たまちゃん。
そう呼んでいた人も多い玉田圭司選手。彼について思い出や、熱い想いを吐露する文章は既にたくさんあるし、グラぽでもsatoshiくんが書いてくれている。
でも僕は自分の想いを書くことより、僕が思う「玉田圭司はここが凄かった」について書いておきたい。そのすごさを、後の世代の人に繋いでいきたい。
玉田圭司ゾーン
左利きの選手がゴールを狙うとき、右からカットインして決めることが多い。
思い出して欲しいのがマテウスや前田直輝は右サイドに居ることを好むことだ。玉田圭司は左サイドにいることを好む。
左サイドからの攻撃といえば有名な選手がいた。イタリアの「アレッサンドロ・デル・ピエロ」選手だ。彼はこの位置から、「右脚で」ファーに浮かせて巻くようにしてギリギリに流し込むのが彼の得意なプレーだった。このゾーンを、俗に「デルピエロゾーン」と呼ぶ。
なんで左サイドに右利きなのか。それは左サイドで左利きがシュートを打とうとすると実はデルピエロのシュートのようにカーブをかけたシュートを打つのは難しいのだ。
左サイドで左利きが打つシュートのパターンはおおよそ2つ。
- 1)狭いニア高めを強シュートで打ち抜く
- 2)GKがニアに体重が乗ったところで、ファーにグラウンダーでギリギリに流し込む
このどちらかしかない。これには
- 精緻なボールコントロール技術
- 狭いシュートコースに打つ勇気
の両方が必要になる。
実際に玉田圭司が挙げたゴールはこのような形のものが多い。
そのためこの位置をデルピエロゾーンにならって「玉田ゾーン」と呼ばれる時期があった。この難しい場所でのシュートを決められる。しかも代表戦のようなすさまじいプレッシャーのかかる中でこれだけ決めている。
勇気のない選手なら自分で勝負せずにボールキープに入り、ほかの選手の上がりを待つだろう。でも玉田圭司は違った。
ボールコントロール技術と勇気、これこそが玉田ゾーンの秘密だ。
その究極とも言えるのが、ワールドカップ、ブラジル戦でのゴールだろう。
卓越したボールキープ技術
この動画の一番最初のゴールを見て欲しい。
- 中盤でボールキープで3枚剥がし、
- パスを出してゴール前に走り込む
- ケネディの落としをダイレクトシュートで決める
おそらく今、柿谷曜一朗に求められていることを実現している。
マークを受けたときに、ボールを下げることは悪くない。ボールを失うよりもずっといい。ただマークを剥がすことができたら一気にチャンスになる。今のグランパスに足りないものを玉田圭司は持っていた。
トラップ1つで相手の裏を取れる
このビデオを見てみて欲しい。
- サイドラインで後ろから来たボールをダイレクトで前にコントロールし、
- 一瞬のスピードで抜けだそうとする。
- DFはたまらずファールで玉田圭司を引き倒す。
同じようなプレーは前田直輝やマテウスがよくやっているが、引っかかってしまって奪われることも多い。これが違いだ。
技術に裏打ちされたゲームメーク
グランパスに2017年に帰還。しかしこの記事の画像でわかるように、この頃の玉田圭司のポジションは既に2列目、流れによっては3列目になることもあった。
この位置でも
- 絶妙なトラップでボールを収める
- ボールキープして相手を引きつけ
- or ドリブルでキープして相手を剥がす
- 相手の崩れたバランスを見て、空いたところにパスを出す
- 剥がした数的優位で味方を活かす
といったプレーは健在だった。
若い頃は、自分が点を獲ることに特化していたようなところがあったが、それを支えていた技術を、自分のゴールよりチームの勝利のために使うようになっていた。
その姿はルカ・モドリッチのようだ、と語ったのはみぎさん。
フォワードではない選手が「バロンドール」に選ばれている、と聞けばすごさがわかるだろう。
風間八宏前監督も玉田圭司には全幅の信頼を置いていた。チームの大黒柱といって良い存在だった。
ネクスト玉田圭司は誰だ?
ここまで僕が思う玉田圭司のすごさを書いてきた。
「いやいやデスク、たまちゃんのすごいところは・・・」
こんな風に語りたい人も多いだろう。そんな人は是非、レスか引用で自分の思うたまちゃんのすごさを語って欲しい。
ただ、僕たちは現在を生きている。そんなに凄い選手ならば、欲しいと思うのが自然だ。
いまのグランパスに、全盛期の玉田圭司がいたらどうだろう?実はいまグランパスの抱えている問題がいくつか解決できてしまうはずだ。
高い技術、ゲームメークができて、FKも蹴れて、ゴールも決められる。
玉田圭司のような凄い選手はそうそうはいない。
だが、タイトル獲得には必要なのだ。
グランパスを2度目のリーグ優勝に導く、ネクスト玉田圭司は、誰だ?