はじめに
この試合のマッチプレビューでも触れられていましたが、両チームともに勝利、または引き分けであればグループステージ突破となる1戦。
リーグ戦での選手布陣に対し、川崎フロンターレは全選手入れ替え、名古屋グランパスは怪我等による選手の離脱により一部の選手入れ替えが予想されましたが、蓋を開ければ両チームともにリーグ戦とほぼ同じという予想外の試合。
結果的には2-2でドロー。
両チームがプライムステージへ勝ち上がりましたが、望外の熱戦となりました。
参考情報:2020年JリーグYBCルヴァンカップ グループステージ 第3節 川崎フロンターレ戦マッチプレビュー
2020年JリーグYBCルヴァンカップ グループステージ 第3節 川崎フロンターレ戦マッチプレビュー #grampus #frontale
両チーム布陣
両チームの布陣は下記のようになりました。
名古屋は前節の清水戦から5名の入れ替え、川崎は前節の鹿島戦から7名の入れ替え。逆に言うとリーグ戦からは2~3名の入れ替えしかしていないという、突破に向けて本気度の高いスターティングメンバーと言えます。
名古屋は負傷者の続出するセントラルMFにシャビエルを初起用するという奇策で川崎に挑みました。ジョアン・シミッチを欠くため、守備力というリスクを負いながらも前線を活かすパスの出所を整備するという意図があったのだと思われます。
対して川崎は今シーズンの基本布陣4-3-3にリーグ戦と同様に選手を配置。
川崎は選手層が厚く奇をてらう必要がありません。負傷者が少ないというのは素直に羨ましいですね。
- 名古屋 4-2-3-1
13藤井、36太田、14秋山、19青木、8シミッチ
→4中谷、26成瀬、15稲垣、10シャビエル、25前田
- 川崎 4-3-3
27丹野、34山村、7車屋、6守田、30旗手、9Lダミアン、8脇坂
→1チョンソンリョン、5谷口、2登里、25田中、20宮代、11小林、10大島
前半、名古屋のハイプレスと川崎の修正
まず、この試合の得点記録ですが、下記内容となります。
- 名古屋:1分’相馬、7分’シャビエル
- 川崎:6分’、38分’三笘
参考情報:Jリーグデータサイト
https://data.j-league.or.jp/SFMS02/?match_card_id=24865
前半45分は私がホームゴール裏から観た印象ですが、3つの時間帯に分けられます。
- 0-15分:名古屋のハイプレスが川崎を慌てさせた時間帯
- 15-35分:川崎が落ち着きを取り戻しポゼッション志向を強めた時間帯
- 35-45分:川崎が名古屋を押し込み続け、名古屋がひたすら耐えた時間帯
①0-15分:名古屋のハイプレスが川崎を慌てさせた時間帯
前半早々から名古屋がハイプレスで川崎に襲い掛かりました。
川崎DF陣もこの展開は予想していなかったのか、相馬のクロスをジャジエウがクリアミスし、名古屋が開始1分で先制。6分に三笘のゴールで同点になりますが、その1分後の7分に名古屋がシャビエルのゴールで再度突き放しました。この時間帯は川崎の縦パスが名古屋の守備網にカットされることが多く、川崎はバタバタしていました。シャビエルが前を向いてボールを受けられるシーンも多く、名古屋の奇策が成功した時間帯と言えそうです。
②15-35分:川崎が落ち着きを取り戻しポゼッション志向を強めた時間帯
といっても強豪の川崎。即システム変更で対応しました。
川崎は守備時に4-4-2へシステム変更。名古屋と川崎の選手がほぼマンツーマンに近い形で守備を行うようになり、川崎が1対1を制し続けることで試合を支配する「らしさ」が徐々に発揮されてきた時間帯です。
また、この時間帯から名古屋DF陣は田中が供給する縦パス、三笘の変幻自在のドリブルに手を焼き始めました。1対1で負けはじめ、結果的に川崎がボールを保持する時間が増加。また、川崎は名古屋がサイドチェンジしてもスライドが早く、名古屋は攻撃時に上手くスペースを作り出せずにボールを奪われる、の繰り返しでした。
③35-45分:川崎が名古屋を押し込み続け、名古屋がひたすら耐えた時間帯
38分に三笘のゴールで再び同点にされると、名古屋は前半終了まで防戦一方。プレビュー内で「フロンターレ戦で一番避けたいのは、ペナルティーエリアに閉じこもり、「ゴールに鍵をかける」プレーを選択することです」と書かれていましたが、押し込まれたことにより、名古屋が今年守ってきた守備ラインの高さを維持出来なくなりました。そのため自陣ゴール前でひたすら川崎の攻撃を耐える時間帯となりました。
川崎対策としてプレビューに書かれていた、FWがセンターバックの2人にプレッシャーを与えて押し下げ、さらに川崎の田中碧や大島がよりゴールに近い位置にいることができるようになりました。本来ならばそこで名古屋側のセントラルMFがプレッシャーをかけて、ボールの出しどころに制限をかけなければならないのですが、セントラルMFに本職で無いシャビエルを置いたことの弊害で、ほとんどプレッシャーが掛からなかったことが要因と個人的には見ています。
しかし、名古屋は全員で守り切り、逆転されることなくハーフタイムを迎えました。
後半、名古屋の修正と川崎の誤算
ハーフタイムで名古屋のマッシモ監督はテコ入れを図りました。
ハイプレスで疲労が見えたマテウスをシミッチに交代し、セントラルMFへ。
シャビエルを本職のOHに置き攻守のバランスを整えました。目に見えて名古屋がボールを保持する時間帯が増え、その後も一進一退の攻防。
71分に吉田の頑張りから大島を退場に追い込み、川崎に逆転される可能性を低減。結果的には引き分けという形で両チームともにプライムステージ進出を決めました。
試合後にTwitterで「勝つチャンスがあった!」とのつぶやきをいくつか見かけましたが、現地で観た限りでは、川崎が62分に三笘を交代したというのも引き分けに持ち込めた要因だと思います。三笘が90分出場していたらハットトリックされていた可能性もありました。欧州移籍してもおかしくない、非常に良い選手ですね。
名古屋のGoodとMore
◎Good(良かった)
- 名古屋のハイプレスが川崎相手に通用したこと。
- セントラルMFシャビエルという新しいオプションが増えたこと。
- 不死身の漢、稲垣。
- ポストプレーヤーとして機能してきた山﨑。
- 途中交代で積極的にプレーした石田、青木。
- 左サイドをオーバーラップする吉田を使い始めた相馬。
◎More(もうちょっと頑張ろう)
- 押し込まれた時に耐える守備力。川崎の攻撃にも耐えられる守備戦術は更に上位を目指すには必要不可欠。
- ハイプレスを掛けられる時間は限られるので、プレスする時間のメリハリが欲しい。
- 判断は良いがフィジカルで競り負けていた成瀬。10kg近く体重差がある三笘に弾き飛ばされる場面も度々あったので、吉田豊並みの筋肉の鎧を今からでも目指してほしい。
- 消える時間帯が多かった前田。コンディション的なものかもしれませんが。
おわりに
J1リーグの前哨戦となった今回の試合。
名古屋グランパスは、プライムステージ勝ち上がりという最低限の結果と共に、川崎フロンターレ攻略の手応えも掴んだと思います。
といっても川崎はリーグ戦ではこの試合不出場の家長など、更に強力な選手を揃えて豊田スタジアムに乗り込んでくるでしょう。
まずはプライムステージの勝ち上がりを喜び、またリーグ戦では現在の好調を維持できるよう、皆の力で今後も名古屋グランパスを後押ししましょう。