広島(6位)・鳥栖(4位)・ガンバ(前年2位)・川崎(1位)x2・セレッソ(5位)と、上位6連戦の第2戦。中3日は同じコンディション。広島以上に堅守のチーム相手だけにグランパス攻撃陣の真価を問われる1戦だ。記録がどうとか関係ない。川崎フロンターレが負けない以上、グランパスも負けられない。生き残りをかけた一戦をプレビューする。
サガン鳥栖の状況
- 出場停止なし
- 移籍加入の島川俊郎が4月8日の試合で怪我。
- ガンバ大阪に手痛い敗戦。
- スターティングメンバー以外の層の薄さが露呈
- 原川力、原輝綺、森下龍矢らが移籍
- 仙頭啓矢、山下敬大、飯野七聖、ファン・ソッコらが新加入、即レギュラーとして活躍
- 外国籍選手ドゥンガとオフォエドゥが合流も、先発は微妙
- ベンチスタートを予想
サガン鳥栖の戦績
ここまで3敗しているが、失点は3。2点以上獲られたことがない。川崎フロンターレ相手でも退場者を出しながら1点に抑え込んだ。得点数は13で同じ。(リーグ8位)失点も名古屋1位と3位。ほぼ互角の戦績と言える。
サガン鳥栖の戦い方
覚えておいて欲しいのは、様々な分析記事などでは「可変システムがうんたらかんたら」とか難しい表現でサガン鳥栖を表現していることが多いが、本質はこうである。
『相手のプレスがこう来たら、ここが空くんだよ』というのを、いろんな形でトレーニングに落とし込んでやってきて。そうしたことの積み重ねで、今年になって『相手はこう来るから、こうやって攻略しよう』という狙いがチームにスッと落ちて、表現できるようになったんだと思います。
引用元: 「予算に限りがあっても…」 鳥栖・金明輝監督が掲げる「チーム7、個人3」の戦術、ヒントを得た欧州クラブは?【インタビュー】(飯尾篤史)
同じインタビューのなかで、金監督は「認知」を鍛えていると言う。
かつて、ヨハン・クライフはこう言った。
「テクニックとは、1000回ボールをリフティングできることではない。テクニックの本質とはワンタッチで、正しいスピードで味方のプレーしやすい足にパスを出せる能力なのだ」
クライフの求めるプレーを因数分解すると、「正しいスピード」を選択でき、「味方のプレーしやすい足に」ということを分析して決断できることが必要になる。
サッカーと認知については、この記事でその因数分解した上でのプレーのステップが挙げられている。
- 知 覚 …情報の収集
- 分 析 …理解のプロセスであり、情報の分析
- 決 断 …リスクの評価と、行動の決定
- 実 行 …決断をベースにした、プレーの実行
- 適 応 …実行したプレーの評価
- 効率評価 …評価をベースとした、新たな情報の収集
引用元: 認知科学から見た現代サッカー。日本人選手の「認知」を鍛える術 | footballista
金監督は、知覚・分析のところで、選手に「こういうときはこうすれば良い」という「引き出し」を植え付けていった。その結果が今のサッカーになっている。知覚することは簡単ではない。視野の広さは人それぞれ。でも「練習のときもこう動いていたな」ということがわかっていればそれもたやすい。
相手のプレッシャーを逆手にとって、選手が入れ替わりながら選手とボールを前に進めて行く、というのがサガン鳥栖の自陣での組立ての仕組みだ。
このプレー自体はまったく特別なものではない。ただ、「認知の引き出し」を多く持つという、金監督の手腕によって効率的に実行できるようになっているのだ。
サガン鳥栖の特殊なフォワード
今年サガン鳥栖のフォワードは、決まったメンバーで固定されているわけではない。それは負荷の高さが原因だとグラぽは分析する。
現在リーグ得点王のアンデルソン・ロペスのスタッツを見てみよう。
引用元: Anderson Lopes Hokkaido Consadole Sapporo videos, transfer history and stats
ヒートマップはやはり相手ペナルティエリア内外に濃い色が付く。
それに対して、サガン鳥栖のチーム得点王、山下敬大のスタッツはこうなる。
引用元: https://www.sofascore.com/player/yamashita-keita/930057
注目して欲しいのは、ペナルティエリア内外の色の濃さだ。プレーをする量ではそれほどペナルティエリア内は多くない。Goals from inside the boxが5/16であるにも関わらず、このヒートマップはちょっと特徴的と言える。
これは役割的に、シュートしてゴールするという役割以外を担っているからだとグラぽは考える。1:1の数を示す、平均デュエル数はアンデルソン・ロペスが3.8に対して山下敬大は5.1と大幅に大きい。
サガン鳥栖の攻撃の組み立てが成功するのは、労を厭わず動き回り、プレッシャーをかけ続けることができるフォワード陣の下支えによるところが大きいのではないだろうか。
サガン鳥栖のチャンスビルディングポイント
クロス以外は全部ヒトケタ。前の試合のサンフレッチェ同様、バランス良く「なんでもできる」チームだ。ここまでの対戦相手とはレベルが違う。
とにかく、よく走る。名古屋は16位の走行距離が、なんとダントツの1位だ。試合平均で10km違う。これは選手が1人多いのと変わらない。
ここがいまのサガン鳥栖を支える秘密だと思われる。
データ引用元: サガン鳥栖 2021プレビュー | 4月18日名古屋 vs 鳥栖 | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB
グランパスの状況
- 金崎夢生が全治8ヶ月の重傷
- リハビリは順調そう
- シャビエルがコンディション不良でプレーできない状況
- 山﨑凌吾がいるときは1トップ、柿谷曜一朗・シャビエル・阿部浩之らの組み合わせのときは昨年も上手く行っていた0トップで臨む
- ファン・ソッコとエドゥアルドという強さを持つセンターバック相手なので、山﨑凌吾のトップ起用を予想
- 米本拓司の疲労を考慮して、長澤和輝の起用もあり得る
- 出場停止はなし
サガン鳥栖対策
これといって穴のないサガン鳥栖。対策も難しい。
エドゥアルドの強いパスをインターセプトせよ!
きちんとしたデータを作るまでに至っていないが、5試合を観た限りでは、一番近くの松岡大起ではなく、樋口雄太への強いグラウンダーのパスを入れるケースが多い。これで一気に前にボールを運ぶのだ。
ただ、そこにパスが出ることが判っていれば、グランパスの守備陣なら止めることもできるだろう。そこでインターセプトすれば、間違いなく前にいるのは松岡大起・ファン・ソッコとエドゥアルドの3人だけだ。そういうシーンを作りたい。
松岡大起を裸にしろ!
Daiki Matsuoka Sagan Tosu videos, transfer history and stats
鳥栖の柔軟なプレーを支えるもう1つの要素が、まるで稲垣祥のように動き回れる松岡大起だ。まだ19歳のMFは自陣中央で守備もしながらパスの経由点になる。彼というアンカーがいるからこそ、まわりの選手は自由に動ける。
普段は仙頭啓矢や樋口雄太が降りてくることで擬似的に2セントラルMFを構成しているが、仙頭や樋口が降りられないように引きつけることができれば、ワイドに張る選手の多いサガン鳥栖では、かなりのスペースが空く。ここを狙いたい。
スライドが追いつかないパス回しを!
サガン鳥栖の選手は空いたスペースを埋めていくスライド(ずれる動き)が素晴らしい。前線に飛び出すだけでなく、横や後ろへのスライドもかなり行われている。
そこはグランパスと似ている部分があるのだが、グランパスも疲れてきたり、相手のパス回しが素晴らしいと守備のスライドが追いつかなくなることがある。
自分たちがやられて嫌なことをすることが基本。是非やって欲しい。
良い試合になりますように