しイメージしやすくするために、LTVを3つの単語に分けてみます。

  • Life(ライフ): ファンの人生、あるいはファン歴の長さ。
  • Time(タイム): その長い時間の中で。
  • Value(バリュー): どれだけの価値(お金)をチームにもたらしてくれるか。

つまり、「一度きりのチケット代」を見るのではなく、「長いお付き合いの合計金額」を見る考え方です。

2. 具体的なイメージ

AさんとBさん、2人の観客で比べてみましょう。

  • Aさん(一見さん):
    • 話題の試合を1回だけ見に来た。
    • チケット代 3,000円 + ドリンク 1,000円 = 合計 4,000円
    • その後、来場なし。
    • LTV = 4,000円
  • Bさん(熱心なサポーター):
    • 毎年ファンクラブに入り、年5回観戦し、ユニフォームも買う。
    • 年間で5万円使う。
    • これを20年間続けてくれた。
    • 5万円 × 20年 = 合計 100万円
    • LTV = 100万円

スポーツビジネスでは、Aさんをたくさん集めるのも大事ですが、いかにBさんのような「長く愛してくれるサポーター」を増やせるかが、チームの経営を安定させる鍵になります。

3. なぜスポーツでLTVが重要なの?

普通のビジネス(コンビニや家電など)と違って、スポーツには「チームへの愛(ロイヤリティ)」があります。

  • 普通の店: 商品が悪ければ(味が落ちれば)、すぐ別の店に行く。
  • スポーツ: 試合に負けても、「来年こそは!」と応援し続けてくれる。

この「一度好きになったら離れにくい」という特性があるため、スポーツは他のビジネスよりもLTVを高くしやすい(長く付き合いやすい)と言われています。

4. チームにとっての意味

LTVを高めることは、チームにとって「経営の体力」をつけることと同じです。

  • 収入が予測できる: 毎年応援してくれる人がいれば、チケットやグッズの売上が計算できるので、良い選手を獲得したり、スタジアムを改修したりする投資がしやすくなります。
  • 広告費が減る: 新しいお客さんを振り向かせるには宣伝費がかかりますが、長く応援してくれるファンには過度な宣伝が必要ありません。

プロスポーツにおけるLTVとは、 「ファンとの『愛の深さ』と『付き合いの長さ』を、金額に換算したもの」 と言えます。

ファンエンゲージメントってなに?

プロスポーツの興行におけるファンエンゲージメントとは、単に「ファンを楽しませること」ではなく、「チームとファン、あるいはファン同士の間に、長期的な『絆(きずな)』や『深いつながり』を築くこと」を指します。

ファンエンゲージメント
ファンエンゲージメント

ビジネス的な視点では、「たまたま試合を見た人(観客)」を「熱狂的な支持者(パートナー)」へと変え、生涯にわたってチームを支えてもらうための活動全般と言い換えることができます。

具体的にどのような意味を持つのか、3つの視点で整理しました。

1. 定義:一方向から双方向への変化

昔のスポーツ興行は「試合を見せる(チーム)→見る(ファン)」という一方向の関係が中心でした。しかし、ファンエンゲージメントはこれを双方向にします。

  • これまで: ファンは観客席で試合を見るだけ(受動的)。
  • ファンエンゲージメント: ファンがチーム運営の一部に参加したり、SNSで選手と交流したり、応援が試合の演出に組み込まれたりと、「自分もチームの一部だ」と感じられる体験を提供します。

2. 目的:ビジネスとしての重要性(LTVの向上)

プロスポーツビジネスにおいて、勝敗はコントロールできません(どんな強豪でも負ける時は負けます。グランパスは2025年16位ですので・・・)。しかし、ファンエンゲージメントが高ければ、チームが負けてもファンは離れません。

  • 収益の安定化: 試合の勝敗に関わらず、「このチームが好きだから」という理由でチケットやグッズを買う(LTV:顧客生涯価値の向上)。
  • アンバサダー化: 熱量の高いファンが、家族や友人を誘ったり、SNSで自発的に宣伝をしてくれたりする(新規ファンの獲得)。

3. 具体的なアクションの例

「試合中」だけでなく、「試合がない日」も含めた365日の接点が重要視されています。

場面

具体的な取り組み例

スタジアム(オフライン)

・試合前の選手トークショーやハイタッチ会

・ファン参加型のハーフタイムショー

・スタジアムグルメや演出による「非日常空間」の提供

デジタル(オンライン)

・SNSでの裏側(練習風景や選手の素顔)の配信

・試合中のMVPをファン投票で決める

・アプリを使った観戦記録やポイントプログラム

コミュニティ

・ファン同士が交流できる場の提供

・チーム運営の一部(ユニフォームデザインや楽曲など)をファン投票で決める

プロスポーツの興行におけるファンエンゲージメント

プロスポーツにおけるファンエンゲージメントとは、「ファンを単なる『お客様』として扱うのではなく、チームを一緒に作り上げる『仲間』として巻き込み、深い信頼関係を構築すること」です。

共創ってなに?

以前のスタジアムといえば、「見せる側(クラブ)」と「見る側(ファン)」がはっきり分かれた場所でした。クラブが試合を用意し、ファンがお金を払ってそれを楽しむ。この一方通行の関係は、長いあいだスポーツビジネスの基本でしたが、スマホ一つで何でも楽しめる現代においては、少しずつ限界が見え始めています。

そこで今、ファンとの関係づくりにおいて「共創(Co-creation)」という言葉が注目されています。これは単なる流行語ではなく、これからのクラブ経営が長く続いていくために欠かせない、とても大きな変化の波なのです。

ここでは、ファンエンゲージメントにおける「共創」とは本当はどういうことなのか、なぜそれがビジネスとして強いのか、一緒に考えてみましょう。

共創(Co-creation)
共創(Co-creation)

「共創」と「参加型イベント」の違い

ファンエンゲージメントにおける「共創」を一言で言えば、ファンを単なる「お客様」ではなく、「一緒に価値をつくるパートナー」として迎えることです。

これまでも「ファン参加型イベント」はありました。でも、ハーフタイムの抽選会に参加したり、用意された選択肢からMVPを選んだりするだけでは、それはあくまで「エンターテインメントの一部」に参加しているに過ぎません。

本当の意味での「共創」とは、クラブとファン(時にはスポンサーや地域の方々も)が、お互いの持っているものを持ち寄り、新しい価値を一緒に生み出すプロセスそのものを指します。

  • クラブが持っているもの: コンテンツ、商標、選手・スタッフ、会場、データ、そして「決定権」
  • ファンが持っているもの: 熱量、知恵、スキル(制作や分析など)、時間、コミュニティを盛り上げる力

大切なのは、これを単なる「イベント」として終わらせるのではなく、「価値が生まれる仕組み」そのものを変えていくという点です。ファンが何かを決めたり、作ったりする過程に深く関わり、「自分たちがこのクラブを動かしているんだ」と実感できるかどうかが、ただの参加型イベントと「共創」を分ける大きなポイントになります。

なぜ今、「共創」が必要なの? 5つの効能

クラブがあえて手間やリスクを背負ってまで「共創」に取り組むべき理由。それは、一時的な話題づくりや集客のためではありません。一番の価値は、「クラブとファンの関係性をガラリと変えられること」にあります。

具体的にどんな良いことがあるのか、5つのポイントで見ていきましょう。

① 「これ、私が作ったんだ!」という愛着(心理的所有感)

人は誰でも、自分が関わって作り上げたものには特別な愛着と責任を感じるものです。

例えば、ユニフォームのデザイン投票やスタジアムの装飾に参加したファンにとって、そのクラブはもう「誰かが運営している他人事」ではなく、「自分の一部」になります。この「自分ごと化」こそが、何よりも強い絆になるのです。

② 「お客様」から「チームの一員(クルー)」へ

スポーツに勝敗はつきものです。「お客様」の立場でいれば、チームが弱くなれば価値が下がったと判断し、離れていくのは当然のことです。

しかし、共創を通じて「クルー(仲間)」になったファンは違います。苦しい時ほど「自分たちが支えなきゃ」という当事者意識が芽生えます。離れるどころか、友人を誘ったり、ポジティブな発信をしてくれたりと、不調の時こそチームを守る「セーフティネット」になってくれるのです。

③ ファンコミュニティが自分たちで動き出す

すべてをクラブ側がお膳立てするのは、人手も予算も限界があります。

共創が進むと、ファン自身が新しいファンを歓迎したり、観戦マナーを教え合ったり、応援の熱を広げたりと、自発的に動き始めます。クラブは「盛り上げ役」から、ファンが輝くための「場を整える役」へとシフトでき、結果として運営コストの適正化にもつながります。

④ 「現場のリアル」からイノベーションが起きる

ファンは常に、体験の最前線にいます。チケットの買いにくさ、グッズの使い勝手、スタジアムグルメの改善点など、運営側が気づけない「現場の真実」を知っているのはファンです。

この知恵を取り入れれば、独りよがりではない、本当に求められているサービス改善や商品開発ができるようになります。

⑤ 「信頼」という資産が、LTVを高める

共創は、「買ってください」と迫るものではありません。しかし、「一緒に作った」という体験の積み重ねは、お金には代えられない「信頼関係(関係資本)」という資産になります。

この信頼があるからこそ、結果として来場回数が増えたり、グッズを手に取ってくれたりと、上でお話ししたLTVとしてしっかりと返ってくるのです。

一緒に何をつくる? 共創の5つのメニュー

「共創」とひとことで言っても、その中身は本当にさまざまです。いきなり全部やる必要はありません。まずは自分たちのクラブの課題や得意なことに合わせて、面白そうなところから始めてみることが大切です。

具体的にどんなことができるのか、5つのジャンルで見てみましょう。

① モノづくり(プロダクト共創)

ファンが一番参加しやすい領域です。

  • ユニフォームやグッズのデザインを公募・投票で決める。
  • 「こんなスタグルが食べたい!」という新メニューを開発する。
  • 公式アプリの「もっとこうしてほしい」という改善会議を開く。

② 場づくり・体験づくり(体験共創)

スタジアムでの過ごし方を一緒にデザインします。

  • スタジアムを盛り上げる演出のアイデアを出し合う。
  • 初めて来た人への「おもてなし」をどうするか一緒に考える。
  • みんなが気持ちよく過ごすための観戦ルールやマナーを作る。

③ 発信・コンテンツづくり(コンテンツ共創)

ファンのクリエイティブな才能を活かします。

  • ファンライターに記事を書いてもらう。
  • ファンが撮った熱い写真や動画を公式素材として使う。
  • 選手へのインタビュー質問を募集したり、データ分析が得意なファンと連携したりする。

④ 仲間・コミュニティづくり(コミュニティ共創)

クラブの手が届きにくい部分をファンがリードします。

  • 地域の清掃活動を一緒に行う。
  • アウェイ戦のパブリックビューイングをファン主導で運営する。
  • 新規ファンのためのガイド作りや、ボランティア組織を運営する。

⑤ 未来づくり(意思決定共創)

クラブの方向性を決める、少しディープな関わり方です。

  • チームのスローガンを投票で決める。
  • ファン感謝祭などのイベント企画会議に参加してもらう。
  • クラブの諮問委員会(アドバイザリーボード)にファン代表として入ってもらう。

やってはいけない! 共創の「4つの落とし穴」

共創は強力な磁石のようにファンを引きつけますが、扱い方を間違えると、逆にものすごい勢いでファンを弾き飛ばしてしまいます(ファン離れ)。 せっかくの取り組みが台無しにならないよう、次のような「失敗パターン」には細心の注意が必要です。

① 「聞いたフリ」だけで終わらせる(共創ごっこ)

「皆さんの意見を聞きます!」とアンケートをとったのに、結果がどう使われたのか分からない、あるいは最初から結論が決まっている……。 こうした「ポーズだけ」の態度はすぐに見抜かれます。プロセスが見えないままだと、ファンは「利用されただけ」と感じ、深い不信感を持ってしまいます。

② 「どこまで決めていいの?」が曖昧(期待値のズレ)

「一緒に作ろう」と言われると、ファンは「自分たちに決定権があるんだ!」と期待しがちです。 最終決定はクラブがするのか、それとも投票結果に100%従うのか。このルールが曖昧だと、決定がファンの意向と違った時に「裏切られた」と思われてしまいます。最初に「ここまでは皆さん、ここからはクラブ」という線引きを握っておくことが大切です。

③ 「常連さん」だけで盛り上がってしまう(内輪ノリ)

熱心なコアファンや、SNSで声の大きい人の意見ばかり採用していませんか? そうなると、ライト層や新しいファンにとって「入りづらい空気」が生まれてしまいます。共創が一部の常連さんだけの「閉じたサロン」になってしまうと、クラブの成長はそこで止まってしまいます。

④ 「好きでやってるんでしょ?」という甘え(やりがい搾取)

「ファンならタダで手伝ってくれるだろう」という甘えは禁物です。 労働に見合う対価(お金でなくとも、特別な体験や名誉など)がないまま頼りすぎると、外からは「ファンの善意を搾取している」と見られ、ブランドそのものを傷つけてしまいます。感謝をしっかりと「形」にして返すことが不可欠です。

成功させるための「6つのルール」

共創を成功させるカギは、実はファンの「情熱」に頼ることではありません。運営側がいかに「透明性」と「ルール」を丁寧に設計できるか。そこにかかっています。

1. 「何のために?」を言葉にする

単なる賑やかしではなく、「具体的な課題を解決するため」「新しい価値を作るため」という目的を最初にハッキリ伝えましょう。

2. 「どこまで決めていいか」を握る

「アイデア出しまで」なのか、「参考意見として聞く」のか、それとも「投票で決定する」のか。ファンが関われる範囲と決定権のルールを事前にクリアにしておきます。

3. プロセスを包み隠さず見せる

採用された案だけでなく、「なぜこちらは選ばれなかったのか」という理由や、議論の過程までオープンにします。結果そのものより、「納得感」こそがファンの信頼を高めます。

4. キャッチボールを完結させる

「募集→実施→報告→感謝」までをワンセットに。「自分の声がちゃんと届いた」という手応えがあって初めて、ファンは「次も参加したい」と思ってくれます。

5. 参加のハードルを何段階も用意する

「1クリックで終わる投票」から、「数ヶ月ガッツリ関わるプロジェクト」まで。ファンの熱量や事情に合わせて、気軽なものからディープなものまで、参加の階段を用意します。

6. 「リスペクト」を目に見える形に

参加してくれたファンには、名前のクレジット表記やデジタルバッジ、選手からの感謝メッセージなどで報いましょう。金銭ではなく、「称賛」と「名誉」で感謝を伝えることが大切です。

熱量を「使い捨て」にせず、「資産」として積み上げる

ファンエンゲージメントにおける共創の本質。それは動員数を稼ぐキャンペーンではなく、「価値を生み出す仕組みをファンと共有し、チーム運営を社会に開くこと」です。

プロスポーツにおいて、ファンの熱量は最も貴重な資源です。その熱量を、一過性の興奮として「消費」して終わるのか。それとも、共創を通じて信頼や文化といった「資産」として積み上げていくのか。

これからの時代に強いクラブとは、単に試合に勝つだけのチームではありません。ファンと共に物語を紡ぎ、共に成長する仕組みを持ったチームです。ファンを「顧客」から「パートナー」へと変えるこの戦略こそが、先が見えにくい時代のスポーツビジネスを支える、最も太い柱になるはずです。

About The Author

グラぽ編集長
大手コンピューターメーカーの人事部で人財育成に携わり、スピンアウト後は動態解析などの測定技術系やWebサイト構築などを主として担当する。またかつての縁で通信会社やWebメディアなどで講師として登壇することもあり。
名古屋グランパスとはJリーグ開幕前のナビスコカップからの縁。サッカーは地元市民リーグ、フットサルは地元チームで25年ほどプレーをしている。

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