SNSのタイムラインを見ると、「福岡さんの成長準備期に助けられた」というような声も見かけた。大勝の裏に見えた設計の噛み合いについて、福岡側への印象とともにワンポイントで見ていく。
試合情報
- 2026年3月7日
- 福岡 – 名古屋:1-5
- 天候 / 気温 / 湿度:晴れ / 10.2℃ / 51%
- 主審:木村博之
攻略の展開
名古屋式フローチャートとでも言うべきか、毎度おなじみ相手の形の確認から入る。
「相手は中央を固めていますか?」→「YES」の形である。
この日は541で福岡が迎撃する形の攻略をする日になった。(試合開始直後はプレスも見られたが、形の話は後述する。)この展開はガンバ戦でも苦労した形である。
苦労する理由は、相手が541だとCBからIHへのスペースがないことで、外回しを強要されるからである。保持の局面では、高嶺と稲垣が最終ラインに吸収される415の形になるため、サイドにボールが誘導された状況でプレスを躱しづらい。(各節のレビューでの、相手のSHの高さやそこを運んで列を越える攻防の解説、およびCMFが最終ラインに吸収されない形での成功例の解説を参照されたい。)
難しい攻防になるかと思いきや、案外難しくない展開で試合が進んだ。
まず福岡の攻撃の構造から見ていく。
理想は後述するが、保持の局面になると基本的に相手のプレスに対して長いボールを蹴り出す印象である。
4分48秒からの形を見ると分かりやすい。名古屋がマンマークにしているように見えるが、実は守備の人数が足りていない。
福岡は保持の局面で両WBが高い位置を取るため、中山と浅野は押し込まれ、岡の所の守備が浮いている形になっている。しかし、名古屋のプレスを誘ったタイミングで、同サイドの1対1の所にロングボールを出す選択となる。
IHに原と佐藤が引き出されて、最終ラインが浅野、藤井、中山といういびつな形になっているが、名古屋のCMFと佐藤・原の間に選手がいない。(福岡はWBとCF以外の選手がビルドアップでボールを引き出すために降りてきていた。)
そのため、福岡からすればセカンドボールの回収が難しくなっていたように感じた。
実際は、最終ラインからプレスを誘うような形を作りたかったのだろう。6分31秒からのように、名古屋のプレスのズレの所(岡)まで逃がして、次にボールを引き取りに来るポジションの所(この場面ではWB)でプレスを遅らせる。遅らせてできたスペースを活用していくような形が理想なのだと思う。
👍ポイント
ビルドアップのために福岡の選手があれだけボールを引き取る動きをしている所にロングボールを入れているため、ロングボールの「当てる先」が曖昧なのはデータにも表れている。名古屋の空中戦の勝率は前半70%、後半71%であった。(実際は日差しなどの要因もあるとはいえ、である。)
守備設計の噛み合い
見ていて明らかだったのは、福岡のCBの所のズレだろう。前半のチャンスは、ほとんどがCBのズレからの展開だった。福岡の守備方針を見ると、チャンスができた理由が分かりやすい。
まず、福岡はWBも高いポジションを取るため、高い位置からプレスを掛ける展開になる。
それを名古屋はGKなどを使い、1列目のプレスを剥がす。
すると福岡は撤退に切り替えて541にする。基本的には、福岡の守備設計の切り替えのタイミングは、ファーストプレスが躱されるかどうかである。
1点目を見てみる。オビのキックが前線に届かなかった。そのセカンドボールの瞬間、ボランチの重見が佐藤を見送って蹴り出される。守備の基準を、相手のビルドアップがスタートするタイミングでのプレスにしていたため、オビが中途半端な飛距離のボールを出してしまったことで、守備の設計に空白の時間ができてしまった。結局、ボランチが引いていないのになぜかボールはIHに入る。(福岡の想定では、そこはスペースとして埋まっているはずの場所である。)
こうなれば、CBが守備の選択に迷うのは必然だ。
プレスを強めても…
後半に入ると福岡はプレスの形を強めるが、4点目の展開も差し込まれるタイミングや、63分7秒からの湯澤対中山の所での構える判断など、プレスから構える形への移行時に生じる、空白の時間からの得点だった。
実際、蓋を開けてみれば5得点の大勝に見えるが、マンツーマンの守備の所で、岡が後方から1枚人を足しに来るような65分27秒からの形からピンチを招いたりと、「トランジションの速い展開で後ろから人を足されたらどうしようもない」と感じる瞬間は割と多く見受けられた。
名古屋は空白の時間をなくす代わりに、個人の責任に近いマンツーマンである。一方の福岡は、切り替えの空白時間ができる代わりに、全体で耐える時間を作ろうとする。両チームの設計の色の違いが、うまく噛み合った試合となった。
試合雑感
- 全部に対応する守備設計などというものは机上の空論であることが、お互いを見てよく分かる試合だった。何をするにも戦術とは一長一短である。
- 配置するだけでズレてくれる相手に関しては、さすがに強い。
- 福岡側としては、ロングボールをとにかく設計に組み込めなかったのが苦しかったのではないか。
さいごに
90分勝利のため、600万円追加。
5節終了時点で、今シーズン獲得賞金(理念強化配分金+特別助成金を除く): 1800万円




