ACLでの逆転勝利で負けなしを9戦まで伸ばしてきている。涼しくなったことで稲垣祥が動き回れるようになり、前田直輝が不調を脱し、森下龍矢・ヤクブ・シュヴィルツォクらの新戦力がようやくフィットするようになった今は、丸山祐市離脱後の最悪の状態は脱したと言っても良いだろう。
しかしここで当たるのがグランパスが最後に敗戦した相手。川崎フロンターレが移籍と怪我人で弱体化しているなか、現在Jリーグ最強チームと言って良い横浜Fマリノスだ。この試合が間違いなく今後のグランパスを占う試金石となる。この試合をプレビューする。
横浜Fマリノスの状況
- 出場停止なし
- 畠中槙之輔は全治6ヶ月の負傷で離脱中
- チアゴ・マルチンス、仲川輝人は軽傷も今節の出場は微妙
- 松原健の復帰をマスカット監督が明言。
- 中3日のグランパスに対して、中6日と、休養十分。対策を立てる時間もたっぷりあったと思われる。
IN | OUT |
FW 杉本健勇 | MF 樺山諒乃介 |
DF 角田涼太朗 | DF 高野遼 |
FW 宮市亮 | DF 伊藤槙人 |
FW オナイウ阿道 | |
MF 椿直起 | |
GK オビパウエルオビンナ |
横浜Fマリノスの戦績
20勝5分3敗。首位の川崎フロンターレとは勝ち点1差ではあるものの、いまの勝ち点獲得ペースからすると、逆転優勝はほぼ間違いないだろう。
何より恐ろしいのは平均得点2.3の攻撃力だ。(グランパスは1.1)
平均失点こそ0.1グランパスが上回っているものの、この攻撃力は半端ない。「相手を壊す仕組みを知っている」チームは、Jリーグでは川崎フロンターレと横浜Fマリノスしかいない。
横浜Fマリノスの戦い方
唯一無二とも言える、特異なヨーロッパスタイルを取るサッカーを見直してみよう。
横浜Fマリノスのチームスタイル
マリノスはどの数値を取っても60以上、特にサイド攻撃の数値が異常である。左サイド78、右サイド83は異常中の異常な値だ。
守備から攻撃への切り替えが速く、敵陣でボールを保持し続ける。(数値69)
最終ラインは高く、残しているのは2CBのみ、ということがほとんどだ。
引用元: 横浜F・マリノス 2021 チームスタイル[攻撃セットプレー] | データによってサッカーはもっと輝く
昨日のfootrico @footrico_yfm でもRODさん が、なんの疑問も持たずに「マリノスが押し込むこと」を前提にお話をされていたが、実際に敵陣ポゼッションの高さは「相手のクリアなどのセカンドボールの回収」というのが前提で、そうなると無限にマリノスに攻め続けられることになる。
無理なハイプレスをかけなくても、こういったセカンドボールの回収ができれば良い、という考えだ。だからハイプレスの数値はそれほど高くはない。ただ、そこからのショートカウンターの値は57と必然的に高くなる。
8月の前回対戦時はハーフラインよりも自陣側でヤバいボールロストが本当に多かった。10を越えた時点で数えるのを止めてしまったくらいだ。
マリノスに押し込まれないようにするためには、前回対戦時にフィッカデンティが会見で答えていた、スピードで対抗をすることではない。セカンドボールを無限に回収されないようにすることだ。
隠れたキーマンは松原健
前回対戦時、多くのパスを集めてボールを前に進めていたのが松原健である。その松原健のスタッツはパス57で成功45、シュート2である。
同じ試合で対面の吉田豊はパス33中成功20。シュートは0。松原健が離脱後は少し戦い方が不安定になるくらいで、直近10試合のうち、彼が出場した5試合は5勝0敗、出場しなかった試合は3勝1分1敗。彼だけが要素ではないが、代役として出場している選手に比べて、(守備はともかく)ビルドアップやパス、ロングシュートに高いクオリティを持っているのは間違いない。その彼が復帰してくるこの試合には注目したい。
横浜Fマリノスのチャンスビルディングポイント
引用元: 横浜F・マリノス 2021プレビュー | 9月18日名古屋 vs 横浜FM | データによってサッカーはもっと輝く
攻撃・パス・クロス・シュート、4項目で1位となる。名古屋は、積極的にボールを動かしていくチームではないので、だいたいドリブル以外は10位以上になってしまうが、それでもこれだけ恐ろしいチームはそうそうない。
グランパスの状況
- 丸山祐市が全治8ヶ月の重傷(3ヶ月目)
- 山﨑凌吾が復帰、ACLでベンチ入りも、試合出場は微妙
- 謎のベンチ外が続いていた齋藤学がACLでベンチ入りも、試合後のランで、まだフィットネスは100%でないことがわかる。
- シャビエルと金崎夢生が復帰
- 柿谷曜一朗が全体練習に復帰。横浜Fマリノス戦は出場微妙。
- 出場停止はなし
横浜Fマリノス対策
ACLでいい流れを呼び込めそうな勝ち方をしたあとに、少し自分たちの自信が過信になってしまったのかなと。緩めてしまった瞬間に痛い目に遭うのがサッカーですし、そういった部分を一切許してくれないようなチームが今年のマリノスだと思います。
引用元: 明治安田生命J1リーグ第29節 横浜FM戦 前日監督会見 INSIDE GRAMPUS
まずは慢心をしないこと。これがマストです。慢心していていいのは気持ち良くなっているグランパスファミリーだけ。選手・スタッフは最強の敵と戦うために切り替えてくれているはずです。
横浜Fマリノスの急造コンビの穴を突け
横浜Fマリノスの守備ラインといえば、前回対戦時には畠中槙之輔・チアゴ・マルチンスという脚が速くて機動力のあるコンビに支えられていた。高いラインを維持できるのはこの2人が居てこそ、と言える。
しかしこの2人がいない状況はチャンスだ。相手の左センターバックは實藤友紀。老獪なプレーを見せる實藤友紀だが、スピードはチアゴ・マルチンスや畠中槙之輔に比べると遅く見える。
ただし、大分トリニータから移籍してきた岩田智輝はカバーエリアも広く、実質的には彼が裏を取られたときの対応をすることになる。
ヤクブ・シュヴィルツォクが實藤友紀、岩田智輝とACL3点目のようなシーンを作れれば・・・
ヤバいところでボールを失わない
横浜Fマリノスが高いライン設定することで、コンパクトな陣形を保つ。
しかし、前田大然とエウベルは離れたところで幅を取るので、データとしてはそれほどコンパクトにはなっていない。
試合がイーブンな時間帯で、押し込むことに成功している場合は、高い確率でこのように中央に「無限回収ゾーン」を設定して、クリアを拾い続ける。
弱いチームには悪夢のような体制だ。(2016年のグランパスはだいたいそんな感じだった)
簡単にここでボールを拾われない、意図があまりないクリアは避けなければならない。
クバ・前田直輝の2トップでねじ伏せろ
横浜Fマリノスが最後に敗れたのが鹿島アントラーズ戦。
86秒からの2得点目にヒントがある。スルーパスに抜け出た上田綺世が綺麗に決めきり、ゴール。この試合のセンターバックは畠中槙之輔だったが、そこを千切った上田綺世の飛び出しが素晴らしかった。
コンビの岩田智輝がカバーができないように、もう1枚が逆サイドに走っていたことも素晴らしかった。
グランパスでいえば、マテウスのスルーパスに前田直輝が抜けだして、逆サイド森下龍矢・中央をヤクブ・シュヴィルツォクの2人が岩田智輝を釣る、こうすれば實藤友紀と1:1となり、勝機はある。こんなシーンが見たい。
正直言って、横浜Fマリノスはラスボス級の相手、だが10回やって10回負ける、というわけでもないだろう。10回やって1回勝てる、その1回を、今日、実現して見せよう!
良い試合になりますように