熱闘とはまさにこの事かと。
会場を包む大きな拍手。ビックプレーに漏れそうになる声を抑え、新しい応援形式の制限範囲内ギリギリの盛り上がり方だった豊田スタジアム。この試合こそ超満員で大きな声で周りの人と喜びを分かち合いたかったという悔しさ以外は最高の一日でした。
前半から両チームともサイドを中心に狭いところからゴールまでの道筋を探す展開。そんな中で120点の展開とクロス、シュートで名古屋が先制。後半は前がかりに来る川崎の猛攻に耐え、時折相手を剥がしながら95分の死闘を制した。1-0とは思えないほどの内容の濃い試合だった。気持ちの勝負になる所までを順に追ってみる。
ルヴァンと少し変わった守備
ルヴァンではいわゆるマンマークに近い「人に人を当てる」形を前半で取り、後半はいつも通りのブロックを作り待ち構えるシステムだったが、今回は少し違った。「ルヴァンの試合全体のいいところだけ集めました!」というような守り方で川崎を迎え撃った。
センターの二人は基本的にマンマーク。サイドの縦二枚のコンビは川崎の選手がセンターバックとサイドバックの間(ハーフスペース)に入ってくることを警戒する。そして金崎とシャビエルはどちらかが中盤の底に対して張り付く事。このあたりを主な約束事として守備をしていたと思われる。
このシステムで名古屋は、川崎の中央からの崩しの阻止。マンマークのプレッシャーで川崎に簡単に前を向いてプレーさせないようにするためだけでなく、ゴールまでのルートと、川崎の選手同士の“距離”を出来るだけ長くする事を目的としていた。
選手同士の距離が長くなれば供給するボールの質にムラができる。その上相手プレッシャーに晒されるとよりミスが出るようになる…そういったことも狙っていたかもしれない。
実際は・・・
- 前半ピンチになった場面ではサイドの同数対決で上手く剥がされ、相手がハーフスペースに抜け出される場面も
- 大外からのクロスもサイドの守備の選手頼みになるのでその勝負に負けてしまうとかなり効果的なクロスも何本かあげられてしまった。
- マークしてる選手の担当を状況によって変更した際、マークの受け渡しの時に相手に加速され空いているスペースを使われる場面も
川崎の行動
川崎からするとセンターバックにほとんどプレッシャーが来ないのでセンターバックが中央まで持ち上がってくる。すると川崎の中盤は詰まってくるので前へ出ないといけない。すると名古屋のセンターラインと守備陣に吸収されてしまい中央からは攻められなくなる。
そして川崎が攻撃をやり直そうとボールを下げた所に名古屋の前線がプレスに行く。すると川崎の中盤の選手も味方をフォローするために降りてくる。そうすればまた、名古屋がやりたい守備の形に自然と戻るというループだ。
もう一つの名古屋の守備対策として、川崎は守田を起点に球を散らそうとした。しかし金崎とシャビがしっかり守田をマークしてたこと。そのフォローに降りてきた川崎のセンター二人(下田・脇坂)に名古屋のセンター(シミッチ・稲垣祥)がマークがしっかりできた事で、常に4対3でプレッシャーをかけることができた。そのため前半は守田から効果的なパスを出すことを防ぐことができた。
しかし、後半は川崎も修正し、逆に名古屋のセンターが釣り出されてしまうことになる。
得点シーン
解説しようがないぐらい綺麗なゴールだったが一応。
スローインのボールロストから金崎とマテウス、吉田でボールの出口を抑え込む。出しどころがなくなったのでお願いレアンドロ戦法で川崎は縦の空いたスペースへ。丸山がレアンドロにボールをキープさせなかったために次のプレスの開始が川崎は遅れた。三笘の視線を成瀬、前田から切るために中谷は直接成瀬ではなくシミッチへパス。
三笘は守備連動のスタートになる位置だったため彼が当たりに行く選手が明確になって初めて他の選手が動ける状態になる。その三笘が成瀬へプレスに行くのが遅れた為に川崎得意の守備の連動が遅れた。
三笘が遅れ、車屋が遅れ、下田が遅れ、ジェジェウが遅れ。その遅れを超える速度で名古屋がボールを展開していった。ジョアンから出されたボールは成瀬、前田、シャビエル、稲垣祥とダイレクトパスを繋いで川崎DFを遅らせ、マテウスが一瞬ルックアップして、狙いをつけてクロスを上げる時間を作った。
川崎のミスとも言い難いような一瞬の隙を確実に仕留めた名古屋が完璧だった。
マテウスの満点クロスと金崎の満点ヘッドの花道を作ったシミッチ、成瀬、前田、中谷の判断能力の高さ。シャビエル、稲垣の視野の広さ。全てのレベルが高かった。この瞬間のプレーの質はJリーグで一位二位を争うような質の高さだったと思う。DAZNのキーモーメントをONにゴール場面を選択、そしてそこから30秒巻き戻して是非、もう一度観てみてください。
後半~ 対名古屋システム発動
後半からはルヴァンカップの試合後半とほぼ同じ攻め方をされた。中央の選手間の距離を縮められ、サイドの選手が中にカットインして来る。名古屋のマークをずらすためにパスを出したら違うポジションへ行く。ワンツーで抜け出す。名古屋のセンター2枚とディフェンスの間のスペースでボールを受ける。
ここからはほぼ気合で守るという(実際は個の能力)言ってしまえば今年の名古屋の強みで耐え凌いだ。
まー「気持ちの強さは関係ないでしょ」っていう某ワールドトリガーの隊長のセリフもあって、「気合いでどうこうなるのは実力が相当近いときだけだ」なので、「気持ちで勝った」と言いたいわけではなく「気持ちがなきゃ勝てなかった」ということを思ってます。
— キリ (@pk_always_right) August 23, 2020
(編集追記)気合が問題になるのは、お互いのチカラが近かったからこそ、なのかも。だから良い勝負になった。
後ろは4枚か5枚か騒動
後半79分、オジェソクの投入時にベンチに向かって丸山が何かしていた。しきりに「お手上げ状態」のジェスチャーをしながら「WHY!?」というような素振り。
現地で見てる時は「後ろ5枚でやるメリットなに?」って思ってるのかな?丸山が4枚なのに勝手に5枚で勘違いしたのかな?など勝手な憶測をしてしまった。
結局4枚になったので試合後SNSに「丸山が5枚で勘違いしてえらく監督に反抗したのか」とつぶやいたところ、DAZNで観ていた方からオジェソクが入るときに5枚とジェスチャーをしていましたよ!と情報をいただいた。自分で確認したところ確かにオジェソクは5と提示し、その後監督が4枚に訂正を出していた。
DAZNには映っていないシーンだったが、これをどう捉えるべきか。
4枚に変えた後、監督が怒っているわけでもなく、スタッフと緊急で何かしてるわけでもない。非常に不思議な光景だった。
個人的には以下のようなことが理由ではないかと考える。
- 選手達が川崎相手に5枚で引いて守備をすることは有効ではないと試合で感じていて監督にその必要があるのか、と言うのを確認したかったのではないか?
- いつも通りパスを回して相手を剥がすことが出来るという自信があったのではないか?
- 川崎も前がかりになっていた為、カウンターのチャンスは充分あると判断したのか?
どういう理由にせよ、自分たちの判断やプレーに自信がついてきている証拠だと思うので、プラスに捉えていきたい。
良かった所
- 今までは、相手の良いところを消してから自分達がやりたいことをする。という形だったが、徐々に相手が誰であれ自分たちのやりたいことをするためにどうするかを考える時間が試合で増えている気がする所。
心配な所
- 外せない選手が増えていく一方で、リーグが進むにつれて色んな選手の可能性をを試す機会が減っている事。
- 本当にこのままの選手層で全日程行くんですか・・・?
- 命を削るぐらいハードワークしてる選手達・・・(特に稲垣とか稲垣とか)
まとめ
勝ち点6ぐらい価値があるゲームと呼ばれる重要な一戦を拾ったグランパス。やっと少し長い休みです。選手に体力与え隊として毎日クラブハウスに念を送り続けましょう!